2026年7月12日

加齢で亜鉛は不足する?免疫力と味覚を保つための賢いミネラル習慣
亜鉛は、私たちの体に欠かせないミネラルのひとつです。体の中には約2000mgの亜鉛がありますが、体自身で作ることはできません。だからこそ、毎日の食事でこつこつ補う必要があります。
亜鉛は筋肉や骨、皮膚、肝臓、脳など、体のあちこちに存在しています。量はわずかでも、体調を支える「縁の下の力持ち」のような存在です。この記事では、亜鉛が体の中でどんな仕事をしているのか、お酒や加齢でなぜ不足しやすくなるのか、そして1日の目標量である15mgをどう摂ればよいのかを、わかりやすく解説します。
亜鉛が体の中でしている4つの仕事
亜鉛は、体の中で働く「酵素」というたんぱく質の材料になっています。体には数千種類もの酵素がありますが、そのうち約300種類が、正しく働くために亜鉛を必要としています。
ひとつ目は、細胞の生まれ変わりを支える仕事です。古い細胞が新しい細胞に置き換わるとき、DNAをコピーし、新しいたんぱく質を作る必要がありますが、亜鉛はこの過程で中心的な役割を果たします。子供の身長が伸びたり、健やかに成長したりするうえでも欠かせません。
ふたつ目は、味覚を正しく保つ仕事です。舌にある「味蕾(みらい)」という小さな器官が味を感じ取っていますが、この細胞はわずか10日〜2週間ほどで生まれ変わります。亜鉛が不足すると、真っ先にこの生まれ変わりが滞り、「味が薄く感じる」「何を食べても同じ味がする」といった症状につながります。
みっつ目は、免疫を支える仕事です。ウイルスや細菌と戦う白血球は、亜鉛が十分にあってはじめて元気に働けます。不足すると免疫の力が落ち、風邪をひきやすくなったり、感染症が治りにくくなったりすることが研究でわかっています。
よっつ目は、肌や髪の健康を保つ仕事です。肌や髪も細胞分裂がさかんな部分なので、亜鉛が不足すると新しい皮膚が作られにくくなり、肌荒れや湿疹が治りにくくなります。髪を作る細胞の働きも落ちるため、抜け毛やパサつきの原因にもなります。
お酒を飲むと亜鉛が減る3つの理由
お酒をよく飲む人は、体内の亜鉛が減りやすいことがわかっています。理由は主に3つあります。
1つ目は、アルコールの分解に亜鉛が使われるためです。飲んだアルコールは肝臓の「アルコール脱水素酵素」によって分解されますが、この酵素が働くには亜鉛が欠かせません。お酒を飲むほど、体に蓄えていた亜鉛がどんどん使われていきます。
2つ目は、尿と一緒に流れ出てしまうためです。アルコールには利尿作用があり、トイレの回数が増えます。それに伴って、本来体に残しておきたい亜鉛まで尿として排出されやすくなります。腎臓での再吸収がうまくいかなくなることも影響していると考えられています。
3つ目は、腸での吸収力が落ちるためです。習慣的にお酒を多く飲んでいると、胃腸の状態が乱れ、栄養を吸収する力が弱まります。食事で亜鉛を摂っても、うまく吸収されずに体外へ出てしまう割合が増え、慢性的な不足につながります。

年齢を重ねると亜鉛が不足しやすくなる理由
加齢も、亜鉛不足の大きな要因のひとつです。気づかないうちに不足している高齢者も少なくありません。
まず、食事の量や内容が変わることが挙げられます。年齢とともに食が細くなり、肉や魚介類など亜鉛を多く含む食材を食べる機会も減りがちです。亜鉛はもともと吸収率が高くないため、摂取量が減るとすぐに体内のレベルが下がってしまいます。
次に、消化吸収の力が衰えることも関係しています。加齢によって胃酸の分泌が減ると、食べ物に含まれる亜鉛が吸収されやすい形に変わりにくくなり、吸収効率が落ちてしまいます。
さらに、服用している薬の影響も見逃せません。高血圧や心疾患などで利尿薬や降圧薬を使っていると、副作用として亜鉛が尿に排出されやすくなることがあります。加齢による免疫力の低下と亜鉛不足は密接に結びついており、亜鉛が減ると味覚も落ちて食欲が下がり、さらに摂取量が減るという悪循環に陥りやすくなります。
1日15mgを目安に、何をどう食べればいい?
厚生労働省が定める1日の推奨量は、成人男性で約11mg、女性で約8mgです。ただしこれは、健康な人が欠乏症を起こさないための最低限の目安にすぎません。
現代の生活では、ストレスや加工食品の多用、お酒の習慣、加齢による吸収力の低下など、亜鉛を通常以上に消耗する要因がたくさんあります。そのため、味覚や免疫力、肌や髪の健康を積極的に維持したい場合には、「1日15mg」をひとつの目標として意識するとよいでしょう。この数値は、海外の基準や健康維持向けサプリメントでも広く使われています。
亜鉛を多く含む代表的な食材は「牡蠣(かき)」です。100gあたり約13〜14mgもの亜鉛を含んでおり、大粒のものなら数個食べるだけで1日の目標量に届きます。ほかにも、牛肉や豚肉の赤身、レバー、うなぎ、卵黄、カシューナッツやアーモンドなどのナッツ類、大豆製品にも多く含まれています。
吸収率を高める工夫も大切です。動物性たんぱく質と一緒に摂ると吸収されやすくなり、レモンなどの柑橘類に含まれるビタミンCやクエン酸も吸収を助けます。生牡蠣にレモンを絞って食べるのは、味だけでなく栄養の面でも理にかなっています。
一方で、インスタント食品やスナック菓子に多く使われる食品添加物は、腸内で亜鉛と結びついて体外に排出してしまうことがあるため、食べすぎには注意しましょう。サプリメントで補う場合も、長期間大量に摂り続けると銅の不足を招くことがあるため、1日の摂取上限量である30〜40mgを超えないようにしてください。

おわりに
亜鉛は、私たちが生きていくうえで欠かせないミネラルですが、体にたくさん蓄えておくことができません。だからこそ、毎日の食事から少しずつ、確実に補い続けることが大切です。
特にお酒をよく飲む方や、年齢とともに食が細くなってきた方は、知らないうちに亜鉛不足になっているかもしれません。日々の食生活を見直しながら、1日15mgを目安に、意識的な亜鉛摂取を心がけてみてください。
参考文献
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要約: アルコールが肝臓での亜鉛の働きを妨害し、細胞内の亜鉛不足を引き起こすメカニズムを解説。亜鉛不足がアルコールによる肝臓へのダメージや酸化ストレスを悪化させる原因になることを示した重要なレビュー文献。
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要約: 日本臨床栄養学会による亜鉛欠乏症の診断基準と治療方針をまとめた実践的ガイドライン。味覚障害や肝硬変の患者において、亜鉛欠乏がどのように進行し、亜鉛補充が症状改善にいかに有効であるかを解説した文献。
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要約: 亜鉛の生体内での触媒・構造・調節機能を包括的に解説し、欠乏が様々な疾患の発症に関与しうることを示した総説。
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要約: 慢性飲酒による亜鉛トランスポーターの変化が肝臓、腸、肺、脳の亜鉛欠乏を引き起こす機序を整理した総説。
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要約: 加齢による免疫機能低下(免疫老化)と亜鉛欠乏の関連、および亜鉛補充の意義を最新知見に基づき論じた総説。
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要約: 感染・炎症時における亜鉛の恒常性維持機構と、免疫応答での役割を解説した総説。
8.日本人の食事摂取基準(2025年版).厚生労働省.[link]
要約: 日本人の性別・年齢別の亜鉛推奨量、耐容上限量を定めた公的な食事摂取基準。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介