2026年9月16日

CPAPをやめたくなったら読んでください――マスク・乾燥・鼻づまりの見直しで続けられます
睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP(シーパップ)を始めたものの、「マスクが気になって眠れない」「朝起きると口がカラカラ」「気づくと外している」。こうした悩みは決して珍しいものではなく、多くの場合、原因を一つずつ確かめることで解決の糸口が見つかります。この記事では、CPAPを続けるための具体的な工夫と、それでも合わない場合の選択肢、通院先を変えたいときの手順を解説します。
まず知っておきたい「続ける」の目安
CPAPは使っている間だけ気道を広げる治療のため、効果は使用時間に左右されます。重症の睡眠時無呼吸の患者さんを対象とした研究では、使用時間が長いほど日中の眠気や生活機能が正常に戻る人の割合が増えました。眠気の自己評価では1晩4時間、客観的な眠気の検査では6時間、日常生活の機能では7時間半程度まで、使うほど改善が見込めることが示されています[1]。
診療の現場では「1晩4時間以上、全体の7割以上の夜に使う」が一つの目安です。まずはここを目標に、できれば睡眠時間のすべてで使えることを目指します。
悩み別の対処法
マスクから空気が漏れる、顔に跡がつく
原因の多くはマスクのサイズや種類が合っていないことです。空気の漏れを止めようとベルトを締めすぎると、かえってマスクがゆがんで漏れやすくなり、跡や痛みの原因にもなります。CPAPのマスクには、鼻の穴に当てるピロー型、鼻全体を覆う鼻マスク、鼻と口を覆うフルフェイス型があり、それぞれに複数のサイズがあります。顔の骨格が小さい方や女性では、標準サイズでは合わないことも多く、小さいサイズやピロー型に替えるだけで快適になることがあります。
口や鼻が乾く
秋から冬にかけては空気が乾燥し、CPAPで鼻や口が乾く悩みが増えます。CPAPに加温加湿器を付けると、乾燥などの副作用が減ることが研究で示されています[4]。加湿の強さやホースの温度は季節に合わせて調整できます。
口から空気が漏れて乾く場合、フルフェイス型のマスクに替える方法もあります。ただし、複数の研究をまとめた解析では、鼻と口を覆うマスクは鼻マスクに比べて必要な圧が平均1.5cmH2Oほど高く、治療後に残る無呼吸の回数が多く、1晩の使用時間が平均48分短いという結果でした[2]。そのため、まずは鼻マスクのまま、口が開く原因(鼻づまりなど)を解決できないかを検討します。
鼻がつまる
鼻づまりはCPAPが続かない大きな原因の一つです。日本の研究では、鼻の通りにくさ(鼻腔抵抗)が大きい人ほど、CPAPの使用時間が短い傾向がみられました[3]。関連を認めなかった報告もありますが、鼻づまりの自覚がある方では、鼻の治療を並行する価値があります。
アレルギー性鼻炎が原因であれば、点鼻ステロイド薬や抗ヒスタミン薬で鼻の通りを改善できます。スギやダニのアレルギーがはっきりしている場合は、体質そのものに働きかける舌下免疫療法も選択肢です。当院ではアレルギー専門医がCPAP診療と鼻炎の治療を一緒に行っています。
圧が苦しい、息を吐くときにつらい
多くの機器には、寝入りばなは弱い圧から始めて徐々に上げる機能や、息を吐くときだけ圧を少し下げる機能があります。研究全体ではこうした機能で使用時間に大きな差は出ていませんが[4]、「楽になった」と感じる方もいるため、試す価値はあります。圧そのものが体重や寝る姿勢に対して高すぎないかも、機器の記録から確認します。
夜中に無意識に外してしまう
マスクの不快感、空気の漏れ、鼻づまり、圧の違和感など、上に挙げた原因が隠れていることがほとんどです。眠りそのものが浅くなる不眠が重なっている場合もあります。
慣れるまでの工夫として、寝る前にテレビを見たり本を読んだりしながら、起きている状態で10〜20分ほどマスクを着けて過ごす練習が役立ちます。夜中にトイレで起きたときは、戻ったら必ず着け直す習慣をつけましょう。外したことに気づいたら、その時点から着け直すだけでも使用時間は延びます。
始めてから最初の数か月が大切
CPAPをやめてしまう方の多くは、始めてから早い時期に脱落します。慣れない感覚に戸惑うのは当然のことで、最初の数週間から数か月で困りごとを一つずつ解決できるかどうかが、その後長く続けられるかを左右します。「こんなことで相談してよいのか」と遠慮せず、気になることは次の受診を待たずにご連絡ください。
機器の記録からわかること
CPAPの機器には、使用時間、空気の漏れの量、治療中に残っている無呼吸の回数(残存AHI)などが毎晩記録されています。「何時ごろに外しているか」「漏れが多いのはどの時間帯か」を確認すると、原因の見当がつきやすくなります。米国睡眠医学会の診療ガイドラインも、導入初期の問題解決の支援や、機器の遠隔モニタリングを活用した対応を勧めています[5]。つらさを我慢して使わなくなる前に、記録を一緒に確認させてください。
それでも合わないときの選択肢
軽症から中等症の方では、歯科で作るマウスピース(口腔内装置)が選択肢になります。体重が増えて無呼吸が悪化した方では、減量で必要な圧が下がったり、無呼吸そのものが軽くなったりすることがあります。当院では管理栄養士4名による食事指導を行っています。あお向けで悪化するタイプでは、横向きで寝る工夫も有効です。
大切なのは、自己判断で使うのをやめてしまわないことです。治療をやめると、いびきや眠気だけでなく、高血圧などへの影響も元に戻ってしまいます。
通院先を変えたいとき(転院の手順)
「通院先が遠い」「平日の昼間に通えない」「引っ越した」などの理由で転院を希望される方も少なくありません。一般的な流れは次のとおりです。
1. 現在の医療機関に紹介状(診療情報提供書)と、診断時の睡眠検査の結果を依頼します。
2. 当院の受診予約をお取りください。
3. 機器のレンタル会社との手続きは、当院で調整します。レンタル業者が変わる場合は、返却と新しい機器の受け取りの段取りをこちらで調整します。切り替えの間も治療が途切れないよう、タイミングを合わせて手配します。
紹介状がない場合の対応:紹介状がすぐに用意できない場合でも、まずはご相談いただけます。
当院のCPAP診療の特徴
千里丘かがやきクリニックでは、約150名のCPAP患者さんの治療を継続しています。自宅での精密睡眠検査(PSG)を実施しており、圧の見直しや再評価が必要な場合も入院せずに検査を受けられます。アレルギー専門医による鼻炎治療、管理栄養士による減量サポートを組み合わせられるのも特徴です。
平日(月・火・木・金)は19時まで、土曜は12時30分まで、日曜は予約制で月2回診療しており、月1回の通院を仕事と両立しやすい体制です。吹田市、摂津市、茨木市からも多くの方が通院されています。
よくあるご質問
Q. 費用はどのくらいかかりますか。
A. 月1回の受診で、3割負担の場合、おおむね月4,500〜5,000円程度が一般的です。
Q. マスクだけ替えることはできますか。
A. 可能です。まずは今のマスクで困っている点をお聞かせください。
Q. 風邪で鼻がつまって使えないときは。
A. 1〜2晩休むのはやむを得ません。鼻づまりが続く場合は、一時的にフルフェイス型へ替える、鼻の治療を行うなどの対応ができますので、数日以上使えない状態が続くときはご相談ください。
Q. 旅行や出張のときはどうすればよいですか。
A. 機器は持ち運べるため、旅行先でも使用をお勧めします。海外では電源の形状や電圧を事前にご確認ください。
関連ページ
・睡眠時無呼吸症候群:https://kagayaki-cl.jp/disease/sleep-apnea-syndrome/
・CPAP転院をご希望の方へ:https://kagayaki-cl.jp/disease/cpap-transfer/
・睡眠時無呼吸症候群専門外来サイト:https://kagayaki-clinic.netlify.app/
参考文献
- Relationship between hours of CPAP use and achieving normal levels of sleepiness and daily functioning 著者:Weaver TE, Maislin G, Dinges DF, Bloxham T, George CF, Greenberg H, Kader G, Mahowald M, Younger J, Pack AI 掲載誌:Sleep. 2007;30(6):711-719 発行:2007年6月 DOI:10.1093/sleep/30.6.711 要約:重症睡眠時無呼吸の患者149人で、CPAP使用時間と改善の関係を解析した多施設研究。眠気の自己評価は約4時間、客観的な眠気検査は約6時間、生活機能は約7.5時間までは、使用時間が長いほど正常化する人の割合が増えた。
- Nasal vs Oronasal CPAP for OSA Treatment: A Meta-Analysis 著者:Andrade RGS, Viana FM, Nascimento JA, Drager LF, Moffa A, Brunoni AR, Genta PR, Lorenzi-Filho G 掲載誌:Chest. 2018;153(3):665-674 発行:2018年3月 DOI:10.1016/j.chest.2017.10.044 要約:13試験・4,563人のメタ解析。鼻と口を覆うマスクは鼻マスクに比べ、必要なCPAP圧が平均1.5cmH2O高く、残存AHIが平均2.8回/時多く、使用時間が1晩平均48分短かった。
- The relationship between adherence to continuous positive airway pressure and nasal resistance measured by rhinomanometry in patients with obstructive sleep apnea syndrome 著者:Fujito N, Ohshima Y, Hokari S, Takahashi A, Nagai A, Suzuki R, Aoki N, Watanabe S, Koya T, Kikuchi T 掲載誌:PLoS One. 2023;18(3):e0283070 発行:2023年3月 DOI:10.1371/journal.pone.0283070 要約:新潟大学でCPAPを導入した睡眠時無呼吸患者260人を対象に、鼻腔通気度検査とCPAP使用状況の関係を調べた研究。鼻腔抵抗が大きいほどCPAPの使用状況が悪い傾向(弱い負の相関)が認められた。
- Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea With Positive Airway Pressure: An American Academy of Sleep Medicine Systematic Review, Meta-Analysis, and GRADE Assessment 著者:Patil SP, Ayappa IA, Caples SM, Kimoff RJ, Patel SR, Harrod CG 掲載誌:J Clin Sleep Med. 2019;15(2):301-334 発行:2019年2月 DOI:10.5664/jcsm.7638 要約:米国睡眠医学会によるCPAP治療の系統的レビュー。鼻マスクは鼻口マスクより使用状況が良く、加温加湿は一部の副作用を減らし、呼気圧軽減などの圧設定の工夫は通常のCPAPと臨床的に意味のある差を示さなかった。
- Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea with Positive Airway Pressure: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline 著者:Patil SP, Ayappa IA, Caples SM, Kimoff RJ, Patel SR, Harrod CG 掲載誌:J Clin Sleep Med. 2019;15(2):335-343 発行:2019年2月 DOI:10.5664/jcsm.7640 要約:米国睡眠医学会の成人睡眠時無呼吸に対するCPAP治療の診療ガイドライン。導入初期に教育的・行動的な支援や問題解決の介入を行うこと、遠隔モニタリングを活用した対応を行うことを条件付きで推奨している。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介