「無呼吸」と「低呼吸」の違いについて|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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「無呼吸」と「低呼吸」の違いについて

「無呼吸」と「低呼吸」の違いについて|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年5月31日

「無呼吸」と「低呼吸」の違いについて

睡眠中に呼吸が止まる病気として知られる「睡眠時無呼吸症候群」。その診断のために受ける検査の報告書には、「無呼吸」と「低呼吸」という2つの言葉が並んでいます。どちらも呼吸の異常を指す言葉ですが、具体的に何が違い、健康にどのような影響を与えるのでしょうか。この記事では、国内外の医学的な専門基準に基づき、無呼吸と低呼吸の定義の違いや検査結果の読み方について詳しく解説します。

睡眠時の呼吸を測定する仕組み

睡眠時無呼吸症候群の精密検査は「ポリソムノグラフィー(PSG)検査」と呼ばれます。この検査では、寝ている間に体にセンサーを取り付け、鼻や口の「空気の流れ(気流)」、指先の「血液中の酸素の量(酸素飽和度)」、頭の「脳波」などを同時に記録します。これらのデータをもとに、専門の医療スタッフが睡眠中の呼吸の異常を1つずつ数え、その程度によって「無呼吸」か「低呼吸」かに分類していきます。

「無呼吸」とは:空気の流れがほぼ完全に止まる状態

無呼吸とは、文字通り「呼吸が無い」状態、つまり空気の流れがほぼ完全にストップしてしまう現象を指します。世界的な診断基準である米国睡眠医学会のガイドラインでは、以下のように定義されています。

・鼻や口での空気の流れが、それまでの正常な呼吸と比べて90%以上低下すること。

・その状態が10秒以上続くこと。

寝ているときに息の通り道である気道が完全に塞がったり、脳からの呼吸指令が止まったりすることで起こります。重症な方の場合、30秒から1分以上も続くことがあり、この間は体にまったく酸素が入ってこないため、体は強い窒息状態に陥ります。

「低呼吸」とは:空気の流れが部分的に弱まる状態

一方で、低呼吸とは「呼吸が低くなる」状態、つまり完全に止まってはいないものの、空気の流れが明らかに弱くなっている現象を指します。こちらも米国睡眠医学会の基準によって厳密に定義されています。

・鼻や口での空気の流れが、それまでの正常な呼吸と比べて30%以上低下すること。

・その状態が10秒以上続くこと。

さらに、血液中の酸素の量が3%以上低下するか、脳波上で睡眠が中断される「覚醒反応」を伴うこと。

つまり、低呼吸は「呼吸が完全にゼロにはなっていないけれど、体に悪影響を及ぼすほど不十分な呼吸になっている状態」と言えます。息が通りにくくなり、酸素の供給が減ったり、苦しさから脳が一瞬だけ目覚めて睡眠が妨げられたりすることでカウントされます。完全に止まっていないからといって、無呼吸より安全というわけではありません。体にかかる負担は無呼吸とほぼ同じです。

検査結果の要「AHI(無呼吸低呼吸指数)」とは

重症度を決めるときには、無呼吸と低呼吸の回数を別々に評価するのではなく、これらをすべて足し合わせた数字を使います。この指標を「AHI(無呼吸低呼吸指数)」と呼びます。

AHIは、睡眠1時間あたりに「無呼吸」と「低呼吸」が合わせて何回発生したかを示す平均回数です。例えば、7時間眠り、その間に無呼吸が70回、低呼吸が140回あった場合、合計210回を7時間で割った「30」がAHIとなります。

医療機関では、このAHIの数値をもとに重症度を分類しています。

・正常:AHIが5未満

・軽症:AHIが5以上、15未満

・中等症:AHIが15以上、30未満

・重症:AHIが30以上

治療が必要かどうか、どのような治療法を選択するかは、このAHIの数値や日中の眠気などの症状を総合的に見て判断されます。

一般的には、軽症に対する治療は、マウスピース。
中等症・重症に対する治療は、CPAPとなります。

なぜ低呼吸も見逃してはいけないのか

睡眠時無呼吸症候群という名前から「息が完全に止まること」ばかりに注目が集まりがちですが、実際の検査結果では、無呼吸よりも低呼吸の回数のほうが多い患者さんはたくさんいます。

低呼吸が頻繁に起こると、血液中の酸素が薄くなる状態と、脳が目覚める状態が何度も繰り返されます。これにより自律神経が刺激されて血圧が上昇し、心臓や血管に大きなストレスがかかります。日本循環器学会などのガイドラインでも指摘されているように、これらの呼吸障害を放置すると、高血圧や脳卒中、心筋梗塞、不整脈などの重大な心血管疾患を引き起こすリスクが著しく高まります。また、睡眠が細切れになることで日中に強い眠気や疲労感が生じ、日常生活の質が低下する原因にもなります。

まとめ

無呼吸と低呼吸は、空気の流れが止まっている度合い(90%以上低下か、30%以上低下か)に違いがあります。しかし、どちらも10秒以上続き、体に深刻なダメージを与える呼吸の異常である点に違いはありません。検査結果を見る際には、無呼吸の回数だけでなく、低呼吸の回数、そしてそれらを合わせたAHIに注目することが大切です。

参考文献

1.Rules for scoring respiratory events in sleep: update of the 2007 AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events, Berry RB, et al. J Clin Sleep Med . 2012 Oct 15;8(5):597-619. DOI: 10.5664/jcsm.2172

要約: 米国睡眠医学会(AASM)による睡眠時の呼吸障害(呼吸イベント)の判定基準に関するガイドライン論文。無呼吸および低呼吸の測定方法や定義、センサーの推奨基準などを統合・改訂し、睡眠時無呼吸症候群の臨床診断における世界的な標準スコアリング基準を確立した重要文献。

2.JCS 2023 Guideline on Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease, Kasai T, et al. Circ J . 2024 Oct 25;88(11):1865-1935. DOI: 10.1253/circj.CJ-23-0489

要約: 日本循環器学会等による、循環器疾患における睡眠呼吸障害(SDB)の診断・治療に関する最新ガイドライン。睡眠時無呼吸症候群の定義や検査法、重症度(AHI)の基準に加え、高血圧や心不全など心血管疾患との密接な関連性や治療戦略について科学的根拠に基づき包括的に解説した文献。

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