糖尿病シックデイ・完全対応ガイド|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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糖尿病シックデイ・完全対応ガイド

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2026年1月06日

糖尿病シックデイ・完全対応ガイド

シックデイとは何か?

糖尿病治療中に、発熱、下痢、嘔吐をきたす病気(風邪、インフルエンザ、胃腸炎など)にかかったり、食欲不振で食事が十分に摂れない状態のことを「シックデイ(Sick Day)」と呼びます。
なぜシックデイが危険なのか(科学的メカニズム)
シックデイの時、体の中では以下の2つの現象が同時に起こり、血糖値のコントロールが急激に乱れやすくなります。
高血糖になりやすい:
体は病気というストレスと戦うために、「ストレスホルモン(アドレナリンやコルチゾールなど)」を分泌します。これらはインスリンの働きを邪魔し、肝臓からのブドウ糖放出を促すため、食事をしていなくても血糖値が上昇しやすくなります。
ケトン体が増えやすい(ケトアシドーシス):
インスリンの効きが悪くなったり、脱水状態になったりすると、体はブドウ糖をエネルギーとして使えなくなります。代わりに脂肪を分解してエネルギーを作りますが、その燃えカスとして「ケトン体」という酸性物質が血液中に増えます。これが蓄積すると血液が酸性に傾き、「糖尿病ケトアシドーシス」という意識障害や昏睡を招く危険な状態になります。

シックデイの基本「3つの原則」

薬の調整の前に、まず家庭で行うべき基本処置があります。
1) 安静と保温
無理をして動くとエネルギーを消耗し、代謝異常を悪化させます。暖かくして横になり、体力を温存してください。
2) 水分摂取(最も重要)
発熱や下痢、嘔吐、高血糖による多尿により、体は急速に脱水状態になります。脱水は高血糖を悪化させ、血栓のリスクも高めます。
何を飲むか: お茶や水だけでなく、ミネラルを含むスポーツドリンクや経口補水液、スープなどが適しています。
量: 少なくとも1日1.0〜1.5リットル以上を目安に、少しずつ頻回に飲みます。
3) 栄養補給
「食べないと薬が飲めない」と焦る必要はありませんが、絶食状態が続くとケトン体が増えやすくなります。
消化が良く、口当たりの良いもの(おかゆ、ゼリー、アイスクリーム、果物、ジュースなど)を、摂れる範囲で摂取してください。

【重要】薬の飲み方・注射の使い方

シックデイでは、「飲んでいる薬の種類」によって対応が全く異なります。
特に注意が必要なのは、「絶対に休薬すべき薬」と「絶対にやめてはいけない注射(インスリン)」の区別です。
現在日本で処方されている全ての作用機序ごとに分類して解説します。
*大原則
以下は一般的な医学的指針です。主治医から「シックデイ・ルール」の指示が出ている場合は、必ずその指示に従ってください。

A. 内服薬(飲み薬)の対応

飲み薬は、食事が摂れない場合、原則として「減量」または「中止」します。
特に以下の特定薬剤は、重篤な副作用を防ぐために中止が必要です。

【グループ1】 脱水時に飲むと危険なため、即座に中止すべき薬

以下の薬は、シックデイ(特に脱水や食事摂取不良時)には、副作用リスクが跳ね上がるため中止します。
・ビグアナイド薬(メトホルミンなど)
商品名例:メトグルコ、グリコラン、メトホルミン
理由: この薬は肝臓での乳酸代謝に関わります。脱水や腎機能低下時に服用すると、体内に乳酸が蓄積し、致死率の高い「乳酸アシドーシス」を引き起こすリスクがあります。
・SGLT2阻害薬
商品名例:スーグラ、フォシーガ、ルセフィ、デベルザ、カナグル、ジャディアンス
理由: 尿から糖を出す薬ですが、脱水を助長します。さらに、血糖値がそれほど高くなくても危険なケトン体が増える「正常血糖ケトアシドーシス」を起こす特有のリスクがあります。シックデイの時は必ず中止してください。

【グループ2】 低血糖のリスクがあるため、食事量に合わせて調整する薬

インスリン分泌を促進する薬は、食事をしていないのに飲むと低血糖になります。
・SU薬(スルホニル尿素薬)
商品名例:アマリール、オイグルコン、グリミクロン
対応: 食事が半分以下なら半量、ほとんど食べられないなら中止します。
グリニド薬(速効型インスリン分泌促進薬)
商品名例:グルファスト、シュアポスト、スターシス
対応: 毎食ごとの服用薬です。その時の食事を摂らないなら中止、少し食べるなら量を減らすなど、食事摂取に合わせて調整します。

【グループ3】 消化器症状を悪化させるため、中止が望ましい薬

・α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
商品名例:ベイスン、グルコバイ、セイブル
理由: 糖の吸収を遅らせる薬です。副作用としてお腹の張りや下痢を起こしやすいため、シックデイ(特にお腹の風邪)の時に飲むと症状が悪化します。また、食事を摂っていないと効果がないため、中止します。
・イメグリミン(グリミン系)
商品名:ツイミーグ
理由: 消化器症状(吐き気・下痢)が出ることがあります。また、作用機序の一部がメトホルミンと類似している可能性があるため、シックデイ時は安全を見て中止することが一般的です。

【グループ4】 相対的にリスクは低いが、食事量に応じて休薬を検討する薬

・DPP-4阻害薬
商品名例:ジャヌビア、グラクティブ、ネシーナ、トラゼンタ、エクア、テネリア、スイニー、オングリザ、ザファテック
対応: 単独では低血糖リスクが低いため、比較的安全ですが、全く食事が摂れない場合は効果が期待できないため中止を検討します。
・チアゾリジン薬
商品名:アクトス
対応: 即効性はなく、低血糖リスクも低いですが、水分貯留(むくみ)の副作用があるため心不全リスクがある場合などは注意が必要です。食事が摂れない状況なら、一時的に中止しても大きな問題はありません。

B. 注射薬の対応

注射薬、特にインスリンは「自己判断での中止」が最も危険です。

インスリン製剤

絶対に全てのインスリンを完全に止めてはいけません。
食事が摂れなくても、体は基礎的なインスリン(生きるために必要なインスリン)を必要としています。インスリンが枯渇すると、短時間でケトアシドーシスに陥る危険があります。
持効型(基礎インスリン):
商品名例:トレシーバ、ランタス、レベミルなど
対応: 原則としていつも通りの量を打ちます。 食事をしていなくても、高血糖を防ぐために必要です。ただし、血糖値が極端に低い場合は医師の指示に従い減量します。
超速効型・速効型(食前インスリン):
商品名例:ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラ、ルムジェブなど
対応: 食事の量に合わせて調整します。
食事がいつもの半分程度 → インスリンも半分程度
食事が全く摂れない → 打たない、または血糖値が高ければ少量打つ(※事前に医師から「補正打ち」の指示を受けている場合のみ)
混合型・配合溶解インスリン:
商品名例:ライゾデグ、ノボラピッド30ミックスなど
対応: 基礎インスリン成分と食後用成分が混ざっているため調整が難しい製剤です。食事が摂れない場合は、量を半分〜2/3程度に減らして打つことが一般的ですが、低血糖には十分注意が必要です。

GLP-1受容体作動薬

商品名例:オゼンピック、トルリシティ、ビクトーザ、マンジャロ(GIP/GLP-1)など
対応: この薬には「胃の動きを抑える作用」があり、吐き気や食欲不振の副作用が出やすい特徴があります。
シックデイで既に吐き気や嘔吐、下痢がある場合、この注射を打つと症状が悪化し、脱水が進む危険があります。
そのため、消化器症状が強い場合は中止(スキップ)するのが安全です。

医療機関を受診すべきタイミング

自宅での対応には限界があります。以下の症状がある場合は、迷わずかかりつけ医に連絡、または救急受診をしてください。
消化器症状が激しい場合:
嘔吐や下痢が止まらず、水分が全く摂れない。
お腹の痛みが激しい(膵炎などの可能性)。
意識や呼吸の状態がおかしい場合:
意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い。
呼吸が荒い、息が深く速い(アシドーシスの兆候)。
血糖値の異常:
血糖値が350〜400mg/dL以上が続く。
逆に低血糖(70mg/dL以下)になり、ブドウ糖を摂っても回復しない。
その他:
38度以上の高熱が2日以上続く。
ご自身の判断に迷いや不安がある時。

まとめ

シックデイ対応の要点は以下の通りです。
体を温めて安静にし、水分を十分に摂る。
飲み薬: 特にSGLT2阻害薬とメトホルミンは中止する。その他の薬も食事が摂れないなら減量・中止を基本とする。
インスリン: 食事が摂れなくても、基礎インスリンは中断しない(量は調整する)。
我慢せずに相談: 嘔吐や高血糖が続くならすぐに病院へ。

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