EDの治療を漢方で治療を行うには?|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

〒565-0816大阪府吹田市長野東19-6

06-6878-3303

WEB予約
内観

EDの治療を漢方で治療を行うには?

EDの治療を漢方で治療を行うには?|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2025年11月29日

ED(勃起不全)に対する漢方治療では、単に「精力増強」を目指すのではなく、「なぜEDが起きているのか(原因)」と「その人の体質(証:しょう)」に合わせて薬を選定します。

西洋薬(バイアグラなど)が血管拡張による即効性を重視するのに対し、漢方薬は心身のバランスを整え、基礎的な性機能を回復させることを目的とします。

加齢や機能低下による場合(腎虚:じんきょ)

中高年の方に最も多く見られるタイプです。
新聞広告でもよく見かける漢方薬でご存じの方も多いのではないでしょうか。
漢方でいう「腎(生命力の貯蔵庫)」が衰え、下半身の力が弱まっている状態です。

八味地黄丸(ハチミジオウガン)または八味丸(ハチミガン)

八味地黄丸、八味丸どちらも同じ漢方薬です。
「丸」の文字が示すとおり、原典では生薬を練って固めた丸薬です。
原典通りの丸薬として手に入るのは、医療用製剤のウチダ八味丸です。
 特徴: ED治療で最も有名な漢方薬の一つです。「腎」を補い、体を温めて新陳代謝を高めます。
 適した人: 疲れやすい、手足が冷える、夜間頻尿がある、腰痛がある人。

牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)

 特徴: 八味地黄丸に生薬(牛膝・車前子)を加えたものです。より下半身のしびれやむくみが強い場合に用いられます。
 適した人: 八味地黄丸の症状に加え、足のむくみやしびれが強い人。

ストレスや精神的要因による場合(気滞:きたい)

「心因性ED」に近いタイプです。ストレスで気の巡りが悪くなり、神経過敏になっている状態です。

柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)

原典では、精神安定作用として「大黄」が含まれていますが、ツムラの医療用エキス製剤のみ、大黄が含まれていないため、下痢気味の人にはツムラの製剤をします。
 特徴: 気の巡りを良くし、精神的な不安や緊張を鎮めます。
 適した人: ストレスが多い、イライラする、不眠傾向、動悸がする、比較的体力がある人。

桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)

「柴胡」が含まれていないため、気の動かし方が穏やかです。
 特徴: ED治療で最も有名な漢方薬の一つです。「腎」を補い、体を温めて新陳代謝を高めます。
 適した人: 疲れやすい、手足が冷える、夜間頻尿がある、腰痛がある人。

過労による場合(気虚:ききょ)

エネルギー(気)そのものが不足しており、性機能に回す余力がない状態です。

補中益気湯(ホチュウエッキトウ)

 特徴: 胃腸の働きを整え、全身のエネルギー(気)を補います。「医王湯」とも呼ばれ、疲労回復の王道です。精子の量や運動能の低下を改善するエビデンスがあります。不妊治療によく使用されます。
 適した人: 胃腸が弱い、食欲がない、手足がだるい、朝起きられない人。

十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)

 特徴: 「気(エネルギー)」と「血(栄養)」の両方を補います。病後や極度の疲労状態からの回復に使われます。当帰と地黄が含まれるため、胃腸が弱っているときには使用できません。
 適した人: 顔色が悪い、皮膚が乾燥している、貧血気味、全身の衰弱が激しい人。

血行不良による場合(瘀血:おけつ)

生活習慣病などにより血流が悪く、陰茎への血流が阻害されている可能性がある場合です。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

臨床の現場では、桂枝茯苓丸を単独で使うよりも、四逆散(ストレス対策)と合わせて「血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)」として使用することが多いです。
大学病院に勤務していた際、インポテンツで悩む男性に、四逆散と桂枝茯苓丸を合方したところ、血中遊離テストステロンが上昇した症例を経験しています。
 特徴: 滞った血流を改善します。
 適した人: 肩こり、頭痛、のぼせ、足の冷えがある人。

西洋薬との併用

日本国内で厚生労働省が承認しているED治療薬は、「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の3種類で、インターネットで検索するとオンライン診療や通販の広告やが多数表示されるため、帆の記事を読んでいる方は、ご存知だと思います。
科学的な見地からまとめると、漢方薬の立ち位置は以下のようになります。
即効性はないが、根本治療に近い:
服用してすぐに勃起する薬ではありませんが、八味地黄丸の研究結果によると「血管内皮機能の保護」や「酸化ストレスの除去」を通じて、勃起できる身体の土台を作り直す薬です。
併用のメリット:
西洋薬が「エンジンの点火プラグ」だとすれば、漢方薬は「エンジンオイルやバッテリーのメンテナンス」にあたります。これらを組み合わせることで、より良い治療効果が期待できるというエビデンスが存在します。

サプリメントとの併用

ED治療や男性機能の回復において、それぞれが異なるアプローチで体に作用するため、両者を併用することは理にかなっています。

なぜ「相性が良い」と言えるのか(役割の違い)

両者の役割を家づくりや車のメンテナンスに例えると、非常にわかりやすくなります。

亜鉛(サプリメント)=「材料・燃料」

 役割: テストステロン(男性ホルモン)の合成、精子の生成、細胞分裂に必要な「材料」そのものを補給します。体内に材料がなければ、いくら体を活性化させてもホルモンは作られません。

漢方薬(八味地黄丸など)=「エンジンの修理・潤滑」

役割: 血液循環を改善し、ホルモンを作る臓器(腎・精巣)の機能を高め、全身の代謝を整える「機能の回復」を担います。

「材料(亜鉛)」を補給しつつ、「工場(体・腎)」を漢方で稼働させることになるため、非常に合理的です。

飲み合わせの「3つの重要な注意点」

胃腸への負担(最も多いトラブル)

これが最大のリスクです。
亜鉛: 空腹時に飲むと、強い吐き気や胃痛を起こしやすい性質があります。
八味地黄丸: 構成生薬の「地黄(ジオウ)」は油分を含み、胃腸が弱い人には「胃もたれ」の原因になります。

対策: 両方を空腹時に一度に飲むと、胃へのダメージが大きすぎます。タイミングをずらすことが重要です。

吸収阻害(タンニンの影響)

漢方薬に含まれる生薬には、お茶などに含まれる成分「タンニン」を含むものがあります。

機序: タンニンは金属ミネラル(亜鉛や鉄)と結びつき(キレート結合)、腸からの吸収を妨げてしまうことがあります。
対策: 厳密に気にする必要はありませんが、効果を最大化したい場合は、服用時間をずらすのがベターです。

過剰摂取(銅欠乏症)

漢方薬の中にも、微量ながらミネラルが含まれている場合があります(牡蛎など)。サプリメントで亜鉛を上限ギリギリ(1日40-45mg以上)まで摂取し続けると、拮抗関係にある「銅」の吸収が阻害され、貧血や神経障害を起こすリスクがあります。

対策: サプリメントの用量(通常1日15〜30mg程度)を守っていれば、漢方と併用しても過剰症になることはまずありません。

その他のED系サプリとの相性

亜鉛以外にも、ED対策でよく飲まれるサプリメントと漢方の相性についても触れておきます。

マカ + 漢方

相性:
マカは「アンデス人参」とも呼ばれる植物で、漢方の考え方に近いため相性は良いです。
ただし、八味地黄丸とマカの併用は、どちらも体を温めて興奮させる作用があるため、のぼせやすい人は注意が必要です。

シトルリン / アルギニン + 漢方

相性: ◎(非常に良い)
これらはNO(一酸化窒素)を増やすアミノ酸です。
八味地黄丸が「NOを出せる血管環境を守る」働きをするため、併用することで、より強力な血流改善効果が期待できます。

最後に

EDで悩む患者さんに、漢方薬と西洋薬のどちらがよかったですか?と質問すると、両方併用するのが一番効果があったとの回答が圧倒的に多数を占めます。

EDでお悩みの方には、西洋薬だけでなく、漢方薬の併用をお勧めします。

吹田市長野東19番6号

千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

TOP