エビデンスに基づくSAS(睡眠時無呼吸症候群)の包括的アプローチ〜器械・外科・薬物療法のすべて〜|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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エビデンスに基づくSAS(睡眠時無呼吸症候群)の包括的アプローチ〜器械・外科・薬物療法のすべて〜

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2026年5月29日

エビデンスに基づくSAS(睡眠時無呼吸症候群)の包括的アプローチ〜器械・外科・薬物療法のすべて〜

睡眠時無呼吸症候群の治療について

日本国内において、睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対して保険適応のある、あるいは臨床的に確立されている治療アプローチおよび薬物療法は以下の通りです。

病態の本質である上気道の閉塞(OSAS)または呼吸中枢の機能低下(CSAS)を根治する薬剤は存在しないため、薬物療法は「適切な換気療法を行っても残存する日中の過度の傾眠」に対する対症療法に限定されます。

器械的・物理的療法

現在、国内のガイドラインにおいて中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の第一選択とされる治療法です。

CPAP療法(経鼻持続陽圧呼吸療法)

適応基準: 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)でAHI(無呼吸低呼吸指数)が15以上、かつ日中の傾眠などの症状がある場合(簡易検査の場合はAHI 20以上)。OSASの標準的治療。

口腔内装置(OA:オーラルアプライアンス / マウスピース)

適応基準: 主に軽症から中等症のOSAS。またはCPAP不耐性の症例。下顎を前方へ固定し、舌根沈下を防ぐことで気道を確保する。

ASV療法(適応制御型サーボベンチレータ)

適応基準: 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)、チェイン・ストークス呼吸(CSR)を伴う心不全、またはCPAP導入後に顕在化する複雑性睡眠時無呼吸症候群。バックアップ換気回数や圧支持を自動制御する。

外科的療法

解剖学的な閉塞機序が明確で、器械的療法が困難な症例や若年者が適応となります。

口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)

適応: 口蓋扁桃肥大や軟口蓋の冗長による上気道狭窄が認められるOSAS。

扁桃摘出術・アデノイド切除術

適応: 小児OSASの第一選択。成人の場合も著明な扁桃肥大(II度以上)を伴う場合に適応。

舌下神経電気刺激療法(HNS:Inspireシステム)

適応基準:

  • 18歳以上の重症OSAS(AHI 20〜65)。
  • CPAP不耐性またはアドヒアランス不良。
  • BMI 30  未満。
  • 吸気時に舌下神経を刺激して舌を前方へ突出させ、気道を確保する植込み型デバイス。
  • 薬物睡眠下内視鏡検査(DISE)で同心円状の軟口蓋虚脱がないこと。

薬物療法(保険適応薬)

国内で「閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の傾眠」に対して適応を持つ薬剤は、現在2剤(いずれも精神刺激薬・覚醒促進薬)のみです。これらはCPAP等の適切な経気道陽圧呼吸療法を施行しているにもかかわらず、日中の過度の傾眠(EDS)が残存する場合にのみ、補助的に処方されます。

一般名(商品名) 適応症 薬理機序・特徴
アセタゾラミド(ダイアモックス) 睡眠時無呼吸症候群
炭酸脱水酵素阻害により尿中への重炭酸イオン排泄を促進し、軽度の代謝性アシドーシスを誘発する。これにより呼吸中枢が刺激され換気量が増加する。主に中枢性睡眠時無呼吸(CSAS)に用いられる。
モダフィニル(モディオダール) 閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の傾眠 ドパミントランスポーター(DAT)阻害による覚醒促進作用。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の傾眠(持続陽圧呼吸療法等による適切な治療を行っているにもかかわらず傾眠が残存する場合)。処方には登録医・登録医療機関の要件あり。
ソルリアムフェトール塩酸塩(スノージ) 閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の傾眠 ドパミンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用(DNRI)。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の傾眠。2023年承認、2024年発売。モダフィニル同様、CPAP等の適切な治療が前提。

 

【注意・補足】

  • 中枢性睡眠時無呼吸(CSAS)に対する薬剤: 国内においてCSASの呼吸中枢刺激を目的とした適応を持つ薬剤はありません。臨床現場ではアセタゾラミド(ダイアモックス)が代謝性アシドーシスを誘導して換気ドライブを高める目的でオフレーベル(適応外)使用されることがありますが、保険適応外です。
  • 睡眠薬の禁忌: ベンゾジアゼピン系および非ベンゾジアゼピン系(Z-drug)睡眠薬は、上気道拡張筋の緊張低下および呼吸中枢抑制作用があるため、OSAS患者に対しては原則禁忌または慎重投与(病態悪化のリスク)となります。

 

主要な診療ガイドライン・関連学会サイト

国内における睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断・治療シークエンスおよび適応基準は、主に以下のガイドラインに基づいています。

『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』

発行・監修: 日本呼吸器学会 / 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班

概要: AHIの基準(CPAPの保険適応基準など)、各種デバイス(OAなど)の位置づけ、重症度分類における国内の標準的指針です。

一般社団法人 日本睡眠学会(JSSR)

公式ウェブサイト: https://jssr.jp/

概要: 内科、精神科、歯科など多診療科にまたがるSASの最新知見や、CPAPアドヒアランス低下時の対応、残存傾眠に対する薬物療法の適正使用指針等の発信元です。

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

概要: 外科的治療(UPPPや扁桃摘出術)の適応評価、および「舌下神経電気刺激療法(Inspireシステム)」の導入要件である薬物睡眠下内視鏡検査(DISE)の実施指針に関するリソースです。

医薬品添付文書(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:PMDA)

各薬剤の「効能・効果」および承認条件、処方制限の根拠となる公的な製品情報です。

ダイアモックス錠250mg / ダイアモックス注射用500mg(アセタゾラミド)

効能・効果: 「睡眠時無呼吸症候群」の適応を明記。
確認事項: 炭酸脱水酵素阻害による代謝性アシドーシス誘導、および呼吸中枢刺激作用。

モディオダール錠100mg(モダフィニル)

効能・効果: 「閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の傾眠(持続陽圧呼吸療法等による適切な治療を行っているにもかかわらず傾眠が残存する場合)」
確認事項: 処方・調剤にあたり、製造販売承認条件に基づいた「モディオダール適正使用管理委員会」への登録医・登録医療機関・登録薬局の要件。

スノージ錠75mg / 150mg(ソルリアムフェトール塩酸塩)

効能・効果: 「閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の傾眠」
確認事項: ドパミン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(DNRI)としての承認情報(2023年承認、2024年発売)。モダフィニル同様、標準治療(CPAP等)の継続が前提。

保険診療・医療機器関連情報

器械的療法や植込み型デバイスの診療報酬上の算定要件、および承認状況の確認先です。

厚生労働省:令和6年度(2024年度)診療報酬改定関連通知

概要: 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料(C107-2)の算定要件、および簡易型・維持型機器のAHI要件の法的根拠。

高度管理医療機器 承認情報(Inspire 舌下神経電気刺激システム)

概要: 重症閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)を対象とした植込み型デバイスの製造販売承認条件、および施設基準(日本睡眠学会専門医・日本耳鼻咽喉科学会専門医の連携要件など)。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介

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