上下顎同時前進術(MMA)とは — CPAPが続けられない人のための、もうひとつの道|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

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上下顎同時前進術(MMA)とは — CPAPが続けられない人のための、もうひとつの道

上下顎同時前進術(MMA)とは — CPAPが続けられない人のための、もうひとつの道|千里丘かがやきクリニック|吹田市長野東の内科・消化器内科

2026年8月18日

上下顎同時前進術(MMA)とは — CPAPが続けられない人のための、もうひとつの道

CPAPが続けられない方へ|睡眠時無呼吸症候群の外科手術「MMA」とは

睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療といえば、まずCPAPです。効果の確実さという点で、今のところこれに勝る治療はありません。ただ現実には、どうしても続けられない方がいます。マスクが顔に合わない、空気が漏れる、旅行のたびに持ち運ぶのが億劫になる。そうしてCPAPを使わなくなってしまう。

そんなときに検討される選択肢のひとつが、上下顎同時前進術です。英語でMaxillo-mandibular advancement、略してMMAと呼ばれます。

のどの「入れ物」ごと広げる手術

扁桃を取ったり、のどちんこ周辺の軟らかい組織を切除したりする手術は、狭くなった通り道の壁を削る発想です。これに対してMMAは、通り道を囲んでいる骨の枠組みそのものを前に動かします。

具体的には、上あご(上顎骨)をLe Fort I型骨切りという方法で切り離し、下あご(下顎骨)を下顎枝矢状分割術で切り離して、両方を同時に前へ移動させ、チタンプレートで固定します。移動量は施設や症例によりますが、複数の研究をまとめた解析では上顎が平均5.8mm、下顎が平均8.1mm前方に動かされていました。

なぜこれが効くのか。舌も軟口蓋も、宙に浮いているわけではなく、あごの骨に付着してぶら下がっています。骨を前に出せば、付いている筋肉や粘膜も一緒に前へ引き出される。結果として、のどの奥の空間が立体的に広がります。それだけではありません。組織に張りが生まれるため、眠って筋肉が緩んだときにも気道がつぶれにくくなる。画像を用いたメタ解析でも、咽頭気道の容積増加と無呼吸低呼吸指数(AHI)の改善がはっきり確認されています。

数字で見ると、どのくらい効くのか

627人分のデータをまとめた古典的なメタ解析では、AHIの平均が手術前の63.9回/時から術後9.5回/時まで下がりました。手術成功率は86.0%、AHIが5未満まで下がった「治癒」に相当する割合は43.2%です。

その後、個々の患者データを集め直した解析でも、AHIは平均81.1%減少し、成功率は85.5%と報告されています。他の手術がうまくいかなかった残存例でも改善が期待できる、という点が強調されていました。

興味深いのは、術前が重症な人ほど改善の幅が大きいという傾向です。系統的レビューで、術前のAHIやRDIの値と改善率のあいだに正の相関が示されています。もともと軽い人が劇的に良くなるわけではない、と言い換えることもできます。

効果は何年もつのか

手術直後だけ良くても意味がありません。ここが患者さんの一番気になるところでしょう。

2年以上追跡した研究では、30人の平均AHIが49から10.9へ低下し、その状態が維持されていました。あわせて拡張期血圧が下がり、日中の眠気(Epworthスケール)も改善し、生活の質の指標も良くなっています。

中期から超長期を対象にしたメタ解析でも、1年から4年の時点でAHIが48.3から8.4へ改善した状態が保たれていました。骨は動かした位置で癒合するため、効果が比較的安定しやすい治療といえます。ただし、術後に体重が大きく増えれば無呼吸が再燃しうる点は、手術でも変わりません。

誰に向いている治療なのか

米国睡眠医学会(AASM)は2021年の診療ガイドラインで、BMIが40未満でCPAPに耐えられない、あるいは受け入れられない成人については、睡眠外科医への紹介を選択肢のひとつとして話し合うよう推奨しています。あくまで「紹介の相談」であって、手術が決定事項になるわけではない、という但し書きも添えられています。

骨格的に、あごが小さい方や下あごが後ろに引っ込んでいる方は、体重だけでは説明のつかない気道の狭さを抱えていることがあります。こうした方はMMAの理屈が最もよく当てはまる層です。逆に、高度肥満で首まわりの脂肪が主因の場合は、体重管理のほうが優先されます。

顔つきは変わるのか

あごを1cm近く前に出すのですから、横顔は変わります。ここを不安に思う方は多いと思います。

1268例を集めたメタ解析では、患者さん自身の評価で85.6%が術後の顔貌に満足、8.6%が特にこだわりなし、不満だったのは5.8%でした。医師による評価では94.2%が良好とされています。もともと下あごが後退していた方ほど満足度が高い傾向も見られました。

とはいえ、これは平均の話です。事前に3Dシミュレーションで変化を確認し、納得したうえで進めることが欠かせません。

リスクと、現実的な注意点

全身麻酔下の骨切り手術ですから、入院が必要で、術後しばらくは腫れと食事の制限があります。下唇やオトガイ部のしびれは、下歯槽神経の走行上どうしても起こりやすい合併症です。多くは時間とともに軽快しますが、残ることもあります。

また、あごを動かすと咬み合わせが変わるため、術前・術後に矯正治療を組み合わせるのが一般的です。治療全体では年単位の期間を見込む必要があります。

日本でMMAを実施できる施設は口腔外科や形成外科を中心に限られており、適応の判断基準や費用・保険の取り扱いも施設ごとに異なります。関心がある場合は、まず睡眠の主治医に相談し、実施経験のある施設を紹介してもらうのが確実です。

まとめ

MMAは、CPAPが第一選択であるという前提を覆すものではありません。ただ、CPAPをどうしても続けられない人にとって、諦める以外の道が確かに存在する、ということは知っておいて損はないと思います。

眠っているあいだの呼吸は、日中の眠気だけでなく血圧や心臓にも影響します。今の治療がうまくいっていないと感じているなら、そのままにせず、一度相談してみてください。

参考文献

  1. Maxillomandibular advancement for the treatment of obstructive sleep apnea: a systematic review and meta-analysis, Holty JE, Guilleminault C. Sleep Med Rev. 2010 Oct;14(5):287-97. DOI: 10.1016/j.smrv.2009.11.003 要約: 627例を統合したMMAの代表的メタ解析。AHIが平均63.9回/時から9.5回/時へ低下し、手術成功率86.0%、AHI5未満の治癒率43.2%と報告した基礎的文献。

  2. Maxillomandibular Advancement for Treatment of Obstructive Sleep Apnea: A Meta-analysis, Zaghi S, Holty JE, Certal V, et al. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2016 Jan;142(1):58-66. DOI: 10.1001/jamaoto.2015.2678 要約: 個々の患者データを集約し、AHIが平均81.1%減少、成功率85.5%と報告。他の手術で残存した症例でもMMAが有効である可能性を示した。

  3. Long-term Results for Maxillomandibular Advancement to Treat Obstructive Sleep Apnea: A Meta-analysis, Camacho M, Noller MW, Del Do M, et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2019 Apr;160(4):580-593. DOI: 10.1177/0194599818815158 要約: 中期・長期・超長期の成績を検討したメタ解析。1〜4年の中期でAHIが48.3から8.4へ改善した状態が維持されることを示した。

  4. Long-Term Effectiveness and Safety of Maxillomandibular Advancement for Treatment of Obstructive Sleep Apnea, Boyd SB, Walters AS, Waite P, et al. J Clin Sleep Med. 2015 Jul 15;11(7):699-708. DOI: 10.5664/jcsm.4838 要約: 中等症〜重症30例を2年以上追跡。AHIが49から10.9へ低下し、拡張期血圧・眠気・QOLも有意に改善。長期的な安全性も確認した。

  5. Maxillomandibular advancement is a successful treatment for obstructive sleep apnoea: a systematic review and meta-analysis, John CR, Gandhi S, Sakharia AR, James TT. Int J Oral Maxillofac Surg. 2018 Dec;47(12):1561-1571. DOI: 10.1016/j.ijom.2018.05.015 要約: AHI、RDI、眠気スケール、最低酸素飽和度を評価。術前の重症度が高いほど改善幅が大きいという正の相関を示した系統的レビュー。

  6. Impact of surgical maxillomandibular advancement upon pharyngeal airway volume and the apnoea-hypopnoea index in the treatment of obstructive sleep apnoea: systematic review and meta-analysis, Giralt-Hernando M, Valls-Ontañón A, Guijarro-Martínez R, et al. BMJ Open Respir Res. 2019 Oct 9;6(1):e000402. DOI: 10.1136/bmjresp-2019-000402 要約: 画像評価による咽頭気道容積の増加とAHI改善を統合解析。骨格の前方移動が気道の立体的拡大につながることを裏づけた。

  7. Referral of adults with obstructive sleep apnea for surgical consultation: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline, Kent D, Stanley J, Aurora RN, et al. J Clin Sleep Med. 2021 Dec 1;17(12):2499-2505. DOI: 10.5664/jcsm.9592 要約: AASMの最新外科ガイドライン。BMI40未満でPAP不耐・非受容の成人には睡眠外科医への紹介を話し合うことを推奨している。

  8. Satisfaction With Facial Aesthetic Appearance Following Maxillomandibular Advancement (MMA) for Obstructive Sleep Apnea (OSA): A Meta-Analysis, Jamal BT, Ibrahim EA. Cureus. 2023 Feb 28;15(2):e35568. DOI: 10.7759/cureus.35568 要約: 1268例の顔貌満足度を解析。患者評価で85.6%が満足、5.8%が不満。上顎平均5.8mm、下顎平均8.1mmの前方移動量も報告した。

  9. Is maxillomandibular advancement an effective treatment for obstructive sleep apnea? Systematic literature review and meta-analysis, Trindade PAK, Nunes Nogueira VS, Weber SAT. Braz J Otorhinolaryngol. 2023 May-Jun;89(3):503-510. DOI: 10.1016/j.bjorl.2023.02.007 要約: 睡眠ポリグラフ検査で追跡したコホート研究のみを対象に、術前後のAHIを比較。GRADEでエビデンスの質とバイアスリスクも評価した近年の系統的レビュー。

大阪府吹田市長野東19番6号
千里丘かがやきクリニック

院長 有光潤介

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