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漢方薬でダイエット 体質に合わせた漢方治療

漢方薬でダイエット 体質に合わせた漢方治療
現在、保険で肥満に適応がある漢方薬は、「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」、「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」、「大柴胡湯(だいさいことう)」の3つがあります。これらの肥満に使う漢方薬は、当然、個々の体質に合わせて使い分ける必要があります。
 
防風通聖散について
防風通聖散は、腹部の脂肪を減らす効能をうたった市販の漢方製剤が多くの製薬会社から発売されています。「ナイシトール」や「コッコアポ」などが有名で、広告で目にしたことがある方もいらっしゃると思います。医療用漢方エキス製剤の効能効果は「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘」とあり、患者さんばかりでなく、漢方の知識ない医師や看護師でも、この防風通聖散は痩せる効果のある漢方薬であるとの認識があります。
防風通聖散が合う人の特徴は、胃腸が丈夫で食欲があり、赤ら顔で便秘気味、顔に吹き出物がありのぼせやすい人です。冷え症で下利気味の女性が服用すると、冷えがひどくなり下痢をして、体調を崩すためお勧めできません。
いくつかの研究で[1, 2]、防風通聖散は内臓脂肪・皮下脂肪ともに減少させ、とくに内臓脂肪を減少させる効果が強いとの報告があります。注意する必要があるのは、これらの研究は、食事療法、運動療法を組み合わせており、防風通聖散を単独で内服しただけの効果ではないということです。
広告では劇的に効いて短期間で痩せるイメージを持つと思いますが、そんな夢のような痩せる効果はありません。ダイエット外来を受診される患者さんのなかには、ナイシトールを飲んでみたものの、思ったほどの効果を感じないという方もいらっしゃいますが、実は、上記のからくりがあった訳です。
防風通聖散は、手軽に薬局で手に入る漢方薬ですが、薬である以上、副作用が出る場合があり注意が必要です。防風通聖散に含まれる生薬、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、山梔子(サンシシ)、連翹(レンギョウ)、薄荷(ハッカ)、生姜(ショウキョウ)、荊芥(ケイガイ)、防風(ボウフウ)、麻黄(マオウ)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、白朮(ビャクジュツ)、桔梗(キキョウ)、黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)、滑石(カッセキ))のうち、副作用に気を付けなければならない生薬が2つあります。
一つ目は、「大黄」です。大黄は、下剤として有名な成分で、もともと下痢しやすい体質の方が防風通聖散を飲むと、お腹をくだしてしまいます。
二つ目は、「黄芩」です。生薬の中で、比較的副作用が報告が多い生薬です。黄芩アレルギーを持っている方は、肝機能障害を起こします。黄芩を含む漢方薬を処方するときは、必ず、定期的に血液検査で肝機能をチェックしています。黄芩に対するアレルギーをお持ちの方は、内服開始後ほぼ1ヶ月以内に肝機能異常が現れます。この副作用の原因は遺伝的な素因があるので、必ずしも全員に起きるわけではなく、副作用が報告が多い生薬とはいえ、1年間で一人いるかいないかで、滅多にお目にかかりません。公立病院に勤める先輩の消化器専門医に聞いたところ、肝機能異常を主訴に受診される患者さんのなかに、防風通聖散が原因の症例も経験があるとのことでした。薬局で購入されている方で、会社の健診を受けていない場合は、一度肝機能をチェックすることをお勧めします。
 
防已黄耆湯について
防已黄耆湯も市販薬として数社から販売されており、薬局で容易に入手できる漢方薬です。医療用漢方エキス製剤の効能効果は、「色白で筋肉軟らかく水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するものの次の諸症: 腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、陰嚢水腫、肥満症、関節炎、癰、、 筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順」とあります。いわゆる水ぶとりと表現する、色白でぽっちゃり、むくみやすい人に使用します。女性に使うことがほとんどです。防已黄耆湯を服用すると、痩せるだけではなく、むくみが改善し、皮膚の傷が治りやすくなったと感じる方もいらっしゃいます。
むくみやすい人に防已黄耆湯を使用すると書きましたが、内臓脂肪を減らすという報告もあります。運動療法ができない内臓肥満型糖尿病患者さんに対して防已黄耆湯を投与したところ、内臓脂肪面積と血清コレステロール値の改善効果が認められたと、大阪医科大学の吉田麻美先生らが報告されています。考察には、防已黄耆湯は内臓脂肪型肥満さらに動脈硬化予防に対し有用である可能性が示唆された、との記述がありました。
最後に、副作用についてですが、防已黄耆湯には、防已(ボウイ)、黄耆(オウギ)、蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)が含まれています。中には、甘草を服用すると、血圧が上がる方がいらっしゃいます。最近の研究で、名古屋市立大学大学院薬学研究科の牧野利明教授らが、遺伝的な素因と、甘草に含まれる原因物質の特定に成功しました。[4, 5]
 
大柴胡湯について
大柴胡湯も市販薬として数社から販売されており、薬局で容易に入手できる漢方薬です。医療用漢方エキス製剤の効能効果は、「比較的体力のある人で、便秘がちで、上腹部が張って苦しく、耳鳴り、肩こりなど伴うものの次の諸症: 胆石症、胆のう炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、 糖尿病、ノイローゼ、不眠症」とあります。大柴胡湯が合う人の特徴は、がっちり筋肉質でストレスが多く、便秘気味の人です。
大柴胡湯を肥満の治療目的でのみ使うことは、ほとんどありません。ストレスがたまっている人によく使用します。大柴胡湯が、降圧効果と減量効果があるという報告が1件あるだけです。現在、韓国で脂肪肝を合併する肥満患者に対する大柴胡湯の有用性の研究が行われています。[7]
大柴胡湯の副作用は、防風通聖散と全く同じです。大柴胡湯には、柴胡(サイコ)、半夏(ハンゲ)、生姜(ショウキョウ)、黄芩(オウゴン)、芍薬(シャクヤク)、大棗(タイソウ)、枳実(キジツ)、大黄(ダイオウ)が含まれていますので、大黄と黄芩の副作用に注意して下さい。
 
まとめ 体質別おすすめ漢方薬
防風通聖散:胃腸が丈夫で食欲があり、赤ら顔で便秘気味、顔に吹き出物がありのぼせやすい人
防已黄耆湯:色白でぽっちゃり、むくみやすい人
大柴胡湯:がっちり筋肉質でストレスが多く、便秘気味の人
 
最後に
医師や栄養士の指導の下、正しい栄養療法・運動療法を受けながら適切な漢方薬を併用すれば、減量効果が得られると思います。当院では、漢方治療だけでなく、管理栄養士による栄養指導を行い、無理なく効果的なダイエット外来を行っています。自己流でなかなか痩せない方は、当院のダイエット外来を受診することをお勧めします。
 
(引用文献)

[1] 防風通聖散の肥満患者に対する効果と, アディポネクチン, レプチン, 高感度CRPに与える影響について, 岩崎 誠ほか. 肥満研究 13(2); 137-142, 2007

[2] エビデンスによる漢方の再構築: メタボリックシンドロームに対する防風通聖散の有効性の検討
日置 智津子, 荒井 勝彦, 高士 将典, 新井 信, 医療薬学, 2008年 34 巻 6 号 513-521
[3] 内臓肥満型糖尿病患者に対する防已黄耆湯の効果, 吉田 麻美, 高松 順太, 吉田 滋, 北岡 治子, 増井 義一, 大澤 仲昭, 1998 年 49 巻 2 号 p. 249-256
[4] 漢方薬による副作用の原因物質を発見 〜副作用発症の予防、早期発見に有用〜
[5] 18β-glycyrrhetyl-3-O-sulfate would be a causative agent of licorice-induced pseudoaldosteronism.
, Kan’ichiro Ishiuchi, Osamu Morinaga, Takeshi Ohkita, Chuanting Tian, Asuka Hirasawa, Miaki Mitamura, Yasuhito Maki, Tsubasa Kondo, Tomoya Yasujima, Hiroaki Yuasa, Kiyoshi Minamizawa, Takao Namiki & Toshiaki Makino, Scientific Reports volume 9, Article number: 1587 , 2019.
[6] The comparison of the effect of two Chinese herbal medicines(Bofu-tsusho-san and Dai-saiko-to) on metabolic disorders in obstructive sleep apnea patients.Kimihiko Murase , Yoshiro Toyama , Yuka Harada , Tsuneto Akashiba , Koichiro Tatsumi , Yuichi Inoue , Makoto Satoh , Shigeru Sakurai , HIroki Sakakibara , Toshiaki Shiomi , Hiroshi Kimura, American Thoracic Society 2013 International Conference.
[7] Effect of Daesiho-tang(大柴胡湯) on obesity with non-alcoholic fatty liver disease: a study protocol for a randomised, double-blind, placebo-controlled pilot trial. Han K, Kwon O, Park HJ, Jung SY, Yang C, Son CG. Trials. 2020 Jan 31;21(1):128.
 
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千里丘かがやきクリニック
院長 有光 潤介