アナフィラキシーショック
アナフィラキシーショック
ANAPHYLAXIS
アナフィラキシー
アナフィラキシーは、原因物質に触れてから短時間のうちに全身にあらわれる、命にかかわり得るアレルギー反応です。血圧が下がったり意識が遠のいたりする状態は「アナフィラキシーショック」と呼ばれます。一度起こした方にとって大切なのは、原因を突き止めること、そして次に起きたときに使えるアドレナリン製剤を手元に備えておくことです。当院ではアレルギー科・内科の立場から、原因の検索から日常の備えまでを一貫してご相談いただけます。
いま症状が出ている方へ ためらわず救急要請を
これらが急速に、複数の場所にまたがって進む場合はアナフィラキシーが疑われます。迷わず119番通報してください。アドレナリン製剤(エピペン®・ネフィー®)をお持ちであれば、救急車を待つ前に使用してください。このページは平常時の備えと受診のご案内です。緊急時は読まずに救急要請を優先してください。
一度でもアナフィラキシーを起こした方は、同じことが再び起こり得ます。「あのときは治まったから大丈夫」と様子を見るのではなく、落ち着いているうちに原因を調べ、備えを整えておくことをおすすめします。
「複数の臓器に、急速に」が見分けるポイントです
アナフィラキシーは、皮膚・呼吸器・循環器・消化器といった複数の場所の症状が、原因への曝露から数分〜2時間ほどの間に急速に進む反応を指します。じんましんだけ、腹痛だけといった単独の症状とは区別されます。
すでに原因が分かっている方では、曝露後に血圧低下・意識の低下・喉の締めつけ・強い呼吸困難のいずれかが起これば、皮膚症状がなくてもアナフィラキシーと判断します。実際、皮膚症状を伴わない例が一定の割合で存在することが知られています。
ショックは、その中でも血圧が保てなくなった状態です
アナフィラキシーのうち、血圧が下がって全身に血液が回らなくなった状態を「アナフィラキシーショック」と呼びます。ただし、ショックに至る前の段階でもアドレナリンの適応です。血圧が下がるのを待つ必要はありません。
いったん治まっても、数時間後にぶり返すことがあります
症状が改善した後、数時間から半日ほど経って再び症状が出る「二相性反応」が起こることがあります。自分で薬を使って良くなった場合でも、必ず医療機関を受診し、経過を観察してもらってください。
症状は必ずしも皮膚から始まるとは限りません。どの場所に、どの順で出たかを覚えておくことが、後の診断で大きな手がかりになります。
| 皮膚・粘膜 | 全身に広がるじんましん、赤み、強いかゆみ、唇やまぶたの腫れ。最も多くみられますが、これらを伴わないアナフィラキシーもあります。 |
|---|---|
| 呼吸器 | 喉の違和感・締めつけ感、声のかすれ、犬が吠えるような咳、ゼーゼー、息苦しさ。喉頭の腫れは急速に気道をふさぐことがあり、特に注意が必要です。 |
| 循環器 | 血圧低下、脈が速い・弱い、顔面蒼白、冷や汗、立ちくらみ、失神。「ショック」と呼ばれる状態にあたります。 |
| 消化器 | 強い腹痛、繰り返す嘔吐、下痢。特に薬剤やハチ毒によるアナフィラキシーでは、これらが前面に出ることがあります。 |
| そのほか | 「何かおかしい」という強い不安感、めまい、目の前が暗くなる感じ。本人にしか分からない前ぶれとして重要です。 |
成人では食物・薬剤・ハチ毒が三大原因です。原因が違えば、避け方も備え方も変わります。
アナフィラキシーの経過を左右する最大の要素は、アドレナリンをどれだけ早く投与できたかです。手順をあらかじめ頭に入れておいてください。
原因から離れ、周囲に助けを求める
食べている途中であれば中止し、点滴中であれば止めます。ハチであればその場を離れます。ひとりで対応しようとせず、必ず周囲に声をかけてください。
アドレナリン製剤をためらわず使う
アナフィラキシーが疑われる症状がひとつでもあれば、迷わず使用してください。「様子を見てから」と待つことが最も危険です。誤って使ってしまった場合の不利益より、使わずに悪化させる不利益のほうがはるかに大きいと考えられています。
抗ヒスタミン薬や吸入薬は、アドレナリンの代わりにはなりません。
救急車を呼ぶ
薬を使って症状が落ち着いたとしても、救急要請は取り消さないでください。二相性反応でぶり返す可能性があり、医療機関での経過観察が必要です。
安全な体位で寝かせる
仰向けに寝かせ、足を30cmほど高くします。嘔吐しているときは横向きに、息苦しさが強いときは楽な姿勢(半坐位)で構いません。
急に立ち上がらせたり、座らせたりしないでください。血圧が下がっている状態で体を起こすと、心臓へ戻る血液が急に減り、急変につながることが知られています。
改善しなければ、10分以降に2回目を
1回目の投与から10分ほど経っても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、2回目を投与します。使用した時刻と製剤名は、救急隊や医師に必ず伝えてください。
アナフィラキシーの第一選択薬はアドレナリンです。これまでは自己注射薬のみでしたが、2025年9月に点鼻薬が国内で承認され、選択肢が広がりました。いずれも「アナフィラキシーの既往がある方」「発現する危険性が高い方」が対象で、救急要請の代わりになるものではありません。
| アドレナリン点鼻液 (ネフィー®) |
日本で初めてのアドレナリン点鼻薬です。片方の鼻の穴に1回スプレーするだけで投与でき、注射の手技を身につける必要がありません。体重30kg以上の方は2mg製剤、30kg未満の方は1mg製剤を使用します。効果が不十分な場合は、1回目から10分以降を目安に、同じ側の鼻の穴へ2回目を投与します(容器は1回使い切りのため、2本の携帯が必要です)。鼻づまりがあっても吸収は保たれるとされています。注射に抵抗がある方や、外出先でひとりで対応する場面が多い方に適した選択肢です。 |
|---|---|
| アドレナリン自己注射薬 (エピペン®) |
太ももの外側に注射する、従来から使われてきた製剤です。体重に応じて0.3mg製剤・0.15mg製剤を使い分けます。服の上からでも投与でき、意識がはっきりしない場面で介助者が使いやすい点、長年の使用実績がある点が利点です。学校や職場での対応にも広く浸透しています。 |
| 選び方について | どちらが優れているというものではなく、年齢・体重、生活の場面、誰が投与する可能性があるか、注射への抵抗感などから選びます。ご希望や生活状況をうかがったうえで、一緒に検討します。 |
| 使用後の受診 | 製剤を使用した後は、症状が治まっていても必ず医療機関を受診してください。効果は一時的で、二相性反応の可能性があるためです。 |
※ 製剤には有効期限があります。期限切れのまま気づかずに携帯していることが少なくないため、定期受診の際にあわせて確認します。
CAUSE
「何が原因だったのか」を落ち着いて探します
救急外来では治療が優先され、原因の特定までは行われないことがほとんどです。当院ではアレルギー科としての視点から、症状が出たときの状況を詳しくうかがい、特異的IgE抗体検査やアレルゲンコンポーネント検査などを組み立てて原因を絞り込みます。負荷試験や皮膚テストが必要と判断した場合は、実施可能な医療機関へご紹介します。
PREPARATION
アドレナリン製剤の処方と、使い方の練習まで
処方して終わりにはしません。練習用トレーナーを用いて、実際にご本人・ご家族に手を動かしていただき、「どの症状が出たら使うか」の判断基準まで具体的に確認します。職場や学校へ伝えるための書面が必要な場合もご相談ください。
DIFFERENTIAL
紛らわしい病気との切り分けも行います
急な意識消失や動悸、息苦しさは、迷走神経反射、不整脈、パニック発作、消化器疾患などでも起こります。当院は内科・消化器内科としての診療も行っており、必要に応じて心電図・血液検査・内視鏡検査を含めて、ほかの原因が隠れていないかを確認できます。
LONG TERM
かかりつけ医として、その後も継続して診ます
喘息が併存していると重症化しやすいことが知られており、当院では呼気中一酸化窒素(FeNO)検査を院内で行い、喘息の状態を把握したうえで管理します。食物が原因の場合は、管理栄養士による栄養指導で「必要最小限の除去」を組み立てます。有効期限の確認や薬剤情報の更新も含め、定期的に見直していきます。
症状が出たときの経過を詳しくうかがう
いつ、何を食べ・何をして、何分後に、どこから症状が出たか。運動・飲酒・服薬・体調との関係もうかがいます。他院での診療情報提供書や検査結果、症状が出たときの写真、食べたものの表示や薬の名前があると、診断の大きな助けになります。
必要な検査を選んで行う
問診で立てた見立てをもとに、血液検査などを行います。やみくもに項目を増やさず、症状の説明がつくかどうかを軸に組み立てます。結果が出るまでの間、当面どのように過ごしていただくかもお伝えします。
結果を照らし合わせ、避けるものを整理する
検査結果と実際の経過を突き合わせ、避けるべきものと、避ける必要のないものを整理します。検査が陽性というだけでは、除去する理由にはなりません。
備えを整え、対応手順を決める
適応がある方にはアドレナリン製剤を処方し、使い方を練習していただきます。ご家族や職場との情報共有、外食時の伝え方、症状が出たときの手順を、書き出せる形にして持ち帰っていただきます。
定期的に見直す
体調や生活の変化に応じて、備えの内容も変わります。有効期限の確認、併存する喘息やアレルギー疾患の管理とあわせて、継続して確認していきます。
「持っている」だけでは足りません
実際の場面では、本人が動けなくなっていることも少なくありません。周囲の人が使えるようにしておくことが、備えの要になります。
動悸や顔色の変化、手のふるえ、頭痛などが一時的に出ることがありますが、健康な方であれば通常は数分から数十分で治まります。一方、投与が遅れると経過が悪くなることが分かっています。判断に迷ったときは、使わずに待つのではなく、使ったうえで医療機関を受診するという考え方が原則です。
必ずしも同じ重さになるとは限らず、前回より軽いことも、重いこともあります。前回が軽かったから次も軽い、という予測は成り立ちません。だからこそ、重症度にかかわらず備えておくことが大切です。運動、飲酒、解熱鎮痛薬、疲労、感染症、月経周期などが重なると、同じ量でも症状が強く出ることがあります。
生活の場面によって適した方が変わります。注射への抵抗が強い方、外出先でひとりで対応する機会が多い方には点鼻薬が向いていることがあります。一方、介助者が投与する可能性が高い場合や、学校・職場ですでにエピペン®の対応体制が整っている場合は、注射薬を継続する利点があります。診察の際に、生活状況をうかがったうえで一緒に決めていきましょう。
受診をおすすめします。全身症状が出た経験がある方は、次に刺されたときにより重い反応を起こす可能性があります。血液検査でハチ毒に対する抗体を調べ、屋外での活動状況とあわせて、アドレナリン製剤を携帯すべきかを検討します。ハチの種類による違いも評価します。
落ち着いてから、原因を調べる受診をしてください。救急の場では治療が優先され、原因の特定までは行われないことがほとんどです。当日の記録(診療情報提供書、検査結果、投与された薬の名前)をお持ちいただけると、経過を再構成しやすくなります。原因が特定できれば、避けるべきものを絞り込めます。
あります。甲殻類やナッツ類、小麦などは成人になってから新たに原因となることがあり、マダニ刺傷後のα‒Gal症候群のように、きっかけがあって発症するタイプもあります。「これまで平気だったから」という理由で可能性から外す必要はありません。
処方には、アナフィラキシーの既往があるか、発現の危険性が高いと判断されることが必要です。まずは診察で経過をうかがい、適応を確認したうえで処方します。あわせて使い方の練習と、使う場面の判断基準の確認まで行いますので、初回はお時間に余裕を持ってお越しください。
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