2026年1月14日

HbA1cとは何か?
定義: HbA1cは、赤血球中のタンパク質である「ヘモグロビン(Hb)」に、血液中の「ブドウ糖(グルコース)」が結合したものです。これを糖化ヘモグロビンと呼びます。
生成メカニズム: 赤血球は酸素を運ぶ役割を持っており、その寿命は約120日(4ヶ月)です。血液中にブドウ糖が存在すると、酵素の働きを借りずに、ヘモグロビンのN末端バリンという部分にゆっくりと結合します(これを非酵素的糖化反応といいます)。
- 不可逆性: 一度結合したブドウ糖は、赤血球が寿命を尽くして壊れるまで離れません。
- 濃度依存性: 血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が高ければ高いほど、また高血糖の時間が長ければ長いほど、より多くのヘモグロビンが糖化され、HbA1cの値は上昇します。
なぜ「過去の平均」わかるのか: HbA1cは、採血した瞬間の血糖値ではなく、「過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖状態」を反映します。これは赤血球の寿命と代謝回転のサイクルに基づいています。
- 直近の血糖値の影響:約50%
- その前の1ヶ月の影響:約25%
- それ以前の影響:約25% このように、直近の状態がより強く反映される特性があります。
診断基準と基準値(日本糖尿病学会ガイドライン)
現在、日本の臨床現場では国際標準化されたNGSP値(National Glycohemoglobin Standardization Program)が使用されています。
判定区分
以下は、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」および「糖尿病治療ガイド2022-2023」に基づく区分です。
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区分 |
HbA1c値 (NGSP) |
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正常型 |
5.9% 以下 |
糖代謝異常は認められない範囲です。 |
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境界型 |
6.0% 〜 6.4% |
いわゆる「糖尿病予備軍」。将来的な糖尿病発症リスクが高い状態です。特に6.0%以上は強く疑われます。 |
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糖尿病型 |
6.5% 以上 |
糖尿病が強く疑われます。空腹時血糖値など他の検査と合わせて診断が確定します。 |
通常では基準値は6.0%未満とされていますが、特定健診では5.6%以上で特定保健指導の対象とされます。特定健診とは生活習慣病の予防を目的として、健康保険に加入する40〜74歳を対象に実施される健診のことです。
検査数値が基準値を超えた場合、保健師などの指導を受け生活習慣の改善に取り組む特定保健指導を行います。
推定平均血糖値(eAG)換算表
HbA1cの値から、「過去1〜2ヶ月間、24時間平均してこれくらいの血糖値が続いていた」という目安を知ることができます。
HbA1c – 推定平均血糖値(eAG)換算表
| HbA1c (%) | 推定平均血糖値 (mg/dL) | 状態の目安 |
| 5.0 | 97 | 正常範囲 |
| 5.5 | 111 | 正常高値 |
| 6.0 | 126 | 糖尿病の境界域 |
| 6.5 | 140 | 糖尿病診断の目安 |
| 7.0 | 154 | 合併症予防の目標値 |
| 7.5 | 169 | 治療強化を検討 |
| 8.0 | 183 | 高血糖が持続 |
| 8.5 | 197 | |
| 9.0 | 212 | 著しい高血糖 |
| 9.5 | 226 | |
| 10.0 | 240 | 早急な治療介入が必要 |
| 11.0 | 269 | |
| 12.0 | 298 |
計算式
この値は以下の計算式で算出されています。
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出典: Nathan DM, et al. Translating the A1C assay into estimated average glucose values. Diabetes Care. 2008.
この表を見るときの重要なポイント
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「24時間」の平均です
普段、健康診断や家庭で測定するのは「空腹時」や「食後」の一時点だけですが、eAGは寝ている間や食後のピーク時も含めた全時間の平均です。そのため、普段見ている血糖値(特に空腹時)よりも「高い」と感じることが多いです。
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例:普段の空腹時血糖が110〜120程度でも、食後に200近くまで上がっている時間帯があれば、平均値(eAG)は引き上げられ、HbA1cは高くなります。
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個人差があります
あくまで統計的な「推定値」です。赤血球の寿命が人によって異なるため、同じHbA1c値でも、実際の平均血糖値には多少の幅(誤差)があります。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介