肌老化の医学と漢方〜血流・抗酸化・腎の力で若さをつくる|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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肌老化の医学と漢方〜血流・抗酸化・腎の力で若さをつくる

肌老化の医学と漢方〜血流・抗酸化・腎の力で若さをつくる|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2025年12月14日

肌老化の医学と漢方〜血流・抗酸化・腎の力で若さをつくる

漢方医学において、肌は「内臓の鏡」とされ、皮膚表面の問題は体内のバランス(気・血・水)の乱れや、加齢による生命エネルギー(腎気)の低下にあると考えます。
今回は、単なる伝承ではなく、現代医学的な薬理作用や臨床試験で効果が示唆されているものを中心に執筆しました。

漢方医学における「肌の老化」の捉え方

西洋医学では、肌の老化をコラーゲンの減少、エラスチンの変性、活性酸素による酸化ストレス、ターンオーバーの遅延として捉えます。一方、漢方医学ではこれらを以下の3つの主要な概念で説明します。
腎虚(じんきょ): 加齢に伴い、生命力や水分保持能力が低下した状態。皮膚の乾燥、深いシワ、黒ずみに関連します。
瘀血(おけつ): 血行不良により、毛細血管の循環が悪化した状態。シミ、くすみ、目の下のクマの原因となります。
血虚(けっきょ): 皮膚に栄養が行き渡らない状態。肌の乾燥、艶の消失、小ジワの原因となります。
以下に、これらの病態に対応し、科学的データが存在する主な漢方薬を詳述します。

シミ・色素沈着・くすみに対する漢方薬

加齢に伴うシミ(老人性色素斑)や肝斑に対しては、血流を改善し、代謝を促進する駆瘀血剤(くおけつざい)が主に用いられます。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

適応】 体力があり、赤ら顔でのぼせやすい人のシミ、肩こり、月経不順。
【科学的根拠とメカニズム】
桂枝茯苓丸は、「瘀血」を取り除く代表的な漢方薬です。
臨床試験: 肝斑(かんぱん)に対する有効性が報告されています。二重盲検比較試験ではありませんが、ビタミンC製剤との併用や単独使用において、色素沈着の改善効果を示唆する臨床報告が複数存在します。
作用機序: 含有生薬である牡丹皮(ボタンピ)や桃仁(トウニン)には、抗炎症作用および微小循環改善作用があります。これにより皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が正常化され、メラニン色素の排出が促進されると考えられています。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

【適応】 色白で体力がなく、冷え性で貧血気味な人のくすみ、乾燥、むくみ。
【科学的根拠とメカニズム】
「血虚」と「水滞(すいたい)」を改善する処方です。
抗酸化作用: 当帰芍薬散のエキスには、活性酸素を除去する抗酸化作用があることが基礎研究で示されています。酸化ストレスは皮膚老化の主要因であるため、これを抑制することで老化予防に寄与する可能性があります。
血流改善: 末梢血管の血流を改善することで、皮膚細胞への酸素と栄養の供給を助け、顔色の悪さ(くすみ)を改善します。
メラニン生成抑制: 一部の研究では、チロシナーゼ活性(メラニンを作る酵素)を阻害する可能性が示唆されています。

ヨクイニン(ハトムギ)

ヨクイニンは、イネ科のハトムギの種皮を除いた種子です。
臨床効果: 青年性扁平疣贅(イボ)に対する保険適応がありますが、美容皮膚科領域では、皮膚のキメを整える目的で広く処方されます。
作用機序: ヒトにおける研究で、ヨクイニンの摂取が皮膚の角層水分量を増加させることが報告されています。また、表皮のターンオーバーを促進し、古い角質を排出する作用があるため、加齢による角質肥厚やくすみの改善が期待されます。

サフラン

臨床効果: 少量で強力に「瘀血(おけつ)」を取り除く、優れた活血作用を持つ生薬です。血液循環を促し、生理不順や冷え、痛みを改善します。また、気の巡りを整えてイライラや憂鬱な気分を鎮める、独特の「解鬱(かいうつ)」作用も併せ持ちます。
作用機序: 末梢循環を改善する作用機序として、血液中のPF-4という血小板マーカーが改善することが知られています。

乾燥・シワ・たるみに対する漢方薬

加齢による水分保持能力の低下(ドライスキン)は、皮膚のバリア機能を低下させ、炎症やシワの原因となります。ここでは「補腎(ほじん)」と「補血(ほけつ)」の薬剤が重要になります。

六味丸(ろくみがん) / 八味地黄丸(はちみじおうがん)

【適応】
六味丸: 体力が中程度以下で、ほてりがある人の皮膚乾燥、痒み。
八味地黄丸: 冷えがあり、夜間頻尿などを伴う高齢者の乾燥、腰痛。
【科学的根拠とメカニズム】
これらは「腎虚」を補う代表的な処方です。
水分保持機能の改善: 基礎研究(マウスモデル)において、八味地黄丸や六味丸の投与が、皮膚のフィラグリン(保湿因子の元となるタンパク質)の産生を促進し、角層水分量を回復させることが示されています。
抗老化作用: 含有される地黄(ジオウ)や山茱萸(サンシュユ)には強力な抗酸化作用があり、加齢に伴う組織の酸化変性を抑制する働きが報告されています。これは、加齢による皮膚の「枯れ」を防ぐ科学的裏付けとなります。

温清飲(うんせいいん)

【適応】 皮膚の色つやが悪く、のぼせがあり、皮膚がカサカサして色づいている(赤黒い)状態。
【科学的根拠とメカニズム】
四物湯(栄養を与える)と黄連解毒湯(熱と炎症を冷ます)を合わせた処方です。
抗炎症・抗アレルギー作用: 加齢により皮膚のバリア機能が低下すると、微弱な慢性炎症(Inflamm-aging)が起こりやすくなります。温清飲は、炎症性サイトカインの産生を抑制し、皮膚の炎症とかゆみを鎮めることが薬理学的に確認されています。
血行と保湿: 皮膚への血流を確保しつつ、炎症による乾燥を防ぐため、老人性乾皮症などの慢性的な皮膚トラブルに応用されます。

ストレス性・心身の疲れによる肌荒れ

現代社会において、精神的ストレスはホルモンバランスを崩し、肌の老化を加速させます。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

【適応】 イライラしやすく、肩こりやのぼせがある人の肌荒れ、シミ。
【科学的根拠とメカニズム】
自律神経の調整: 更年期障害に伴う不定愁訴に頻用されますが、皮膚症状に対しても有効な場合があります。ストレスによる血流障害を改善し、皮膚温を安定させる効果があります。
ホルモンバランス: 閉経前後の女性ホルモンの変動に伴う皮膚トラブル(肝斑の悪化など)に対し、全身状態を改善することで間接的に肌質を安定させます。

漢方薬の抗老化メカニズムの科学的総括

各漢方薬の効果は、単一成分ではなく「複合的な作用」によってもたらされますが、近年の薬理学研究により以下の3点が主な作用点として明らかになってきています。
抗酸化作用(Antioxidant Activity)
多くの生薬(牡丹皮、当帰、芍薬など)には、ポリフェノール類が含まれており、紫外線や代謝プロセスで発生する活性酸素種(ROS)を消去します。これにより、コラーゲンの分解やDNA損傷を防ぎます。
微小循環の改善(Improvement of Microcirculation)
皮膚への栄養供給は毛細血管に依存しています。駆瘀血剤は、血液粘度を低下させたり、血管内皮機能を改善したりすることで、皮膚末端まで酸素と栄養を届け、老廃物を回収します。
保湿因子の産生促進(Promotion of Moisturizing Factors)
地黄などの補腎薬は、表皮細胞におけるアクアポリン(水チャネル)やセラミド、フィラグリンの発現に影響を与え、内側からの保湿能力を高める可能性が示唆されています。

使用上の注意と副作用

漢方薬は「副作用がない」わけではありません。特に高齢者や長期服用においては以下の点に注意が必要です。
偽アルドステロン症: 甘草(カンゾウ)を含む製剤(多くの漢方薬に含まれます)を長期・大量に服用すると、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症が起こることがあります。
胃腸障害: 地黄(ジオウ)や当帰(トウキ)は、胃腸が弱い人には食欲不振や下痢を引き起こす可能性があります。
肝機能障害: 黄芩(オウゴン)を含む製剤をしようすると、まれに薬剤性肝障害が起こることがあります。
腸静脈硬化症:山梔子(サンシシ)を含む製剤を長期内服すると、腸静脈硬化症を起こすことがあります。

「肌に良さそうだから」という理由だけで自己判断で漫然と服用するのではなく、医師や薬剤師による「証(体質)」の診断に基づいて処方を選択することが、効果を得るための科学的な前提条件となります。

まとめ

科学的根拠に基づくと、加齢に伴う肌の衰えに対する漢方治療は以下のように整理できます。
シミ・くすみ・目の下のクマ(血流不全タイプ): 桂枝茯苓丸、当帰芍薬散
乾燥・深いシワ・弾力低下(機能低下タイプ): 六味丸、八味地黄丸
慢性的な乾燥・炎症・赤み(栄養不足+炎症タイプ): 温清飲
イボ・ざらつき・ターンオーバー不全: ヨクイニン
漢方薬は、レーザー治療のような局所的な即効性はありませんが、皮膚の「土壌」である身体内部の血流、水分代謝、抗酸化力を高めることで、エイジングケアの基盤を作ることが医学的に期待できます。

吹田市長野東19番6号

千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

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