舌下免疫療法の効果はいつまで続く?やめた後の変化をデータで解説|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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舌下免疫療法の効果はいつまで続く?やめた後の変化をデータで解説

舌下免疫療法の効果はいつまで続く?やめた後の変化をデータで解説|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年8月26日

舌下免疫療法の効果はいつまで続く?やめた後の変化をデータで解説

舌下免疫療法は3年の継続が鍵。治療終了後の効果持続について

舌下免疫療法を続けている方から、あるいはこれから始めようか迷っている方から、必ずと言っていいほど聞かれる質問があります。「この治療、いつまで続ければいいのですか」「やめたら元に戻ってしまうのですか」というものです。

もっともな疑問だと思います。毎日欠かさず薬を舌の下に置くという生活を何年も続けるわけですから、その先に何が待っているのかを知っておきたいのは当然のことでしょう。ここでは、実際に治療を終えた人たちを長期間追いかけた研究の結果をもとに、できるだけ具体的にお話しします。

この治療は「症状を抑える薬」とは別物です

まず前提を整理しておきます。抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイドは、いま出ている症状を抑えるための薬です。飲むのをやめれば、当然また症状が出ます。

舌下免疫療法は、そこが根本的に違います。原因となるアレルゲン、つまりスギ花粉やダニの成分をごく少量ずつ毎日体に入れ続けることで、免疫の反応そのものを作り変えていく治療です。専門的には疾患修飾作用と呼ばれます。体の側が変わるのですから、薬をやめても変化が残る。これが「効果が続く」ということの中身です。

ヨーロッパアレルギー臨床免疫学会のガイドラインでも、アレルゲン免疫療法は現時点で唯一、病気の根本的な仕組みに働きかける治療として位置づけられています。

実際のデータ:治療終了から2年後

もっとも信頼性が高いのは、薬を飲んでいる期間だけでなく、やめたあとも数年にわたって参加者を追跡した研究です。

ヨーロッパで行われたイネ科花粉(チモシー)の舌下錠の研究では、3年間の治療のあと、さらに2年間、参加者にも医師にも中身を伏せたまま観察が続けられました。合計5シーズン分のデータです。結果として、症状スコアは偽薬グループに比べて25パーセントから36パーセント低い状態が、治療終了後の2シーズンにも維持されていました。

日本のスギ花粉舌下錠についても、同じ設計の研究があります。1042人を対象に、3年間の治療と2年間の観察を合わせた5年間の追跡が行われました。こちらでも、治療をやめたあと2年間にわたって症状と薬の使用量の改善が保たれていることが確認されています。日本人を対象に、日本のスギ花粉で得られたデータであるという点で、私たちの臨床現場にとって非常に価値のある結果です。

フランスで行われた5種混合イネ科花粉の錠剤の研究でも、治療中止から2年後まで効果が続いていました。

つまり、少なくとも「やめて2年」までは、複数の国、複数のアレルゲンで一貫して効果の持続が示されている。ここは比較的はっきりしています。

では、もっと長く続くのか

さらに長期のデータもあります。イタリアで、ダニアレルギーの患者さんを15年間追跡した研究です。3年間治療した人では効果が7年間、4年または5年治療した人では8年間持続したと報告されています。

ただし、この研究は参加者をくじ引きで振り分けたわけではなく、偽薬との比較も行われていません。人数も限られています。ですから「4年やれば8年もつ」と数字だけを取り出して考えるのは適切ではありません。それでも、治療期間が長いほど持続も長くなる傾向を示した貴重な報告として、多くの総説で引用されています。

複数の臨床試験をまとめて検討した2018年の総説は、現在得られている証拠を「3年間の治療で、中止後少なくとも2年から3年は効果が持続する」とまとめています。これが、いま医学的に言い切れる範囲だと考えてください。

「3年」という数字には根拠があります

ここが実は一番大事なところかもしれません。

イギリスで行われたGRASS試験という研究では、イネ科花粉の舌下錠を2年間だけ使った場合にどうなるかが調べられました。治療中の効果はきちんと出ていました。ところが、中止して1年後に鼻の中にアレルゲンを入れて反応を見る検査を行ったところ、偽薬グループとの差は消えていたのです。

2年では足りない。3年続けて初めて、やめたあとに残る変化が生まれる。この試験の著者たちは、国際ガイドラインが推奨する最低3年間の治療を守るべきだと明確に述べています。

日本のスギ花粉の研究でも、およそ18か月の治療でもある程度の持続効果は見られたものの、3年間続けたグループのほうがはっきりと強い疾患修飾効果を示しました。治療期間と持続効果の間には、量と反応の関係があるのです。

途中でやめてしまうと、それまで積み重ねてきたものが十分に定着しないまま終わってしまう可能性がある。これは、治療を続けるモチベーションを保つうえで知っておいていただきたい事実です。

子どもの場合、もうひとつの意味がある

5歳から12歳の子ども812人を対象にした研究では、3年間の治療と2年間の観察が行われました。喘息の発症そのものを遅らせるという主要な目標については、統計的に明確な差は出ませんでした。

ただし、喘息の症状が出る頻度や喘息の薬を使う頻度は、治療を受けたグループで有意に少なくなっていました。鼻と目の症状についても、治療終了後まで改善が続いていました。

アレルギー性鼻炎から喘息へ、という流れをどこまで止められるかは、いまも研究が続いているテーマです。現時点では「発症を完全に防ぐとまでは言えないが、その後の負担を軽くする可能性がある」というのが、データに忠実な言い方になります。

効果が薄れてきたと感じたら

数年経って症状が戻ってきたと感じる方もいます。そのときは、再度治療を行うという選択肢があります。先ほどの15年追跡研究では、2回目の治療コースのほうが1回目より早く効果が現れたことが報告されています。

一度作られた免疫の変化が、完全に消え去るわけではないということなのでしょう。ただ、再治療についてのデータはまだ限られていますので、実際に検討する際は主治医とよく相談してください。

個人差があることも知っておいてください

ここまで数字を挙げてきましたが、これらはあくまで集団の平均です。ぴたりと当てはまる人もいれば、そうでない人もいます。

複数のアレルゲンに感作されている方、鼻炎以外の要因が絡んでいる方では、経過が違ってくることもあります。また、治療中の服薬をどれだけきちんと続けられたかも結果を左右します。

「3年やれば一生大丈夫」という治療ではありません。しかし「やめたら翌年から元通り」という治療でもない。その中間の、しかし薬による対症療法とは明らかに質の違う効果が得られる治療である、というのが正確な理解です。

まとめ

3年間しっかり続けた場合、治療終了後も少なくとも2年から3年は効果が続くことが、日本を含む複数の国の質の高い研究で示されています。より長期の持続を示唆する報告もありますが、証拠の強さは一段落ちます。

そして、2年で切り上げてしまうと持続効果が得られなかったという研究結果があることは、ぜひ覚えておいてください。始めたのであれば、3年を一つの区切りとして目指す。それが現在の医学的な標準的考え方です。

参考文献

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  2. Disease-Modifying Effect of Japanese Cedar Pollen Sublingual Immunotherapy Tablets, Yonekura S, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Nov;9(11):4103-4116.e14. DOI: 10.1016/j.jaip.2021.06.060 要約: 日本人1042人を対象としたスギ花粉舌下錠の5年間試験。3年治療後、少なくとも2年間は疾患修飾効果が持続。約18か月投与でも効果は残るが3年投与のほうが明確に強かった。
  3. Long-Term Efficacy and Dose-Finding Trial of Japanese Cedar Pollen Sublingual Immunotherapy Tablet, Gotoh M, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2019 Apr;7(4):1287-1297.e8. DOI: 10.1016/j.jaip.2018.11.044 要約: スギ花粉舌下錠の至適用量を5000JAUと決定した第II/III相試験。3年間の治療で安定した効果を示し、中止後の持続効果が治療期間に依存することを明らかにした。
  4. Effect of 2 Years of Treatment With Sublingual Grass Pollen Immunotherapy on Nasal Response to Allergen Challenge at 3 Years: The GRASS Randomized Clinical Trial, Scadding GW, et al. JAMA. 2017 Feb 14;317(6):615-625. DOI: 10.1001/jama.2016.21040 要約: 2年間の舌下免疫療法では中止1年後に偽薬との差が消失した無作為化試験。長期効果を得るには最低3年の治療継続が必要であることを示した重要な陰性結果。
  5. Long-lasting effects of sublingual immunotherapy according to its duration: a 15-year prospective study, Marogna M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2010 Nov;126(5):969-975. DOI: 10.1016/j.jaci.2010.08.030 要約: ダニ単独感作患者の15年追跡研究。3年治療で7年、4〜5年治療で8年の効果持続を報告。非盲検の観察研究という限界はあるが治療期間と持続の関係を示した。
  6. Prolonged efficacy of the 300IR 5-grass pollen tablet up to 2 years after treatment cessation, as measured by a recommended daily combined score, Didier A, et al. Clin Transl Allergy. 2015 May 22;5:12. DOI: 10.1186/s13601-015-0057-8 要約: 5種混合イネ科花粉錠の第3相試験の追跡解析。プレシーズン投与を3年行った後、治療なしの2シーズンにわたり症状と薬剤使用の複合スコアの改善が維持された。
  7. Results from the 5-year SQ grass sublingual immunotherapy tablet asthma prevention (GAP) trial in children with grass pollen allergy, Valovirta E, et al. J Allergy Clin Immunol. 2018 Feb;141(2):529-538.e13. DOI: 10.1016/j.jaci.2017.06.014 要約: 5〜12歳812人の小児を対象とした喘息予防試験。喘息発症時期に有意差はなかったが、喘息症状と喘息薬使用のリスクは低下し鼻眼症状の改善も治療後まで持続した。
  8. Duration of Allergen Immunotherapy for Long-Term Efficacy in Allergic Rhinoconjunctivitis, Penagos M, et al. Curr Treat Options Allergy. 2018;5(3):275-290. DOI: 10.1007/s40521-018-0176-2 要約: 中止後1年以上追跡した無作為化二重盲検試験を集めた総説。皮下・舌下いずれも3年治療で中止後2〜3年は効果が持続すると結論し、最低3年の継続を支持している。
  9. EAACI Guidelines on Allergen Immunotherapy: Allergic rhinoconjunctivitis, Roberts G, et al. Allergy. 2018 Apr;73(4):765-798. DOI: 10.1111/all.13317 要約: ヨーロッパアレルギー臨床免疫学会による診療ガイドライン。アレルゲン免疫療法を病態そのものに働きかける唯一の治療と位置づけ、長期効果のため3年以上の継続を推奨。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)

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