初夏からの長引く鼻水、実は「イネ科」かも?〜日常に潜む花粉症のメカニズムと実践的対策〜|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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初夏からの長引く鼻水、実は「イネ科」かも?〜日常に潜む花粉症のメカニズムと実践的対策〜

初夏からの長引く鼻水、実は「イネ科」かも?〜日常に潜む花粉症のメカニズムと実践的対策〜|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年5月17日

初夏からの長引く鼻水、実は「イネ科」かも?〜日常に潜む花粉症のメカニズムと実践的対策〜

はじめに

花粉症と聞くと、春先に猛威を振るうスギやヒノキを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、初夏から秋にかけて鼻水や目のかゆみに悩まされている方も非常に多く存在します。その原因として大きな割合を占めているのが「イネ科」の植物による花粉症です。私たちの身近な生活圏である空き地、道端、河川敷などに当たり前のように生えている雑草が原因となるため、生活環境によってはスギ花粉以上に日常的な対策が必要になる身近なアレルギー疾患です。

当院は万博記念公園の近くに立地しているため、イネ科のアレルギーをお持ちの患者さんの受診が多いようです。

2026年ゴールデンウィークも終わり、ヒノキの花粉症が一息ついたと思ったら、イネ科の花粉症がひどくなり、抗アレルギー剤の処方を希望される患者さんが増えてきました。

この解説では、イネ科花粉症の特徴、症状、注意すべき食べ物、そして対策についてわかりやすくお伝えします。

原因となるイネ科植物と飛散の時期

イネ科の植物は地球上のほぼあらゆる環境に広く分布しています。日本において花粉症の主な原因となっているのは、日本古来の植物というよりも、明治時代以降に牧草として海外から輸入された外来種です。代表的なものとして「カモガヤ」や「オオアワガエリ(別名チモシー)」といった植物が挙げられます。これらは成長が早く繁殖力も強いため、牧場から逃げ出して野生化し、全国の河川敷や公園、堤防、空き地などに広く定着しています。
当院にもイネ科のアレルギー持ちのスタッフがいますが、万博記念公園や河川敷に行くと、くしゃみ、鼻水、眼にかゆみが出るそうです。

花粉の飛散時期は植物の種類や地域によって異なりますが、最大のピークは初夏にあたる5月から7月頃です。ただし、イネ科の植物は非常に種類が多く、それぞれの開花時期が少しずつずれているという厄介な特徴があります。そのため、早いものでは4月から花粉を飛ばし始め、遅いものでは秋口の10月頃まで花粉を飛散させ続けます。夏風邪だと思っていた長引く鼻水やくしゃみが、実はイネ科の花粉症だったというケースも少なくありません。

スギ花粉症との飛散方法の大きな違い

イネ科の花粉症対策を考える上で最も重要なのは、スギ花粉とイネ科花粉の「飛び方の違い」を理解することです。

スギやヒノキなどの樹木は背が高く、花粉自体も風に乗って遠くまで飛びやすい構造をしています。そのため、数十キロメートルから数百キロメートルも離れた山から飛んできて、大都市の真ん中に住んでいる人の目や鼻にも到達します。

一方で、イネ科の植物は雑草であり、背丈が数十センチから高くても2メートル程度と非常に低く地面に近い位置にあります。さらに、花粉もそれほど遠くまでは飛びません。風に乗って飛散する距離は、せいぜい数メートルから数十メートル、長くても数百メートル程度と言われています。これはつまり、原因となる植物が生えている場所に「自ら近づかなければ」花粉を大量に浴びるリスクは大幅に下げられるということを意味しています。

イネ科花粉症の主な症状

イネ科花粉症の症状は、基本的には他の花粉症と同じアレルギー性鼻炎・結膜炎の症状です。異物である花粉を体から追い出そうとする免疫反応によって、頻回な「くしゃみ」、水のようにサラサラとした「鼻水」、そして粘膜が腫れることによる「鼻づまり」が引き起こされます。

また、スギ花粉症と比較して、目に強い症状が出やすい傾向があるとも言われています。強い目のかゆみ、充血、涙目などに悩まされる方が多いです。さらに、半袖や半ズボンなどで肌が露出している時期と重なるため、直接肌に花粉が触れることで「肌の赤み」や「かゆみ」、「湿疹」などの皮膚症状が現れることもあります。気管支が過敏な方や喘息の持病がある方は、花粉を吸い込むことで咳が止まらなくなったり、喘息の発作が引き起こされたりすることもあるため、特に注意が必要です。

口腔アレルギー症候群(果物・野菜との交差反応)について

イネ科の花粉症を理解する上で非常に重要であり、かつ一般的にあまり知られていないのが「口腔アレルギー症候群(花粉−食物アレルギー症候群)」と呼ばれる合併症の存在です。

これは、イネ科の花粉症を持つ人が、特定の果物や野菜を生で食べた直後に、唇、口の中、喉の奥などに強いかゆみ、ピリピリとした刺激感、イガイガ感、腫れなどのアレルギー症状が現れる現象です。ひどい場合には、胃痛や吐き気、まれに全身の蕁麻疹やアナフィラキシーショック(血圧低下や呼吸困難など)といった重篤な症状を引き起こすこともあります。

なぜ花粉症の人が特定の食べ物でアレルギーを起こすのでしょうか。それは「交差反応」と呼ばれる免疫システムの勘違いが原因です。イネ科の花粉に含まれるアレルギーの原因となるタンパク質と、ある種の果物や野菜に含まれるタンパク質の立体構造が非常に似ています。そのため、果物を食べただけなのに、体内の免疫細胞が「花粉が侵入してきた」と錯覚して攻撃を始め、アレルギー反応を起こしてしまうのです。

イネ科の花粉症と関連が深い食べ物には、メロン、スイカ、トマト、キウイフルーツ、オレンジ、バナナ、ピーナッツなどがあります。イネ科花粉症を持つ全員が発症するわけではありませんが、これらの食べ物を口にした際に少しでも違和感を覚えた場合は、無理に食べ続けず速やかに食べるのをやめてください。多くの場合、原因となるタンパク質は熱や胃酸に弱いため、加熱調理を行えば食べられることがありますが、重症化を防ぐためにも自己判断は避け、医師の指導を仰ぐことが重要です。

自分でできる予防策と日常の対策

イネ科花粉は飛散距離が短いため、「花粉の発生源に近づかないこと」が最大の防御策となります。

第一に、花粉が飛散している時期の晴れた風の強い日には、河川敷、堤防の土手、雑草が生い茂る空き地、手入れのされていない公園などへの立ち入りを避けましょう。ウォーキングやジョギングをする際も、草むらの少ないアスファルトで舗装された道を選ぶなどのコース変更が有効です。

第二に、外出時の服装です。初夏は薄着になりがちですが、花粉が付着しやすいウールや綿素材は避け、ナイロンなどの表面がツルツルとした素材の服を着ることで花粉を室内に持ち込むリスクを減らせます。目や鼻を守るためのマスクや花粉症用のメガネも当然有効です。

第三に、帰宅時の対応です。家に入る前には、玄関先で衣服や髪の毛に付いた花粉をしっかりと払い落としてください。家に入ったらすぐに手洗い、うがい、洗顔を行い、可能であればそのままシャワーを浴びて体や髪の毛に付着した花粉を洗い流してしまうのが最も確実な対策です。また、花粉の飛散時期は洗濯物や布団を外に干さず、室内干しや乾燥機を活用することも大切です。ご自宅の庭に雑草が生えている場合は、花が咲いて花粉を飛ばす前にこまめに草刈りを行うことも忘れないでください。

治療法

イネ科の花粉症が疑われる場合は、耳鼻咽喉科やアレルギー科などの専門医療機関を受診しましょう。診断にあたっては、問診に加えて、血液検査によってイネ科の植物(カモガヤ、オオアワガエリなど)に対する特異的IgE抗体というアレルギー反応の強さを測る物質の数値を調べます。また、必要に応じて皮膚に微量の原因物質をつけて反応を見る皮膚テストが行われることもあります。

治療の基本は、症状を和らげるためのお薬を使う「薬物療法」です。アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬の飲み薬や、鼻の粘膜の炎症を直接鎮めるステロイド点鼻薬、目のかゆみを抑える点眼薬などが処方されます。花粉が飛び始める少し前から、あるいは軽い症状が出始めた直後からお薬を使い始める「初期療法」を行うことで、飛散のピーク時でも症状を軽く抑えやすくなります。

おわりに

イネ科の花粉症は、私たちの生活のすぐそばにある雑草が原因となるため、完全に避けることは難しいかもしれません。しかし、原因となる植物の特徴と飛散の仕組み、そして交差反応による食物アレルギーのリスクを正しく理解していれば、恐れることはありません。発生源に近づかないという基本的な対策を徹底し、医療機関での適切なお薬の処方を受けることで、辛い季節も十分に快適に過ごすことができます。長引く鼻水や、果物を食べた時の口の違和感など、少しでも気になる症状がある方は、自己判断で放置せずに、一度アレルギーの専門医を受診してご自身の体質を詳しく調べてみてください。

参考文献

  1. Oral allergy syndrome, Muluk NB, et al. American Journal of Rhinology & Allergy, 2018, DOI: 10.2500/ajra.2018.32.4489
    要約: 花粉と食物の交差反応によって引き起こされる口腔アレルギー症候群の概説論文です。イネ科花粉症の患者がメロン、トマト、オレンジなどでアレルギー症状を呈するメカニズムや、その診断と治療法について詳しく解説しています。
  2. Diagnostic evaluation of grass- and birch-allergic patients with oral allergy syndrome, Anhoej C, et al. Allergy, 2001, DOI: 10.1034/j.1398-9995.2001.056006548.x
    要約: イネ科およびシラカンバ花粉症で口腔アレルギーを持つ患者を対象とした診断評価に関する研究です。生鮮果物(メロンやリンゴなど)を用いた皮膚プリックテストが、安全かつ非常に高い診断精度を持つことを実証した重要な論文です。
  3. Plant Stress Scenarios Differentially Affect Expression and IgE Reactivity of Grass Group-1 Allergen (β-Expansin) in Maize and Rice Pollen, Phosri S, et al. Frontiers in Allergy, 2022, DOI: 10.3389/falgy.2022.807387
    要約: 気候変動などの環境ストレスが、イネ科植物の花粉に含まれる主要アレルゲンの発現量やアレルギー反応性にどのような影響を与えるかを解析し、今後の環境変化とイネ科花粉症の重症化リスクの関連を示唆した論文です。

 

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)

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