「疲れやすい・太りやすい」を抜け出す!科学で分かったテストステロンの上げ方|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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「疲れやすい・太りやすい」を抜け出す!科学で分かったテストステロンの上げ方

「疲れやすい・太りやすい」を抜け出す!科学で分かったテストステロンの上げ方|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2025年12月07日

「疲れやすい・太りやすい」を抜け出す!科学で分かったテストステロンの上げ方

はじめに:テストステロンの基礎知識

テストステロンは、筋肉量や骨密度の維持だけでなく、認知機能、気分、性機能、代謝の健康に深く関与しています。一般的に30歳頃から自然に減少を始めますが、不適切な生活習慣はその減少を加速させます。

テストステロン(男性ホルモンの一種)のレベルを自然に、かつ健康的に維持・向上させるためには、特定の「魔法の食材」を摂るだけでは不十分であり、生活習慣全体(睡眠、運動、栄養、ストレス管理)のアプローチが必要です。

科学的に裏付けられた「生活習慣」

最も強力なエビデンスがあるのは、サプリメントではなく「睡眠」と「適正体重の維持」です。

1. 質の高い睡眠を確保する

睡眠不足はテストステロンを劇的に低下させます。
根拠: アメリカ医師会雑誌(JAMA)に掲載された研究では、健康な若い男性が睡眠時間を1日5時間に制限したところ、わずか1週間でテストステロンレベルが10〜15%低下したことが報告されています。これは、加齢による10〜15年分の減少に相当します。
対策: 毎日7〜9時間の睡眠を確保することが、ホルモンバランス維持の最優先事項です。

2. 適正体重を維持する(特に肥満の解消)

体脂肪率が高いことと低テストステロンには強い相関関係があります。
根拠: 脂肪細胞には「アロマターゼ」という酵素が存在し、これがテストステロンをエストロゲン(女性ホルモン)に変換してしまいます。多くの臨床試験において、肥満男性が減量を行うことでテストステロン値が有意に回復することが確認されています。
対策: BMI(体格指数)が25以上の場合は、減量が最も効果的なテストステロン向上策となります。

3. ストレスホルモン(コルチゾール)の管理

ストレスを感じると分泌される「コルチゾール」とテストステロンは、シーソーのような関係にあります。
根拠: 心理学的および生理学的研究において、血中のコルチゾールレベルが上昇すると、テストステロンレベルが急激に低下することが示されています。これは、体が緊急事態(ストレス状態)において、生殖機能や筋肉合成よりも生存を優先するためと考えられています。

テストステロンを増やす「運動」

運動は有効ですが、種類と強度が重要です。

1. レジスタンストレーニング(筋トレ)

最もエビデンスが豊富な運動形態です。
根拠: 多くの生理学的研究により、大筋群(足、背中、胸など)を使った高強度のレジスタンストレーニング(要するに筋トレ)を行った直後から、血中のテストステロン濃度が上昇することが確認されています。
推奨: スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどの「多関節運動(コンパウンド種目)」を中心に、週2〜3回のトレーニングを行うことが推奨されます。ただし、肥満の方は膝にかなりの負担がかかるため、専門家の元でトレーニングを行いましょう。

2. 高強度インターバルトレーニング(HIIT)

根拠: 短時間の激しい運動と休息を繰り返すHIITも、テストステロンレベルを上昇させる効果があることが研究で示されています。
注意点: 一方で、長距離マラソンのような「長時間の過度な有酸素運動」は、コルチゾールを増加させ、逆にテストステロンを低下させる可能性があることがスポーツ医学の研究で指摘されています。

科学的に推奨される「食生活・栄養」

特定の食材を食べるというよりも、「何が不足すると下がるか」を理解し、ホルモンの材料を供給することが重要です。

1. 十分なタンパク質・脂質・炭水化物のバランス

極端な食事制限はホルモン生成を妨げます。
脂質の重要性: テストステロンはコレステロールから作られるステロイドホルモンです。したがって、脂質を極端にカットする食事(ローファットダイエット)は、テストステロンレベルを低下させることが『Journal of Steroid Biochemistry』などで報告されています。
推奨: オリーブオイル、アボカド、ナッツ、全卵などの良質な脂質を適度に摂取してください。
タンパク質: 筋肉維持と適正体重の維持に不可欠ですが、過剰摂取(カロリーオーバー)には注意が必要です。

2. 亜鉛の摂取

亜鉛はテストステロン生成に不可欠なミネラルです。
根拠: 亜鉛欠乏症の男性に亜鉛を補給したところ、テストステロンレベルが上昇したという研究があります。一方で、すでに十分な亜鉛が足りている人が過剰に摂取しても効果は限定的です。
食材: 牡蠣(カキ)、赤身の肉、カシューナッツなど。
注意: 汗とともに流出しやすいため、運動習慣がある人は特に意識が必要です。

3. ビタミンDの充足

ビタミンDは単なるビタミンではなく、体内でホルモンのように作用します。
根拠: オーストリアのグラーツ医科大学の研究などにより、血中ビタミンD濃度が高い男性はテストステロンレベルも高い傾向にあること、またビタミンD不足の男性への補給がレベルを改善させることが示されています。
対策: 日光浴(1日15〜20分)、または魚類(鮭、サバ)、卵黄の摂取。不足しがちな場合はサプリメントも有効な選択肢です。

4. マグネシウム

根拠: 活動的な男性において、マグネシウムの摂取がテストステロンレベルと正の相関があることが示されています。
食材: ほうれん草、アーモンド、黒豆、全粒穀物。

避けるべきもの(阻害要因)

増やすことと同じくらい「下げないこと」が重要です。
過度のアルコール: 肝臓での代謝プロセスにおいてテストステロンの生成を阻害し、分解を早めます。また、慢性的な飲酒は精巣機能にダメージを与えます。
加工食品と砂糖: 砂糖の過剰摂取によるインスリンレベルの急上昇は、一時的にテストステロンを低下させることが知られています。
プラスチック製品(BPAなど): 一部のプラスチックに含まれるビスフェノールA(BPA)などの化学物質は「内分泌かく乱物質」として働き、ホルモンバランスを崩すリスクが多くの環境医学研究で懸念されています。

まとめ

科学的根拠に基づくと、テストステロンを増やすための最短ルートは「特効薬を探すこと」ではなく、「体の基本的な機能を最適化すること」にあります。
明日から実践すべき具体的なアクションは以下の通りです。
睡眠: 毎日7時間以上寝る。
運動: 週2回、スクワットなどの筋力トレーニングを行う。
食事: 加工食品を減らし、肉・魚・卵・野菜を中心とした自然な食材から、タンパク質と良質な脂質、亜鉛、ビタミンDを摂取する。
体型: 太り気味であれば、適正体重まで落とす。

深刻なテストステロン低下(性機能障害、極度の疲労感など)が疑われる場合は、泌尿器科やメンズヘルス外来を受診し、血液検査を受けることをお勧めします。

参考文献

1. 睡眠とテストステロン: Leproult R, Van Cauter E. “Effect of 1 week of sleep restriction on testosterone levels in young healthy men.” JAMA. 2011. doi: 10.1001/jama.2011.710
2. 肥満とテストステロン: Fui MN, Dupuis P, Grossmann M. “Lowered testosterone in male obesity: mechanisms, morbidity and management.” Asian J Androl. 2014. DOI: 10.4103/1008-682X.122365
3. ストレスとホルモン: Brownlee KK, et al. “Relationship between circulating cortisol and testosterone: influence of physical exercise.” J Sports Sci Med. 2005. PMCID: PMC3880087
4. 脂質摂取とテストステロン: Volek JS, et al. “Testosterone and cortisol in relationship to dietary nutrients and resistance exercise.” J Appl Physiol. 1997. DOI: 10.1152/jappl.1997.82.1.49
5. 亜鉛の効果: Prasad AS, et al. “Zinc status and serum testosterone levels of healthy adults.” Nutrition. 1996. DOI: 10.1016/s0899-9007(96)80058-x
6. ビタミンDの効果: Pilz S, et al. “Effect of vitamin D supplementation on testosterone levels in men.” Horm Metab Res. 2011. DOI: 10.1055/s-0030-1269854

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