IgG4関連疾患
IgG4関連疾患
IgG4関連疾患のご相談
「健診の血液検査でIgG4が高いと言われた」「両側の顎の下がゆっくり腫れてきた」「腹部エコーで膵臓が腫れていると指摘された」——IgG4関連疾患は、日本から提唱された比較的新しい疾患概念で、全身のさまざまな臓器がゆっくりと腫れたり硬くなったりする指定難病です。自覚症状に乏しく、健診や別の病気の検査をきっかけに見つかることが少なくありません。当院では消化器内科とアレルギー科の両方の視点から、必要な検査を組み立て、専門施設と連携しながら診断と長期のフォローを行います。
いずれもIgG4関連疾患だけに起こる症状ではありませんが、複数が重なるときや、原因がはっきりしないまま経過しているときは、一度整理して調べる価値があります。
血液中のIgG4(免疫グロブリンの一種)が高くなり、その IgG4 をつくる細胞が臓器に多く入り込んで、腫れ(腫大)やしこり(結節)、壁の厚み(肥厚)、そして線維化を起こす病気です。膵臓、胆管、涙腺・唾液腺、腎臓、肺、大動脈周囲や後腹膜、甲状腺、リンパ節など、全身のさまざまな臓器が対象になります。複数の臓器に同時に、あるいは年月をおいて別々に病変が出てくることが特徴で、ひとつの臓器だけのこともあります。
がんではありませんが、がんとの見分けが重要です
IgG4関連疾患そのものは悪性腫瘍ではありません。ただし、膵臓や胆管にできた腫れは画像上でがんとよく似ており、また涙腺・唾液腺やリンパ節の腫れは悪性リンパ腫との区別が必要です。「IgG4関連疾患らしい」と判断する前に、悪性腫瘍の可能性を十分に検討することが診療の出発点になります。
痛みが乏しく、気づかれにくい病気です
強い痛みや発熱を伴うことは多くありません。そのため、健診の血液検査や画像検査、あるいは別の病気を調べる過程で偶然見つかることがよくあります。国内の患者さんは約8千人と推計されていますが、実際にはもっと多いとも考えられています。膵臓・腎臓・後腹膜の病変は中高年の男性に多く、涙腺・唾液腺の病変では男女差がはっきりしません。
どの臓器がおかされるかによって、症状も、最初に受診する診療科も変わります。代表的なものを挙げます。
膵臓全体または一部が腫れ、膵管が細くなります。白目や皮膚が黄色くなる閉塞性黄疸、上腹部の違和感、糖尿病の急な悪化などで気づかれます。膵がんとの鑑別がもっとも重要な病変です。
胆管の壁が厚くなり、胆汁の流れが妨げられます。黄疸、肝機能・胆道系酵素の異常として現れます。自己免疫性膵炎に合併することが多く、胆管がんとの区別が必要です。
まぶたの外側(涙腺)や顎の下(顎下腺)が、痛みを伴わずに左右対称に腫れます。ミクリッツ病とも呼ばれます。目や口の乾きを伴うことがあり、シェーグレン症候群との区別が必要です。
尿細管間質性腎炎として、健診での腎機能低下や尿の異常で見つかることが多い病変です。自覚症状はほとんどありません。CTで腎臓に多発する結節としてとらえられることもあります。
大動脈のまわりや後腹膜に線維化が起こり、尿管が締めつけられて水腎症を来すことがあります。腰背部の鈍い痛み、下肢のむくみ、腎機能の低下などが手がかりになります。
肺の結節影や間質影、肺門・縦隔リンパ節の腫れのほか、甲状腺、下垂体、前立腺、皮膚などにも病変を生じることがあります。健診の胸部X線をきっかけに見つかることもあります。
IgG4高値だけでは診断できません
血清IgG4値の上昇は、IgG4関連疾患に特有のものではありません。悪性腫瘍や悪性リンパ腫、多中心性キャッスルマン病、ANCA関連血管炎、寄生虫症のほか、気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患でも高くなることがあります。逆に、IgG4関連疾患であっても血清IgG4が基準値を超えない方が一定数いらっしゃいます。
診断は、臓器の腫れ・結節・肥厚といった所見、血液検査、そして必要に応じて行う組織の検査(生検)を組み合わせて、総合的に判断します。国内では日本IgG4関連疾患学会などによる包括診断基準と、自己免疫性膵炎など臓器ごとの診断基準が用いられています。
数値だけを見て不安を抱えたままにしないでください
健診で「IgG4高値」とだけ書かれた結果を受け取り、どうしてよいか分からないまま過ごしている方は少なくありません。多くの場合、症状の経過をうかがい、臓器に病変があるかどうかを確認することで、心配のいらない状態なのか、さらに調べるべき状態なのかを整理できます。まずは結果をお持ちのうえでご相談ください。
「どの臓器に病変があるか」「悪性腫瘍やほかの病気ではないか」の二つを軸に、必要な検査を選びます。確定診断に組織の検査が必要と判断した場合は、実施可能な医療機関へご紹介します。
| 血液検査 | 血清IgG4、IgG、IgE、好酸球数、補体、可溶性IL-2受容体などを測定します。あわせて肝胆道系酵素、膵酵素、腎機能、血糖・HbA1c、腫瘍マーカーを確認し、臓器障害の有無とほかの疾患の可能性を評価します。 |
|---|---|
| 尿検査 | 尿蛋白や尿沈渣を調べ、腎病変の手がかりがないかを確認します。 |
| 腹部超音波検査 | 膵臓の腫大、胆管の拡張、腎臓の形態、水腎症の有無などを、その場で確認できます。被ばくがなく、経過を追うのにも適した検査です。 |
| 胸部X線・心電図 | 肺病変や縦隔リンパ節腫大の有無、全身状態の把握のために行います。 |
| 上部消化管内視鏡検査 | 腹部症状がある場合に、胃・十二指腸に別の原因がないかを確認します。当院は消化器内視鏡の専門医が在籍し、院内で実施できます。 |
| 専門施設との連携 | CT・MRI/MRCP、超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)、涙腺・唾液腺やリンパ節の生検、PET検査など、確定診断に必要な検査は連携医療機関へご紹介し、結果を共有しながら方針を決めます。 |
臓器の機能に影響が出ている場合や、放置すると線維化が進むと考えられる場合に治療を行います。症状がなく臓器障害もない軽症の方では、治療をせずに経過を見ることもあります。
| ステロイド治療 | 第一選択の治療です。多くの方でよく効き、腫れや検査値の改善が得られます。一定期間で減量し、その後1〜3年ほど少量を続けることが一般的です。ただし減量・中止に伴って約半数の方に再燃がみられます。 |
|---|---|
| 再燃を抑える薬 (イネビリズマブ) |
2025年11月、抗CD19抗体イネビリズマブ(ユプリズナ®)が「IgG4関連疾患の再燃抑制」を効能として国内で承認されました。日本で初めて、この疾患そのものを対象として承認された薬です。点滴で投与し、初回の2週間後に2回目、その後は6か月ごとの投与となります。適応の判断と投与は専門施設で行われます。 |
| ステロイドの副作用対策 | 血糖の上昇、骨粗鬆症、感染症、脂質異常、白内障・緑内障など、長く続けるうえで注意すべき点があります。定期的な検査と予防的な対策を、内科のかかりつけとして継続して行います。 |
| 指定難病の医療費助成 | IgG4関連疾患は指定難病(告示番号300)です。診断基準と国の定める重症度分類を満たす場合、医療費の自己負担に上限を設ける助成の対象となります。申請には指定医が作成する臨床調査個人票が必要です。該当する可能性がある方には、手続きについてもご案内します。 |
DIGESTIVE
消化器内科として、膵臓・胆管の病変を見のがさない
IgG4関連疾患のなかでも頻度が高く、かつ緊急性を伴いやすいのが自己免疫性膵炎と硬化性胆管炎です。当院は消化器病・消化器内視鏡の専門医が在籍し、腹部超音波検査と内視鏡検査に院内で対応しています。膵がん・胆管がんとの鑑別を最優先に考えたうえで、必要な検査を組み立てます。
ALLERGY
アレルギー診療の視点で、紛らわしい高値を切り分ける
IgG4関連疾患の方には気管支喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の合併が多く、血清IgE高値や好酸球増多を伴うことがしばしばあります。一方で、アレルギー疾患そのものによってIgG4が高くなることもあります。当院はアレルギー科としての診療も行い、呼気中一酸化窒素(FeNO)検査を含めてアレルギーの状態を評価できるため、この紛らわしさを踏まえた解釈ができます。
LONG TERM
診断後も、かかりつけとして長く伴走します
この病気は、再燃したり、年月をおいて別の臓器に病変が出たりすることがあります。専門施設での治療方針を踏まえながら、ステロイドの副作用管理、血糖や骨密度の確認、再燃の兆候のチェックを継続して行います。ほかの持病や健診結果とあわせて相談できるのも、内科のかかりつけ医ならではの利点です。管理栄養士による栄養指導もご利用いただけます。
経過を詳しくうかがう
いつから、どの部位に、どのような変化があったか。健診で指摘された項目、これまでの治療歴、アレルギー疾患の有無などをうかがいます。健診・人間ドックの結果や、他院で受けた血液検査・画像検査の記録をお持ちいただくと、重複した検査を避けられます。
院内でできる検査を行う
血液・尿検査、腹部超音波検査、胸部X線などを行い、どの臓器に病変がありそうか、臓器の働きに影響が出ていないかを確認します。ほかの病気の可能性もあわせて検討します。
必要に応じて専門施設へご紹介する
確定診断にCT・MRIや組織の検査が必要と判断した場合、また治療の導入が必要と考えられる場合は、実施可能な医療機関へご紹介します。これまでの検査結果と考えられる見立てを、診療情報として整理してお渡しします。
診断後の経過を一緒に見ていく
治療方針が決まった後は、専門施設と役割を分けながら、日常的な検査や副作用の管理を当院で担当します。指定難病の申請が対象となる場合は、その手続きについてもご相談ください。
次の症状があるときは、様子を見ずにご相談ください
黄疸や腎機能の低下は、臓器の働きが妨げられているサインです。IgG4関連疾患かどうかにかかわらず、原因を早く確かめる必要があります。強い痛みや急な視力の変化がある場合は、当院の診療時間外であれば救急外来の受診をご検討ください。
数値が高いというだけでは、治療の対象にはなりません。IgG4関連疾患の診断には、臓器に病変があることが前提となります。またIgG4の上昇はアレルギー疾患やほかの病気でも起こります。まずは症状の経過をうかがい、臓器の状態を調べたうえで、何もする必要がないのか、さらに調べるべきかを判断します。結果票をお持ちのうえでご相談ください。
腫れている部位によって耳鼻咽喉科、眼科、歯科口腔外科などが窓口になりますが、IgG4関連疾患は全身の病気であるため、ほかの臓器に病変がないかを含めて調べる必要があります。当院では血液検査と腹部超音波検査などで全身の状態を確認し、必要に応じて生検が可能な施設へご紹介します。すでに他科を受診されている場合も、あわせてご相談いただけます。
まず確かめるべきはその点です。自己免疫性膵炎と膵がんは画像上で似ることがあり、両者の区別は診療のなかでもっとも慎重を要する部分です。血液検査・画像検査に加え、必要であれば超音波内視鏡下の組織検査を行える施設へご紹介します。自己判断で経過を見ずに、早めに検査を受けてください。
最初は比較的しっかりした量から始め、症状と検査値の改善をみながら減らしていきます。その後、少量の維持療法を1〜3年続けることが一般的で、状態が安定していれば中止を検討します。ただし減量や中止に伴い約半数の方で再燃がみられるため、中止後も定期的な確認が必要です。2025年に再燃を抑える薬が国内で承認され、選択肢は少しずつ広がっています。
IgG4関連疾患は指定難病に定められており、診断基準を満たし、かつ国の重症度分類で一定以上と判定された場合に助成の対象となります。おおまかには、治療を必要とする状態かどうかが目安になります。申請には指定医が作成する臨床調査個人票と、お住まいの自治体(保健所など)への手続きが必要です。該当しそうな場合はご案内しますので、遠慮なくお尋ねください。
可能です。専門施設での治療方針を尊重しながら、日常的な採血や血圧・血糖の管理、ステロイドの副作用対策、ほかの持病の診療を当院で担当し、必要なときに専門施設へお戻しする形をとります。通院の負担を減らしつつ、専門的な管理を続けていただくことを目指します。まずは現在の治療内容が分かる資料をお持ちください。
TOP