8年で約37%が死亡──重症睡眠時無呼吸症候群を放置する本当の危険|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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8年で約37%が死亡──重症睡眠時無呼吸症候群を放置する本当の危険

8年で約37%が死亡──重症睡眠時無呼吸症候群を放置する本当の危険|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年6月29日

8年で約37%が死亡──重症睡眠時無呼吸症候群を放置する本当の危険

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、「いびきがひどい」「昼間に眠くなる」という症状だけの病気ではありません。治療を受けずに放置すると、心臓や血管に深刻なダメージが蓄積し、命に関わる事態を招くことが、世界中の大規模研究で明確に示されています。

結論を先にお伝えします。

重症のSASを未治療のまま放置した場合、8年以内に約37%の患者が死亡する――というデータがあります。健康な人と比べた死亡リスクは約3倍、心臓・血管が原因の死亡に限ると約5倍にも達します。

一方で、早期に適切な治療を受ければ、そのリスクを健康な人と同等の水準まで下げられることも証明されています。以下では、そのメカニズムと根拠を順に解説します。

なぜ命に関わるのか ――身体で起きていること

呼吸が止まるたびに、身体はどのような負担を受けているのでしょうか。主な経路は四つあります。

1. 夜間の繰り返す低酸素

呼吸が止まると血液中の酸素濃度が急落します。脳が危険を感知して覚醒させ、呼吸を再開させる――これが一晩に何十回、場合によっては百回以上繰り返されます。

2. 交感神経の過剰な興奮

本来、眠っている間は副交感神経が優位になり、心臓と血管が休まります。しかしSASでは窒息と覚醒が連続するため、交感神経(身体を活動状態にする神経)が夜通し働き続けます。就寝中にもかかわらず、心拍数と血圧が急上昇を繰り返す状態が続きます。

3. 血管の慢性的な炎症と動脈硬化

急激な血圧変動と低酸素の繰り返しは、血管の内壁を傷つけ、全身に炎症を引き起こします。これが動脈硬化(血管が硬く狭くなる変化)の進行を加速させます。

4. 致命的な合併症への連鎖

上記の負荷が毎晩積み重なることで、治療抵抗性の高血圧、心筋梗塞、心房細動(不整脈)、脳卒中といった致命的な合併症が高確率で発症します。SASが寿命を縮めるのは、こうした発作の直接的な引き金になるためです。

世界的な研究が示す数字

8年後の生存率は約63%

385名の男性患者を追跡した研究(He J et al., 1988)では、1時間に20回以上の無呼吸がある重症患者が無治療のままでいた場合、8年後の生存率は約63%でした。つまり、重症患者の約37%が8年以内に亡くなっていたことになります。

全死亡リスク3倍、心血管死亡リスク5.2倍

アメリカのウィスコンシン睡眠コホート研究(Young T et al., 2008)は、地域住民1,522名を18年間追跡した信頼性の高いデータです。重症の未治療SAS患者は、年齢・肥満度などを統計的に除外しても、全死亡リスクが3.0倍、心血管死亡リスクが5.2倍に上昇することが確認されました。

致死的な心血管イベントが2.87倍

スペインで行われた観察研究(Marin JM et al., 2005)では、未治療の重症患者は心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクが2.87倍に増加することが報告されています。

脳卒中・全死亡の独立したリスク要因

1,022名を対象にしたコホート研究(Yaggi HK et al., 2005)では、肥満・高血圧・糖尿病などの影響を除外しても、SAS単独で脳卒中および全死亡リスクが2.24倍になることが示されました。

治療を受ければ、リスクは健康な人と同等まで下がる

以上は「治療しなかった場合」の話です。適切な治療を続ければ、見通しは大きく変わります。

前述のスペインの研究(Marin JM et al., 2005)において、重症患者であってもCPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療を適切に継続したグループでは、心血管イベントの発生率や死亡率が健康な人とほぼ同等の水準まで低下することが確認されています。

CPAPは就寝中に鼻マスクを装着し、気道に空気を送り続けることで気道の閉塞を防ぐ治療法です。重症度によってはマウスピース(口腔内装置)や手術が選択されることもありますが、いずれにしても、治療によって短縮されるはずの寿命を取り戻せる可能性が十分にあります。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群は、単なる「いびき」の病気ではありません。

重症のSASを放置すると、低酸素状態や血圧の急上昇が毎晩繰り返され、動脈硬化が進行します。その結果、高血圧や心筋梗塞、脳卒中、不整脈などを引き起こし、死亡リスクは健康な人の約3倍、心血管疾患による死亡リスクは約5倍にまで高まることが報告されています。

一方で、CPAPをはじめとする適切な治療を継続すれば、これらのリスクは大きく改善し、健康な人に近いレベルまで低下することも明らかになっています。

ご家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」と指摘されたり、大きないびきや強い日中の眠気が続く場合は、「疲れているだけ」と自己判断せず、早めに睡眠外来や呼吸器内科などの専門医を受診することが大切です。早期発見・早期治療こそが、健康な寿命を守るための最も重要な一歩です。

参考文献

1.Sleep disordered breathing and mortality: eighteen-year follow-up of the Wisconsin sleep cohort.  Young T, et al.. Sleep. 2008;31(8):1071-8.. https://doi.org/10.5665/sleep/31.8.1071→ ウィスコンシン州の一般住民1,522名を18年間追跡した大規模コホート研究。重症の未治療SAS患者は全死亡リスクが3.0倍、心血管死亡リスクが5.2倍に上昇することを示した。

2.Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study.  Marin JM, et al.. Lancet. 2005;365(9464):1046-53.. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(05)71141-7→ 未治療の重症患者では致死的な心血管イベントリスクが2.87倍に増加する一方、CPAPを継続した患者は死亡リスクが健康な人と同等水準まで低下することを示した観察研究。

3.Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea: experience in 385 male patients.  He J, et al.. Chest. 1988;94(1):9-14.. https://doi.org/10.1378/chest.94.1.9→ 385名の男性患者を追跡。無呼吸指数20以上の重症患者が未治療の場合、8年後の生存率は約63%(約37%が死亡)であることを初めて明確にした先駆的な研究。

4.Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death.  Yaggi HK, et al.. N Engl J Med. 2005;353(19):2034-41.. https://doi.org/10.1056/NEJMoa043104→ 1,022名を対象に、肥満・高血圧・糖尿病などの交絡因子を除外しても、SAS単独で脳卒中および全死亡リスクが2.24倍になることを示したコホート研究。

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