男性不妊に対する漢方薬治療|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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男性不妊に対する漢方薬治療

男性不妊に対する漢方薬治療|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年6月27日

男性不妊に対する漢方薬治療

西洋医学と組み合わせる「体の土台づくり」のアプローチ

不妊の相談というと女性側の問題と思われがちですが、WHO(世界保健機関)の調査では、不妊の原因の約48%は男性側にも存在するとされています。男性不妊の主な原因としては、精子がうまく作られない「造精機能障害」、精巣の静脈に血液が滞る「精索静脈瘤」、性機能障害などがありますが、検査をしても原因が特定できない「特発性造精機能障害」も少なくありません。

このように西洋医学的な治療の適用が難しいケースや、体外受精・顕微授精などの高度生殖医療(ART)に備えて体質改善を図りたい場面で、漢方薬の有効性が医学的にも注目されています。本記事では、男性不妊に対する漢方薬の働きと代表的な処方について、できるだけわかりやすく解説します。

西洋医学と漢方医学—アプローチの違い

西洋医学が「問題のある部分を直接修復する」治療だとすれば、漢方医学は「精子が健全に育つための体の土台を整える」治療といえます。

精子の元となる細胞が作られ、完全に成熟して射精されるまでには、約70〜90日かかります。その期間中に強いストレスや慢性的な疲労、下半身の血流不足があると、運動率の高い元気な精子は育ちにくくなります。

漢方医学では、体の「気(生命エネルギー)」「血(血液とその循環)」「水(体液)」のバランスを整えることで、精巣への血流を改善し、男性ホルモンの分泌を自然な形で促します。精子という「点」だけでなく、男性の体全体を底上げするのが漢方治療の最大の特徴です。

代表的な漢方処方と医学的根拠

1.補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

「気」を補い、胃腸の働きを高めて体力を回復させる処方です。日常的に疲れやすい、ストレスが多い、食欲がわかないといった方に向いています。男性不妊においては最も頻繁に用いられる処方のひとつで、精子の濃度や運動率を改善する効果が複数の研究で報告されています。

メカニズムとしては、男性ホルモン(テストステロン)を分泌する精巣内の「ライディッヒ細胞」の機能を正常化し、ホルモンへの応答性を高めることが確認されています。また、精子が精巣上体で運動能力を獲得し成熟するプロセスを補助するタンパク質の合成を促進することも示唆されており、精子無力症や乏精子症の改善に直結します。

3.八味地黄丸(はちみじおうがん)

漢方でいう「腎(生殖機能・生命力を司る根本的なエネルギー)」の衰えを補う処方です。加齢による生殖機能の低下、下半身の冷え、腰痛、夜間頻尿などの症状がある方に適しています。

動物実験や臨床研究において、八味地黄丸は精子の数や運動率を増加させることが確認されています。局所の男性ホルモン活性を促進し、造精機能を根本から底上げする効果が期待できるため、加齢とともに精子の質が低下してきた方や、冷え性・体力の衰えを感じる方の男性不妊に対して有効な選択肢となります。

3.桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

血液の巡りが滞った「瘀血(おけつ)」を改善し、血流をスムーズにする処方です。男性不妊の主な原因のひとつである「精索静脈瘤」の治療によく用いられます。

精索静脈瘤とは、精巣周囲の静脈に血液が逆流・停滞することで精巣の温度が上がり、精子を作る機能が低下する病態です。桂枝茯苓丸はこの骨盤内・精巣周囲の微小循環を改善する効果があります。最新の研究では、軽度の精索静脈瘤患者において、抗酸化物質(ビタミンE)との併用により精子の運動率や濃度が有意に改善したことが報告されています。手術が必要な重度ケースでも、術後の早期回復や再発防止を目的に用いられることがあります。

漢方治療を取り入れる際のポイント

期待できるメリット

・副作用が比較的少なく、体質改善を通じて不妊以外の不調(冷え・疲労感・肩こり・睡眠の質の低下など)も同時に改善されることが多い
・体外受精や顕微授精(ART)と並行して精子の質を高めておくことで、良好な受精卵を得やすくなり、妊娠率向上に寄与する
・西洋医学的な治療が適用しにくい特発性造精機能障害への有力なアプローチとなる

注意すべき点

・即効性はなく、精子が新たに作られ成熟するまで約3ヶ月かかるため、最低でも3〜6ヶ月の継続服用が必要
・閉塞性無精子症など物理的な原因がある場合や、精巣機能が完全に失われている場合は漢方薬のみでの改善は困難であり、手術や高度生殖医療が不可欠
・漢方薬はその人の体質(「証」)に合った処方が必要であり、自己判断での市販薬購入は効果不十分になりやすい
・生殖医療専門の泌尿器科医や漢方専門医の診察を受け、自分に合った処方を受けることが治療成功への近道

男性不妊の治療は精神的・肉体的に負担がかかることもありますが、漢方薬を用いたアプローチは、体が本来持つ生命力や生殖能力を無理なく引き出す、理にかなった選択肢です。専門医の指導のもと、焦らず継続して治療に取り組むことをお勧めします。

参考文献

1.The hormonal response to HCG stimulation in patients with male infertility before and after treatment with hochuekkito  Ishikawa H, et al.  The American Journal of Chinese Medicine. 1992;20(2):157-65.  DOI: 10.1142/S0192415X92000163
要約:男性不妊患者に補中益気湯を3ヶ月投与した結果、精子濃度と運動率が有意に上昇。精巣内ライディッヒ細胞の機能改善と男性ホルモン応答性の正常化により精子の質が向上するメカニズムを示した臨床研究。

2.Effects of hochu-ekki-to, a Japanese kampo medicine, on cultured hamster epididymal cells  Nakayama T, et al.  The American Journal of Chinese Medicine. 1994;22(3-4):301-7.  DOI: 10.1142/S0192415X9400036X
要約:補中益気湯が精子形成に与える影響を細胞レベルで解析。補中益気湯投与血清により精巣上体細胞のタンパク質合成が有意に促進され、精子の機能的成熟を後押しすることを実証した基礎研究。

3.Effects of Hachimijiogan, a Kampo powder, on epididymidis sperm characteristics in healthy male rats  Wang Y, et al.  Reprod Med Biol. 2014 Aug 15;14(1):33-38.  DOI: 10.1007/s12522-014-0191-3
要約:ラットを用いた研究で、低用量の八味地黄丸投与により精子の数と運動率が増加し、局所の造精環境や男性ホルモン活性の改善効果が科学的に裏付けられた。

4.Effect of keishibukuryogan combined with tocopherol nicotinate on sperm parameters in patients with a varicocele  Takeshima T, et al.  Int J Urol. 2021 Nov 24;29(2):165-169.  DOI: 10.1111/iju.14746
要約:精索静脈瘤患者に桂枝茯苓丸と抗酸化物質(ビタミンE)を併用した臨床研究。軽度の精索静脈瘤において治療後に運動精子濃度が有意に改善し、手術不要ケースへの有効な選択肢となることが報告された。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介(日本東洋医学会認定漢方専門医・指導医)

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