医療データが語る『野菜1日350g』──最も簡単で確実な健康投資|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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医療データが語る『野菜1日350g』──最も簡単で確実な健康投資

医療データが語る『野菜1日350g』──最も簡単で確実な健康投資|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2025年12月17日

医療データが語る『野菜1日350g』──最も簡単で確実な健康投資

目標は「1日350g以上」

日本人の健康維持・増進のために厚生労働省が推奨している野菜の摂取目標量は、「1日あたり350g(グラム)以上」です。
これは、厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21(第二次)」において設定されている主要な目標の一つです。この「350g」という数値は、単なるスローガンではなく、長年にわたる国内外の多くの科学的研究(疫学研究)に基づいて設定されています。

なぜ「350g」が必要なのか?

野菜の摂取が健康に良い影響を与えることは広く知られていますが、厚生労働省が「350g」という具体的な数値目標を掲げる背景には、主に以下の科学的根拠があります。

1. 生活習慣病のリスク低減効果

最も大きな根拠は、野菜の摂取量と生活習慣病(がん、心疾患、脳卒中、高血圧、2型糖尿病など)の発症リスクとの関連を調べた「観察疫学研究(コホート研究)」の結果です。

循環器疾患(心疾患・脳卒中)のリスク低下: 国内外の複数の研究を統合した解析(メタアナリシス)によれば、野菜や果物の摂取量が多いほど、心疾患や脳卒中の発症リスクが低いことが一貫して示されています。特に、1日の野菜・果物の摂取量が100g増えるごとに、リスクが数パーセントずつ低下していく傾向が見られます。
がんのリスク低下: 世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による報告書では、野菜(特に非でんぷん質の野菜)の摂取が、口腔がん、咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がんなどのリスクを下げる「可能性が高い」または「証拠が示唆的である」と評価されています。
高血圧の予防・改善: 野菜に豊富に含まれるカリウムは、体内の過剰なナトリウム(食塩の主成分)を体外に排出する働きがあります。これにより血圧が下がりやすくなるため、高血圧の予防・改善に極めて重要です。日本食は塩分過多になりがちなため、カリウムを多く含む野菜の摂取が不可欠とされています。

「350g」という目標値は、これらの研究結果から、各種疾病のリスクが有意に低くなることが期待できる現実的な摂取量として設定されました。いくつかの研究では、400g/日以上で最も死亡リスクが低いという報告もありますが、日本人の現状の摂取量を考慮し、達成可能な目標として350gが設定されています。

2. 健康維持に不可欠な栄養素の供給源

野菜は、健康な体を維持するために必要な微量栄養素の宝庫です。

食物繊維(しょくもつせんい): 腸内環境を整える(整腸作用)だけでなく、食後の血糖値の急激な上昇を抑えたり、血液中のコレステロール濃度を低下させたりする作用があります。これらは糖尿病や脂質異常症の予防に直結します。
ビタミン類(ビタミンC、葉酸など): ビタミンCは皮膚や血管の健康を保つコラーゲンの生成に必要であり、強力な抗酸化作用を持ちます。葉酸は細胞の新生や血液の生成に不可欠です。
ミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど): 前述のカリウム(高血圧予防)のほか、骨の健康維持や体内の酵素反応のサポートなど、体の機能を正常に保つために働きます。
ファイトケミカル(機能性成分): 野菜の色素や香り、苦味の成分(例:トマトのリコピン、人参のβ-カロテン、玉ねぎのケルセチンなど)です。これらは強力な抗酸化作用を持ち、体内の「サビ」とも言われる酸化ストレスから細胞を守ることで、動脈硬化やがんの予防に寄与すると考えられています。

「350g」の内訳と目安

厚生労働省は、350gの内訳として、「緑黄色野菜(りょくおうしょくやさい)120g」「それ以外の野菜(淡色野菜やきのこ類など)230g」のバランスで摂取することを推奨しています。
1. 緑黄色野菜:120g
原則として、可食部100gあたりにβ-カロテン(ビタミンA)を600μg(マイクログラム)以上含む野菜と定義されています。

主な例: ほうれん草、にんじん、かぼちゃ、小松菜、ブロッコリー、トマト、ピーマンなど。
役割: β-カロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜を健康に保ち、免疫機能を維持する働きがあります。
2. 淡色野菜・その他の野菜:230g
緑黄色野菜以外の野菜を指します。

主な例: キャベツ、レタス、白菜、大根、玉ねぎ、きゅうり、なす、ごぼう など。
きのこ類、海藻類: これらも食物繊維やミネラルが豊富なため、広義の「野菜類」として、この230gに含めて摂取することが推奨されます。
役割: カリウムやビタミンC、食物繊維を補給します。
※注意点:イモ類と豆類
イモ類(じゃがいも、さつまいも、里芋など): 栄養学上、炭水化物(糖質)が主体の「主食」に近い分類とされます。ビタミンCや食物繊維も含まれますが、この350gの目標には(主として)含まれません
豆類(大豆、枝豆、インゲン豆など): 大豆は主にタンパク源として扱われます。ただし、さやいんげんや枝豆などは、ビタミンやミネラルも豊富なため、野菜としてもカウントされる場合があります。

日本人の現状:目標とのギャップ

「350g」はあくまで「目標」ですが、残念ながら多くの日本人はこの目標を達成できていません
厚生労働省が毎年実施している「国民健康・栄養調査」の最新の結果(2019年)によると、日本人(20歳以上)の1日の野菜摂取量の平均値は 280.5g です。

目標(350g)に対し、約70g不足している ことが分かります。
特に20代〜40代の若い世代で摂取量が少ない傾向が顕著です。

「あと70g」というのは、具体的には「野菜の小鉢(おひたしやサラダなど)をもう一皿」追加するイメージです。この「もう一皿」を意識することが、健康維持への大きな一歩となります。

「350g」を達成するための具体的な工夫

350gと聞くと「そんなに食べられない」と感じるかもしれませんが、これは調理前の「生」の重量です。加熱(茹でる、炒める、蒸す)すると「カサ」が減り、食べやすくなります。

「小鉢」で数える(1皿 = 約70g) 「健康日本21」では、野菜料理を小鉢(おひたし、和え物、酢の物など)で「1日に5皿」食べることを目安として推奨しています(70g × 5皿 = 350g)。

朝食:野菜スープやサラダ(1皿)
昼食:定食の小鉢や、ラーメンの野菜トッピング(1皿)
夕食:主菜の付け合わせ、サラダ、具だくさんの味噌汁、炒め物(3皿) といった具合に、毎食に取り入れることが重要です。

加熱して「カサ」を減らす 生野菜サラダだけで350gを摂るのは大変ですが、ほうれん草のおひたしや、白菜と豚肉の蒸し物、野菜炒め、鍋物などにすれば、カサが減り、たくさんの量を摂取できます。

「汁物」を具だくさんにする 味噌汁やスープに、玉ねぎ、大根、人参、きのこ類、わかめなどをたっぷり入れると、手軽に摂取量を増やせます。

加工品・冷凍食品の活用 忙しい場合は、冷凍のほうれん草やブロッコリー、カット野菜、トマト缶などを活用するのも賢い方法です。
野菜ジュースについての補足
野菜ジュースは手軽な野菜の補給源にはなりますが、350gの野菜そのものと「イコール」ではありません

理由: 製造過程で、健康に重要な「不溶性食物繊維」の多くが取り除かれてしまうためです。また、飲みやすくするために糖分や塩分が添加されている商品もあります。
位置づけ: あくまで「補助的」なものと考え、ジュースに頼るのではなく、できるだけ「噛んで食べる」野菜を摂ることが基本です。厚生労働省の「食事バランスガイド」でも、野菜ジュースは野菜の摂取量としてカウントしない(またはごく一部のみカウントする)のが基本です。

出典

厚生労働省:「健康日本21(第三次)」
「栄養・食生活」の項目において、成人の野菜摂取量の目標値を「350g」と明記しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html

厚生労働省 e-ヘルスネット:「野菜1日350gで健康増進」
350gの根拠(疫学研究)や、緑黄色野菜120g、平均摂取量(国民健康・栄養調査)について詳述されています。
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-03-015.html

厚生労働省:「令和元年『国民健康・栄養調査』の結果」
日本人の実際の野菜摂取量の平均値(280.5g)が記載されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html

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