プロテインの7割が鉛汚染?『植物性はヘルシー』に潜む危険な落とし穴|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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プロテインの7割が鉛汚染?『植物性はヘルシー』に潜む危険な落とし穴

プロテインの7割が鉛汚染?『植物性はヘルシー』に潜む危険な落とし穴|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2025年12月31日

プロテインの7割が鉛汚染?『植物性はヘルシー』に潜む危険な落とし穴

健康維持や筋力アップのために多くの人が日常的に摂取しているプロテイン(タンパク質)製品ですが、その中には鉛、ヒ素、カドミウムといった有害な重金属が含まれている可能性があります。これは一部の粗悪品に限った話ではなく、大手メーカーの製品やオーガニック製品においても確認されている事実です。
ここでは、Consumer Reports(コンシューマー・レポート)が実施した衝撃的な調査結果を中心に、その実態と健康への影響、私たちが取るべき対策について解説します。

Consumer Reportsによる最新調査(2025年)の衝撃

米国では過去15年間でプロテインへの関心が急速に高まり、かつてニッチな商品であったプロテインパウダーやシェイクは、現在では数十億ドル規模のウェルネス産業の中心となっています 。米国の非営利消費者組織であるConsumer Reportsは、プロテイン製品の安全性について度々大規模な調査を行っています。2025年10月に公表された最新の調査では、市販されている主要な23種類(植物性、乳由来、牛肉由来を含む)のプロテイン製品(パウダーおよびシェイク)を対象に、重金属の含有量が測定されました。特筆すべきは、15年前に行われた同様の調査と比較して、平均的な鉛の検出レベルが上昇しており、検出限界以下(不検出)であった製品が減少しているという点です 。[link]

主な調査結果

7割近くが基準値超え: テストされた製品の3分の2以上(約70%)において、わずか1食分(1スクープなど)に含まれる鉛の量が、Consumer Reportsの定める「1日あたりの安全上の懸念レベル(0.5マイクログラム)」を超過していました。中には、この基準値を10倍以上も上回る製品も確認されました。
植物性プロテインのリスク: 特に汚染が深刻だったのは、大豆やエンドウ豆などを原料とする「植物性プロテイン」でした。これらは動物性プロテイン(ホエイやカゼイン)と比較して、平均して約9倍もの鉛を含んでいることが判明しました。
「オーガニック」は安全を保証しない: 一般に安全性が高いイメージのある「オーガニック認証」を受けた植物性プロテインであっても、重金属濃度が高いケースが多数報告されています。これは農薬の使用有無に関わらず、植物が土壌から重金属を吸収してしまうためです。

具体的な「避けるべき」製品例

同レポートでは、鉛やカドミウムの含有量が極めて高く、「摂取を避けるべき(Do not consume)」と強く警告された具体的な製品も挙げられています。
Naked Nutrition’s Vegan Mass Gainer: 1食あたりの鉛含有量が約7.7マイクログラムに達しており、これは同団体の懸念レベルの約15倍にあたります。
Huel Black Edition: 鉛だけでなく、カドミウムの含有量も高く、複合的なリスクが指摘されました。


Protein Powders and Shakes Contain High Levels of Leadより引用

なぜプロテインに重金属が混入するのか?

もちろんメーカーが意図的に毒物を入れているわけではありません。主な原因は、原料となる農作物の「生育環境」と「植物の生理学的特性」にあります。

植物の「吸着」性質

プロテインの原料となる植物(特に大豆、エンドウ豆、米、カカオなど)は、土壌に含まれるミネラルを効率よく根から吸収する性質を持っています。この際、栄養となるミネラルだけでなく、土壌中に存在する鉛、カドミウム、ヒ素などの有害金属も一緒に吸い上げてしまいます。
これを「生物濃縮」と呼びます。たとえ化学肥料を使わない有機栽培であっても、土壌そのものが(過去の工業活動や排気ガス、自然由来の成分によって)汚染されていれば、植物体内の重金属濃度は高まります。
動物性プロテインが比較的「クリーン」な理由
一方、ホエイ(乳清)などの動物性プロテインは、牛が植物を食べ、その体内で一度消化・吸収・排出のプロセスを経るため、一種の「生体フィルター」がかかった状態になります。その結果、最終的な乳製品に出てくる重金属量は、植物に直接由来するものより低くなる傾向があります。
ただし、チョコレート味などのフレーバー付けに使用されるココアパウダーなどが汚染源となるケースもあります。

健康へのリスク:見えない蓄積毒性

「1回飲んだだけで倒れる」というような急性中毒のリスクは低いです。しかし、Consumer Reportsや毒性学の専門家が警告するのは、「低用量の長期摂取による蓄積リスク」です。

鉛の脅威

鉛には「これ以下なら安全」と言える閾値が存在しません。
脳への影響: 鉛は神経系にダメージを与えます。特に胎児や小児の発達中の脳には壊滅的な影響を与え、IQの低下や行動障害を引き起こす可能性があります。大人であっても、高血圧、腎機能低下、認知機能の低下に関連しています。
骨への蓄積: 鉛は体内でカルシウムと似た挙動を示し、骨に蓄積されます。そして数十年かけて血液中に溶け出し、持続的に内臓を攻撃します。

カドミウムとヒ素

カドミウム: 腎臓に特異的に蓄積し、一度入ると10年〜30年は排出されません。長期的に腎機能を破壊し、骨をもろくします。
ヒ素: 特に玄米プロテインで問題になります。無機ヒ素は強力な発がん性物質であり、肺がん、皮膚がん、膀胱がんのリスクを高めます。

カクテル効果(複合汚染)

Consumer Reportsの調査でも、1つの製品から鉛、カドミウム、ヒ素など複数の重金属が同時に検出されるケースがありました。これらが体内で組み合わさることで、単独で摂取するよりも強い毒性を発揮する「カクテル効果」が懸念されています。

消費者がとるべき対策と選び方

すべてのプロテインが危険なわけではありません。リスクを最小限に抑えつつ利用するための、具体的な防衛策をまとめました。

植物性プロテインへの依存を見直す

もしあなたがビーガン(完全菜食主義者)や乳糖不耐症でないならば、ホエイやカゼインなどの動物性プロテインを選ぶのが、重金属リスクを下げる最も確実な方法の一つです。調査データにおいて、動物性は植物性よりも圧倒的に汚染度が低いことが示されています。

植物性を選ぶなら「種類」と「量」に注意

植物性を選ぶ場合、比較的リスクが高いとされる「ライスプロテイン」単体の大量摂取は避け、エンドウ豆や大豆などをローテーションすることを推奨します。また、Consumer Reportsは、植物性プロテインを使用する場合は「毎日摂取しない(週に数回に留める)」、または「1回の摂取量を減らす」ことを提案しています。

第三者機関の認証マークを確認する

「NSF Certified for Sport」や「Informed Choice」などの認証マークは、製品が独立した機関によってテストされ、禁止物質や有害物質が基準値以下であることを示しています。メーカーの自称ではなく、こうした客観的な保証がある製品を選びましょう。

フレーバー選び:バニラ vs チョコレート

ココアパウダー自体がカドミウムや鉛を含みやすいため、チョコレート系のフレーバーは重金属濃度が高くなる傾向があります。リスクを少しでも減らすなら、バニラ味やプレーン(ノンフレーバー)を選ぶのが賢明です。

「食事」を基本にする

プロテインパウダーはあくまで加工食品です。肉、魚、卵、豆腐などの「ホールフード(未加工食品)」からタンパク質を摂ることを基本にしてください。加工度が低い食品の方が、特定の汚染物質が濃縮されているリスクは低くなります。

結論

最新の科学的調査は、プロテイン製品、特に植物性プロテインに無視できないレベルの重金属(鉛など)が含まれていることを明らかにしています。
健康のために摂取しているはずが、逆に体に有害物質を蓄積させてしまっては本末転倒です。
「植物性=ヘルシー」という単純なイメージに流されず、「動物性プロテインの活用」「第三者認証のある製品の選択」「特定の製品に偏らない分散摂取」を心がけることが、賢い消費者の姿勢と言えます。

参考文献・出典一覧

1. Consumer Reports (米国消費者連盟), Protein Powders and Shakes Contain High Levels of Lead. [link]
内容要約: 2025年10月公表の最新調査記事。23種類のプロテイン製品を検査した結果、約7割で鉛の含有量が基準を超過していたことを報告。特に植物性プロテインのリスクが高く、具体的な製品名を挙げて注意喚起を行っている。
2. Bandara, S. B., Towle, K. M., & Monnot, A. D. (2020), A human health risk assessment of heavy metal ingestion among consumers of protein powder supplements. DOI: 10.1016/j.toxrep.2020.08.001
内容要約: プロテインパウダー製品に含まれる重金属(ヒ素、カドミウム、鉛、水銀)のリスク評価を行った論文。製品ごとの濃度のばらつきを分析し、毎日摂取した場合の非発がん性および発がん性リスクを定量的に評価している。
3. Balali-Mood, M., et al. (2021), Toxic Mechanisms of Five Heavy Metals: Mercury, Lead, Chromium, Cadmium, and Arsenic. (Frontiers in Pharmacology), DOI: https://doi.org/10.3389/fphar.2021.643972
内容要約: 鉛、カドミウム、ヒ素など主要な重金属の毒性メカニズムに関する最新の包括的レビュー。各金属がどのように臓器(腎臓、肝臓、脳など)に蓄積し、酸化ストレスや細胞機能障害を引き起こすかを詳細に解説している。
4. Dobson, R. L. M., et al. (2008), Identification of melamine and cyanuric acid as crystal-forming toxicants in the 2007 pet food recall. DOI: https://doi.org/10.1093/toxsci/kfn160
内容要約: 複数の化学物質(メラミンとシアヌル酸)の共曝露が、単独時よりも遥かに強い腎毒性を引き起こすメカニズムを解明した論文。プロテイン摂取における「複合汚染(カクテル効果)」のリスクを理解する上で重要な毒性学的基礎となる。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

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