ASTHMA
気管支喘息 ― その咳を、数値で確かめる
かぜのあとの咳だけが何週間も残る。夜中や明け方に咳で目が覚める。息を吐くときにヒューヒューと鳴る。その背景にあるのが気管支喘息です。喘息は「発作の病気」ではなく、症状のない日にも気道の炎症が続いている病気です。当院では呼気NO(FeNO)検査で、その見えない炎症を数値として確かめることができます。息を吐くだけ、約1分の検査です。
喘息という病気は、次の3つが重なって成り立っています。いずれも、症状が落ち着いている日にも続いています。
- iInflammation気道の慢性的な炎症
- iiHyperresponsiveness刺激に反応しやすい気道
- iiiVariable obstruction出たり治まったりする気道の狭窄
01
こんな症状は、ありませんか
Self-check
喘息の咳は、必ずしもヒューヒューを伴いません。とくに大人になってから始まる喘息では、咳だけが続くことも珍しくありません。当てはまる項目を選んでみてください。
0/ 8項目当てはまる項目を選んでみてください。
02
気道で、何が起きているのか
Mechanism
症状のないときBetween attacks
- ダニやホコリなどのアレルゲン、たばこの煙といった刺激に反応して、気道の粘膜に好酸球などの炎症細胞が集まります。
- この炎症は、咳も息苦しさもない日にも静かに続きます。粘膜はむくみ、痰が増えていきます。
- その結果、気道はごくわずかな刺激にも反応してしまう「過敏な」状態になります。
→見た目は元気でも、気道は炎症のただ中
発作のときDuring an attack
- かぜ・冷気・煙・気圧の変化・ストレスなどをきっかけに、気道を取り巻く筋肉が縮みます。
- もともとむくんでいた粘膜と増えた痰が加わり、空気の通り道が一気に細くなります。
- 細い管から息を押し出すことになり、吐くときに音が鳴り、呼吸が苦しくなります。
→喘鳴・息苦しさ・激しい咳
放っておくとAirway remodeling
- 炎症が年単位で続くと、気道の壁そのものが厚く硬く作り変えられていきます(気道リモデリング)。
- こうなると、薬を使っても元の状態には戻りにくくなります。喘息の治療が「症状を止めること」ではなく「炎症を抑え続けること」を目標にするのは、このためです。
→治りにくい喘息へ
喘息で亡くなる方は、大きく減りました。日本の喘息死亡者数は1995年の7,253人から、2023年には1,089人まで減少しています。吸入ステロイド薬が広く使われるようになったことが、その最大の理由と考えられています。それでも、まだゼロではありません。
03
当院で受けられる、呼気NO検査
FeNO
気道で好酸球性の炎症が起きていると、粘膜から一酸化窒素(NO)が多くつくられ、吐いた息に混じって出てきます。その濃度を測るのが呼気NO(FeNO)検査です。採血もレントゲンも要らず、息を吐くだけで、目に見えない気道の炎症の程度を数値にできます。
- STEP 01
いったん息を吐き切る
肺の中の空気をすべて吐き出します。座ったまま、器械を口にくわえるだけです。
- STEP 02
深く吸い込む
フィルターを通して、いっぱいまで息を吸います。使い捨てのフィルターなので衛生的です。
- STEP 03
10秒、一定の速さで吐く
画面の目安に合わせて、ゆっくり吐き続けます。1分ほどで結果が出ます。
- <22ppb
低い
好酸球性の気道炎症は考えにくい範囲です。咳の原因として、ほかの病気も検討します。
- 22 – 37ppb
炎症が疑われる
喘息を疑う症状があれば、可能性が高まります。症状の経過や呼吸機能検査と合わせて判断します。
- ≥37ppb
高い
好酸球性の気道炎症がある可能性が高く、吸入ステロイド薬がよく効くことが期待されます。
日本国内の健康な成人240人を対象とした調査では、呼気NOの正常値はおよそ15ppb、上限は37ppbと報告されています。喘息を疑う症状がある方では、22ppbが感度91%・特異度84%で最も見分けのよいカットオフ値とされ、37ppbを超えるとその可能性はさらに高くなります。
- 診断の補助 長引く咳が、気道の炎症によるものかを見きわめます。
- 効く薬の見きわめ 吸入ステロイド薬が効きやすいタイプかを推測できます。
- 治療効果の確認 治療前後で比べることで、炎症が鎮まったかが分かります。
- 吸入の答え合わせ 値が下がらないとき、吸入手技や飲み忘れを一緒に見直します。
値だけで診断は決まりません
呼気NOはあくまで補助的な指標です。次のような場合には、実際の炎症と数値がずれることがあります。
- 吸入ステロイド薬を使用中の方では、低めに出ます
- 喫煙者では低く出ます。検査直前の飲食(とくに硝酸塩を多く含む野菜)も影響します
- アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎があると、喘息がなくても高くなることがあります
- 治療中でも50ppbを超え続ける場合、好酸球性副鼻腔炎などの合併も考えます
症状の出かた、経過、呼吸機能検査の結果と合わせて、医師が総合的に判断します。
保険が使える検査です。3割負担でおよそ900円前後。痛みはなく、被ばくもありません。検査そのものは1分ほどで終わります。当日の受診でお受けいただけます。
04
診断のために行う検査
Examinations
-
呼気NO検査
FeNO
気道の炎症の程度を数値で捉えます。息を吐くだけで、約1分。
-
呼吸機能検査
Spirometry
息を吐く速さと量から、気道の狭さを測ります。気管支拡張薬を吸う前後で比べ、狭さが戻るか(気道可逆性)を確かめることもあります。
-
血液検査
Blood test
好酸球数、総IgE、ダニ・ネコ・カビ・花粉などの特異的IgEを調べ、アレルギーの背景を確かめます。
-
胸部レントゲン
Chest X-ray
喘息とまぎらわしい肺炎・心不全・COPDなどが隠れていないかを確認します。必要に応じてCTや専門施設をご紹介します。
「咳喘息」も同じ道すじで調べます。喘鳴や息苦しさがなく、咳だけが続くタイプを咳喘息といいます。放置すると3割ほどが典型的な喘息へ移行するとされ、早い段階で吸入ステロイド薬を始めることに意味があります。呼気NO検査は、この見きわめにとくに役立ちます。
05
治療と、暮らしの工夫
Treatment
お薬
◎ 毎日つづける薬 長期管理薬
- 吸入ステロイド薬(ICS)
- ICS/LABA配合剤
- ICS/LABA/LAMA配合剤
- ロイコトリエン受容体拮抗薬
- テオフィリン徐放薬
- 抗IgE・抗IL-5などの生物学的製剤
- ダニの舌下免疫療法(鼻炎合併時)
! 発作のときの薬 発作治療薬
- 短時間作用性β2刺激薬(SABA)
- ICS/ホルモテロール配合剤
- 経口ステロイド(短期間)
- ネブライザー吸入
- 点滴・酸素(重い発作のとき)
くらし
× 悪化のきっかけ 避けたい
- ダニ・ハウスダスト
- たばこ(受動喫煙も)
- かぜ・インフルエンザ
- 気温・気圧の変化
- 台風・雷雨
- ペットの毛
- カビ
- 花粉
- 香水・線香・殺虫剤
- ストレス・過労
- 飲酒
- 一部の解熱鎮痛薬
- 肥満
- 逆流性食道炎
◎ できる工夫 取り入れたい
- 寝具は週1回洗う
- 掃除は換気しながら
- 禁煙・分煙
- インフルエンザワクチン
- 肺炎球菌ワクチン
- 適正体重を保つ
- 鼻炎をきちんと治す
- 吸入後のうがい
- 吸入手技の定期確認
- 症状を記録する
- 無理のない有酸素運動
症状のない日こそ、吸入を続けてください。吸入ステロイド薬は発作を止める薬ではなく、気道の炎症そのものを鎮める薬です。「効いているから症状が出ない」状態を保つことが目的で、自己判断で中断すると炎症だけが静かに戻ってきます。発作止め(SABA)を使うのが週2回を超える、あるいは1年に3本以上使うようなら、それは治療を見直すサインです。
すぐに受診・救急要請を
- 息が苦しくて、続けて話せない・横になれない
- 唇や爪の色が紫がかっている
- 発作止めを使っても効かない、効果が1時間ももたない
- 脈が速く、冷や汗が出る
こうしたときは様子を見ず、救急外来の受診や救急要請をためらわないでください。
06
受診をおすすめする目安
When to visit
- i咳が3週間以上続いている。または毎年、同じ季節に咳が長引く。
- ii夜間や早朝に、咳や息苦しさで眠りが妨げられる。
- iii市販の咳止めやかぜ薬を飲んでも、変化がない。
- iv子どものころ喘息があり、最近また息苦しさを感じる。
- v喘息の治療中だが、発作止めを使う回数が増えてきた。
- vi治療を続けているのに、症状がすっきりしない。
長引く咳を、そのままにしないでください
喘息は、早く見つけて炎症を鎮めるほど、その後の経過が穏やかになる病気です。当院ではアレルギー専門医が、呼気NO検査・呼吸機能検査・血液検査を院内で行い、その日のうちに方針をご相談します。吸入薬は「処方して終わり」ではなく、実際に吸えているかを一緒に確認しながら続けていきます。標準的な治療を土台としたうえで、ご希望に応じて漢方薬を併用することもできます。
- アレルギー専門医
- 呼気NO検査
- 呼吸機能検査
- 血液検査(好酸球・IgE)
- 舌下免疫療法
- 漢方治療
このページは一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療の内容は、お一人おひとりの状態によって異なります。現在治療を受けている方は、自己判断で薬を中止せず、主治医または当院にご相談ください。
参考:喘息予防・管理ガイドライン/日本アレルギー学会「呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)測定器の適正使用に関する注意事項」/厚生労働省 人口動態統計
Senrioka Kagayaki Clinic千里丘かがやきクリニック