2026年7月09日

1. 秋にも花粉症がある、ってご存じでしたか?
「花粉症」と聞くと、春のスギやヒノキを思い浮かべる方がほとんどではないでしょうか。しかし実は、8月から10月にかけても、花粉症の季節がやってきます。原因となる植物こそ違いますが、体の中で起きていることは春の花粉症と同じです。
花粉(アレルゲン)が体に入ると、免疫システムがそれを「異物」と判断し、IgEという抗体を作ります。この抗体が鼻の粘膜にある細胞にくっつくと、ヒスタミンなどの物質が放出され、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった症状が引き起こされるのです。
春との大きな違い:春の花粉は背の高い「樹木」から出るため、風に乗って数十キロも飛びます。一方、秋の花粉は背の低い「雑草」から出るため、飛ぶ範囲はわずか数メートルから数十メートル程度。つまり、原因の植物に近づかなければ、症状をかなり防げるということです。
2. 秋の花粉症を引き起こす3つの雑草
道端や河川敷、空き地など、身近な場所に生えている次の3つの植物が主な原因です。
ブタクサ(キク科)
秋の花粉症の原因としては日本で最も多い植物です。北米生まれの帰化植物で、8〜10月に黄色く細い花を咲かせます。日当たりのよい河川敷や荒れ地に群生しやすいのが特徴です。
ヨモギ(キク科)
草餅の材料としてもおなじみの、日本に昔からある植物です。9〜10月にかけて花粉症の原因になります。繁殖力が強く、空き地や公園の隅、土手など、街のあちこちに生えています。
カナムグラ(アサ科)
電柱やフェンスに絡みつく、つる性の雑草です。9〜10月に花粉を飛ばします。葉や茎にトゲがあり、触れると皮膚が傷つくこともあるので注意しましょう。近年は都市部の空き地でも増えており、見過ごせない存在になっています。
3. 「ただの風邪」と間違えやすい症状
基本的な症状は春の花粉症と同じで、連続するくしゃみ、水のようにサラサラした鼻水、強い鼻づまり、目のかゆみなどです。秋は気温の変化が大きく風邪をひきやすい季節でもあるため、初期症状を風邪と勘違いしやすいので注意が必要です。
見分けるポイントは、「熱がない」「目がかゆい」「症状が2週間以上続く」の3つ。これに当てはまる場合は、風邪ではなく秋の花粉症を疑いましょう。
果物や野菜を食べて口がかゆくなる「花粉-食物アレルギー症候群」
秋の花粉症で特に知っておいてほしいのが、「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」、別名「口腔アレルギー症候群」です。花粉のアレルゲンと、特定の果物・野菜に含まれるタンパク質が構造的によく似ているため、体が同じ「敵」だと勘違いしてアレルギー反応を起こしてしまう現象です。
花粉症の人が該当する果物や野菜を生のまま食べると、唇や舌、喉にかゆみやピリピリ感、腫れが出ることがあります。
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花粉の種類 |
注意したい果物・野菜 |
|---|---|
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ブタクサ花粉症 |
メロン、スイカ、キュウリ、バナナなど(主にウリ科) |
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ヨモギ花粉症 |
セロリ、ニンジン、リンゴ、キウイ、スパイス類など |
これらの果物や野菜のタンパク質は熱に弱いため、加熱調理(ジャムやコンポートなど)をすれば食べられることが多いのも特徴です。ただし、生のまま食べて症状が重くなると、呼吸困難などのアナフィラキシーショックを起こす危険もあります。
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⚠ 注意:口に違和感を覚えたら、その食品はすぐに食べるのをやめ、医師に相談してください。 |
4. 対策と治療
日本アレルギー学会のガイドラインでは、秋の花粉症に対して次のような対策が推奨されています。
まずは「原因植物に近づかない」
秋の花粉は飛ぶ範囲が狭いため、「雑草の生い茂る場所に近づかない」ことが最大の予防策になります。
- ジョギングや犬の散歩では、河川敷や草むらを避ける
- 「晴れて風の強い日」「雨上がりの翌日」は特に花粉が多いので注意する
- 外出時はマスクとメガネを着用する
- 帰宅後は玄関で衣服の花粉を払い、洗顔とうがいをする
症状が出たら、我慢せず受診を
症状が出た場合は、耳鼻咽喉科やアレルギー科の受診がすすめられます。治療の基本は次の2つです。
第2世代抗ヒスタミン薬(飲み薬):眠気などの副作用が少なく、くしゃみや鼻水によく効くことが分かっています。
鼻噴霧用ステロイド薬(点鼻薬):鼻の局所にだけ作用するため全身への副作用が極めて少なく、頑固な鼻づまりにも高い効果があることが科学的に証明されています。
免疫療法については、まだ限界がある
スギ花粉やダニに対しては「舌下免疫療法」という体質改善治療が広く行われていますが、残念ながらブタクサやヨモギに対する舌下免疫療法の薬は、日本ではまだ保険診療として承認されていません。一部の医療機関で皮下注射による免疫療法が行われているものの、治療期間が長く負担も大きいのが現状です。
そのため今のところは、血液検査で原因アレルゲンを正確に特定したうえで、環境調整(原因植物の回避)と適切な薬物療法を組み合わせるのが、現実的でもっとも効果的な基本戦略といえます。
おわりに
秋の花粉症は、原因を知り、日々の生活に少し工夫を加えるだけで、症状をかなり和らげることができます。鼻炎の症状が長引くとき、あるいは果物を食べて口に違和感を覚えたときは、自己判断に頼らず、専門医による診断と治療を受けることをおすすめします。
参考文献
- Japanese guidelines for allergic rhinitis 2020, Okubo K, Kurono Y, Ichimura K, et al. Allergology International. 2020年7月. DOI: 10.1016/j.alit.2020.04.001
要約:日本アレルギー学会による最新のアレルギー性鼻炎診療ガイドライン。花粉症を含むアレルギー性鼻炎の疫学・診断・治療を包括的にまとめた指針。 - Climate change and future pollen allergy in Europe, Lake IR, Jones NR, Agnew M, et al. Environmental Health Perspectives. 2017年3月. DOI: 10.1289/EHP173
要約:気候変動によりブタクサの分布域と花粉量が増加し、欧州で花粉症患者が大幅に増加すると予測したモデル研究。 - The nature of melon allergy in ragweed-allergic subjects: A study of 1000 patients, Asero R, Mistrello G, Amato S. Allergy and Asthma Proceedings. 2011年1-2月. DOI: 10.2500/aap.2011.32.3416
要約:ブタクサ花粉症患者1000人を調査し、メロン等ウリ科食品への口腔アレルギーとプロフィリン感作の関連を示した研究。 - Development of mouse model for oral allergy syndrome to identify IgE cross-reactive pollen and food allergens: ragweed pollen cross-reacts with fennel and black pepper, Kamei A, Izawa K, Ando T, et al. Frontiers in Immunology. 2022年7月. DOI: 10.3389/fimmu.2022.945222
要約:マウスモデルを用い、ブタクサ花粉とフェンネル・黒コショウとの新たな交差反応性を示した基礎研究。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介


