アレルギー体質は遺伝する?遺伝と環境から読み解く本当の話|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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アレルギー体質は遺伝する?遺伝と環境から読み解く本当の話

アレルギー体質は遺伝する?遺伝と環境から読み解く本当の話|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年1月23日

アレルギー体質は遺伝する?遺伝と環境から読み解く本当の話

アレルギー体質は子供に遺伝する?発症確率と「本当に遺伝するもの」の正体

結論
遺伝します。ただし「必ず遺伝する」わけではなく、「親と同じアレルギーになる」わけでもありません。
正確に言えば、受け継がれるのは特定の病名ではなく、アレルギーを起こしやすい体の土台です。そしてその土台を持っていても、発症するかどうかは環境によって大きく変わります。

アレルギー体質が子供に遺伝するかどうかという疑問は、多くの方が抱く不安の一つです。

結論としては、アレルギー体質には遺伝的な要因が深く関わっています。しかし、遺伝だけで全てが決まるわけではありません。

現在の医学的研究に基づき、遺伝の確率、具体的に何が遺伝するのか、そして環境要因との関係について、一般の方にもわかりやすく解説します。

双子の研究が教えてくれること

遺伝の影響を調べる古典的な方法が、双子の比較です。一卵性双生児は遺伝子がほぼ100パーセント同じ、二卵性は約50パーセント。育つ環境が同じなら、両者の差は遺伝の力を映し出します。

デンマークの双子登録を使った21,135組の解析では、片方が喘息の場合、一卵性のもう片方が喘息になるリスクは一般集団の約6倍、二卵性では約3倍でした。スウェーデンの双子研究では、小児喘息の遺伝率は0.82と算出されています。他のアレルギー疾患でもおおむね0.60から0.80の範囲でした。

かなり高い数字に見えますが、注意が必要です。遺伝率とは「集団の中でのばらつきのうち、遺伝で説明できる割合」であって、「あなたのお子さんが82パーセントの確率で発症する」という意味ではありません。ここは誤解されやすいところです。

アレルギー体質は遺伝するのか

アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなど)を発症しやすい体質のことを医学的に「アトピー素因」と呼びます。この素因は、確かに親から子へと遺伝することが多くの研究で明らかになっています。

過去の統計データや疫学調査によると、両親のアレルギー体質の有無によって、子供がアレルギー疾患を発症する確率は以下のように推計されています。

両親ともにアレルギー体質の場合

子供が発症する確率は約50パーセントから70パーセント、報告によっては80パーセント近くに達するとされています。

両親のどちらか一方がアレルギー体質の場合

子供が発症する確率は約30パーセントから50パーセント程度と言われています。

両親ともにアレルギー体質でない場合

それでも子供が発症する確率はゼロではなく、約10パーセントから15パーセント程度あります。

このデータが示す通り、遺伝の影響は大きいものの、両親がアレルギーだからといって必ず子供もアレルギーになるわけではありません。逆に、両親にアレルギーがなくても発症するケースも十分にあり得ます。

具体的に何が遺伝するのか

「アレルギーそのもの」が遺伝するわけではありません。例えば、親が「そばアレルギー」だからといって、子供も必ず「そば」に反応するわけではないのです。遺伝するのは、あくまで「アレルギーを起こしやすい身体の仕組み」です。具体的には以下の2つの要素が遺伝しやすいと考えられています。

IgE抗体を作りやすい体質

私たち人間の体には、ウイルスや細菌などの異物が入ってきたときに、それを攻撃して排除しようとする免疫機能が備わっています。アレルギー体質の方の免疫システムは、本来は無害なもの(花粉、ダニ、特定の食べ物など)に対しても過剰に反応し、「IgE抗体」という物質を大量に作ってしまう傾向があります。このIgE抗体を産生しやすい能力が遺伝します。

皮膚や粘膜のバリア機能の弱さ

近年の研究で特に注目されているのが、皮膚のバリア機能に関連する遺伝子です。健康な皮膚は、水分を保ち、外からの刺激やアレルゲンの侵入を防ぐバリアの役割を果たしています。しかし、遺伝的に「フィラグリン」という皮膚の保湿成分を作る遺伝子に変異がある場合など、生まれつき皮膚が乾燥しやすくバリア機能が弱いことがあります。バリアが弱いと、そこからアレルゲンが体内に侵入しやすくなり、結果としてアレルギーを発症するリスクが高まります。

遺伝以外の要因:環境因子の重要性

近年、アレルギー疾患の患者数は世界的に増加傾向にあります。遺伝子の変化は何百年、何千年という単位で起こるものであり、ここ数十年の急激な患者数の増加を遺伝だけで説明することはできません。そこで重要視されているのが「環境因子」です。

遺伝的にアレルギーになりやすい素質(火薬)を持っていても、それに点火する環境(火種)がなければ発症しないことがあります。逆に、遺伝的素因がそれほど強くなくても、環境要因が重なれば発症することがあります。発症に関与すると考えられている主な環境因子には以下のようなものがあります。

生活環境の衛生状態(衛生仮説)

乳幼児期に細菌やウイルスにさらされる機会が減ったことで、免疫システムが本来戦うべき相手を見失い、無害なものに攻撃を仕掛けるようになったという説です。

食生活の変化

加工食品の増加、腸内環境の変化などが免疫系に影響を与えている可能性があります。

居住環境

気密性の高い住宅が増えたことで、ダニやカビが繁殖しやすくなり、これらを吸い込む機会が増えたことが挙げられます。

大気汚染やタバコの煙

排気ガスやPM2.5、受動喫煙などは、粘膜を傷つけアレルギー反応を誘発しやすくします。

アレルギーマーチという現象

遺伝的素因を持つ子供の場合、「アレルギーマーチ」と呼ばれる現象が起きることがあります。これは、年齢とともに現れるアレルギー疾患の種類が変化していく様子を行進(マーチ)に例えたものです。

典型的には、乳児期に「アトピー性皮膚炎」から始まり、皮膚のバリア機能が低下した部分から食物アレルゲンが侵入することで「食物アレルギー」を発症します。その後、幼児期から学童期にかけて「気管支喘息」が現れ、思春期頃には「アレルギー性鼻炎(花粉症など)」へと症状が移行、あるいは合併していくケースです。

この流れを断ち切るために、近年では乳児期からの徹底したスキンケア(保湿)や、適切な時期でのアレルゲン摂取(医師の指導の下で行う場合)などが重要視されるようになってきています。

まとめ

アレルギー体質は確かに遺伝する傾向があります。両親のどちらか、あるいは両方がアレルギーを持っている場合、子供がアレルギーを発症するリスクは統計的に高くなります。遺伝するのは特定の物質へのアレルギー反応ではなく、「IgE抗体を作りやすい免疫システム」や「皮膚のバリア機能の弱さ」といった体質的な特徴です。

しかし、発症するかどうかは、遺伝要因と環境要因の複雑な組み合わせによって決まります。「親のせいでアレルギーになった」と単純に捉えるのではなく、遺伝的なリスクがあることを理解した上で、スキンケアや環境整備など、コントロール可能な要因に目を向けることが大切です。

医学は進歩しており、かつては「除去」一辺倒だった予防法も、現在は「皮膚バリアの保護」や「早期からの適切な管理」へと変わってきています。遺伝について過度に悲観することなく、適切な知識を持って対処していくことが推奨されます。

参考文献

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    要約: スウェーデンの双子コホート研究。小児喘息の遺伝率を0.82と算出し、他のアレルギー疾患も0.60から0.80の範囲であることを示した。
  2. Estimates of asthma heritability in a large twin sample, Thomsen SF, et al. Clin Exp Allergy. 2010 Jul;40(7):1054-61. DOI: https://doi.org/10.1111/j.1365-2222.2010.03525.x
    要約: デンマーク双子登録の21,135組を解析。一卵性双生児では喘息リスクが約6倍、二卵性では約3倍と、遺伝的近さに応じた差を明示した。
  3. How does parental history of atopic disease predict the risk of atopic dermatitis in a child? A systematic review and meta-analysis, Ravn NH, et al. J Allergy Clin Immunol. 2020 Apr;145(4):1182-1193. DOI: https://doi.org/10.1016/j.jaci.2019.12.899
    要約: 149研究のメタ解析。親のアレルギー歴で子のアトピー性皮膚炎リスクは1.81倍、両親ありで2.08倍。親と同じ疾患ほど伝わりやすいと示した。
  4. How a Family History of Allergic Diseases Influences Food Allergy in Children: The Japan Environment and Children’s Study, Saito-Abe M, et al. Nutrients. 2022 Oct 15;14(20):4323. DOI: https://doi.org/10.3390/nu14204323
    要約: 日本の全国出生コホート。両親ともに食物アレルギーがある場合の子の発症オッズ比2.60、片方のみで1.71と、日本人集団での実測値を提示。
  5. Shared genetic origin of asthma, hay fever and eczema elucidates allergic disease biology, Ferreira MA, et al. Nat Genet. 2017 Dec;49(12):1752-1757. DOI: https://doi.org/10.1038/ng.3985
    要約: 約36万人のゲノム解析。喘息・花粉症・湿疹に共通する99のリスク領域と136変異を同定し、免疫細胞の遺伝子発現調節が主機序と示した。
  6. Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis, Palmer CN, et al. Nat Genet. 2006 Apr;38(4):441-6. DOI: https://doi.org/10.1038/ng1767
    要約: 皮膚バリア蛋白フィラグリンの機能喪失変異がアトピー性皮膚炎の主要素因であることを証明。皮膚バリア障害説の出発点となった歴史的論文。
  7. Innate Immunity and Asthma Risk in Amish and Hutterite Farm Children, Stein MM, et al. N Engl J Med. 2016 Aug 4;375(5):411-421. DOI: https://doi.org/10.1056/NEJMoa1508749
    要約: 遺伝的に近い2集団を比較。喘息有病率は5.2%対21.3%、家庭内塵の内毒素は6.8倍差。環境が自然免疫を介し発症を左右すると示した。
  8. Prenatal and passive smoke exposure and incidence of asthma and wheeze: systematic review and meta-analysis, Burke H, et al. Pediatrics. 2012 Apr;129(4):735-44. DOI: https://doi.org/10.1542/peds.2011-2196
    要約:79の前向き研究を統合。受動喫煙で喘鳴が30から70%、喘息が21から85%増加。妊娠中の母の喫煙が最も強い危険因子と結論づけた。
  9. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy, Du Toit G, et al. N Engl J Med. 2015 Feb 26;372(9):803-13. DOI: https://doi.org/10.1056/NEJMoa1414850要約: 高リスク乳児640人の無作為化試験。早期からのピーナッツ継続摂取で5歳時発症率が13.7%から1.9%へ低下し、除去中心の方針を転換させた。
  10. Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial, Natsume O, et al. Lancet. 2017 Jan 21;389(10066):276-286. DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(16)31418-0
    要約: 日本の二重盲検試験。湿疹の適切な治療と生後6か月からの微量加熱卵の段階的導入により、卵アレルギー発症を38%から8%へ抑制した。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック
院長 有光潤介(日本アレルギー学会専門医)

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