フコイダンのがん治療について

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フコイダンのがん治療について

フコイダンとは

フコイダンのがん治療について

 

フコイダンとは

フコイダンを含む海藻は、薬用や治療用に利用されてきた豊かな歴史があります。最も古い記録は、チリのモンテ・ベルデで発掘されたもので、考古学的な発掘調査により、紀元前12000年頃まで海藻が使用されていた証拠が見つかっています。17世紀には、イギリスの植物学者ジョン・ジェラードが、様々な病気の治療に海藻が使用されていることに注目しました。

フコイダンそのものが単離されたのは、1900年代初頭です。

 

フコイダンはモズク・コンブ・ワカメ・メカブなどの海藻に含まれるぬめり成分の一つで、水溶性食物繊維の一種です。1913年にスウェーデンのウプサラ大学のH・キリン教授(Harald Kylin)によって発見されました。当時は「フコイジン」と命名されていましたが、その後、国際糖質命名規約によって「フコイダン」と呼ばれるようになりました。

 

「フコイダン」は、化学的には、フコースを主成分とする硫酸化多糖類で、抗ウイルス、抗細菌、抗凝固、抗腫瘍などの生物活性を持っています。メジャーな部分構造は解明されていますが、マイナーな構造の正確な構造決定は現実的に不可能。そのため粗抽出物として利用されています。フコイダンは低分子の方がより効果があると考えられています。 

フコイダン(がん治療に関わる)3大作用

 

アポトーシス誘導作用

がん細胞だけに特異的に作用し、アポトーシスへと導く作用があります。

アポトーシスとは、アポトーシス(apoptosis)とは、細胞の自然死のことを指します。

アポトーシスとは、個体をよりよい状態に保つために引き起こされる、傷ついた細胞の自殺を誘導する現象、つまりプログラムされた細胞死のことです。

本来は正常ではないがん細胞は、免疫システムによりアポトーシスを誘導されるはずですが、様々な方法でアポトーシスを回避する能力を獲得しており、多くの細胞が死に至る環境下でも生き続けることができます。がんの治療に用いられる多くの抗がん剤は、がん細胞のDNAを傷つけてアポトーシスを起こさせます。しかし、様々なアポトーシス回避能力を備えるがん細胞の全てをアポトーシスへ導くことは難しく、治療抵抗性の一因となっていました。

フコイダンは、抗がん剤の効果が落ちた癌のアポトーシスを誘導することが基礎研究で分かっています。

 

血管新生抑制作用

がん細胞は短時間に無秩序にどんどん大きくなり、また、別の部位に移動(転移)したりします。がん細胞が急激に大きくなるには、酸素や栄養が必要になります。そのため、がん細胞は自分が増えやすい環境を作るために、酸素と栄養の供給路となる血管の増殖(血管新生)を盛んに行います。

がん細胞は血流が豊富であり、エネルギーである糖を大量に消費すします。

がんの転移を調べるPET-CTでは、体の細胞の糖代謝の異常を調べています。がん細胞は活発に糖を取り込んでいるため、がん細胞のある部位が画像に写るわけです。また、造影剤を使用してCTを行うのは、血流が豊富であるがん細胞と正常な細胞との違いを見つけるためです。

血管新生を抑制できれば、がん細胞は新しい血管を作ることができず増えることができません。フコイダンは、基礎研究ではありますが、この血管新生を抑える効果が報告されています。

 

フコイダンは、腫瘍に対する免疫系を活性化

免疫細胞のひとつであるマクロファージは、外敵の侵入を警戒するパトロール隊長のような存在です。フコイダンのような多糖類を体に取りこむと、隊長が持っている「アンテナ」を刺激します。アンテナとは、専門的にいうと、糖の基本構造を認識するTLR4(トールライク・レセプター4)というレセプター(受容体)です。TLR4を刺激されたマクロファージは外敵を攻撃するための物質を分泌します。これは抗腫瘍サイトカインともよばれるIL-12という物質です。IL-12は免疫細胞を活性化するよう働きかけ、インターフェロンγといった、がん細胞を攻撃するタンパク質を分泌させることができます。

つまり、フコイダンは、他の免疫細胞に「外敵を攻撃せよ」という指令を出して免疫を活性化させるのです。

  

参考文献

In vitro anticancer potential of laminarin and fucoidan from Brown seaweeds.

Sci Rep. 2023 Sep 2;13(1):14452. doi: 10.1038/s41598-023-41327-7.

 

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Fucoidan extract induces apoptosis in MCF-7 cells via a mechanism involving the ROS-dependent JNK activation and mitochondria-mediated pathways.

PLoS One 2011;6(11):e27441. doi: 10.1371/journal.pone.0027441.

Zhongyuan Zhang 1, Kiichiro Teruya, Hiroshi Eto, Sanetaka Shirahata

 

Fucoidan present in brown algae induces apoptosis of human colon cancer cells.

BMC Gastroenterol. 2010 Aug 22:10:96. doi: 10.1186/1471-230X-10-96.

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Enzyme-digested Fucoidan Extracts Derived from Seaweed Mozuku of Cladosiphon novae-caledoniae kylin Inhibit Invasion and Angiogenesis of Tumor Cells.

Cytotechnology. 2005 Jan;47(1-3):117-26. doi: 10.1007/s10616-005-3761-8.

 

The role of NK cells in antitumor activity of dietary fucoidan from Undaria pinnatifida sporophylls (Mekabu).

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Hiroko Maruyama 1, Hidekazu Tamauchi, Mariko Iizuka, Takahisa Nakano

 

Antitumor activity and immune response of Mekabu fucoidan extracted from Sporophyll of Undaria pinnatifida.

In Vivo. 2003 May-Jun;17(3):245-9.

Hiroko Maruyama 1, Hidekazu Tamauchi, Minoru Hashimoto, Takahisa Nakano