アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎・かゆみ
「塗っている間はよくなるのに、やめるとすぐぶり返す」「かゆくて夜中に目が覚める」「ステロイドをこのまま使い続けてよいのか不安」——アトピー性皮膚炎は、皮膚だけを見ていると行き詰まることがあります。当院はアレルギー専門医・漢方専門医として、皮膚の状態に加えて、併存するアレルギー疾患、生活環境、食事、体質までを含めて症状の背景を整理し、必要に応じて皮膚科専門施設と連携しながら診療にあたります。
アトピー性皮膚炎は「体質だから仕方がない」と受け止められがちですが、近年は治療の目標そのものが変わってきています。症状がほとんど出ない状態まで持っていき、その状態を保ち続けることが、現実的な目標になります。
かゆみを伴う皮膚の症状は、見た目が似ていても原因が異なります。どこに原因があるかによって、効く薬も、避けるべき治療も変わります。とくにステロイド外用が逆効果になる病気が混じっていないかは、最初に確かめておく必要があります。
「塗る量が足りていない」ことは、とてもよくあります
外用薬は、塗る強さと同じくらい、塗る量が結果を左右します。目安として、大人の人差し指の先から第一関節までチューブから出した量(約0.5g)が、手のひら2枚分の面積に対応します。少なすぎる量を長く塗り続けるより、適切な強さの薬を十分な量でしっかり効かせ、早く落ち着かせるほうが、結果的に使用する総量は少なくて済みます。診察では、どこに・どれだけ・どのくらいの期間塗るのかを具体的にお伝えします。
良くなった後の「やめ方」が、再発の起こりやすさを決めます
見た目の湿疹が消えても、皮膚の中の炎症はしばらく残っています。ここで急にやめると、同じ場所から再燃しやすくなります。そこで、症状が落ち着いた後も週に2回程度の外用を続けながら、間隔を少しずつ空けていく方法(プロアクティブ療法)をとります。減らすこと自体が目標であり、そのための手順があるとお考えください。
治療しても良くならないときは、診断そのものを見直します
標準的な治療で改善しない場合、薬を強くする前に確認すべきことがあります。外用薬や保湿剤によるかぶれが加わっていないか、疥癬や白癬が隠れていないか、掻破による細菌・ウイルス感染を伴っていないか、そもそも別の皮膚疾患ではないか。行き詰まったときこそ、前提に戻って組み立て直します。
問診と皮膚の所見をもとに、必要な検査を選びます。診断を確かめること、悪化因子を探すこと、治療の効果を客観的に追うこと——目的をはっきりさせたうえで組み立てます。
| 問診と皮膚所見の評価 | いつから、どこに、どのような経過で出ているか。悪化する季節や場面、これまでに使った外用薬とその効き方をうかがいます。あわせて症状の範囲と強さを評価し、治療の到達目標を共有します。 |
|---|---|
| 血液検査 (TARC・IgE・好酸球) |
TARCはアトピー性皮膚炎の病勢を反映する血液の指標で、見た目の印象に頼らずに炎症の程度を数値で追えます。治療開始後の判定や、落ち着いた状態が保てているかの確認に役立ちます。総IgE値や好酸球数もあわせて評価します。 |
| アレルゲン特異的IgE検査 | ダニ・ハウスダスト、花粉、ペット、食物などへの感作を調べます。ただし検査が陽性であることと、それが症状の原因であることは同じではありません。実際に症状が出る場面と照らし合わせたうえで、避ける意味があるかどうかを判断します。 |
| 呼気中一酸化窒素 (FeNO)検査 |
アトピー性皮膚炎の方は気管支喘息を併せ持つことが少なくありません。長引く咳や息苦しさがある場合、院内でFeNO検査を行い、気道の炎症の有無を評価できます。皮膚とあわせて一度に整理できるのが内科で診る利点です。 |
| 内科的な原因の確認 | 甲状腺機能、腎機能、肝・胆道系、鉄欠乏、血糖などを血液検査で確認します。皮疹に乏しいかゆみが続く場合や、通常の治療への反応が乏しい場合に行います。 |
| 腸内フローラ検査 (自費診療) |
ご希望に応じて腸内細菌叢の検査を実施できます。腸内環境とアレルギー疾患の関連は研究が進んでいる分野ですが、現時点で検査結果だけで治療方針が決まるものではありません。標準的な治療を土台としたうえでの、参考情報としてご案内しています。 |
治療は「炎症をしっかり抑えて落ち着かせる段階」と「その状態を保つ段階」に分けて考えます。塗り薬を土台に、かゆみ・生活・体質の面から必要なものを重ねていきます。
| 保湿・スキンケア | すべての治療の土台です。入浴後に時間を置かず、十分な量を塗ることで皮膚のバリアを保ちます。症状が落ち着いた後も続けることで、再発までの期間を延ばせることが示されています。製剤の使い分けや塗る手順まで具体的にお伝えします。 |
|---|---|
| ステロイド外用薬 | 炎症を抑える中心となる薬です。顔・体・手足など部位ごとに適した強さが異なるため、漫然と同じ薬を使い続けるのではなく、部位と重症度に応じて選びます。しっかり効かせて落ち着かせたうえで、計画的に減らしていきます。 |
| タクロリムス軟膏 | ステロイドとは異なる仕組みで炎症を抑える外用薬です。皮膚が薄くなる副作用がないため、顔や首など長期使用を避けたい部位で選択肢になります。塗り始めに熱感やしみる感じが出ることがあり、その見通しもあらかじめお伝えします。 |
| デルゴシチニブ軟膏・ ジファミラスト軟膏 |
近年使えるようになった非ステロイド性の外用薬です。ステロイドを使いにくい部位や、減量の途中で症状が残る場合の選択肢として用います。重症度や部位、これまでの治療経過をふまえて適応を検討します。 |
| 抗ヒスタミン薬 | かゆみによる掻破の悪循環を断つ目的で、補助的に併用します。アトピー性皮膚炎のかゆみはヒスタミンだけで説明できないため、これ単独で治療するものではなく、外用療法と組み合わせて用います。 |
| 漢方薬 | 乾燥が強くかゆみが慢性化している方、炎症の熱感が強い方、寝つきの悪さやのぼせを伴う方など、体質と症状の出方を診たうえで用います。当帰飲子・消風散・温清飲・十味敗毒湯などが代表的です。外用療法の代わりではなく、その上に重ねる選択肢としてご提案します。 |
| 食事・栄養指導 | 当院には管理栄養士が在籍しています。検査の陽性だけを理由に食品を避けている方、自己判断の除去で栄養が偏っている方に対して、必要な除去とそうでないものを整理し、食事の組み立て方を具体的にお伝えします。 |
| 重症例・難治例への対応 | 外用療法で十分な効果が得られない場合、デュピルマブなどの注射薬、JAK阻害薬の内服、紫外線療法といった治療が適応になることがあります。これらは皮膚科専門施設での治療が適切と考えており、必要と判断した際は速やかにご紹介します。 |
すべてを完璧にする必要はありません。ご自身の症状が悪化する場面に照らして、効果の大きいものから取り組んでいただけるよう、診察のなかで一緒に絞り込みます。
ALLERGY
アレルギー専門医として、皮膚以外の症状も含めて診ます
アトピー性皮膚炎は、気管支喘息やアレルギー性鼻炎、食物アレルギーと重なって現れることが多い疾患です。当院はアレルギー専門医としての診療を行い、院内でFeNO検査も実施できるため、皮膚・気道・鼻の症状をまとめて整理できます。診療科をまたいで通う負担を減らせることも、内科で診る利点だと考えています。
KAMPO
漢方専門医として、外用療法では届きにくい部分に向き合います
炎症は抑えられても、乾燥やかゆみ、寝つきの悪さが残る方は少なくありません。当院は漢方専門医としての診療も行っており、体質や症状の出方を診たうえで漢方薬を組み合わせます。標準治療を土台にしながら、その先の選択肢を持てることが強みです。ステロイド外用の代わりとして漢方薬をお勧めすることはありません。
NUTRITION
管理栄養士とともに、不要な食事制限を見直します
当院には管理栄養士が在籍し、栄養指導を行える体制を整えています。アトピー性皮膚炎では、検査結果だけを根拠にした食物除去が長く続いてしまうことがあり、栄養面での不利益が生じます。避ける必要があるものとないものを整理し、続けられる食事の形に落とし込みます。
経過と悪化する場面をうかがう
いつから、どこに、どんなときに悪くなるか。これまでに使った外用薬の種類と強さ、塗り方、効き方をうかがいます。お薬手帳と、現在お使いの外用薬・保湿剤の実物をお持ちいただくと、診療が大きく進めやすくなります。
皮膚の状態と検査で現在地を確認する
皮疹の分布と程度を確認し、必要に応じて血液検査を行います。ほかの皮膚疾患や内科疾患が混じっていないかも、この段階で切り分けます。
治療計画を具体的に共有する
どの薬を、どの部位に、どれだけの量で、どのくらいの期間使うのかをお伝えします。あわせて、どこまで良くなったら次の段階に進むのかという目標も、あらかじめ決めておきます。
落ち着いた後の維持を組み立てる
症状が治まったら、外用の間隔を空けながら維持する方法へ移行します。TARCなどの指標と皮膚の状態を照らし合わせ、減らせるかどうかを確認しながら、かかりつけ医として継続して診ていきます。
次の症状があるときは、様子を見ずにご相談ください
掻破した皮膚には細菌やウイルスの感染が起こりやすく、早く治療を始めるほど短期間で治まります。なお、食べ物や薬のあとに、じん麻疹とともに息苦しさ・強い腹痛・意識が遠くなる感じが出た場合はアナフィラキシーの可能性があります。ためらわず救急要請をしてください。
黒ずみとして残るのは炎症が続いたあとの色素沈着で、ステロイド外用薬そのものによるものではありません。むしろ炎症を長く放置したほうが跡は残りやすくなります。皮膚が薄くなるといった副作用は、強いランクの薬を必要のない部位に漫然と使い続けた場合に問題になります。部位に応じた強さを選び、良くなった後の減らし方をあらかじめ決めて使えば、管理できる範囲に収まります。
外用薬を急にやめると強い再燃が起こり、一時的に日常生活が立ち行かなくなることがあるため、当院ではこの方法をお勧めしていません。ただし「できるだけ薬を減らしたい」という目標そのものは、治療の目標と一致しています。減らすには手順があり、しっかり炎症を抑えてから間隔を空けていくほうが、結果として使用量も通院期間も少なくなります。ご希望を否定するのではなく、どうすればそこに近づけるかをご一緒に考えます。
とくに成人の場合、食物が湿疹の主な原因であることはまれです。血液検査の陽性だけを根拠にした自己判断の除去は、栄養の偏りを招くうえ、かえって食物アレルギーを発症しやすくする可能性が指摘されています。実際に食べたときの症状との対応を確認し、必要な場合にかぎって、管理栄養士とともに具体的な進め方を決めます。
成人になってから発症することもありますが、接触皮膚炎、疥癬、薬剤による発疹、内科疾患に伴うかゆみなど、別の原因のこともあります。まれに皮膚のリンパ腫が湿疹のように見えることもあり、経過が典型的でない場合や治療への反応が乏しい場合は、診断そのものを見直します。
TARCという指標が、アトピー性皮膚炎の病勢をよく反映します。見た目が落ち着いていても炎症が残っている場合があり、数値で確認できると、外用薬を減らす時期の判断がしやすくなります。すべての方に毎回必要というものではなく、治療の節目で用います。
漢方薬は外用療法の代わりにはなりません。炎症をしっかり抑えるところは標準治療で行い、そのうえで残る乾燥・かゆみ・寝つきの悪さ・のぼせといった症状に対して、体質を診たうえで組み合わせるという位置づけです。当院では漢方専門医として、経過に応じて処方を調整していきます。
併存する喘息やアレルギー性鼻炎、内科的な原因によるかゆみまで含めて一度に整理できる点は、内科で診る利点です。一方で、注射薬や内服の免疫調整薬、紫外線療法が必要な重症例は、皮膚科専門施設での治療が適切と考えています。当院ではその見極めも含めて診療にあたり、必要と判断した場合は速やかにご紹介します。
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