鶏卵アレルギーと予防接種の安全性|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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鶏卵アレルギーと予防接種の安全性

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2026年1月22日

鶏卵アレルギーと予防接種の安全性

鶏卵アレルギーをお持ちの方にとって、予防接種、特にインフルエンザワクチンなどの接種可否は非常に大きな懸念事項であるかと存じます。
最初に結論から書きます。「重篤な鶏卵アレルギーであっても、ほとんどのワクチンは接種可能である」というのが、現在の医学およびアレルギー学会における科学的な共通認識(コンセンサス)です。
ただし、ワクチンの種類によって製造過程が異なり、含まれる鶏卵成分の量が異なるため、それぞれのワクチンごとのリスクと科学的根拠を正しく理解しておくことが重要です。
以下に、一般の方にもわかりやすく、かつ科学的根拠に基づいた情報を解説します。

予防接種と鶏卵成分の関係について

まず、なぜワクチンに卵の成分が含まれるのかという基本的なメカニズムについて説明します。
ウイルスというのは、細菌と異なり、自力で増えることができません。生きた細胞の中でしか増殖できないという性質を持っています。そのため、ワクチンを製造する際には、ウイルスを増やすための「培地」として、発育鶏卵(有精卵)や、ニワトリの細胞などが使われることが歴史的に一般的でした。
この製造過程において、どうしても微量の鶏卵成分(主に卵白に含まれるタンパク質であるオボアルブミン)がワクチン液の中に残ってしまうことがあります。これが、鶏卵アレルギーの人がワクチン接種を心配する科学的な理由です。
しかし、近年の精製技術の進歩により、ワクチンに含まれる鶏卵成分は極めて微量になっています。

インフルエンザワクチンについて

最も質問が多く、かつ鶏卵成分が含まれている代表的なワクチンが「インフルエンザワクチン」です。

  1. 製造方法と鶏卵成分
    インフルエンザワクチンは、発育鶏卵の尿膜腔内という部分にウイルスを接種して増やし、それを精製して作られます。そのため、製造工程上、ごく微量の鶏卵成分(オボアルブミン)が残存します。

  2. 科学的根拠と安全性
    現在の日本で流通しているインフルエンザワクチンに含まれるオボアルブミンの量は、1回接種あたり数ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)から、多くても数十ナノグラム程度とされています。
    アレルギー反応を引き起こすために必要な抗原(アレルギーの原因物質)の量は、通常これよりもはるかに多い量が必要です。

日本アレルギー学会や米国疾病予防管理センター(CDC)、米国小児科学会(AAP)などのガイドラインでは、以下のように結論づけられています。
「鶏卵アレルギーがあるという理由だけで、インフルエンザワクチンを避ける必要はない」
「過去に卵を食べて蕁麻疹が出た程度の軽度のアレルギーだけでなく、アナフィラキシー(呼吸困難や血圧低下などの重篤な反応)を起こしたことがある人であっても、適切な医療体制のもとであれば接種は可能である」
つまり、現在のインフルエンザワクチンに含まれる卵の成分量は、アレルギー反応を誘発する閾値を下回っているケースがほとんどであり、科学的には安全性が高いと評価されています。
ただし、過去に「インフルエンザワクチンそのもの」でアナフィラキシーを起こしたことがある場合は、卵成分以外の添加剤などが原因である可能性も含め、接種は推奨されません。

麻疹(はしか)・風疹混合ワクチン(MRワクチン)について

次に一般的なのがMRワクチンです。

  1. 製造方法の違い
    インフルエンザワクチンとは異なり、麻疹ウイルスやムンプス(おたふくかぜ)ウイルスは、「ニワトリの胚(胎児)の細胞」を使って培養されます。
    これを「ニワトリ胚細胞培養」と呼びます。

  2. 科学的根拠と安全性
    「卵を使っている」と聞くと不安になるかもしれませんが、科学的には大きな違いがあります。この細胞培養の過程で作られたワクチンには、卵アレルギーの原因となるオボアルブミンなどの卵白タンパク質は、測定限界以下、あるいはごく痕跡程度しか含まれていません。

したがって、医学的には「MRワクチンやおたふくかぜワクチンに関しては、重篤な鶏卵アレルギー患者であっても、健常者と同じように接種可能である」というのが確立されたエビデンスです。
実際にMRワクチン接種後にアレルギー反応が出た事例を詳細に解析した研究では、その原因の多くは鶏卵成分ではなく、ワクチンに含まれる安定剤(ゼラチンなど)や抗生物質に対するアレルギー反応であったことが報告されています。
つまり、鶏卵アレルギーを理由にMRワクチンを避ける科学的根拠はありません。

新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン)について

ファイザー社やモデルナ社などのmRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)に関しては、製造過程で鶏卵やニワトリの細胞を一切使用していません。
したがって、鶏卵アレルギーの方が接種することに科学的なリスクはありません。
ただし、ポリエチレングリコール(PEG)など、添加剤に対するアレルギーには注意が必要ですが、これは卵とは無関係です。

接種を受ける際の注意点と具体的な対応

科学的に安全であるといっても、個人の体質には差があります。実際に接種を受ける際は、以下の手順を踏むことが推奨されます。

  1. 予診票への正確な記載
    予診票には「卵アレルギーがある」ことを正直に記載してください。これは医師が接種後の観察をより慎重に行うための重要な情報となります。

  2. 医師による問診
    接種前の問診で、過去に卵を食べてどのような症状が出たか(皮膚の赤みだけか、呼吸が苦しくなったかなど)を医師に伝えてください。
    医師はそれに基づき、接種後の待機時間を判断します。

  3. 接種後の30分待機
    どのようなアレルギー体質の方であっても、ワクチン接種後の副反応(アナフィラキシーを含む)は、接種後30分以内に発生することがほとんどです。
    そのため、接種後すぐに帰宅せず、院内や病院の近くで30分間待機し、体調変化があった場合にすぐ医療処置を受けられるようにすることが、最も科学的かつ確実な安全対策です。

  4. 体調が万全な時に接種する
    喘息などの合併症がある場合、喘息のコントロールが悪い状態で接種を受けると、万が一アレルギー反応が起きた際に症状が重くなるリスクがあります。体調が良い時に接種を受けるのが鉄則です。

まとめ

科学的なエビデンスに基づきますと、鶏卵アレルギーをお持ちの方のワクチン接種については以下の通りとなります。
・インフルエンザワクチン
微量の卵成分を含むが、近年の高度な精製技術により含有量は極めて少なく、重篤なアレルギーの方でも基本的には接種可能であるとされています。
・MRワクチン・おたふくかぜワクチン
製造過程が異なり、卵成分は実質的に含まれていないため、鶏卵アレルギーを理由に接種を避ける必要はありません。
・黄熱ワクチン
比較的多くの卵成分を含む可能性があるため、慎重な対応が必要です。
・新型コロナワクチン
卵成分は一切使用されていません。
鶏卵アレルギーがあるからといって、感染症予防の恩恵を受けられないということはありません。
「卵アレルギー=ワクチン禁止」というのは、精製技術が未発達だった過去の古い認識になりつつあります。
もちろん、最終的な判断は接種当日の体調や過去のアレルギー症状の重さを踏まえて、医師が判断します。
しかし、過度に恐れることなく、まずは主治医に「卵アレルギーがあるが、予防接種を受けたい」と相談してください。
医学的な管理下であれば、安全に接種できる可能性が極めて高いというのが、現在の科学的な結論です。

 

大阪府吹田市長野東19番6号

千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介

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