便秘
便秘
便秘外来
「市販の下剤が手放せない」「毎日出ているのにすっきりしない」——便秘は、ありふれているがゆえに我慢されやすい症状です。当院では、まず便秘の型と原因を見きわめたうえで、腸内細菌のバランスを考えた整腸剤の併用や、管理栄養士による水溶性食物繊維のとり方の指導を組み合わせ、刺激性下剤に頼りきりにならない排便を目指します。
便秘は「体質だから」と片づけられがちですが、原因によって効く手だてが違います。長く続く便秘は生活の質を確実に下げますので、一度ご相談ください。
便秘とは、快適に出しきれない状態のこと
診療ガイドラインでは、便秘は「本来体外に排出すべき便を、十分な量かつ快適に排出できない状態」とされています。回数だけの問題ではなく、毎日排便があっても、強くいきまなければ出ない・残便感が続くのであれば、便秘として治療の対象になります。
逆に、2〜3日に1回でも、苦痛なくすっきり出ていて日常生活に支障がなければ、無理に毎日出す必要はありません。
便の形は、腸の中での通過時間を映しています
診察では、便の形を7段階に分けたブリストル便形状スケールを目安に使います。コロコロした硬い便(1〜2)は腸内にとどまっていた時間が長い便、バナナ状(3〜5)が目標です。回数よりも形と出しやすさのほうが、治療の効き具合を判断する手がかりになります。
同じ「便が出ない」でも、腸の動きが遅いのか、直腸から出しきれないのか、ほかの病気や薬が背景にあるのかで対応が変わります。当院ではまずこの見分けから始めます。
次にあてはまる場合は、早めに検査をおすすめします
これらは、腸の通り道が狭くなっている可能性を示す所見です。当院は消化器内視鏡の専門施設として大腸内視鏡検査に対応しており、必要と判断した場合は速やかに検査をご案内します。
やみくもに項目を増やすのではなく、症状の説明がつくかどうかを軸に、必要な検査を選びます。
| 問診・排便の記録 | 排便の回数と便の形、いきみの程度、残便感、腹痛との関係、いつから続いているかをうかがいます。数日分の排便記録をお持ちいただくと、型の判断がしやすくなります。 |
|---|---|
| 服用中のお薬の確認 | お薬手帳を拝見し、便秘を起こしうる薬がないかを確認します。中止できない薬でも、量や飲み方の調整、対策の追加が可能な場合があります。 |
| 血液検査 | 甲状腺機能、血糖、電解質(カリウム・カルシウム)、貧血の有無などを確認し、ほかの病気が背景にないかを調べます。 |
| 腹部の診察・腹部エコー | お腹の張りや便のたまり方を確認します。必要に応じて腹部超音波検査を行い、腸管の状態や他臓器の異常を確認します。 |
| 大腸内視鏡検査 | 警告となる症状がある場合、便潜血が陽性の場合、一定期間の治療で改善しない場合に行います。大腸がんやポリープ、狭窄の有無を直接確認できます。 |
| 栄養評価 | 管理栄養士が、食事量・食物繊維・水分・脂質の摂取状況を具体的にうかがい、不足しているものと摂りすぎているものを整理します。 |
| 腸内フローラ検査 (自費・希望制) |
ご希望の方には、腸内細菌叢を遺伝子解析で調べる検査「マイキンソー プロ」をご案内しています。保険適用外の自由診療(19,800円)です。詳しくは下記をご覧ください。 |
MICROBIOTA
腸内細菌のバランスを考えて、整腸剤を併用します
便秘の方の腸内では、細菌のバランスが乱れていることが知られています。当院では下剤だけに頼らず、ビフィズス菌・乳酸菌・酪酸菌などの整腸剤(プロバイオティクス)を併用し、腸内環境そのものを整えることを治療の柱のひとつに置いています。菌の種類によって向き不向きがあるため、効果と使用感を確認しながら選び直します。
NUTRITION
管理栄養士が、水溶性食物繊維のとり方を具体的に指導します
当院には管理栄養士が4名在籍し、栄養指導を行っています。「食物繊維をとりましょう」で終わらせず、どの食品から、どのくらいの量を、どの食事に足すのかまで一緒に決めます。水溶性食物繊維は腸内細菌の栄養源にもなるため、整腸剤との組み合わせ(シンバイオティクス)として設計します。
MEDICATION
刺激性下剤に頼りきりにならない薬の組み立て
センナや大黄などの刺激性下剤は、続けて使ううちに効きにくくなり、量が増えていきやすい薬です。当院では、便をやわらかくする薬や腸の水分分泌を助ける薬を土台にし、刺激性下剤は「どうしても出ないときの頓用」に位置づけ直すことを目指します。
KAMPO
漢方の視点も加えて、お腹の張りや冷えに対応します
当院は漢方専門医としての診療も行っています。下剤で回数は増えたのに腹部膨満や腹痛が残る方、高齢で便が乾いて硬い方など、西洋薬だけでは届きにくい部分に漢方薬が役立つことがあります。体力や冷えの有無、腹部の所見をふまえて選び、甘草や大黄を含む処方は副作用に注意しながら期間を区切って用います。
ENDOSCOPY
「隠れた病気がないか」まで確認できます
消化器内視鏡の専門施設として、大腸内視鏡検査に対応しています。長く続く便秘の陰に大腸がんや狭窄が隠れていないかを確認したうえで治療に入れるため、安心して薬の調整を続けていただけます。
大腸には多種多様な細菌がすみついており、そのバランスは便の性状や腸の動きと深く関わっています。水溶性食物繊維などが腸内細菌に分解されると短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸)がつくられ、これが腸のぜん動運動を促し、便の水分を保つ助けになります。
整腸剤は「効かない」のではなく、合う菌を探すもの
プロバイオティクスによる排便回数や便性状の改善は複数の研究で報告されていますが、効果の大きさは菌の種類によって差があり、すべての方に同じように効くわけではありません。当院では、一定期間試したうえで手ごたえを確認し、必要なら別の菌種に切り替えます。効果を判断するには数週間の継続が必要です。
下剤と違って即効性は期待できませんが、下剤の量を減らしていくための土台になります。下剤との併用は問題なく、むしろ組み合わせて使うのが基本です。
ご希望の方には、便を用いて腸内細菌叢を遺伝子解析で調べる「マイキンソー プロ(Mykinso Pro)」をご案内しています。医療機関向けに提供されている検査で、保険適用外の自由診療(自費・19,800円)となります。ご自身の腸内環境を数値と図で確認したうえで、整腸剤や食事の内容を組み立てたい方に適しています。
| 調べられること | 腸内細菌の多様性、菌の構成バランス、ビフィズス菌や酪酸産生菌など有用とされる菌の割合、エクオール産生菌の有無などを解析します。培養では調べられない菌も含めて、腸内細菌の全体像を把握できます。 |
|---|---|
| 検査の方法 | ご自宅で少量の便を採取し、キットに入れて郵送していただきます。前日の食事制限や来院しての採取は不要です。抗菌薬を服用中・服用直後の場合は、結果に影響するため時期をずらすことがあります。 |
| 結果が出るまで | 検体到着からおよそ数週間で結果が届きます。当院では結果をお渡しするだけでなく、医師と管理栄養士が一緒に読み解き、次の一手に落とし込みます。 |
| 結果の活かし方 | 不足している菌の種類に応じた整腸剤の選び直し、水溶性食物繊維や発酵食品のとり方の調整など、これまで手ごたえがなかった方の方針を見直す手がかりになります。治療の前後で再検査し、変化を確認することも可能です。 |
| 費用 | 19,800円(税込)です。自由診療のため全額自己負担となり、健康保険は使えません。採取キット、解析、結果レポート、当院での結果説明までを含みます。 |
この検査でできること・できないこと
腸内フローラ検査は、便秘や大腸の病気を診断するための検査ではありません。血便や体重減少などの症状がある場合は、この検査ではなく大腸内視鏡検査による確認が優先されます。
また、便秘の治療はこの検査を受けなくても進められます。必須の検査ではありませんので、ご希望がなければ受けていただく必要はありません。ご興味のある方、これまでの治療で十分な手ごたえが得られなかった方に、選択肢のひとつとしてご提案しています。
食物繊維には、便のかさを増やす不溶性と、水を含んで便をやわらかくし腸内細菌の栄養源になる水溶性があります。硬い便でお困りの方では、水溶性食物繊維を意識して足すほうが有効なことが多く、日本人はどちらも目標量に届いていないのが実情です(成人の目標量はおおむね1日18〜21g以上)。
| 大麦・オートミール | β‒グルカンを多く含みます。白米に「もち麦」を混ぜて炊く、朝食をオートミールに替えるなど、主食を置き換えるだけで無理なく増やせます。 |
|---|---|
| 海藻類 | わかめ、昆布、めかぶ、もずくなど。アルギン酸などの水溶性食物繊維が豊富で、汁物や小鉢として少量ずつ足しやすい食材です。 |
| 果物 | キウイ、りんご、みかん、バナナなど。ペクチンを含み、便をやわらかくする働きが期待できます。とくにキウイは便秘に対する報告が複数あります。 |
| いも類・こんにゃく | さといも、やまいも、こんにゃく(グルコマンナン)など。加熱後に冷ました米やいもに増えるレジスタントスターチも、腸内細菌の栄養源になります。 |
| 豆類・大豆製品 | 納豆、大豆、いんげん豆など。水溶性・不溶性の両方を含み、たんぱく質も同時に補えます。 |
| サプリメントの利用 | 食事で足りない場合、サイリウム(オオバコ)、イヌリン、難消化性デキストリンなどの利用も選択肢です。使う場合は必ず水分を一緒にとり、少量から始めてください。 |
増やし方には順番とコツがあります
一度に大量に増やすと、お腹の張りやガス、腹痛が強くなることがあります。少量から始めて1〜2週間かけて増やし、水分を一緒にとるのが原則です。水分が不足したまま食物繊維だけを増やすと、かえって便が硬くなることがあります。
また、便秘型過敏性腸症候群の方では、イヌリンなど一部の水溶性食物繊維(発酵しやすい糖質=FODMAP)で膨満やガスが悪化することがあります。腸の動きがほとんど止まっている高度な便秘や、便排出障害が主体の場合も、食物繊維の増量だけでは改善しません。どの型の便秘かによって、勧める食材は変わります。当院で型を見きわめたうえで、管理栄養士が個別に組み立てます。
生活・食事の調整と整腸剤を土台に、必要に応じて薬を組み合わせます。目標は「毎日むりやり出すこと」ではなく、いきまずにバナナ状の便が出る状態を、できるだけ少ない薬で保つことです。
| 整腸剤 (プロバイオティクス) |
ビフィズス菌・乳酸菌・酪酸菌など。腸内細菌のバランスを整え、便の性状を改善します。他の薬と併用しやすく、長期に続けやすいのが利点です。 |
|---|---|
| 浸透圧性下剤 | 酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール製剤(マクロゴール)など。腸内に水分を引き込んで便をやわらかくします。習慣性が少なく、治療の中心になる薬です。酸化マグネシウムは、腎機能が低下した方や高齢の方で血中マグネシウムが上がることがあるため、定期的な血液検査で確認します。 |
| 上皮機能変容薬 | ルビプロストン、リナクロチドなど。腸の粘膜から水分を分泌させ、便をやわらかくします。リナクロチドは腹痛を伴う便秘型過敏性腸症候群にも用いられます。 |
| 胆汁酸トランスポーター 阻害薬 |
エロビキシバット。胆汁酸を大腸へ届けることで、水分分泌とぜん動運動の両方を促します。食前に服用します。 |
| 刺激性下剤 | センノシド、ピコスルファートなど。大腸を直接刺激して動かします。よく効く一方、連用すると効きにくくなるため、当院では毎日ではなく頓用としての使用をご提案します。 |
| 坐薬・浣腸 | 直腸に便がたまっているのに出せない場合に用います。排便困難型では、内服薬より有効なことがあります。 |
| 漢方薬 | お腹の張りや冷え、体力、便の乾き具合をふまえて選びます。大黄を含む処方は刺激性下剤と同じ成分のため、漫然と続けず期間を区切って用い、甘草を含む処方ではむくみや血圧、カリウム値に注意します。 |
問診で便秘の型を見きわめる
排便回数と便の形、いきみや残便感、腹痛との関係、これまでに使った下剤とその効き方をうかがいます。お薬手帳と、可能であれば数日分の排便の記録をお持ちください。
背景に病気がないかを確認する
血液検査や腹部の診察を行い、甲状腺・糖尿病・電解質異常などがないかを調べます。警告となる症状がある場合は、大腸内視鏡検査をご案内します。
生活・食事と整腸剤から組み立てる
朝食後の時間を確保する、前かがみの排便姿勢をとる、便意を我慢しないといった基本を確認したうえで、整腸剤を開始し、管理栄養士が水溶性食物繊維のとり方を具体的にお伝えします。
薬を調整し、減らせるところは減らす
便の形と出しやすさを目安に、薬の種類と量を調整します。すでに下剤を長く使っている方も、いきなりやめるのではなく、土台となる薬と整腸剤を整えながら段階的に減らしていきます。
かかりつけとして経過を見ていく
便秘は季節や体調、他の薬の変更で状態が変わります。定期的に排便の状況を確認し、そのときどきに合った内容へ見直します。ほかの持病や健診結果とあわせて相談できるのも、内科のかかりつけ医ならではの利点です。
意味があります。長く使っているうちに量が増えている場合、刺激性下剤への依存が起きている可能性があります。土台となる薬と整腸剤を整えながら段階的に減らしていくことで、使用量を抑えられる方は少なくありません。また、長年の便秘の陰に別の病気が隠れていないかを一度確認しておく価値もあります。急に自己判断で中止すると、かえってつらくなることがありますので、ご相談ください。
下剤のような即効性はなく、便の形や出しやすさの変化を見るには少なくとも2〜4週間の継続が必要です。その間に手ごたえがなければ、別の菌種に切り替えるか、他の治療を組み合わせます。効かなかった経験がある方も、菌の種類を変えると変わることがあります。
全員に必要な検査ではありません。便秘の治療は検査を受けずに進められますし、保険適用外の自費検査(19,800円)です。一方で、整腸剤や食事の工夫を続けても手ごたえがない方、ご自身の腸内環境を数値で確認したうえで取り組みたい方には、方針を見直す手がかりになります。ご希望をうかがったうえでご案内しますので、まずは診察でご相談ください。なお、血便や体重減少などがある場合は、この検査よりも大腸内視鏡検査による確認を優先します。
よくあるご相談です。発酵しやすい糖質(FODMAP)を含む食品で膨満やガスが強く出る体質の方や、便排出障害が主体で食物繊維を増やしても出口で詰まってしまう方では、いわゆる「便秘によい食事」が合わないことがあります。この場合は増やす食材の種類を変えたり、腸の出口の問題に対する治療を優先したりします。当院ではFODMAPを考慮した食事指導にも対応していますので、無理に続けず一度ご相談ください。
水分が不足していると便は硬くなるため、不足を補うことは大切です。ただし、もともと足りている方がさらに増やしても、それだけで便秘が解消するわけではありません。とくに食物繊維を増やすときは水分もあわせて必要になります。心臓や腎臓の病気がある方は、適切な水分量が異なりますので、診察時にご確認ください。
すべての方に必要というわけではありません。ただし、血便、体重減少、貧血、便が細くなった、最近になって急に便秘になった、50歳以降での発症、大腸がんの家族歴といった場合は、原因を確認するために検査をおすすめします。一定期間治療しても改善しない場合も同様です。必要性については診察のうえでご説明します。
可能な場合もありますし、西洋薬と組み合わせたほうがよい場合もあります。お腹の張りや腹痛が強い方、便が乾いて硬い高齢の方などでは漢方薬が役立ちますが、大黄を含む処方は刺激性下剤と同じ成分を含むため、長期に漫然と続けるのは避けます。ご希望をうかがったうえで、体質と便秘の型に合わせてご提案します。
ご相談いただけます。妊娠中は便秘になりやすい一方、使用できる薬に制限があります。安全性が確認されている薬を選び、食事や整腸剤による対応を中心に組み立てますので、自己判断で市販薬を使う前にご相談ください。
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