なぜ人は夢を見るのか?「見ない」理由と脳の仕組み・注意すべきサイン|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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なぜ人は夢を見るのか?「見ない」理由と脳の仕組み・注意すべきサイン

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2026年8月05日

なぜ人は夢を見るのか?「見ない」理由と脳の仕組み・注意すべきサイン

なぜ夢を見るのか?脳の仕組みと4つの仮説・受診すべき症状まで解説

「自分は夢を見ない」という人も、実は見ている

ほとんどすべての人が、毎晩夢を見ています。「自分は夢を見ない」とおっしゃる方も、実際には見ているのに目覚めたときに覚えていないだけであることが、睡眠実験室での研究から分かっています。

夢が科学の対象になったのは1953年です。シカゴ大学のアセリンスキーとクライトマンは、眠っている人の眼球が周期的に速く動く時間帯があることを発見しました。この時間帯に起こすと、多くの人が鮮明な夢を語ったのです。これが「レム睡眠(急速眼球運動睡眠)」の発見であり、夢の研究が推測から実証へと変わった出発点でした。

成人ではひと晩の睡眠のおよそ2割がレム睡眠で、約90分の周期で繰り返し訪れます。レム睡眠中に起こすと8割前後の人が夢を報告しますが、その後の研究で、ノンレム睡眠中に起こしても一定の割合で夢の報告が得られることが確認されています。つまり「夢=レム睡眠」という単純な図式は成り立ちません。夢は睡眠全体を通じて起こりうる現象です。

夢を見ているときの脳で何が起きているか

1996年、マケらはPET(陽電子放出断層撮影)を用いて、レム睡眠中の脳血流を測定しました。その結果、脳幹の橋(きょう)被蓋、視床、そして左右の扁桃体、前部帯状回で血流が増加していました。一方で、背外側前頭前野をはじめとする広い領域では血流が低下していました。

この所見は、夢のあの独特な感じをよく説明します。扁桃体は恐怖や不安といった情動を扱う中枢です。ここが活発なので、夢は感情を強くともないます。逆に、背外側前頭前野は論理的な判断、計画、自己を客観視する働きを担っています。ここが休んでいるため、夢の中では「時代も場所も入れ替わっている」「亡くなった人が普通に会話している」といった明らかな矛盾に気づかず、疑いもせず受け入れてしまうのです。

さらに2017年、シクラリらは高密度脳波を用いて、夢を見ている最中かどうかを脳の局所的な活動から判別できることを示しました。後頭部から頭頂部にかけての領域(後方ホットゾーン)で徐波成分が減少しているとき、その人は夢を見ている可能性が高かったのです。この判別はノンレム睡眠中でも成立しました。

なぜ見るのか 4つの有力な仮説

夢の「意味」については、今も決着がついていません。ただし、実験で検証可能な仮説がいくつか提唱されています。

1.記憶を整理し、定着させている

ワムズリーらは2010年、参加者に迷路課題を学習させたあと仮眠をとらせ、目覚めたときの夢の内容を尋ねました。すると、迷路に関連した夢を報告した人たちは、そうでない人たちに比べて、その後の成績の伸びが明らかに大きかったのです。夢の内容は課題の正確な再現ではなく、断片的で歪んだものでしたが、それでも成績向上と結びついていました。夢は、脳が記憶を再生し再構成している作業の「副産物」あるいは「表れ」だと考えられます。

2.感情の棘を抜いている

ウォーカーとファンデルヘルムは2009年の総説で、レム睡眠中はノルアドレナリンという覚醒・ストレス関連物質の分泌がほぼ止まる点に注目しました。この状態で嫌な出来事の記憶が再生されると、出来事の内容は保たれたまま、それにともなう感情の強さだけが徐々に弱まっていく、という仮説です。「眠って忘れ、眠って覚える」と表現されます。つらい経験の翌朝、記憶は残っていても少し楽になっている感覚には、この仕組みが関わっている可能性があります。

3.危険をシミュレーションしている

フィンランドのレヴォンスオは2000年、夢の内容が中立的ではなく、追われる、落ちる、襲われるといった脅威の場面に偏っていることを指摘しました。安全な睡眠中に危険への対処を予行演習することが、進化上有利に働いたという説です。ただしこの仮説には反証データもあり、現在も議論が続いています。

4.意識の「原型」を毎晩起動している

ホブソンは2009年、レム睡眠を「原意識」の状態と位置づけました。胎児や新生児ではレム睡眠の割合が極めて高く、外界からの入力がほとんどない段階で脳が自前の仮想世界をつくっている、という視点です。夢は、覚醒時の意識を成り立たせる回路を発達させ、維持するためのリハーサルだと考えます。

悪夢が続くときは、医学的な視点も必要です

夢そのものは正常な生理現象ですが、次のような場合は相談をおすすめします。

レヴィンとニールセンによれば、悪夢は成人の4〜10パーセントが週単位で経験しており、ストレスや不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と関連します。悪夢が続いて睡眠を妨げ、日中の不調につながっている場合は治療の対象になります。

もう一つ重要なのが、夢の内容に合わせて実際に叫んだり手足を動かしたりする「レム睡眠行動障害」です。本来レム睡眠中は筋肉の力が抜けているのですが、この抑制が働かなくなる病態です。ポストゥーマらの国際多施設研究では、この障害と診断された方の年間約6パーセントがパーキンソン病やレビー小体型認知症などへ移行しており、追跡期間が長いほど累積の発症率は高くなりました。ベッドから落ちる、隣で寝ている人を叩いてしまうといったことがある場合は、睡眠を扱う医療機関にご相談ください。

まとめ

夢は、外界から切り離された脳が自力で世界をつくり出す現象です。感情を司る扁桃体が働き、論理を司る前頭前野が休んでいるために、夢はあれほど感情的で、あれほど非論理的になります。その役割については、記憶の定着、感情の処理、危険の予行演習、意識の維持という複数の仮説が並立しており、どれか一つが正解というより、複数が同時に成り立っている可能性が高いと考えられています。

夢の内容に個別の意味を読み取る科学的根拠は確立していません。しかし、悪夢の頻度や、夢に合わせて体が動くかどうかは、心身の状態を映す臨床的に意味のあるサインです。気になる変化があれば、どうぞご相談ください。

参考文献

1.Regularly occurring periods of eye motility, and concomitant phenomena, during sleep. Aserinsky E, Kleitman N. Science. 1953 Sep 4;118(3062):273-274. DOI: https://doi.org/10.1126/science.118.3062.273 要約: 睡眠中に周期的な急速眼球運動の時間帯が存在することを初めて報告し、その時期に起こすと鮮明な夢が語られることを示した。レム睡眠発見の原著論文。

2.Functional neuroanatomy of human rapid-eye-movement sleep and dreaming. Maquet P, Péters JM, Aerts J, et al. Nature. 1996 Sep 12;383(6596):163-166. DOI: https://doi.org/10.1038/383163a0 要約: PETを用いた研究。レム睡眠中に橋被蓋、視床、両側扁桃体、前部帯状回で脳血流が増加し、背外側前頭前野などで低下することを示した。

3.The reinterpretation of dreams: an evolutionary hypothesis of the function of dreaming. Revonsuo A. Behavioral and Brain Sciences. 2000 Dec;23(6):877-901. DOI: https://doi.org/10.1017/S0140525X00004015 要約: 夢の内容が脅威場面に偏っている点から、夢は危険の知覚と回避を安全に予行演習する進化的機能をもつとする脅威シミュレーション仮説を提唱した。

4.Disturbed dreaming, posttraumatic stress disorder, and affect distress: a review and neurocognitive model. Levin R, Nielsen TA. Psychological Bulletin. 2007 May;133(3):482-528. DOI: https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.3.482 要約: 悪夢は成人の4〜10パーセントが週単位で経験すると報告。悪夢の発生を情動負荷と情動苦痛の二要因で説明する神経認知モデルを提示した総説。

5.Overnight therapy? The role of sleep in emotional brain processing. Walker MP, van der Helm E. Psychological Bulletin. 2009 Sep;135(5):731-748. DOI: https://doi.org/10.1037/a0016570 要約: レム睡眠中はノルアドレナリンが低下し、情動記憶が再処理されて感情の強度だけが弱まるとする仮説を提示。睡眠と情動調節を統合的に論じた総説。

6.Dreaming and the brain: from phenomenology to neurophysiology. Nir Y, Tononi G. Trends in Cognitive Sciences. 2010 Feb;14(2):88-100. DOI: https://doi.org/10.1016/j.tics.2009.12.001 要約: 夢の現象学と脳活動研究を統合した総説。ノンレム睡眠でも夢が生じること、夢が外界から遮断される機序などを整理した。

7.Dreaming of a learning task is associated with enhanced sleep-dependent memory consolidation. Wamsley EJ, Tucker M, Payne JD, Benavides JA, Stickgold R. Current Biology. 2010 May 11;20(9):850-855. DOI: https://doi.org/10.1016/j.cub.2010.03.027 要約: 迷路課題の学習後に仮眠をとらせた実験。課題に関連する夢を報告した参加者は、報告しなかった参加者より成績の向上が有意に大きかった。

8.The neural correlates of dreaming. Siclari F, Baird B, Perogamvros L, et al. Nature Neuroscience. 2017 Jun;20(6):872-878. DOI: https://doi.org/10.1038/nn.4545 要約: 高密度脳波を用い、後頭・頭頂部の徐波減少が夢の有無と対応することを示した。ノンレム睡眠中でも夢を見ているかを判別できた。

9.Risk and predictors of dementia and parkinsonism in idiopathic REM sleep behaviour disorder: a multicentre study. Postuma RB, Iranzo A, Hu M, et al. Brain. 2019 Mar 1;142(3):744-759. DOI: https://doi.org/10.1093/brain/awz030 要約: 特発性レム睡眠行動障害1280例の国際多施設研究。年間約6パーセントがパーキンソン病やレビー小体型認知症などへ移行することを示した。

10.REM sleep and dreaming: towards a theory of protoconsciousness. Hobson JA. Nature Reviews Neuroscience. 2009 Nov;10(11):803-813. DOI: https://doi.org/10.1038/nrn2716 要約: レム睡眠を意識の原型(原意識)と位置づけ、胎児期から続く仮想世界の生成が覚醒時意識の発達と維持に寄与するとする理論を提示した。

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