「そのいびき治療、ちょっと待って!『無呼吸症候群』を隠してしまうレーザーの盲点」|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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「そのいびき治療、ちょっと待って!『無呼吸症候群』を隠してしまうレーザーの盲点」

「そのいびき治療、ちょっと待って!『無呼吸症候群』を隠してしまうレーザーの盲点」|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年5月27日

「そのいびき治療、ちょっと待って!『無呼吸症候群』を隠してしまうレーザーの盲点」

いびきに対するレーザー治療とは

睡眠時無呼吸症候群の特集が頻回にテレビ番組で特集され、いびきは睡眠時無呼吸症候群の危険なサインと認知されるようになりました。その影響か、ネットで「いびき治療」を検索するといびき治療に特化した自費診療クリニックの広告が目立つようになっています。

広告の中には、日本では存在しない、「いびき専門医」を標榜しているクリニックさえある状態です。

医療広告ガイドラインにおいて、「〇〇専門医」として広告できるのは、厚生労働大臣に届出がなされた団体(日本専門医機構や一部の学会など)が認定する資格のみに限定されています。
現在、公的に認められた「いびき専門医」という資格・名称は存在しません(関連するものとしては「日本睡眠学会専門医」や「耳鼻咽喉科専門医」などになります)。そのため、公的機関が認めていない独自の名称に「専門医」をつけて広告することはできません。

話を元に戻します。

いびきは、睡眠中に空気の通り道である気道が狭くなり、のどの粘膜が呼吸に合わせて振動することで発生します。このいびきを解消するための選択肢として、近年注目を集めているのがレーザー治療です。これは、のどの組織にレーザーを照射し、気道を広げたり粘膜を引き締めたりする治療法です。

しかし、いびきのレーザー治療には大きく分けて2つの全く異なるアプローチが存在し、いびきが静かになる一方で、健康上のリスクが隠れてしまうという重要な注意点もあります。ここでは、科学的な根拠に基づいたレーザー治療の仕組み、効果、そして治療を受ける前に知るべきリスクについて解説します。

2つの異なるレーザー治療

現在行われているいびきのレーザー治療は、のどの粘膜を切り取る「切るレーザー」と、熱によって引き締める「切らないレーザー」に分類されます。

1.のどの組織を切り取る治療(LAUP)

1つ目は、1990年代から行われてきた「レーザー口蓋垂軟口蓋形成術(LAUP)」です。これは、二酸化炭素レーザーなどを用いて、のどちんこ(口蓋垂)やその周辺の軟口蓋を部分的に切り取ったり削ったりして、空気の通り道を物理的に広げる手術です。

日帰りで行える手術として普及しましたが、その後の長期研究により課題が明らかになりました。医学的データによると、LAUPはいびきの音を一時的に小さくするものの、命に関わる病気である「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」を根本的に治す効果は低いとされています。そればかりか、手術後に約44%の患者で無呼吸の症状がかえって悪化してしまったという報告もあります。これは、傷ついたのどの組織が治る過程で硬くなって気道が狭まったり、気道を広げるための神経反射が弱まったりするためと考えられています。そのため現在、国際的なガイドラインでは睡眠時無呼吸症候群に対するLAUPの単独治療は推奨されていません。

2.粘膜を切らずに引き締める治療(エルビウムヤグレーザーなど)

2つ目は、近年登場した「ノンアブレーティブ(非蒸散性)レーザー治療」です。代表的なものに「エルビウムヤグレーザー(Er:YAGレーザー)」を使用した治療があります。

この方法は、のどの組織を切り取るのではなく、特殊なレーザー光をのどの粘膜に照射して、奥にあるコラーゲン繊維にマイルドな熱を与えます。熱によってコラーゲンが収縮し、新しいコラーゲンが生成される過程でのどの粘膜にハリが戻ります。これにより、睡眠中にのどが垂れ下がって気道を塞ぐのを防ぎ、いびきを抑えます。痛みが少なく出血もないため、手軽な治療として行われています。

2025年の最新のメタアナリシス(複数の論文を統合した研究)によると、この治療は短・中期(12〜24ヶ月程度)において、いびきの音を大幅に減少させ、患者の満足度も65〜85%と高いことが確認されています。しかし、睡眠時無呼吸症候群の指標には明確な改善が見られず、効果は永久ではないため、25〜40%の患者で定期的な追加治療(メンテナンス)が必要と報告されています。

レーザー治療に潜む大きな落とし穴

レーザー治療で最も注意すべきは、「いびきが消えること」と「病気が治ること」は違うという点です。

ただのいびき(単純性いびき症)であれば音が消えて解決しますが、いびきをかく人の多くは、睡眠中に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」を合併しています。もし無呼吸症候群があるのにレーザー治療でいびきの音だけを消してしまうと、周囲も本人も呼吸が止まっている危険な状態に気づきにくくなります。睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧や心筋梗塞、脳卒中などの重大な生活習慣病を引き起こす危険な病気です。いびきという危険を知らせるアラームをレーザーで消し去ることで、病気の発見や適切な治療が遅れてしまうことが、医療現場で最も懸念されています。

正しい治療の進め方

いびきを安全に治療するためには、以下のステップが科学的に推奨されます。

1.睡眠の精密検査を受ける

睡眠時無呼吸症候群の診断が正確に診断できる医療機関を受診し、自宅での簡易検査や病院での「終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査」を受けます。これにより、いびきが無呼吸を伴うものかを正確に把握します。

睡眠時無呼吸症候群の検査を受けずに、いきなりレーザー治療受けることはお勧めできません。

2.標準的な治療法を検討する

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、世界的な標準治療である「CPAP(持続陽圧呼吸療法)」や、専用のマウスピース(下あごを前に出して気道を広げる装置)が第一選択となります。これらは無呼吸そのものを改善し、生活習慣病のリスクを下げる確かなエビデンスがあります。

3.レーザー治療は慎重に選ぶ

睡眠時無呼吸症候群の検査を受けずにレーザー治療を受けた患者さんが、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けるために受診されました。結果は、AHI15を超えており、そもそもレーザー治療の適応ではない状態でした。レーザー治療により、いびきはすこし減ったかもしれませんが、レーザー治療前に検査を行っていないため正確な評価はできませんが、すくなくともレーザー治療を受けても睡眠時無呼吸症候群に対する治療が必要な状態でした。

無呼吸がない単純ないびきであると確認された場合や、標準治療がどうしても合わず、レーザーのリスクを十分に納得した上で、選択肢の一つとして検討するのが適切です。

いびきはのどの構造だけでなく、肥満や飲酒、骨格など様々な要因が絡み合って発生します。レーザーだけに頼るのではなく、生活習慣の改善も含めた総合的なアプローチが大切です。

参考文献

1.Effectiveness of the Er:YAG Laser in Snoring Treatment Based on Systematic Review and Meta-Analysis Results, Dembicka-Mączka D, Gryka-Deszczyńska M, Sitkiewicz J, Makara A, Fiegler-Rudol J, Wiench R. J Clin Med . 2025 Jun 19;14(12):4371. DOI: 10.3390/jcm14124371
要約: Er:YAGレーザーによるいびき治療の有効性と安全性を56件の研究から検証したメタアナリシス。短・中期的にいびき強度を有意に減少させ、65〜85%の高い患者満足度を示したが、長期的な効果に関するエビデンスは不足しており、無呼吸症候群の根本的改善には至らないことを指摘している。

2.Laser-Assisted Uvulopalatoplasty for Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-Analysis, Camacho M, Nesbitt NB, Lambert E, Song SA, Chang ET, Liu SY, et al. Sleep . 2017 Mar 1;40(3):zsx004. DOI: 10.1093/sleep/zsx004
要約: レーザー口蓋垂軟口蓋形成術(LAUP)の有効性を検証したメタアナリシス。LAUPはいびきを一時的に軽減するものの、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の成功率は23%にとどまり、逆に44%の患者で無呼吸指数が悪化した。結果から、LAUPの実施には慎重であるべきと結論づけている。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

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