体を支える鉄の働き|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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体を支える鉄の働き

体を支える鉄の働き|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2025年10月30日

全身に酸素を届ける運び屋さん ー 赤血球とヘモグロビン

鉄分が体に良い、と聞いたことはありますか?貧血予防に鉄分を、と意識している方も多いかもしれません。しかし、鉄が具体的に体の中でどのような働きをしているか、ご存知でしょうか。実は、鉄は私たちが生きていく上で欠かせない、非常に重要なミネラルの一つなのです。まるで、社会を支える縁の下の力持ちのように、体の隅々で休むことなく働き続けています。

私たちの体が活動するためには、エネルギーが必要です。そして、そのエネルギーを生み出すためには、たくさんの「酸素」が必要になります。この大切な酸素を、肺から体のすみずみまで運ぶ重要な役割を担っているのが、血液中の赤血球です。赤血球が酸素を運ぶことができるのは、「ヘモグロビン」という赤い色素たんぱく質を持っているからです。そして、このヘモグロビンの中心にいるのが、何を隠そう「」なのです。

酸素との結合

肺で呼吸をして取り込まれた酸素は、ヘモグロビンの中の鉄としっかりと結びつきます。鉄があるおかげで、ヘモグロビンは酸素をがっちりと捕まえることができるのです。

全身への運搬

酸素と結びついた赤血球は、血液の流れに乗って、心臓、脳、筋肉、皮膚、内臓など、体のあらゆる組織や細胞へと旅をします。

酸素の受け渡し

体の各組織に到着すると、今度は酸素を放して、細胞に新鮮な酸素を届けます。細胞はこの酸素を使ってエネルギーを作り出し、私たちは活動することができます。
もし体内の鉄が不足すると、ヘモグロビンを十分に作ることができなくなります。
その結果、赤血球が小さくなったり、数が減ったりして、全身に酸素を運ぶ能力が低下してしまいます。これが「鉄欠乏性貧血」です。
貧血になると、体が酸欠状態になり、疲れやすい、だるい、息切れがする、めまいがする、顔色が悪くなるなどの症状が現れるのはこのためです。

エネルギーを生み出す工場の働き手 ー ミトコンドリアと酵素

鉄の働きは、酸素を運ぶだけではありません。私たちが食事から摂った栄養素(糖質、脂質、たんぱく質)をエネルギーに変える過程でも、鉄は重要な役割を果たしています。

私たちの細胞の中には、「ミトコンドリア」という、エネルギーを生み出す小さな工場のような器官があります。鉄は、このミトコンドリアの中で働く「酵素」の重要な構成成分となっています。

酵素は、化学反応をスムーズに進めるための触媒のようなものです。エネルギーを生み出す過程は、いくつもの複雑な化学反応が連続して起こることで成り立っています。鉄を含む酵素は、これらの反応が効率よく進むように手助けをしているのです。

つまり、鉄が不足すると、エネルギー生産の効率が悪くなり、疲れやすさや倦怠感といった症状につながります。これは、酸素運搬能力の低下だけでなく、エネルギーそのものを作り出す力が弱まってしまうことも原因の一つなのです。

その他の重要な役割

筋肉の働きをサポート

鉄の活躍の場は、まだまだあります。
筋肉の中にも、「ミオグロビン」という、ヘモグロビンに似たたんぱく質が存在します。ミオグロビンも鉄を含んでおり、筋肉の中に酸素を貯蔵しておく役割があります。
これにより、運動などで急にたくさんの酸素が必要になった時に、すぐに酸素を供給することができます。

コラーゲンの生成

肌のハリや弾力を保つことで知られる「コラーゲン」。実は、このコラーゲンの合成にも鉄が必要です。
鉄は、コラーゲンの線維を強くしなやかにするために働く酵素を助けています。
鉄不足が肌のトラブルにつながる可能性も指摘されています。

神経伝達物質の合成

脳の神経細胞が情報をやり取りするために必要な「神経伝達物質」(セロトニン、ドーパミンなど)の合成にも、鉄は関わっています。鉄が不足すると、集中力の低下や、気分の落ち込みなどにつながることがあります。

免疫機能の維持

鉄は、私たちの体を細菌やウイルスから守る免疫細胞が正常に働くためにも必要です。

多すぎても少なすぎてもダメ ー 鉄バランスの重要性

このように、鉄は体にとって不可欠な栄養素ですが、一つ注意点があります。それは、過剰に摂取することも体に害を及ぼすということです。

体内で使われなかった鉄は、肝臓などに蓄積されます。この量が多すぎると、活性酸素を発生させ、細胞を傷つけてしまうことがあります。
そのため、私たちの体には、鉄の吸収を調節する仕組みが備わっています。体内の鉄が足りなくなると腸からの吸収率を高め、十分にあるときは吸収を抑えるようにできています。

しかし、サプリメントなどで意図的に大量の鉄を長期間摂取し続けると、この調節機能の限界を超えてしまい、過剰症を引き起こす可能性があります。
特に、アミノ酸キレート鉄(フェロケル鉄)のサプリメントを過剰に摂取すると、鉄が肝臓に蓄積されて肝機能障害を起こすことがあります。
貧血などの症状がある場合は、まず医師に相談し、適切な診断と指導を受けることが大切です。

まとめ

鉄は、単に血を作る材料というだけではありません。
全身に酸素を届ける、生命維持の根幹を担う
私たちが活動するためのエネルギーを生み出す
筋肉や皮膚、神経の働きを支える

など、私たちの健康を多方面から支える、まさに「縁の下の力持ち」です。鉄の働きを知ることで、日々の食事でレバーや赤身の肉、ほうれん草、小松菜、ひじきといった鉄分を多く含む食品をバランス良く摂ることの大切さを、改めて感じていただけたのではないでしょうか。
私たちの体は、食べたものから作られています。鉄という小さな栄養素が、体の中でダイナミックに働いていることを想像しながら、毎日の食事を楽しんでみてください。それが、健康で活力あふれる毎日につながっていくはずです。

吹田市長野東19-6
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

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