2021年2月14日

胃の検診、バリウムと胃カメラどちらを選ぶ?
外来で患者さんからよく聞かれる質問があります。
「胃の検診、バリウム検査と胃カメラ、どちらを選べばいいですか?」
結論からお伝えすると、当院ではバリウム検査ではなく胃カメラをおすすめしています。今回はその理由と、胃カメラを受ける適切な頻度について解説します。
なぜバリウムより胃カメラなのか、3つの理由
理由1:被ばくの問題
バリウム検査はレントゲンを使うため、被ばくを伴います。1回あたりの被ばく量はごくわずかですが、検査で少しでも気になる所見があれば、結局は胃カメラによる精密検査(二次検査)が必要になります。であれば、最初から胃カメラを受けて、不要な被ばくを避けるほうが合理的だと考えています。
理由2:粘膜の微妙な変化が見えない
バリウム検査は胃や食道の「かたち」を映し出す検査です。そのため、粘膜表面の微妙な色調の変化までは捉えられません。
具体的には、
- 逆流性食道炎は、よほど重症でない限り「異常なし」と判定されてしまう
- 早期胃がんの表面平坦型(盛り上がりも凹みも目立たないタイプ)は、バリウムでは見つけられない
といった弱点があります。粘膜を直接観察できる胃カメラだからこそ、これらの初期変化を拾うことができます。
理由3:検査後の下剤が意外とつらい
バリウム検査の後は、腸の中に残ったバリウムを排出するために下剤を飲む必要があります。これが思いのほか負担で、検査後に便秘になってしまう方もいます。特にふだんから便秘気味の方は注意が必要です。
以上の3つの理由から、当院では検診の胃がんスクリーニングとして胃カメラをおすすめしています。
吹田市の胃がん検診について 満50歳以上で、その年の誕生日に偶数年齢になる方が、胃カメラによる胃がん検診の対象です。2年に1回(1年は1〜12月で計算)受けることができます。
ピロリ菌は胃がんの原因、でも食道がんは防いでいる?
胃がんの63%はピロリ菌が原因という報告があります[1]。近年は衛生環境の改善によりピロリ菌陽性の人が大きく減り、それにともなって胃がんも年々減少しています。
その一方で増えているのが、逆流性食道炎と食道がんです。私が研修医だったおよそ20年前は、胃カメラを受ける患者さんのほとんどがピロリ菌陽性で、慢性胃炎の状態でした。しかし最近では、30代でも逆流性食道炎を持つ人が珍しくありません。
なぜ逆流性食道炎が増えているのか
少し余談になりますが、これにはピロリ菌が関係しています。
ピロリ菌がいなくなると、胃酸はかえって出やすくなります。実際、欧米の報告では除菌後3年でおよそ25%、つまり4人に1人が逆流性食道炎に悩まされているとされています[2]。
これは、ピロリ菌自身の生存戦略と関係しています。胃の中が強い酸性になりすぎるとピロリ菌にとっても住みにくくなるため、菌は胃粘膜によじ登り、胃酸の分泌を抑えようとするのです。つまり、ピロリ菌がいることで、結果的に胃酸の出過ぎが抑えられている面があるということです。
ちなみにピロリ菌にも性質の違いがあり、おとなしく胃と共存するタイプもいれば、胃粘膜を傷つけて胃がんの原因となるタイプもいます。そして、日本を含む東アジアで多く見られるピロリ菌は、ヨーロッパで多いタイプに比べて、胃がんを引き起こしやすいことがわかっています。
胃カメラはどのくらいの頻度で受けるべき?
バリウム検査は多くの検診施設で標準セットに含まれているため、1年に1回受けている方が大半だと思います。会社の検診補助が出ることも、バリウムが選ばれやすい理由の一つでしょう。
胃カメラを受ける場合の目安は、以下の通りです。
| 状態 | 頻度 |
|---|---|
| ピロリ菌陰性で、食道にも異常がない | 2年に1回 |
| ピロリ菌除菌後、または胃炎・逆流性食道炎・胃粘膜下腫瘍などがある | 1年に1回 |
| (例外)胃底腺ポリープのみ | 2年に1回で可 |
ピロリ菌を除菌すると胃がんのリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。そのため、上記の頻度での定期的な検査をおすすめしています。
また、会社指定の検診センターで胃カメラを受けられない場合でも、ピロリ菌の除菌治療歴がある、あるいは胃もたれや胸焼けなどの症状がある場合は、保険診療として一般の病院で検査を受けることができます。胃腸の調子が悪いと感じたら、我慢せず受診することをおすすめします。
まとめ
- 検診は胃カメラがおすすめ
- 検査の間隔は
- ピロリ菌陰性・食道にも異常なし → 2年に1回
- 除菌後、胃炎・逆流性食道炎・胃粘膜下腫瘍などあり → 1年に1回
- (例外)胃底腺ポリープのみ → 2年に1回で可
引用文献 [1] Sam M Mbulaiteye, Michie Hisada, Emad M El-Omar. Helicobacter Pylori associated global gastric cancer burden. Frontiers in Bioscience, 2009 Jan 1;14:1490-504. [2] J Labenz et al. Curing Helicobacter pylori infection in patients with duodenal ulcer may provoke reflux esophagitis. Gastroenterology. 1997 May;112(5):1442-7.
千里丘かがやきクリニック 院長 有光 潤介 (大阪府吹田市長野東19-6)