CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)完全ガイド|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)完全ガイド

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2025年12月29日

CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)完全ガイド

CPAPとは? 基本的な仕組み

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)は、日本語で「経鼻的持続陽圧呼吸療法」と呼ばれます。
【仕組み】 睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中に喉の筋肉が緩み、舌根(舌の付け根)が沈下することで気道(空気の通り道)が塞がれてしまいます。 CPAPは、本体からホースとマスクを通じて、常に一定の圧力(陽圧)をかけた空気を気道に送り込みます。この空気の圧力が、内側から気道を押し広げる役割を果たし、睡眠中の気道の閉塞を防ぎます。 イメージとしては、「空気による添え木(スプリント)」を喉に当てている状態と考えると分かりやすいでしょう。
【装置の構成】
本体: 空気を圧縮し、設定された圧力で送り出す装置。静音性が高く、コンパクトなものが主流です。
チューブ(ホース): 本体とマスクをつなぐ管です。
マスク: 鼻だけを覆うタイプ(ネーザルマスク)が一般的ですが、口呼吸が多い人用の鼻口を覆うタイプ(フルフェイス)や、鼻の穴に直接差し込むタイプ(ピロータイプ)などがあります。
※CPAPは基本的に酸素を添加するものではなく、「部屋の空気」を圧力調整して送り込むものです。

期待できる効果(医学的エビデンス)

CPAP治療の効果は、翌朝すぐに実感できる「自覚的効果」と、長く続けることで得られる「医学的予後の改善」の2つに大別されます。

自覚症状の劇的な改善

治療を開始したその日から、以下のような変化を感じる方が多くいます。
いびきの消失: 気道が確保されるため、強烈ないびきが止まります(パートナーの睡眠環境も改善されます)。
日中の眠気の解消: 脳がしっかりと休息できるようになり、会議中や運転中の強烈な眠気がなくなります。
熟睡感と朝の目覚め: 「久しぶりに朝までぐっすり眠れた」「朝の頭がスッキリしている」という感覚が得られます。
夜間頻尿の改善: 無呼吸による心臓への負担が減ることで、夜間に尿意をもよおすホルモン(利尿ペプチド)の分泌が抑制され、トイレの回数が減ります。

長期的な健康リスクの低減(最重要)

SASは単に眠いだけの病気ではなく、全身の血管を痛めつける病気です。CPAPを行うことで以下のリスクを下げることが医学的に証明されています。
高血圧の改善: 無呼吸状態は交感神経を刺激し血圧を上げますが、CPAPにより血圧が下がりやすくなります(特に早朝高血圧)。
心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)の予防: 未治療の重症SAS患者は、健常者に比べて心血管疾患による死亡率が高いですが、CPAPを適切に使用することで、そのリスクを健常者と同レベルまで下げることが可能です。
糖尿病・代謝の改善: インスリン抵抗性が改善され、血糖コントロールが良くなる傾向があります。

日本における費用と保険適用

日本では、CPAP治療は健康保険の適用となりますが、「装置を購入する」のではなく「月々のレンタル契約」という形をとるのが一般的です。

保険適用の基準

簡易検査や精密検査(PSG検査)を行い、重症度を示す指数「AHI(無呼吸低呼吸指数)」に基づいて判断されます。
AHI 20以上: 多くの簡易検査や精密検査で保険適用の対象となります(自覚症状等の条件あり)。
AHI 40以上: 簡易検査のみでも即座に導入となるケースが多いです。

毎月の費用目安

定期的な外来受診(月に1回程度)とセットで費用が発生します。
3割負担の方: 月額 約4,500円 ~ 5,000円 程度
1割負担の方: 月額 約1,500円 ~ 1,700円 程度
この金額には、「診察代」「CPAP装置のレンタル料」「マスクや消耗品の交換費用」「管理指導料」が全て含まれています。
※長期処方や遠隔モニタリングの活用により、2〜3ヶ月に1回の通院で済む場合もありますが、毎月の「指導管理料」は発生します。

メリットとデメリット

非常に効果の高い治療法ですが、物理的な装置を装着して寝るため、デメリットや課題も存在します。

メリット

即効性: 装着したその晩から無呼吸が止まり、効果を実感しやすい。
非侵襲的: 手術のように体にメスを入れる必要がなく、副作用のリスクが極めて低い。
可逆的: 治療を中止すれば元の状態に戻るだけで、後遺症などは残らない。
調整可能: 体調や体重の変化に合わせて、空気圧の設定を医師が遠隔またはSDカード経由で調整できる。

デメリット・副作用

装着の違和感: 「マスクが気になって眠れない」「チューブが邪魔で寝返りが打ちにくい」という悩みが初期に多いです。慣れるまで1〜3ヶ月かかる場合があります。
皮膚トラブル: マスクが当たる鼻や頬がかぶれたり、跡がついたりすることがあります。
口や喉の渇き: 圧力がかかっている状態で口を開けて寝てしまうと、激しい乾燥(ドライマウス)が起きます。加湿器付きのCPAPを使用する等の対策が必要です。
腹部膨満感: 空気を飲み込んでしまい、朝起きるとお腹が張ったり、おならが出やすくなったりすることがあります(呑気症)。
旅行時の携帯: 出張や旅行の際も持参する必要があります(現在の機種は小型なので持ち運びは可能ですが、荷物にはなります)。

治療継続のポイントと「やめどき」について

治療を続けるコツ

CPAP治療の最大の課題は「継続率(アドヒアランス)」です。
マスクフィッティング: 違和感がある場合は、我慢せずに主治医に相談し、マスクの種類(鼻だけ、鼻口両用、鼻孔挿入型など)を変えてもらいましょう。これだけで快適さが劇的に変わります。
加湿機能の利用: 冬場などは加湿器(オプションまたは内蔵)を使うことで、鼻粘膜の不快感を軽減できます。

CPAPはやめられるのか?

「一生使い続けなければならないのか?」という質問は非常に多いです。 結論から言うと、「根本原因が解消されれば卒業可能」です。
SASの原因が「肥満による喉の脂肪沈着」である場合、減量(ダイエット)に成功し、再検査でAHIの数値が正常化すれば、CPAPを卒業できます。 しかし、日本人の場合は「顎が小さい(小顎症)」などの骨格的な問題が原因であることも多く、その場合は痩せても気道が広がらないため、長期的な使用が必要になるケースが多いのが実情です。
また、口腔内装置(マウスピース)への変更が可能な場合もありますが、重症の場合はCPAPほど確実な効果が得られないことがあります。

まとめ

CPAPは、単なる「いびき防止機」ではなく、「心臓と血管を守るための医療機器」です。
最初はマスクをつけて寝ることに抵抗感や煩わしさを感じるかもしれませんが、多くの患者さんが「世界が変わったように目覚めが良い」「もっと早くやればよかった」と口にします。 月額5,000円弱のコストはかかりますが、それによって脳卒中や心筋梗塞のリスクを回避し、日中のパフォーマンスを最大化できると考えれば、非常にコストパフォーマンスの高い投資と言えます。
もし導入を迷われている場合、あるいは使用中に不快感がある場合は、医師や医療機器メーカーのサポート担当者に遠慮なく相談し、自分に合った設定やマスクを見つけることが、快適なCPAPライフへの第一歩です。

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