「プレベナー20」vs「キャップバックス」——肺炎球菌ワクチンの選び方|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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「プレベナー20」vs「キャップバックス」——肺炎球菌ワクチンの選び方

「プレベナー20」vs「キャップバックス」——肺炎球菌ワクチンの選び方|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年5月12日

「プレベナー20」vs「キャップバックス」——肺炎球菌ワクチンの選び方

肺炎球菌ワクチンの種類が増え、どれを選べばよいのか迷われる方も多いと思います。65歳以上の方の肺炎予防において、2026年現在最も重要な選択肢となっているのが「PCV20(プレベナー20)」と「PCV21(キャップバックス)」です。

2026年4月から、公費負担による肺炎球菌ワクチンが「ニューモバックス」から「プレベナー20」に変わりました。

どちらが良いかは「公費の補助(費用負担の少なさ)」を優先するか、「現在の成人に特化した広い予防効果」を優先するかによって異なります。



肺炎球菌とワクチンの仕組み

肺炎球菌は、高齢者の肺炎の原因として最も多い細菌です。重症化すると敗血症や髄膜炎といった命に関わる病気を引き起こすため、ワクチンによる事前の予防が非常に重要になります。肺炎球菌には表面の構造の違いにより90種類以上の「型(血清型)」が存在し、それぞれのワクチンがいくつの型を予防できるかが「20価」「21価」という数字で表されています。

PCV20とPCV21は、どちらも「結合型ワクチン(PCV)」と呼ばれる最新のグループに属します。これまでのワクチン(ニューモバックスなど)と異なり、肺炎球菌の成分に特殊なタンパク質を結合させることで、免疫の司令塔である細胞を強力に呼び覚ます仕組みになっています。これにより、免疫が長く記憶され、より質の高い防御力を獲得できるようになりました。

なぜ新しいワクチンが登場したのか(血清型置換という現象)

それぞれのワクチンの違いを理解する上で重要なのが、「小児のワクチン普及による影響」です。

近年、小児への肺炎球菌ワクチン接種が進んだことで、社会全体から特定の型の細菌が減る「集団免疫効果」が得られました。しかしその反面、ワクチンに含まれていない「別の型」の肺炎球菌が隙間を縫って繁殖し、それが大人の間で流行し始めるという現象(血清型置換)が起きてしまいました。この「今の大人の間で流行している型」にどう対応するかが、ワクチンの違いに直結しています。

各ワクチンの特徴とカバー率の違い

PCV20(プレベナー20)の特徴

20種類の型をカバーするワクチンで、2026年4月より、65歳以上の方を対象とした「定期接種」の標準ワクチンとして採用されました。定期接種の対象期間であれば、自治体の公費補助によって少ない自己負担(あるいは無料)で接種できることが最大のメリットです。

ただし、このワクチンは小児の定期接種にも使われています。そのため、子供のワクチン普及によって「すでに大人の間では減少しつつある型」も多く含まれています。

PCV21(キャップバックス)の特徴

2025年秋に日本で発売された「完全に成人専用」に設計された最新のワクチンです。大人の間で流行しなくなった古い型をあえて外し、成人の肺炎の原因として新しく増えてきている特有の型を狙い撃ちにして追加した設計になっています。

ただし、現在は「任意接種」扱いとなるため、全額自己負担(医療機関により異なりますが当院では1万4千円)となるのがデメリットです。

日本の最新データによる予防範囲(カバー率)の比較

2019年から2022年にかけて行われた日本の多施設共同研究によると、日本の成人における市中肺炎(日常生活の中でかかる肺炎)の原因となる肺炎球菌のうち、PCV20がカバーできる割合は約43.7%でした。それに対し、成人専用に設計されたPCV21は約71.9%に達することが報告されています。このデータから、PCV21がいかに現在の日本の大人の肺炎の実態に合っているかがわかります。

65歳以上の高齢者にはどちらが良いか(合同委員会の考え方)

日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本ワクチン学会の合同委員会が2026年4月に発表した「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版)」に基づくと、状況に応じて以下のような選び方が推奨されます。

パターンA:費用を抑えて標準的な予防をしたい方(PCV20推奨)

65歳の定期接種の対象期間であれば、まずは公費の補助を利用してPCV20を接種するのが標準的な推奨となります。国が認めた定期接種であり、重症化を防ぐための十分な基本の予防効果が得られます。

パターンB:費用がかかっても、最新のより広い予防効果を得たい方(PCV21推奨)

ご自身の健康不安(心臓、肺、腎臓などの持病や糖尿病など)があり、今まさに流行している大人の肺炎に対して広範囲な予防を希望される場合は、全額自己負担となりますが、カバー率の高いPCV21をはじめから接種するのがより安心な選択となります。

パターンC:両方のメリットを活かしたい方(連続接種)

まずは65歳の定期接種の機会を利用して公費でPCV20を接種します。その後、さらにカバー率を広げるために1年以上(推奨される十分な間隔をあけて)経過してから、自費でPCV21を追加接種するという方法も専門医から提案されています。

まとめ

費用面の負担軽減を重視するなら「PCV20」、自費であっても現在の成人の肺炎に対する約72%という高い予防効果を重視するなら「PCV21」が適しています。ちなみに、私の両親には、現在流行している肺炎球菌のカバー率の高いPCV21を接種しました。ご自身の持病や健康状態、ご予算によって最適な選択肢は変わります。最終的には、かかりつけの医師と相談して決めましょう。

参考文献

  1. Serotype distribution among adults with community-acquired pneumococcal pneumonia in Japan between 2019 and 2022: A multicenter observational study, Maeda H, et al. Hum Vaccin Immunother . 2025 Dec;21(1):2518847. DOI: 10.1080/21645515.2025.2518847
    要約: 2019年から2022年の日本の成人市中肺炎患者における肺炎球菌血清型の分布を調査した多施設共同研究。日本の成人におけるPCV20のカバー率は約43.7%、PCV21は約71.9%であり、PCV21が成人の肺炎に対して高い適合性を持つことを実証した重要文献。
  2. Safety, tolerability, and immunogenicity of an adult pneumococcal conjugate vaccine, V116 (STRIDE-3): a randomised, double-blind, active comparator controlled, international phase 3 trial, STRIDE-3 Investigators, et al. Lancet Infect Dis . 2024 Oct;24(10):1141-1150. DOI: 10.1016/S1473-3099(24)00344-X
    要約: PCV21(開発名V116)とPCV20を直接比較した国際的な第3相臨床試験。50歳以上の成人において、PCV21特有の血清型に対する優れた免疫原性と同等の安全性を確認し、成人向け肺炎球菌ワクチンの有効性を示した論文。
  3. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版), 日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会 合同委員会. 日本感染症学会公式ウェブサイト . 2026年4月1日.
    要約: 日本の主要3学会が合同で策定した高齢者向け肺炎球菌ワクチンの最新指針。2026年からの定期接種におけるPCV20の導入と、成人専用ワクチンであるPCV21の位置づけ、およびハイリスク者への連続接種の考え方を整理した公式ガイドライン。



大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

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