千里丘かがやきクリニック 産後うつの治療について 漢方

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千里丘かがやきクリニック 産後うつの治療について 漢方

産後うつの治療について

産後うつ病の治療について

日本産科婦人科学会の報告によると[1]、産後にうつ病になる女性は約10%と言われています。症状としては、気分の落ち込みや楽しみの喪失、自責感や自己評価の低下などがあります。そして産後3か月以内に発症することが多い、とのことです。
産後うつ病の疑いで漢方外来を受診される患者さんが多いのですが、まず初診の際に貧血の検査結果をお持ちでない方は、貧血の血液検査お願いしています。
漢方外来の初診時には、かならず赤血球数や血色素(ヘモグロビン)などの検査値項目をチェックします。これらの値が正常値ギリギリの方は、貯蔵鉄(フェリチン)が不足しています。フェリチンは貧血の状態を評価する際に大切な項目です。ヘモグロビンは、すぐに使える財布のお金、フェリチンは、必要に応じて引き出す銀行の預貯金に例えるとわかりやすいと思います。
会社の一般的な健診では、フェリチンの項目は入っていません。病院で検査を受けるか、健診のオプションで選択可能な場合は、ぜひ選んで下さい。鉄は、ヒトの生命維持活動に関わる、大変重要なミネラルです。難しい話になりますが、細胞の中のミトコンドリアでエネルギーを作る際に重要な働きをするのが、鉄とマグネシウム、そしてビタミンB群です。出産の際には、大量の鉄が必要となるため、妊娠中に鉄剤を処方された経験をお持ちの方も多いと思います。出産で貯蔵鉄を使い果たし、体調崩している女性が多いのではないでしょうか。
産後うつ病で心療内科を受診することに抵抗があり、漢方外来を受診される方が多くいらっしゃいます。産後の体調不良に対して、もちろん漢方薬も処方するのですが、貧血の治療を行うだけで体調がよくなることもあります。産後に体調がすぐれない方は、まず貧血の検査をお勧めします。
また、産後に生理が戻った場合、もともと貯蔵鉄の少ない女性は、生理の度に貯金を使い果たし体調を崩します。漢方薬を投与することもありますが、優先すべき治療は貧血です。
栄養指導を極的に行っておられる精神科医藤川徳美先生が著書[2]で述べられていますが、フェリチンの値が100ng/mL程度まで改善すると、うつ病の症状が改善する方が多いようです。
当院では、産後うつ病が疑われる女性に対しては、積極的に栄養指導を行います。妻の食事を見ていて思うのですが、あまり肉を食べていません。鉄が多く含まれる食べ物は、牛肉ですが値段が高いのが難点です。鉄の含有量が多い野菜として、ホウレンソウが有名ですが、実は野菜に含まれる鉄は、非ヘム鉄といって吸収効率(数パーセントしか吸収されない)の悪い鉄です。一日に必要な鉄をホウレンソウで摂取するには、なんとバケツ4杯分食べる必要があります。現実的には不可能な量です。
私が貧血の治療に使用する医療用の鉄剤は、徐放鉄フェルム100mgです。古い鉄剤であるフェロミア(クエン酸第一鉄ナトリウム)は、胃もたれや便秘などの消化管障害が多い薬剤です。徐放鉄(ゆっくり溶け出す)のフェルムは、フェロミアよりは副作用が出にくいのですが、徐放鉄でも副作用が出る方もいらっしゃいます。その場合は、市販のサプリメントフェロケル鉄をお勧めしています。フェロケル鉄は、小腸から吸収されフェリチンが上昇しやすく、胃もたれが少ないため、医師の管理下において、適切な量を内服すると、うまく貧血の治療ができます。注意して頂きたいのは、フェロケル鉄は、フェリチンが上昇しやすいため、過剰摂取になることがあります。かならず、定期的な血液検査を受けて、過剰摂取にならないように気を付けて下さい。
 
産後うつ病の漢方治療について
産後のうつ病には、きゅう帰調血飲(構成生薬 当帰・川きゅう・熟地黄・白朮・茯苓・陳皮・烏薬・香附子・牡丹皮・益母草・大棗・乾姜・甘草)がよく処方されます。しかし、貧血をきちんと治療しないと体調はよくなりません。また、胃腸が弱い女性は、きゅう帰調血飲に含まれる、当帰や地黄で胃もたれします。また、胃腸が弱い女性は、きゅう帰調血飲に含まれる、当帰や地黄で胃もたれします。胃腸が弱っている場合は、香蘇散(香附子・乾生姜・陳皮・蘇葉・甘草)や桂枝湯(桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草)など胃に優しい漢方薬で、全身の木の流れを整えます。
 
産後のいらいらの漢方薬
どんなにかわいい我が子でも、夜中に何回も起こされたり、泣き止まなかったりすると、イライラすることもあると思います。そんなときに使う漢方薬が、抑肝散(加陳皮半夏)です。もともと、抑肝散は、小児の夜泣きやヒステリー、歯ぎしりなどに使う漢方薬です。親子が互いの存在をストレスに感じている場合、母子同服といって、親子同時に抑肝散(加陳皮半夏)を内服する治療があります。子育てでイライラした際には、抑肝散(加陳皮半夏)を頓服で使用してみましょう。
まとめ
産後うつ病
心療内科を受診する前に、血液検査でフェリチン(貯蔵鉄)をチェック
フェリチンが低い場、100g/mLを目標に鉄剤を内服。
漢方薬による治療、きゅう帰調血飲が第一選択薬
子育てのイライラには、抑肝散(加陳皮半夏)がお勧め
[1] 日本産科婦人科学会 産後うつ病について
https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei200311/
[2] うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書) 藤川徳美 著
 
 
大阪府吹田市長野東19-6
千里丘かがやきクリニック
院長 有光 潤介