そのいびき、心臓の悲鳴かも?睡眠時無呼吸症が心血管イベントのリスクを3倍にするという研究結果|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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そのいびき、心臓の悲鳴かも?睡眠時無呼吸症が心血管イベントのリスクを3倍にするという研究結果

そのいびき、心臓の悲鳴かも?睡眠時無呼吸症が心血管イベントのリスクを3倍にするという研究結果|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2025年11月24日

そのいびき、心臓の悲鳴かも?睡眠時無呼吸症が心血管イベントのリスクを3倍にするという研究結果

多くの人にとって「いびき」は、家族から指摘される厄介なもの、あるいは単なる迷惑な騒音として片付けられがちです。しかし、そのいびきが、より深刻な健康問題のサインである可能性については、あまり知られていません。
では、いびきはいつ、単なる迷惑から医学的な警告へと変わるのでしょうか?
この問いに対し、医学雑誌『The Lancet』に掲載された画期的な研究に結果がまとめられています。
これは、睡眠中の呼吸障害と心血管系の健康との関連性を10年という長期間にわたって追跡した、前向き観察研究です。
このブログでは、その研究から得られた最も重要な発見を、分かりやすく解説していきます。

治療しない重度の睡眠時無呼吸症は、心血管イベントのリスクを3倍近くに高める

この研究で明らかになった最も大切な点は、治療を受けていない「重度」の閉塞性睡眠時無呼吸・低呼吸(OSAH: obstructive sleep apnoea-hypopnoea)を持つ男性は、致命的または非致命的な心血管イベントを経験するリスクが著しく高いという事実です。
ここで言う心血管イベントとは、致命的なもの(心筋梗塞や脳卒中による死亡)と、非致命的なもの(命には至らなかった心筋梗塞や脳卒中、冠動脈バイパス手術、経皮的冠動脈形成術など)の両方を含みます。

このリスクを具体的に見てみましょう。
年齢や肥満度などの他の要因を調整した後でも、重度のOSAHを持つ男性は、健康な男性と比較して、致命的な心血管イベントのリスクが2.87倍、非致命的なイベントのリスクが3.17倍に増加することが示されました。
これは、睡眠障害の重症度が、心臓発作や脳卒中といった生命を脅かす健康問題と、独立した強い関連性を持つことを科学的に確立した重要な発見です。

CPAP治療で、そのリスクは健康な人と同じレベルまで下がる!

一方で、この研究は非常に希望の持てる結果も示しています。
研究チームは、重度のOSAHと診断され、CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療を受けた患者グループも追跡しました。
致命的な心血管イベントの発生率(100人・年あたり)を比較すると、その差は一目瞭然です。
 ・健康な男性: 0.30
 ・CPAP治療を受けた患者: 0.35
 ・治療を受けなかった重症患者: 1.06
これは、100人を1年間追跡した場合、治療を受けなかった重症患者グループでは約1.06人が致命的な心血管イベントを経験するのに対し、健康な男性やCPAP治療を受けた患者ではその数が約0.3人まで減少することを意味します。
これらの数値が示すように、CPAPによる効果的な治療は、過剰な心血管リスクをほぼ完全に取り除き、患者のリスクを健康な参加者とほぼ同等のレベルまで引き下げていました。

軽度〜中等度の無呼吸症では、リスクの有意な増加は見られなかった

研究結果には、直感に反する意外な発見もありました。それは、治療を受けていない「軽度から中等度」のOSAH患者に関するものです。
この10年間の研究において、このグループは健康な対照グループと比較して、心血管イベントのリスクに統計的に有意な増加は見られませんでした。
これは、心血管系への危険性が、無呼吸症の重症度に応じて高まる「用量効果関係」にある可能性を示唆しています。つまり、リスクはスペクトラムの最も重度な領域で急激に増大するということです。
ただし、研究者らは重要な注意点を加えています。それは、もしサンプルサイズがもっと大きいか、追跡期間がさらに長ければ、軽度〜中等度のグループでも有意な差が現れた可能性は排除できない、という点です。

「ただのいびき」なら、過度な心配は不要

では、睡眠時無呼吸症(AHI < 5)ではない「単純ないびき症」の人はどうでしょうか?

この研究では、このグループの心血管イベント発生率も調査されました。
結果として、彼らの発生率は、いびきをかかない健康な参加者と比べて有意な差はありませんでした。

これは、多くのいびきに悩む人々にとって、少し安心できる情報かもしれません。
ただし、無呼吸症に特徴的な「呼吸の停止」を伴わない、単純ないびきであるかどうかを見極めることは依然として重要です。

最後に

「ただのいびき」や、この研究の期間内では「軽度〜中等度の無呼吸症」では、心血管リスクの明確な上昇は見られませんでした。

しかし、治療されていない「重度」の睡眠時無呼吸症は、生命を脅かす隠れた危険因子となります。
そして最も重要な点は、そのリスクがCPAP治療によって、健康な人と同レベルまで劇的に低減できるという発見にあります。

睡眠時無呼吸症候群の検査は、3割負担で3000円程度です。
いびきが酷く睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、早めに病院を受診することをお勧めします。

吹田市長野東19番6号

千里丘かがやきクリニック

院著 有光潤介

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