2026年10月07日

茶のしずく石鹸事件とは?経皮感作で小麦アレルギーが起きる理由をわかりやすく解説
Percutaneous Sensitization
洗顔石鹸で、なぜ小麦アレルギーになったのか
執筆:千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介/第2版:2026年9月30日
洗顔石鹸を毎日使っていただけなのに、ある日パンを食べたあと、まぶたが腫れて息苦しくなった。2010年前後、こうした訴えが日本各地で相次ぎました。
原因は、旧「茶のしずく石鹸」に含まれていた加水分解コムギです。日本アレルギー学会の全国調査で「確実例」と判定された人だけで2,111人にのぼり、いずれも石鹸を使う前は小麦アレルギーのなかった人たちでした[1]。
食べ物のアレルギーが、口からではなく皮膚や粘膜から始まることがある。この事件は、その事実を多くの人の身に起きた出来事として示し、いまの食物アレルギー予防の考え方にもつながっています。何が起き、なぜ起きたのか。その後どうなったのか。研究をもとに整理します。
Point
この記事のポイント
- 酸と熱で処理された加水分解コムギが、洗顔のたびに皮膚や目・鼻の粘膜から入り、小麦を食べると症状が出るアレルギーを引き起こしました
- 石鹸をやめると、多くの人が年単位で回復していきます。中止から5年で半数以上、10年で全例が治ったという報告があります
- 「皮膚からは感作、口からは慣れ」という考え方が研究で裏づけられ、湿疹の治療や離乳食の進め方、化粧品原料のルールが見直されました
「経皮感作」とは何か
私たちの体には、細菌やウイルスなどの異物を見分けて追い出す免疫のしくみがあります。食べ物のたんぱく質も、体にとっては本来「よそ者」です。
それでも毎日の食事でアレルギーが起きないのは、腸から入ったたんぱく質に対して、免疫が「攻撃しなくてよいもの」として慣れていくしくみがあるからです。これを経口免疫寛容といいます。
一方、皮膚は外からの侵入を防ぐ壁です。その壁を越えて入ってきたたんぱく質は、皮膚にいる見張り役の細胞にとらえられ、リンパ節へ運ばれて免疫の司令塔に伝えられます。そこで「敵」と判断されると、そのたんぱく質に対するIgE抗体がつくられます。これが経皮感作です。アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが傷んでいると、食物アレルギーになりやすいことも知られています[2]。
いったん感作が成立すると、同じたんぱく質を口から食べたときにも反応が起き、じんましんやアナフィラキシーにつながることがあります。「皮膚から入ると感作が起き、口から食べると慣れが生まれる」。英国の小児アレルギー医ギデオン・ラックは、この考え方を「二重抗原曝露仮説」として2008年に提唱しました[3]。
茶のしずく石鹸事件で、何が起きたのか
旧「茶のしずく石鹸」は、加水分解コムギ「グルパール19S」を0.3%含む洗顔石鹸で、通信販売で売られていました[1]。2004年3月から2010年12月までに約4,650万個が約467万人に販売され、日本の成人女性の12人に1人が使った計算になります[4]。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2004年3月 | グルパール19Sを含む旧製品の販売開始 |
| 2009年秋 | 日本アレルギー学会で、使用者が小麦を食べてショックを起こした例を国内で初めて報告 |
| 2010年10月 | 厚生労働省が、加水分解コムギを使った石鹸全般について消費者に注意を呼びかける |
| 2010年12月 | 旧製品の販売終了 |
| 2011年5月 | メーカーが旧製品の自主回収を開始 |
| 2011年7月 | 日本アレルギー学会が特別委員会を設置し、診断基準づくりと全国の症例集めに着手 |
| 2012〜2014年 | 全国270施設で確実例2,111人を確認 |
全国調査の論文と、AMED・藤田保健衛生大学の発表資料をもとに作成[1][2][4]。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
確実例2,111人のうち、女性が2,025人を占めました。年齢は1歳から93歳まで幅広く、平均は45.8歳です[4]。
研究の種類全国調査(症例登録)/対象 270施設で診断された確実例2,111人
なぜ、洗顔石鹸で小麦アレルギーになったのか
原因は一つではありません。原料の性質、毎日の使い方、そして体質。この三つが重なった結果と考えられています。
原料:酸と熱で「形が変わった」小麦たんぱく
グルパール19Sは、小麦のたんぱく質(グルテン)を酸と熱で分解してつくられた原料です。この処理で、たんぱく質の中のグルタミンがグルタミン酸に変わる「脱アミド化」が起き、水に溶けやすくなります。そのため、保湿などの目的で化粧品に使われていました[4]。
ところが患者さんのIgE抗体は、脱アミド化で形が変わった小麦たんぱくの部分に強く結合していました[5]。加工によって、もとの小麦にはない「目印」ができていたのです。
分子の大きさについては誤解もあります。「皮膚を通り抜けられるほど小さかった」と説明されることがありますが、グルパール19Sの平均分子量は約55,000と、化粧品用の加水分解コムギの中ではむしろ大きい部類でした。ほかの製品との違いは、大きさよりも酸で分解するという製法にあったと報告されています[6]。
研究の種類実験研究/化粧品用の加水分解コムギ10種類と、患者16人の血清を比較
使い方:泡で毎日洗い、目や鼻にも触れた
洗顔は毎日くり返す行為で、泡は目のまわりや鼻の近くにも届きます。この病気を最初に報告した相模原病院のグループは、皮膚だけでなく、目や鼻の粘膜から感作が起きた可能性を指摘しました[7]。全国調査でも、小麦を食べたあとにまぶたが腫れる人が多く、洗顔のときに目の粘膜から感作されたことをうかがわせる特徴とされています[4]。
洗浄成分の影響も考えられています。加水分解コムギと洗浄成分の組み合わせで皮膚表面の角層がはがれ、バリアが弱まった可能性が指摘されています[8]。
石鹸を使い始めてから発症するまでは1年ほどのことが多く[1]、福岡の病院の12人の報告でも平均2年弱でした[9]。少しずつの接触が毎日積み重なり、感作が進んだと考えられます。
体質:同じ石鹸を使っても、発症したのは一部
石鹸を使った約467万人のうち、確実例は約2,100人です。発症には体質も関わっていました。患者さん525人と一般の日本人3,244人の遺伝子を比べた研究では、免疫の働きに関わる「HLA-DQ」という領域などに、なりやすさ・なりにくさに関係する違いが見つかっています[2]。
研究の種類全ゲノム関連解析/対象 患者525人、一般集団3,244人
どんな症状が出たのか
全国調査で症状を詳しく確認できた899人のデータを、場面ごとにまとめました。
| 場面 | 主な症状と割合 |
|---|---|
| 石鹸を使っているとき | まぶたの腫れ40%、じんましん・かゆみ・赤み31%、自覚症状なし27% |
| 小麦を食べたあと | まぶたの腫れ77%、じんましん60%、息苦しさ43%、アナフィラキシーショック25% |
全国調査の論文をもとに作成[1]。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
石鹸を使っていても4人に1人以上は何も感じていなかったことが、石鹸と小麦アレルギーの関係に気づくのが遅れた大きな理由の一つとされています[4]。
小麦を食べたあとの症状は、まぶたの腫れなど顔から始まることが多く[1]、食後の運動が引き金になる「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー」の形をとる人も少なくありませんでした[9]。パンやパスタなど、ふだんの小麦製品で症状が出たのも特徴です。海外で報告されていた化粧品の加水分解コムギによるアレルギーでは、ハムなど加水分解コムギを含む加工食品で症状が出る一方、ふつうの小麦製品は食べられる例が中心でした[1]。
ふつうの小麦アレルギーと、何が違ったのか
大人に多い従来型の小麦依存性運動誘発アナフィラキシーでは、ω-5グリアジンという小麦たんぱくに対するIgE抗体が特徴的です。ところが石鹸による患者さんでは、この検査が陰性のことが多く、福岡の12人の報告では10人が陰性でした[9]。
| 比べる点 | 従来型の小麦依存性運動誘発アナフィラキシー | 加水分解コムギによる小麦アレルギー |
|---|---|---|
| ω-5グリアジンへのIgE | 陽性が多い | 陰性が多い |
| グルパール19SへのIgE | 反応しない | 反応する |
| 目立つ症状 | 血圧低下が比較的多い | まぶたの腫れなど顔の症状 |
各研究をもとに作成[4][6][9][10]。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
では、なぜ石鹸の成分に対してできた抗体で、ふつうの小麦を食べて症状が出るのでしょうか。食べた小麦のたんぱくも、体の中の酵素(組織トランスグルタミナーゼ)によって脱アミド化される可能性があり、そこに石鹸の成分に対してできたIgE抗体が交差して反応するためと考えられています[1]。加工でできた「目印」に対する抗体が、体内で形が変わった小麦にも反応してしまうのです。
石鹸をやめたあと、どうなったのか
治療の基本は、原因となった石鹸の使用をやめることです。業界団体も、診断を受けた人に向けて、加水分解小麦たん白を含む化粧品や医薬部外品の使用をやめるよう呼びかけています[11]。
皮膚からの供給が断たれると、グルパール19Sに対するIgE抗体は時間とともに下がり、症状が軽くなって小麦を食べられるまでに回復する人が多く見られました[4]。広島大学病院の報告でも、石鹸をやめてから数か月のうちに、小麦たんぱくへの反応性が下がっていきました[10]。
回復にかかる時間には個人差があります。110人を追跡した報告では、石鹸の使用をやめてから5年(60か月)の時点で寛解していた人は56.1%でした[1]。2019年1月末時点の全国の予後調査では、79%以上の人が小麦を含む食品を食べられるようになっていました[2]。
研究の種類予後アンケート調査(学会発表)/対象 確実例2,111人(受診を自己中断した例を除く)
さらに長い経過も報告されています。島根大学の千貫祐子医師は、2025年の第74回日本アレルギー学会学術大会で、石鹸の使用をやめてから5年後には半数以上が、10年後には全例で小麦アレルギーが治ったと報告しました[12]。
研究の種類学会での口頭報告
報告によって対象や時期は異なりますが、原因から離れることで、年単位で治っていく経過は共通しています。ただ、治るまでの間は、小麦を控えたり、条件つきで食べたりしている人も少なくありませんでした[4]。
石鹸をやめて年月がたち、症状が出なくなったように感じても、自己判断で小麦を元の量に戻したり、食べてすぐに運動したりするのは避けてください。再開してよいかどうかは、血液検査やこれまでの経過をもとに、主治医と相談して決めましょう。
「皮膚から感作、口から慣れ」を裏づけた研究
二重抗原曝露仮説の出発点の一つは、英国で約1万4千人の子どもを調べた研究でした。ピーナッツアレルギーは乳児期の湿疹、とくにじゅくじゅくした重い湿疹と関係し、ピーナッツ油を含むクリームなどを肌に塗られていた子どもに多く見られました。一方、母親が妊娠中や授乳中にピーナッツを食べていたかどうかとは関係がありませんでした[13]。
研究の種類出生コホート研究/対象 英国の就学前児13,971人
では、早くから食べればアレルギーを防げるのか。これを確かめたのがLEAP試験です。重い湿疹や卵アレルギーのある生後4〜11か月の乳児640人を、ピーナッツを食べる群と避ける群に分けて5歳まで追ったところ、皮膚テストが陰性だった子どものピーナッツアレルギーは、避けた群13.7%、食べた群1.9%でした[14]。
研究の種類ランダム化比較試験/対象 英国の乳児640人、5歳まで追跡
日本でも、湿疹のある乳児を対象にしたPETIT試験が行われました。湿疹をしっかり治療しながら、生後6か月から加熱した卵の粉末をごく少量ずつ食べ始めた群では、1歳時点の卵アレルギーが8%で、プラセボ(偽薬)の群の38%を大きく下回りました[15]。
研究の種類ランダム化比較試験/対象 湿疹のある日本の乳児121人(主な解析)
子どもの研究とは状況が違いますが、茶のしずく石鹸事件は、それまで小麦アレルギーのなかった大人でも、皮膚や粘膜からの繰り返しの接触でアレルギーが起こりうることを示しました。これほど大規模な経皮感作の例は、世界的にも報告がありません[2]。この事件は、二重抗原曝露仮説を大人で裏づける代表的な出来事になったのです。
予防の考え方は、どう変わったのか
かつては、アレルギーを防ぐために、妊娠中や授乳中、乳児期に原因となりやすい食べ物を避ける方法が勧められていました。いまでは、その考え方自体が見直されています[3]。
荒れた肌は、早めにしっかり治す
日本のPACI試験では、生後7〜13週でアトピー性皮膚炎のある乳児640人を、見た目に湿疹のない部分も含めて早くから積極的に治療する群と、湿疹が出た部分だけを治療する群に分けました。生後28週時点の卵アレルギーは、積極的に治療した群で31.4%、通常の治療の群で41.9%でした[16]。
ただし、積極的に治療した群では体重と身長の増え方がわずかに少なく、研究チームは、薬の使い方を見直したうえで日常診療に取り入れるべきだとしています[16]。
研究の種類ランダム化比較試験/対象 アトピー性皮膚炎のある日本の乳児640人
荒れていない肌に、予防目的で塗ればよいわけではない
一方、湿疹のない健康な赤ちゃん全員に、予防として保湿剤を塗る方法には、はっきりした効果が確認されていません。33件のランダム化比較試験を対象にしたコクランレビューでは、湿疹を防ぐ効果はおそらくなく、食物アレルギーをかえって増やす可能性や、皮膚の感染症が増える可能性が示されました[17]。
研究の種類ランダム化比較試験の系統的レビュー/対象 33試験
「荒れた肌をきちんと治療すること」と、「荒れていない肌に予防のために塗ること」は、分けて考える必要があります。
化粧品原料のルールも変わった
EUでは2017年の規則で、化粧品に使う加水分解小麦たん白の平均分子量を3.5kDa以下に制限し、ピーナッツ油に含まれるたん白質にも上限を設けました[18]。日本でも同じ2017年に医薬部外品の原料規格が改正され、加水分解コムギの分子量の分布が新たに定められています[2]。
なお、医薬部外品では、加水分解コムギが「加水分解コムギ末」や「水解小麦末」と表示されることがあり、名前だけでは小麦と気づきにくい点に注意が必要です[11]。
皮膚から始まるアレルギーは、石鹸だけではない
皮膚から入ったたんぱく質が食べ物のアレルギーにつながる例は、ほかにも報告されています。
赤い色素のコチニールは、食品にも化粧品にも使われています。日本で報告されたコチニールによる即時型アレルギー22例は全員が成人女性で、3例を除いてアナフィラキシーを起こしていました。13例には、化粧品を使ったときの症状の経験がありました。原因となった食品には、いちごジュースや魚肉ソーセージ、マカロンなどが挙がっています[19]。
納豆のネバネバ成分であるポリガンマグルタミン酸は、食べてから時間がたって起こるアナフィラキシーの原因になります。この成分はクラゲが刺すときの成分にも含まれており、納豆アレルギーの人では、サーフィンが感作の危険因子になっていました[20]。
思いがけない食べ物でアレルギー症状が出たときは、食べたものだけでなく、ふだん肌に触れているものや生活習慣も手がかりになります。
今日からできること
- 湿疹やかぶれがある肌には、小麦やナッツなど食べ物由来の成分を含む化粧品・スキンケア用品をなるべく使わない
- 化粧品を使うたびに目のまわりのかゆみや腫れ、じんましんが出るなら、使用をやめて受診する
- 小麦アレルギーと診断された方は、成分表示の「加水分解コムギ」「水解小麦末」などを確認する
- 赤ちゃんの湿疹は早めに治療し、自己判断で食べ物を除去しない
- 食後に運動したときなどに、じんましんや息苦しさが出たことがあれば受診する
息苦しさ、のどが締めつけられる感じ、ぐったりする、意識が遠のくといった症状は、アナフィラキシーの危険なサインです。迷わず救急車を呼んでください。アドレナリン自己注射薬を処方されている方は、ためらわずに使ってください。
よくあるご質問
いま売られている「茶のしずく石鹸」は大丈夫ですか?
加水分解コムギを含む旧製品の販売は2010年12月に終わり、2011年5月から自主回収が行われました。気になる方は、お手元の製品の成分表示を確認してください。
加水分解コムギ入りの化粧品は、誰でも避けたほうがよいですか?
グルパール19S以外の加水分解コムギで、同じような大規模な被害は報告されていません。ただ、小麦アレルギーと診断された方は、ほかの加水分解コムギにも反応することがあるため、使用を控えてください。
石鹸をやめて何年もたちます。小麦を食べても大丈夫ですか?
石鹸をやめて10年で全例が治ったという報告もあり、多くの方は年単位で食べられるようになっています。ただ、治るまでの期間には個人差があり、5年の時点では半数近くがまだ寛解していなかったという報告もあります。食べてよいか、どのくらいなら大丈夫かは、検査やこれまでの経過をもとに医師と一緒に判断しましょう。
赤ちゃんの肌に保湿剤を塗れば、食物アレルギーを防げますか?
湿疹のない赤ちゃんに予防目的で塗る方法には、効果が確認されていません。大切なのは、湿疹が出たら早めにしっかり治療することです。治療の進め方は、かかりつけの小児科や皮膚科にご相談ください。
当院でのサポート
当院にはアレルギー専門医が在籍しています。「食後に運動するとじんましんが出る」「化粧品を使うと目のまわりが腫れる」といった症状では、いつ、何をしたときに起きたのかが大切な手がかりになります。経過を詳しくうかがい、小麦やその成分(ω-5グリアジンなど)に対する抗体を調べる血液検査で原因を探ります。必要に応じて、専門の医療機関とも連携します。
小麦を控える必要がある方には、管理栄養士4名が、代わりになる食品の選び方や外食での注意点など、毎日の食事を一緒に考えます。症状や治療の流れは、食物アレルギーのページとアナフィラキシーのページでもご紹介しています。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医師にご相談ください。
参考文献
- Outbreak of immediate-type hydrolyzed wheat protein allergy due to a facial soap in Japan著者:Yagami A, Aihara M, Ikezawa Z, ほか雑誌:J Allergy Clin Immunol. 2017;140(3):879-881.e7発行日:2017年9月DOI:10.1016/j.jaci.2017.03.019要約:日本アレルギー学会の特別委員会による全国調査の報告。2012〜2014年に270施設で確実例2,111人を確認し、女性が約96%を占めた。小麦を食べたあとの症状は、まぶたの腫れ77%、アナフィラキシーショック25%などだった。
- 小麦に対するアレルギーへのなりやすさ・なりにくさに関わる遺伝子を特定(プレスリリース)著者:筑波大学、藤田医科大学、日本医療研究開発機構(AMED)媒体:AMEDウェブサイト発行日:2019年7月25日URL:https://www.amed.go.jp/news/release_20190725.html要約:加水分解コムギで感作された患者525人と一般集団3,244人のゲノム解析で、HLA-DQ領域などに発症しやすさに関わる違いを見出した。79%以上が小麦を食べられるようになった予後調査や、2017年の原料規格改正にも触れている。
- Epidemiologic risks for food allergy著者:Lack G雑誌:J Allergy Clin Immunol. 2008;121(6):1331-1336発行日:2008年6月DOI:10.1016/j.jaci.2008.04.032要約:食物アレルギーの危険因子を整理した総説。妊娠中・授乳中・乳児期に食べ物を避ける予防策に疑問を示し、皮膚からの環境中の曝露が感作を、食べることが耐性をもたらすという仮説(二重抗原曝露仮説)を提唱した。
- 茶のしずく石鹸等に含まれた加水分解コムギによるアレルギーに関する研究成果(プレスリリース)著者:藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)媒体:同大学ウェブサイト(PDF)発行日:2017年6月URL:https://www.fujita-hu.ac.jp/news/dubv6r0000001w34.pdf要約:全国調査の論文(Yagamiら)の日本語解説。旧製品は2004〜2010年に約467万人へ販売された。グルパール19Sは小麦グルテンを酸で加熱分解して作られ、脱アミド化が起きていた。石鹸使用中に自覚症状のない人が27%いた。
- Characterization of causative allergens for wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis sensitized with hydrolyzed wheat proteins in facial soap著者:Yokooji T, Kurihara S, Murakami T, ほか雑誌:Allergol Int. 2013;62(4):435-445発行日:2013年12月DOI:10.2332/allergolint.13-OA-0561要約:加水分解コムギで感作された22人の血清を分析した研究。γ-グリアジンの配列が脱アミド化された形(PEEPFP)を含む成分に感作されたと考えられ、小麦を食べたあとの症状の一部はγ-グリアジンによると結論した。
- Evaluation of the cross-reactivity of antigens in Glupearl 19S and other hydrolysed wheat proteins in cosmetics著者:Nakamura M, Yagami A, Hara K, ほか雑誌:Contact Dermatitis. 2016;74(6):346-352発行日:2016年6月DOI:10.1111/cod.12551要約:化粧品用の加水分解コムギ10種類を比べた研究。グルパール19Sの平均分子量は約55,000で、ほかの製品との違いは分子量より酸による分解だった。患者のIgEは他の4製品とも交差反応したが、従来型の患者はどれにも反応しなかった。
- Rhinoconjunctival sensitization to hydrolyzed wheat protein in facial soap can induce wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis著者:Fukutomi Y, Itagaki Y, Taniguchi M, ほか雑誌:J Allergy Clin Immunol. 2011;127(2):531-533発行日:2011年2月DOI:10.1016/j.jaci.2010.09.035要約:加水分解コムギ入り洗顔石鹸の使用者に生じた小麦依存性運動誘発アナフィラキシー5人の報告。皮膚だけでなく洗顔時の目や鼻の粘膜からの感作がきっかけになりうることを示し、化粧品に含まれる加水分解コムギの危険性を指摘した。
- Remission of wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis after the cessation of hydrolysed wheat-containing soap usage著者:Ishii K, Hiragun M, Matsuo H, ほか雑誌:Acta Derm Venereol. 2012;92(5):490-491発行日:2012年DOI:10.2340/00015555-1321要約:加水分解コムギ入り石鹸で発症した患者の報告。石鹸をやめて6か月で小麦への反応性が改善した。患者が急増した理由として、洗浄成分との組み合わせで角層がはがれ、皮膚のバリアが弱まった可能性を考察している。
- お茶石鹸使用開始後に発症した小麦によるアナフィラキシーおよび小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの12例著者:杉山晃子、岸川禮子、西江温子、ほか雑誌:アレルギー. 2011;60(11):1532-1542発行日:2011年11月30日DOI:10.15036/arerugi.60.1532要約:福岡の病院を受診した12人の報告。全員が女性で平均36歳、石鹸の使用開始から平均2年弱で発症し、多くが洗顔時にじんましんやまぶたの腫れ、鼻水を経験していた。従来型の指標であるω-5グリアジンは12人中10人で陰性だった。
- The sensitivity and clinical course of patients with wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis sensitized to hydrolyzed wheat protein in facial soap - secondary publication著者:Hiragun M, Ishii K, Hiragun T, ほか雑誌:Allergol Int. 2013;62(3):351-358発行日:2013年9月DOI:10.2332/allergolint.13-OA-0553要約:広島大学病院で小麦依存性運動誘発アナフィラキシーと診断された36人の解析。30人が加水分解コムギ入り石鹸を使っていた。女性が多く、顔の症状や血管性浮腫が目立ち、血圧低下は従来型より少なかった。石鹸をやめると数か月で反応性が低下した。
- 「茶のしずく石鹸」(旧商品)で小麦アレルギーを発症された方へ著者:日本化粧品工業会媒体:同会ウェブサイト発行日:2012年4月24日URL:https://www.jcia.org/user/approach/news_release/news3要約:旧製品で小麦アレルギーと診断された人に向けた業界団体の案内。加水分解小麦たん白を含む化粧品・医薬部外品の使用をやめるよう求め、確認すべき表示名として「加水分解コムギ」「加水分解コムギ末」「水解小麦末」などを挙げている。
- 第74回日本アレルギー学会学術大会での講演(加水分解コムギによる小麦アレルギーのその後の経過)演者:千貫祐子(島根大学)学会:第74回日本アレルギー学会学術大会(東京国際フォーラム)会期:2025年10月24〜26日URL:https://site2.convention.co.jp/jsa74/要約:旧茶のしずく石鹸で発症した小麦アレルギーのその後の経過について、石鹸の使用中止から5年後には半数以上が、10年後には全例が治ったと報告した。学会での口頭報告で、論文としての公表は確認できていない。
- Factors associated with the development of peanut allergy in childhood著者:Lack G, Fox D, Northstone K, ほか雑誌:N Engl J Med. 2003;348(11):977-985発行日:2003年3月DOI:10.1056/NEJMoa013536要約:英国の出生コホート(就学前児13,971人)の研究。ピーナッツアレルギーは乳児期の湿疹、とくにじゅくじゅくした重い湿疹と関連し、ピーナッツ油を含むクリームなどを使った子どもに多かった。母親の妊娠中・授乳中の摂取とは無関係だった。
- Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy著者:Du Toit G, Roberts G, Sayre PH, ほか雑誌:N Engl J Med. 2015;372(9):803-813発行日:2015年2月26日DOI:10.1056/NEJMoa1414850要約:重い湿疹や卵アレルギーのある生後4〜11か月未満の乳児640人を、ピーナッツを食べる群と避ける群に分けた試験(LEAP)。皮膚テスト陰性の集団では、5歳時のピーナッツアレルギーが避けた群13.7%、食べた群1.9%だった。
- Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial著者:Natsume O, Kabashima S, Nakazato J, ほか雑誌:Lancet. 2017;389(10066):276-286発行日:2017年1月21日DOI:10.1016/S0140-6736(16)31418-0要約:湿疹のある日本の乳児を対象としたプラセボ対照試験(PETIT)。湿疹を積極的に治療しながら、生後6か月から加熱卵の粉末をごく少量ずつ食べると、1歳時の卵アレルギーは8%で、プラセボ群の38%より大幅に少なかった。
- Enhanced early skin treatment for atopic dermatitis in infants reduces food allergy著者:Yamamoto-Hanada K, Kobayashi T, Mikami M, ほか雑誌:J Allergy Clin Immunol. 2023;152(1):126-135発行日:2023年7月DOI:10.1016/j.jaci.2023.03.008要約:生後7〜13週でアトピー性皮膚炎のある乳児640人の試験(PACI)。湿疹のない部分も含めて早期から積極的に治療すると、生後28週の卵アレルギーが31.4%と通常治療の41.9%より少なかったが、体重と身長の増えはやや少なかった。
- Skin care interventions in infants for preventing eczema and food allergy著者:Kelleher MM, Phillips R, Brown SJ, ほか雑誌:Cochrane Database Syst Rev. 2022;11(11):CD013534発行日:2022年11月14日DOI:10.1002/14651858.CD013534.pub3要約:湿疹のない健康な乳児への保湿剤などのスキンケアを検討した、33件のランダム化比較試験の系統的レビュー。湿疹の予防効果はおそらくなく、食物アレルギーを増やす可能性や、皮膚感染症を増やすおそれがあると結論した。
- Commission Regulation (EU) 2017/2228 of 4 December 2017 amending Annex III to Regulation (EC) No 1223/2009 of the European Parliament and of the Council on cosmetic products著者:欧州委員会(European Commission)媒体:EUR-Lex(EU法令データベース)発行日:2017年12月4日URL:https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2017/2228/oj/eng要約:化粧品に使う加水分解小麦たん白の平均分子量を3.5kDa以下に、ピーナッツ油中のたん白質を0.5ppm以下に制限した規則。加水分解小麦入り化粧品による接触じんましんと、その後の小麦摂取によるアナフィラキシーの報告を理由に挙げた。
- Cochineal dye-induced immediate allergy: Review of Japanese cases and proposed new diagnostic chart著者:Takeo N, Nakamura M, Nakayama S, ほか雑誌:Allergol Int. 2018;67(4):496-505発行日:2018年10月DOI:10.1016/j.alit.2018.02.012要約:日本で報告されたコチニール色素による即時型アレルギーのまとめ。22人全員が成人女性で、3人を除きアナフィラキシーを起こし、13人に化粧品使用に伴う症状の既往があった。いちごジュースや魚肉ソーセージ、マカロンなどが原因だった。
- Surfing as a risk factor for sensitization to poly(γ-glutamic acid) in fermented soybeans, natto, allergy著者:Inomata N, Miyakawa M, Aihara M雑誌:Allergol Int. 2018;67(3):341-346発行日:2018年7月DOI:10.1016/j.alit.2017.11.001要約:納豆の遅発性アナフィラキシーの原因となるポリガンマグルタミン酸は、クラゲの刺す成分にも含まれる。食物アレルギー外来の140人への質問票調査で、納豆アレルギーの人ではサーフィンが感作の危険因子であることを示した。
大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)