2025年10月31日
鉄分は、私たちの体にとって不可欠なミネラルの一つで、特に血液中のヘモグロビンの主成分として、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
鉄分が不足すると、貧血によるめまいや立ちくらみ、倦怠感など、様々な不調を引き起こす可能性があります。
1日に体内で失われる鉄の量
成人の場合、特に目立った出血などがなくても、1日に約1mgの鉄が体内で消費・排出されています。
これは男女で共通する基本的な喪失量です。
鉄が失われる主な要因
体内の鉄は、特殊な排出の仕組みがあるわけではなく、主に以下の要因で自然に失われていきます。
皮膚や粘膜のターンオーバー: 古くなった皮膚の細胞、消化管の粘膜などが剥がれ落ちる際に、そこに含まれていた鉄も一緒に失われます。
汗や尿、便: ごく微量ですが、汗や尿、便からも鉄は排出されます。
髪の毛や爪: 髪の毛が抜けたり、爪を切ったりすることでも鉄は失われます。
女性はより多くの鉄を失いやすい
女性の場合、上記の基本的な喪失量に加えて、月経による出血でさらに多くの鉄が失われます。
月経による追加の喪失量: 1日あたり約0.5mg〜0.8mgの鉄が追加で失われると言われています。
鉄の再利用システム
体は鉄を非常に効率的に再利用する仕組みを持っています。例えば、寿命を終えた赤血球が分解される際、そこに含まれていた鉄のほとんどは回収され、新しい赤血球を作るために再利用されます。
このように、体は鉄をなるべく失わないようにしていますが、それでも毎日一定量は失われるため、食事から継続的に摂取することが健康維持のために不可欠です。
日々の食事から意識的に鉄分を摂取することが、健康維持の鍵となります。
ここでは、食品に含まれる鉄分の具体的な含有量や、効率的な摂取方法について詳しく解説します。
一日に必要な鉄の量
一日に必要な鉄の量は、年齢や性別、女性の場合は月経の有無などによって異なります。厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日あたりの推奨量は以下の通りです。
1日あたりの鉄の推奨摂取量 (mg)
|
年齢 |
男性の推奨量 |
女性(月経なし)の推奨量 |
女性(月経あり)の推奨量 |
|---|---|---|---|
|
18~29歳 |
7.5 mg |
6.5 mg |
10.5 mg |
|
30~49歳 |
7.5 mg |
6.5 mg |
10.5 mg |
|
50~64歳 |
7.5 mg |
6.5 mg |
11.0 mg |
|
65~74歳 |
7.5 mg |
6.0 mg |
– |
|
75歳以上 |
7.0 mg |
6.0 mg |
– |
特に女性は注意が必要
女性は月経により鉄が失われるため、月経のある女性は多くの鉄を摂る必要があります。また、妊娠中や授乳中の方はさらに多くの鉄が必要となります。
妊娠初期・授乳期: 通常の推奨量に加えて +2.5mg
妊娠中期・後期: 通常の推奨量に加えて +9.5mg
鉄の摂取状況
実際には、多くの日本人、特に月経のある女性は鉄の摂取量が推奨量を下回っているのが現状です。
例えば、20代の女性の平均摂取量は1日あたり6.2mgと、推奨されている10.5mgに比べて不足しています。
摂取量の上限について
しかし、貧血の治療を行う場合は、さらに多い量を摂取する必要があるため、必ず医師の指示に従って内服してください。
鉄分の種類と吸収率の違い
食品に含まれる鉄分には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
|
種類 |
特徴 |
多く含まれる食品 |
吸収率 |
|---|---|---|---|
|
ヘム鉄 |
動物性食品に含まれる |
レバー、赤身肉、魚介類など |
15~25% |
|
非ヘム鉄 |
植物性食品に含まれる |
野菜、豆類、海藻類など |
2~5% |

鉄分を多く含む食品ランキング
以下に、可食部100gあたりの鉄分含有量が多い食品を、動物性食品と植物性食品に分けてご紹介します。
※出典:文部科学省「食品成分データベース」
動物性食品(ヘム鉄)
|
順位 |
食品名 |
含有量(mg) |
|---|---|---|
|
1位 |
あさりの缶詰(水煮) |
30 |
|
2位 |
豚スモークレバー |
20 |
|
3位 |
かたくちいわし(煮干し) |
18 |
|
4位 |
しじみ(水煮) |
15 |
|
5位 |
はぜのつくだ煮 |
12 |
|
6位 |
豚レバーペースト |
7.7 |
|
7位 |
牛ビーフジャーキー |
6.4 |
|
8位 |
和牛肉(もも/皮下脂肪なし/焼き) |
3.8 |
ポイント: レバー類は突出して鉄分が豊富ですが、苦手な方も多いかもしれません。
その場合は、あさりやしじみなどの貝類、煮干しなどを活用するのも良いでしょう。
赤身の肉や魚も日々の食事に取り入れやすい食材です。

植物性食品(非ヘム鉄)
|
順位 |
食品名 |
含有量(mg) |
|---|---|---|
|
1位 |
あおのり(素干し) |
77 |
|
2位 |
岩のり(素干し) |
48 |
|
3位 |
きくらげ(乾燥) |
35.2 |
|
4位 |
純ココア |
14 |
|
5位 |
焼きのり |
11 |
|
6位 |
大豆(国産/乾) |
9.4 |
|
7位 |
パセリ(生) |
7.5 |
|
8位 |
小松菜(生) |
2.8 |
ポイント: 海藻類や乾物は水分が少ない分、100gあたりの含有量が高くなりますが、一度に大量に食べるのは難しいかもしれません。
小松菜やほうれん草などの青菜類、豆腐や納豆などの大豆製品は、日常的に摂取しやすいでしょう。
鉄分の吸収率を高める食べ合わせ
前述の通り、特に非ヘム鉄は吸収率が低いですが、食べ合わせを工夫することで効率的に摂取できます。
ビタミンCと一緒に摂る
赤ピーマン、ブロッコリー、柑橘類など
例:小松菜と赤ピーマンの炒め物
動物性たんぱく質と一緒に摂る
肉、魚、卵など
例:ほうれん草と卵のソテー
鉄分は毎日少しずつでも継続して摂取することが大切です。バランスの良い食事を心がけ、様々な食品から鉄分を補給しましょう。