「無呼吸かもしれない」で止まっていませんか──検査に進めない理由は、不安ではなく情報不足でした|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

〒565-0816大阪府吹田市長野東19-6

06-6878-3303

睡眠時無呼吸症候群(SAS)
外来サイト
WEB予約 LINE予約
睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来サイト
内観

「無呼吸かもしれない」で止まっていませんか──検査に進めない理由は、不安ではなく情報不足でした

「無呼吸かもしれない」で止まっていませんか──検査に進めない理由は、不安ではなく情報不足でした|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年9月30日

「無呼吸かもしれない」で止まっていませんか──検査に進めない理由は、不安ではなく情報不足でした

いびきを指摘された。日中どうしても眠い。朝、頭が重い。夜中に何度もトイレに起きる。

こうした症状から「自分は睡眠時無呼吸かもしれない」と思ったことがある方は、決して少なくありません。ところが、そこから検査に進む方は驚くほど少ないのです。

2026年9月29日に公表された調査が、その「止まってしまう理由」を具体的な数字で示していました。結論から言えば、多くの方を止めているのは病気への恐れではなく、情報が足りないことでした。この記事では、その調査の内容と、実際の検査がどのように進むのかを整理してお伝えします。

4割超が「気になっているけれど、調べていない」

調査はインターネット上で行われ、対象は20代から60代のうち「自分は睡眠時無呼吸かもしれない」と考えながら、医療機関で検査を受けていない200人でした。

結果を見ると、42.0%が「気になっているが調べていない」と回答しています。さらに21.5%が「調べたけれど、そこから先に進んでいない」と答えました。合わせて6割を超える方が、自覚がありながら足踏みしている状態です。

自分なりに対処している方もいました。26.0%はインターネットで症状を検索し、22.3%は横向きで寝るようにしてみた、12.9%は体重を気にするようになったと回答しています。つまり、無関心で放置しているわけではないのです。行動する意欲はあるのに、医療機関という選択肢に届いていない、という構図が見えてきます。

止まってしまう理由の上位3つ

では、何が足を止めているのでしょうか。調査で挙がった上位の理由は次のようなものでした。

  • 検査にいくらかかるのか分からない(17.2%)
  • どの診療科に行けばよいのか分からない(11.7%)
  • 検査には入院が必要だと思っていた

いずれも、病気そのものへの不安ではありません。手続きや費用の見通しが立たないという、きわめて現実的な理由です。

知識の面でも差がありました。日中の眠気が交通事故などのリスクを高めることを知っていた方は15.9%にとどまり、自宅でできる簡易検査があることや、検査が保険診療で受けられることを知っていた方はさらに少数でした。

参考までに、2026年9月2日に開かれたフィリップス・ジャパンのメディアセミナーでは、中等症以上の睡眠時無呼吸の潜在的な患者が国内に約940万人いると推計される一方、CPAP治療を受けている方は約73万人、治療率は7.8%という数字が示されています。いずれも推計値ですが、「気づかれていない」「気づいても治療に至らない」という二重のギャップがあることは、現場の実感とも一致します。

誤解その1「検査は入院しないとできない」

まず、ここを解きたいと思います。

睡眠時無呼吸の検査は、多くの場合まず自宅で行います。簡易検査(携帯型睡眠検査)と呼ばれるもので、鼻に空気の流れを測る細いセンサーを、指に血液中の酸素を測るクリップを付けて、普段どおり一晩眠るだけです。機器は郵送または来院で受け取り、翌朝返却します。入院の必要はありません。

簡易検査の結果が診断の境界にある場合や、他の睡眠障害が疑われる場合には、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)というより詳しい検査を行います。これは施設で一泊して行うことが一般的ですが、在宅で実施できる体制をとっている施設もあります。つまり「入院が必要になることもあるが、最初の一歩は自宅で済む」が正確な理解です。

誤解その2「痩せているから自分は関係ない」

体重は確かに大きな要因ですが、唯一の要因ではありません。

日本人を含む東アジアの人では、下顎が小さい、後退している、首が短い、舌が大きい、鼻がつまりやすいといった骨格や気道の形の影響が相対的に大きいことが知られています。標準体重でも、あるいは痩せていても、閉塞性睡眠時無呼吸が見つかる方は珍しくありません。

「太っていないから大丈夫」という判断で検査を見送るのは、根拠の弱い自己診断です。いびきや呼吸停止を指摘されている、日中の眠気が続いている。そうした症状があるなら、体型に関係なく検査の対象になります。

誤解その3「スマートウォッチが何も言わないから安心」

スマートウォッチやスマートリング、いびきアプリの普及で、「睡眠の質」や「無呼吸の可能性」を通知してくれる機器が身近になりました。こうした通知は受診のきっかけとして有用で、実際、通知を見て来院された方が検査で治療の必要な状態だと分かることもあります。

ただし2点注意が必要です。ひとつは、機器によって医療機器として承認されているものと、健康管理(ウェルネス)目的の機能にとどまるものがあり、精度の裏づけが同じではないこと。もうひとつは、どの機器でも通知がないことは「無呼吸がない」ことの証明にはならないことです。感度には限界があり、見落としは起こります。

通知が出たら受診のきっかけに。通知が出なくても症状があるなら受診を。この2点で運用していただくのが安全です。

実際の流れ──初診から治療までの道すじ

見通しが立てば動きやすくなりますので、一般的な流れを書いておきます。

  1. 受診と問診。いびき、呼吸停止の指摘、日中の眠気、起床時の頭痛、夜間のトイレの回数などを伺い、眠気の程度は質問票(エプワース眠気尺度など)で数値化します。ご家族が気づいた様子は重要な情報です。
  2. 自宅での簡易検査。一晩測定し、無呼吸と低呼吸が1時間あたり何回起きているか(AHI=無呼吸低呼吸指数)や、血液中の酸素がどこまで下がったかを調べます。
  3. 結果説明。一般に、AHIが5以上で睡眠呼吸障害あり、15以上で中等症、30以上で重症と区分されます。この数値と症状の程度、血圧などの合併症を合わせて治療の必要性を判断します。
  4. 必要に応じて精密検査(PSG)。
  5. 治療の開始と、その後の定期的な確認。

受診する科は、内科、呼吸器内科、循環器内科、耳鼻咽喉科、睡眠を専門とする外来などです。迷う場合は、まずかかりつけの内科で相談するのが現実的で、血圧や血糖の管理と一緒に見てもらえる利点もあります。

費用と保険について

簡易検査もPSGも保険診療で受けられます。自己負担3割の方であれば、簡易検査は数千円程度が目安です。ただし、検査の内容や実施方法、医療機関によって金額は変わりますので、正確な額は受診先でご確認ください。

治療についても、検査結果が基準を満たせばCPAPを保険診療で使えます。なお、CPAPに関する保険上の取り扱いは診療報酬改定にともなって見直されることがあり、2026年度の改定でも変更が行われています。「以前に検査を受けて対象外と言われた」という方も、条件が変わっている可能性がありますので、気になる症状が続いているなら改めて相談する価値があります。最新の適用条件は受診時にご確認ください。

治療はCPAPだけではありません

「CPAPを一生つけることになるのでは」という不安から検査をためらう方がおられます。実際の選択肢は一つではありません。

  • CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)。中等症から重症で標準的に用いられ、眠気やQOLの改善、血圧の低下が報告されています。
  • 口腔内装置(マウスピース)。下顎を前に出して気道を広げるもので、軽症から中等症、CPAPが合わない方に。歯科と連携して作製します。
  • 減量。肥満を伴う場合、体重の減少で重症度が下がることがあります。
  • 体位の工夫。仰向けでのみ悪化するタイプでは、横向きを保つ工夫が有効な場合があります。
  • 耳鼻咽喉科的な治療。アレルギー性鼻炎や扁桃の肥大など明らかな原因があれば、そこへの治療が助けになります。

どれが向いているかは検査結果と体の状態で変わります。「検査を受ける=CPAPが決まる」ではありません。

治療で何が良くなり、何はまだ分かっていないのか

ここは正直に書いておきたいところです。

日中の眠気、集中力、睡眠の質、生活の質については、CPAPによる改善が繰り返し報告されています。血圧についても下がる方向の効果が示されており、眠気の改善は運転や仕事の安全にもつながります。

一方で、「CPAPを使えば心筋梗塞や脳梗塞を予防できる」と言い切れる証拠はまだ揃っていません。中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸で心血管疾患のある方を対象にした大規模なランダム化比較試験(SAVE試験、2016年)では、CPAPを加えても心血管イベントの発生は有意に減りませんでした。ただしこの試験では平均使用時間が一晩3.3時間程度と短く、十分に使えていた方に限れば結果が違う可能性が議論されています。観察研究では、しっかり使えている方で死亡率が低いという報告もあります。

つまり現状は、「症状と生活の質の改善はかなり確かで、長期の心血管予防効果については結論が出ていない」という段階です。過度な期待も、逆に「効果がないらしい」という誤解も、どちらも正確ではありません。

こんな症状があれば、一度ご相談ください

  • 家族や同室の人から、いびきや呼吸が止まっていることを指摘された
  • 十分に寝たつもりなのに、日中に強い眠気がある
  • 運転中や会議中に眠気で困ったことがある
  • 朝起きたときに頭痛がある、口が渇いている
  • 夜中にトイレで何度も起きる
  • 薬を飲んでいるのに血圧が下がりにくい
  • 健診で血糖や脂質の値が改善しない

とくに、眠気で運転に支障が出ている場合は、様子を見る段階ではありません。早めの相談をおすすめします。

この記事の根拠と、その限界

冒頭で紹介した調査は、企業と一般社団法人が実施したインターネット調査で、対象は200人、無作為に選ばれた集団ではありません。したがって日本全体の有病率や受診率を示すものではなく、「未受診の方がどこで止まっているか」を知るための参考データとして読むのが適切です。潜在患者数と治療者数の数字も推計値で、算出の前提によって変わります。

一方で、検査の流れ、治療の選択肢、CPAPの効果と限界についての記述は、これまでに積み重ねられた研究とガイドラインに基づく一般的な説明です。個々の方に何が当てはまるかは、検査結果と体の状態によって変わります。

受診のご案内

いびきや日中の眠気が続いている方、健診で指摘を受けた方は、まず一度ご相談ください。問診で必要性を判断し、適応があれば自宅でできる簡易検査からご案内します。入院の必要はありません。

血圧、血糖、脂質の管理と並行して睡眠の問題を見ていくことで、全体の見通しが良くなることも少なくありません。気になる症状がある方、あるいは以前に「対象外」と言われたことがある方も、お気軽にお尋ねください。

参考サイト

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

TOP