動と静の生理学:レム睡眠・ノンレム睡眠が織りなす心身のメンテナンス|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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動と静の生理学:レム睡眠・ノンレム睡眠が織りなす心身のメンテナンス

動と静の生理学:レム睡眠・ノンレム睡眠が織りなす心身のメンテナンス|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年6月15日

動と静の生理学:レム睡眠・ノンレム睡眠が織りなす心身のメンテナンス

レム睡眠とノンレム睡眠について

はじめに

睡眠は、体を休めるだけの時間ではありません。脳と体を毎晩メンテナンスする、動的な生理現象です。

睡眠中は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という、まったく性質の異なる2つの状態が交互に繰り返されています。どちらにも独自の役割があり、片方が欠けるだけで心身の健康は保てません。

 

1. ノンレム睡眠――脳と体を深く休める

ノンレム睡眠とは、眼球が動かない穏やかな睡眠状態です。眠りにつくと最初に訪れ、一晩の睡眠の約75〜80%を占めます。

眠りの深さに応じて、3つの段階があります。

段階 状態
ステージ1 うとうとしており、すぐ目が覚める
ステージ2 本格的な眠り。脳が外部の刺激を遮断し始める
ステージ3 深い睡眠(徐波睡眠)。少しの物音では起きない

なかでもステージ3が重要です。このとき、脳の下垂体から成長ホルモンが大量に分泌され、日中に傷ついた筋肉・骨・皮膚が修復されます。また脳のエネルギー消費も大幅に下がり、酷使された脳細胞をしっかりクールダウンできます。免疫の強化や血糖値の代謝調整にも、この深い睡眠が欠かせないことが科学的に示されています。

 

2. レム睡眠――体は眠り、脳は動く

レム睡眠は、まぶたの下で眼球が激しく動く睡眠状態です。一晩の約20〜25%を占めます。

このとき、脳波は覚醒時とほぼ同じ活発な波形を示し、血流やエネルギー消費も起きているときと同等かそれ以上です。一方で、首から下の筋肉は完全に脱力します(これをアトニアといいます)。夢の内容に合わせて体が動いてしまわないようにする、一種の安全装置です。

レム睡眠には、心の健康を支える重要な役割が2つあります。

① 記憶の定着 日中に経験したことや新しく学んだ知識は、レム睡眠中に脳内で再処理され、長期記憶として定着します。必要な情報を選んで強固に結びつけ、不要な情報は消去することで、脳の容量も整理されます。

② 感情の整理 レム睡眠中は感情を司る部位が活発になる一方、ストレスホルモンの分泌は抑えられます。そのため、恐怖や怒りといった強い感情だけを記憶から洗い流し、体験の本質だけを残す「感情の浄化」が行われます。レム睡眠が不足すると、不安やうつ傾向が強まることが分かっています。

 

3. 一晩の睡眠サイクル

レム睡眠とノンレム睡眠は、ランダムに訪れるわけではありません。規則正しいサイクルで進行します。

眠りにつく → 浅いノンレム睡眠 → 深いノンレム睡眠 → 浅くなる → レム睡眠

この一巡が約90分。一晩に4〜5回繰り返されるのが標準的です。

サイクルの構成は、時間帯によって変わります。

  • 睡眠前半(最初の3時間):深いノンレム睡眠が中心。成長ホルモンの大半がここで分泌され、体の疲労が回復します。
  • 睡眠後半(明け方に近づくほど):深いノンレム睡眠はほぼ消え、長くて濃いレム睡眠が増えます。

つまり、4〜5時間しか眠らない生活を続けると、レム睡眠が大幅に削られます。 記憶力の低下や、朝から強いストレスを感じるといった不調は、このことが原因の一つです。

 

4. 年齢と現代社会の影響

年齢による変化

睡眠の構成は年齢とともに変わります。新生児は睡眠の約半分がレム睡眠に似た活発な状態で、神経回路の発達を促しています。高齢になると深いノンレム睡眠が減り、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」が増えます。「ぐっすり眠れた気がしない」という高齢者の訴えは、こうした生理的な変化が背景にあります。

ブルーライトの影響

就寝前にスマートフォンなどの画面を見ると、脳は「まだ昼間だ」と錯覚します。すると睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌が抑えられ、眠りが浅くなったり、明け方に現れるはずのレム睡眠が削られたりします。こうした慢性的な睡眠の乱れは、日中の眠気・集中力の低下だけでなく、生活習慣病やメンタル疾患のリスクを高めることも証明されています。

 

まとめ

ノンレム睡眠は「静」の役割で、脳と体を修復します。レム睡眠は「動」の役割で、記憶を整理し感情をリセットします。この2つが約90分のサイクルで絶妙なバランスを保って繰り返されることが、「質の高い睡眠」の本質です。

現代科学が推奨する最も効果的なアプローチはシンプルです。

  • 十分な睡眠時間を確保する(サイクルを4〜5回完結させる)
  • 就寝前の光環境を整える(ブルーライトを避け、体内時計を守る)

この2つを日常に取り入れることが、心と体の健康を守る最善策です。

参考文献

1.Neurobiology of sleep (Review), Falup-Pecurariu C, et al. Exp Ther Med. 2021 Mar;21(3):272. DOI: 10.3892/etm.2021.9703
要約: 睡眠の神経生物学的な調整メカニズムに関するレビュー。ノンレム睡眠とレム睡眠という2つの異なるフェーズにおける脳内ネットワークや、セロトニン、GABAなどの様々な神経伝達物質による制御、視床下部や視床などの各脳領域の役割を統合的に解説した文献。

2.Functional roles of REM sleep, Mukai Y, Yamanaka A. Neurosci Res. 2023 Apr;189:44-53. DOI: 10.1016/j.neures.2022.12.009
要約: レム睡眠の多様な機能的役割に関するレビュー。レム睡眠最大の特徴である特徴的な脳活動や筋緊張低下が身体全体に及ぼす影響を解説。特に記憶機能における脳活動の重要性、精神・心理的機能、脳の発達におけるレム睡眠の寄与について、動物モデル等の知見を交えて体系的に論じた文献。

3.REM Sleep: An Unknown Indicator of Sleep Quality, Barbato G. Int J Environ Res Public Health. 2021 Dec 9;18(24):12976. DOI: 10.3390/ijerph182412976
要約: 睡眠の質におけるレム睡眠の重要性を論じたレビュー。レム睡眠が体内時計により制御され、睡眠期間の終了を定義して意識への復帰を準備する役割を持つことを説明。夜間の人工光による体内時計の遅れがレム睡眠を減少させ、睡眠の継続性や翌朝の覚醒度を低下させるリスクを明示した文献。

 

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介

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