潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができ、血便や下痢を繰り返す病気です。よくなったり悪くなったりを長く繰り返すため、「体質」「痔だろう」と思われたまま診断が遅れることが少なくありません。当院では、血便や下痢が続く方に大腸内視鏡検査で診断をつけ、専門施設と役割を分けながら、寛解を長く保つための診療を続けています。
当てはまるものがあれば、症状が軽いうちにお話をうかがわせてください。潰瘍性大腸炎かどうかを確かめる方法は決まっており、検査を受けるべきかどうかは診察の場で整理できます。
国内では、潰瘍性大腸炎で医療費助成を受けている方が約14万7千人おられます(令和5年度・特定医療費受給者証所持者数)。指定難病のなかでもっとも患者数が多く、数十年にわたり増え続けています。20歳前後で発症することが多い一方、中高年で初めて診断される方もめずらしくありません。原因はまだ完全にはわかっておらず、遺伝的な素因を背景に、腸内細菌などに対して免疫が過剰に反応することが関係していると考えられています。
血便を「痔」で片づけないでください
潰瘍性大腸炎の炎症は直腸から始まるため、初めの症状が少量の出血だけということがあります。痔と自己判断して市販薬で様子を見ているうちに炎症の範囲が広がり、下痢や腹痛が加わってから受診される方が少なくありません。
出血が数週間続く、粘液が混じる、便の回数が増えたという経過であれば、痔だけでは説明がつきません。大腸の中を一度確認しておく必要があります。
過敏性腸症候群との違いは、検査をしないとわかりません
下痢や腹痛という症状だけを見れば、過敏性腸症候群と潰瘍性大腸炎はよく似ています。しかし前者は腸に炎症や潰瘍がない状態を指し、後者は粘膜に実際の傷ができている状態です。治療の方針はまったく異なります。血便、夜間の症状、体重減少、発熱、貧血がある場合は、機能的な問題では説明がつきません。
症状が落ち着いた時期こそ、治療を続ける意味があります
潰瘍性大腸炎は、症状が消える「寛解」と、再び悪化する「再燃」を繰り返します。調子がよくなったところで自己判断で薬をやめると、再燃の危険がはっきり高まります。また、症状がなくても粘膜の炎症が残っていることがあり、その状態が長く続くと再燃や合併症につながります。目標は、症状を消すことだけでなく、粘膜の炎症まで鎮めてその状態を保つこと(粘膜治癒)に置かれます。
潰瘍性大腸炎の炎症は直腸から始まり、そこから連続して口側へ広がる性質があります。どこまで広がっているか、どのくらい強いか、どのような経過をたどっているかによって、選ぶ薬も通院の間隔も変わります。
症状の経過をうかがったうえで、必要な検査を選びます。まず感染性の腸炎などを除外し、そのうえで粘膜の状態を直接確認するという順序で進めます。
| 大腸内視鏡検査 (大腸カメラ) |
診断の中心となる検査です。直腸から連続して炎症が広がっているか、血管の透見が消えていないか、びらんや潰瘍、膿のような分泌物がないかを確認し、範囲を判定します。あわせて組織を採取し(生検)、顕微鏡で調べて診断を確かめます。 |
|---|---|
| 血液検査 | CRPなどの炎症の指標、貧血の有無、栄養状態(アルブミンなど)を確認します。重症度の判定にも用います。ただし値が正常でも腸に炎症が残っていることがあり、これだけで判断はできません。 |
| 便の検査 | 細菌やアメーバなどの感染がないかを調べます。抗菌薬を使った後であれば、クロストリジオイデス・ディフィシルによる腸炎も鑑別に入ります。診断後は、便中カルプロテクチンにより腸の炎症の程度を推し量ることができます。 |
| 腹部エコー・腹部X線 | 体への負担なく腸の壁の厚みや広がりを確認できます。症状が強い時期には、腸が異常に拡張していないか(中毒性巨大結腸症)の確認にも用います。 |
| サーベイランス内視鏡 | 発症から長い年月が経ち、炎症の範囲が広い方では大腸がんの危険がやや高くなります。おおむね発症8年前後を目安に、定期的な内視鏡検査で粘膜を確認していきます。開始時期と間隔は病型と経過によって異なります。 |
| 専門施設との連携 | 重症例や劇症型の入院治療、生物学的製剤・分子標的薬の導入、血球成分除去療法、外科的な治療が必要と判断した場合は、連携する専門病院へ速やかにご紹介します。 |
治療は、炎症を鎮めて症状を落ち着かせる段階(寛解導入)と、その状態を保つ段階(寛解維持)に分けて考えます。病変の広がりと重症度によって選ぶ薬が変わるため、診断を正確につけることが治療の出発点になります。
| 5-ASA製剤 | 治療の基本となる薬です。寛解導入にも維持にも用い、長く続けることに意味があります。製剤によって薬が放出される部位が異なるため、病変の広がりに合わせて選びます。副作用として、まれに投与開始後に下痢や腹痛がかえって強くなることがあり、その場合は中止して他の薬に切り替えます。 |
|---|---|
| 局所製剤(坐剤・注腸) | 直腸炎型や左側大腸炎型では、内服だけよりも坐剤や注腸フォームを併用したほうが効果が高まります。手間に感じられる治療ですが、直腸の炎症は残便感や便意切迫の原因になりやすく、局所からの治療が有効です。使い方は診察時にご説明します。 |
| ステロイド | 炎症が強いときに、短期間で鎮めるために使います。効果は高い一方、長く続けると副作用が問題になり、再燃を防ぐ目的には向きません。減量の見通しを立てたうえで使い、やめられない状態が続く場合は次の治療に進みます。腸で作用して全身への影響が少ないタイプの製剤もあります。 |
| 免疫調節薬 | ステロイドを減らすと再燃してしまう方などに用います。効果が出るまでに数か月かかるため、定期的な血液検査で白血球数や肝機能を確認しながら継続します。開始前にNUDT15遺伝子多型を調べ、重い副作用の危険を事前に見極めます。 |
| 生物学的製剤・分子標的薬 | 従来の薬で炎症が抑えられない場合の選択肢です。抗TNFα抗体、抗インテグリン抗体、抗IL-12/23抗体、JAK阻害薬など、作用の異なる薬が使えるようになっています。導入は専門施設で行い、状態が安定した後の継続や経過観察を当院で分担できる場合があります。 |
| 血球成分除去療法 | 血液中の白血球を体外の装置で取り除く治療です。薬の効果が不十分な場合や、ステロイドを減らしたい場合に選択肢となります。実施は連携施設で行います。 |
| 外科的な治療 | 薬で炎症が抑えられない場合、大量の出血、腸に穴があいた場合、中毒性巨大結腸症、がんが疑われる場合には手術を検討します。大腸を摘出し、小腸で便をためる袋を作って肛門につなぐ方法が広く行われています。時期を逃さないよう、連携施設と判断します。 |
| 食事・生活 | 一律の禁止食があるわけではありません。炎症が強い時期と落ち着いている時期では考え方が変わります。当院では管理栄養士が個別に相談に応じます。痛み止めとして使われる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は症状を悪化させることがあるため、常用薬があれば診察の際にお知らせください。 |
医療費の助成を受けられる場合があります
潰瘍性大腸炎は指定難病に定められており、重症度の基準を満たす場合、または一定以上の医療費が続いている場合(軽症高額該当)には、申請により医療費の自己負担に上限が設けられます。申請には臨床調査個人票が必要です。該当する可能性がある方には、書類の作成を含めてご案内します。更新の手続きにも対応します。
ENDOSCOPY
消化器内視鏡専門医が、診断のための大腸内視鏡検査を行います
当院は日本消化器内視鏡学会の専門医による検査を行っています。炎症の範囲と強さ、粘膜の治り具合まで評価し、生検の結果とあわせて診断をお伝えします。経過が長い方には、大腸がんを早く見つけるための定期的な内視鏡検査についてもご案内します。
CO-MANAGEMENT
専門施設と役割を分け、通いやすさを保ちます
入院治療や生物学的製剤の導入が必要な段階では、専門病院へご紹介します。一方、状態が安定している時期の処方、定期的な血液検査、難病の更新に必要な書類の作成などは、通院しやすい当院で担当できます。仕事や学業を続けながら治療を長く保つために、どこで何を診るのかをはっきりさせておくことを大切にしています。
NUTRITION
食事の悩みには、管理栄養士が個別に対応します
「何を食べてよいかわからない」という不安は、多くの方が抱えています。当院には管理栄養士が在籍し、活動期と寛解期それぞれの食べ方、脂質や食物繊維の扱い、外食や弁当の選び方まで、生活に沿った形で相談に応じます。必要以上に制限して栄養状態を落とさないことも、治療の一部です。
KAMPO
標準的な治療を土台に、残る症状への対応も相談できます
炎症が落ち着いた後も、腹部の張りや便通の乱れ、疲れやすさが残ることがあります。当院は漢方専門医としての診療も行っており、標準的な治療を続けたうえで、残る症状に漢方薬を併用する選択肢をご提案できます。標準治療に置き換えるものではなく、あくまで補う位置づけとして検討します。
診察でご相談ください
症状がいつから、どのくらいの頻度で起きているか、血便の程度、体重の変化、これまでに受けた検査や治療についてうかがいます。過去の内視鏡の報告書、健診結果、お薬手帳をお持ちいただくと判断がしやすくなります。他院で診断を受けている方は、紹介状があればご持参ください。
血液・便の検査で、他の原因を確かめます
炎症の程度や貧血の有無を確認し、感染性の腸炎などがないかを調べます。この段階で診断がつくわけではありませんが、進め方を決めるうえで欠かせない情報になります。
大腸内視鏡検査で診断をつけます
前日の食事と当日の下剤についてご説明したうえで、日を決めて検査を行います。炎症の広がりを確認し、組織を採取します。生検の結果が出るまでには1週間ほどかかります。
診断の説明と、治療の開始
内視鏡の画像をお見せしながら、病型と炎症の広がり、重症度をご説明します。そのうえで治療を始め、医療費助成の対象になりそうな場合は申請の手順をご案内します。専門施設での治療が必要と判断した場合は、その時点でご紹介します。
寛解を保つための通院
症状が落ち着いた後も、定期的に診察と血液検査を行い、薬の量や種類を調整します。再燃の兆しを早くつかむこと、そして薬を続けられる形に整えることが、この時期の目的です。経過が長くなれば、内視鏡での確認も計画的に行います。
次の症状があるときは、次回の予約を待たずにご相談ください
強い腹痛とともにお腹が張って動けない場合、意識がもうろうとする場合は、ためらわず救急要請をしてください。それ以外の症状であれば、まずは外来でご相談いただければ、必要な対応を判断します。
現在の医療では、薬で完全に治しきることは難しいと考えられています。ただし治療によって症状のない状態を保つことは十分に可能で、多くの方が仕事や学業、妊娠・出産を含めた生活を続けておられます。目標は「治す」ことよりも、「炎症のない状態をいかに長く保つか」に置かれます。
あります。症状が消えても粘膜の炎症が残っていることがあり、薬をやめると再燃の危険が高まることがわかっています。減量や中止を考える場合は、内視鏡や検査所見をふまえて相談のうえで判断します。自己判断での中断は避けてください。
直腸に炎症が残っている間は、局所からの治療がもっとも効率のよい方法です。残便感や便意切迫といった困りごとは、直腸の炎症が原因であることが多く、内服を増やすより坐剤や注腸のほうが改善につながります。負担が大きいと感じられる場合は、剤形や使う回数を相談しながら調整します。
原因はまだ完全にはわかっていませんが、遺伝的な素因を背景に、腸内細菌などに対して免疫が過剰に反応することが関係していると考えられています。ストレスは症状を強める要因にはなり得ますが、それだけで起こる病気ではありません。「気の持ちよう」で片づけず、腸の炎症そのものを評価することが必要です。
一律の禁止食があるわけではありません。炎症が強い時期には脂質や食物繊維を控えるほうが楽に過ごせることが多い一方、落ち着いている時期に必要以上の制限を続けると、栄養状態が悪くなり体力の低下につながります。当院では管理栄養士が、時期と体調に合わせた具体的な食べ方をご提案します。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、潰瘍性大腸炎の症状を悪化させることがあります。頭痛や生理痛などで使う機会が多い薬ですので、常用されている場合は診察の際にお知らせください。使える薬に置き換えることができます。
発症から長い年月が経ち、炎症の範囲が広い方では、大腸がんの危険がやや高くなることが知られています。そのため、おおむね発症8年前後を目安に、定期的な内視鏡検査(サーベイランス)をおすすめしています。開始の時期や間隔は病型と炎症の広がりによって異なりますので、診察の際にご説明します。
できます。大切なのは、炎症が落ち着いた状態で妊娠を迎えることです。活動期に妊娠すると経過が不安定になりやすいことが知られています。薬のなかには妊娠中も継続できるものが多くありますので、自己判断で中止せず、計画の段階でご相談ください。必要に応じて産科と連携します。
標準的な治療を続けたうえで、残る症状に漢方薬を併用することは選択肢になります。ただし、自己判断での使用はおすすめできません。とくに青黛(せいたい)を含む製品については、重い肺高血圧症などの健康被害が報告されており、注意が必要です。ご希望があれば、診察のうえで適否を判断します。
可能です。状態が安定している方であれば、日常の診療と検査を当院で担当し、必要な時期に専門施設へつなぐという形をとれます。難病医療費助成の更新に必要な書類の作成にも対応します。まずは現在の治療内容がわかる資料をお持ちのうえ、ご相談ください。
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