慢性胃炎・萎縮性胃炎
慢性胃炎・萎縮性胃炎
慢性胃炎・萎縮性胃炎・ピロリ菌外来
「健診で慢性胃炎と言われた」「胃の不快感が何年も続いている」「ピロリ菌を指摘されたまま放置している」——慢性胃炎は、症状の有無と胃の状態が一致しないことの多い病気です。当院では消化器内視鏡専門医が胃粘膜の状態を直接確かめ、ピロリ菌の有無と萎縮の程度を整理したうえで、除菌の要否、胃がんリスクに応じた検査間隔、そして残る症状への手当てまでを一続きに考えます。
慢性胃炎は「よくあること」として流されやすい一方で、胃がんのリスクを推し量るうえで最も重要な手がかりでもあります。症状の有無にかかわらず、いまの胃粘膜がどういう状態にあるのかを一度確かめておく価値があります。
慢性胃炎という診断名は、実際にはいくつもの異なる状態をまとめて呼んだものです。原因が何か、粘膜の変化がどこまで進んでいるかによって、必要な治療も、その後の検査の間隔も変わってきます。
慢性胃炎の最も多い原因です。多くは幼少期に感染し、自覚のないまま数十年かけて胃粘膜の炎症が続きます。胃がん・胃潰瘍・十二指腸潰瘍の背景となるため、感染が確認されれば除菌治療の対象になります。
長年の炎症によって胃粘膜が痩せ、腸の粘膜に似た性質へ置き換わった状態です。範囲が広いほど胃がんのリスクが高くなるため、内視鏡で萎縮の広がり(木村・竹本分類)を評価し、検査の間隔を決める根拠にします。
除菌に成功すると炎症は治まり、胃がんのリスクも下がります。ただしゼロにはならず、萎縮が進んだ状態から発見される胃がんは、平坦で見つけにくいという特徴があります。除菌後こそ、定期的な内視鏡での確認が重要になります。
免疫の仕組みが自分の胃粘膜を攻撃するタイプで、胃の上部を中心に萎縮が進みます。ビタミンB12や鉄の吸収が落ちて貧血・しびれの原因になることがあり、甲状腺疾患を合併しやすい点も特徴です。血液検査を組み合わせて診断します。
痛み止め(NSAIDs)や低用量アスピリン、抗血栓薬などが胃粘膜を傷めることがあります。持病の治療上どうしても必要な薬であることも多く、中止するのではなく、胃を守る薬を併用しながら続けられる形を整えます。
胃もたれやみぞおちの痛みが続くのに、内視鏡では説明のつく異常が見つからない状態です。機能性ディスペプシアと呼ばれ、胃の動きや知覚の問題が背景にあります。胃炎という名前で長年薬を出され続けている方のなかに、少なからず含まれています。
胃炎があることと、症状の原因であることは別です
内視鏡で見える胃炎の強さと、実際の症状の重さは、必ずしも一致しません。萎縮が進んでいても無症状の方がいる一方で、粘膜がきれいでもつらい症状が続く方もいます。そのため当院では、「胃がんのリスクをどう見積もるか」という軸と、「いまの症状をどう和らげるか」という軸を分けて組み立てます。この二つを混ぜてしまうと、薬だけが漫然と続く状態になりがちです。
除菌が済んでいても、確認は続ける必要があります
ピロリ菌の除菌によって胃がんの発生は減りますが、リスクがなくなるわけではありません。とくに萎縮や腸上皮化生が進んでから除菌した場合、その後何年も経ってから胃がんが見つかることがあります。除菌後に「もう大丈夫」と検査から遠ざかってしまうことが、実際にはいちばん惜しい経過です。萎縮の程度に応じて、適切な間隔で内視鏡を受けていただけるようご案内します。
症状の内容と、これまでの検査歴・除菌歴をうかがったうえで、必要な検査を選びます。すでに済んでいる検査を重ねることのないよう、お手元に結果があればお持ちください。
| 上部消化管内視鏡検査 (胃カメラ) |
胃粘膜の炎症・萎縮・腸上皮化生の広がりを直接観察します。萎縮の範囲は木村・竹本分類で、内視鏡所見は胃炎の京都分類にもとづいて評価し、ピロリ菌感染の有無や胃がんリスクの推定につなげます。潰瘍や早期胃がんなど、症状の原因となる病変の確認も同時に行います。 |
|---|---|
| 生検・病理検査 | 内視鏡の際に粘膜の一部を採取し、炎症や萎縮の程度、腸上皮化生の有無、悪性所見の有無を顕微鏡で確認します。自己免疫性胃炎の診断にも用います。 |
| ピロリ菌検査 | 尿素呼気試験、便中抗原検査、血液・尿の抗体検査、内視鏡時の迅速ウレアーゼ試験などを、状況に応じて使い分けます。除菌後の判定は尿素呼気試験や便中抗原検査で行い、胃薬の内服状況によって結果が影響を受けるため、検査前の準備もあわせてご説明します。 |
| 血液検査 (ペプシノゲン法ほか) |
ペプシノゲン値は胃粘膜の萎縮の程度を推し量る指標です。ただし除菌後や胃薬の内服中は判定が難しくなるため、あくまで内視鏡所見と組み合わせて解釈します。貧血、ビタミンB12、鉄、自己抗体などもあわせて確認します。 |
| 腹部超音波検査 | みぞおちの症状は、胆のう・膵臓・肝臓の病気でも起こります。胃だけに原因を求めず、周辺の臓器の状態も確認します。 |
| 症状の評価 | 問診票を用いて、胃もたれ・早期満腹感・みぞおちの痛み・逆流症状のどれが主体かを整理します。治療を始めた後、効果を判定するうえでの基準にもなります。 |
ピロリ菌の除菌はリスクを下げるための治療、症状に対する薬は日々の不調を和らげるための治療です。目的の違うものを分けて考え、必要なものだけを組み合わせます。
| ピロリ菌の除菌治療 | 胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬を、1週間内服します。保険診療で行うには、内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と診断されていることが前提です。一次除菌で成功しなかった場合は、抗菌薬を変更した二次除菌まで保険で行えます。内服後は必ず判定検査を行い、除菌できたかどうかを確認します。 |
|---|---|
| 酸分泌抑制薬 (P-CAB・PPI・H2ブロッカー) |
みぞおちの痛みや胸やけが強いときに用います。よく効く薬である一方、必要がなくなっても続いてしまいやすい薬でもあるため、当院では定期的に減量・中止の可否を見直します。 |
| 消化管運動機能改善薬 | 胃もたれや早期満腹感が主体の場合に、胃の動きを助ける薬を用います。酸を抑えるだけでは届かない症状に対する選択肢です。 |
| 粘膜保護薬 | 痛み止めなどを続ける必要がある方や、粘膜の傷みが目立つ方に、胃粘膜を保護する薬を併用します。 |
| 漢方薬 | 胃もたれ・食欲不振には六君子湯、みぞおちの痛みや冷えを伴う場合には安中散や人参湯、心窩部のつかえ感やげっぷが強い場合には半夏瀉心湯などを、体質と症状の出方を診たうえで用います。西洋薬との併用が可能で、検査で異常がないのに症状が残る方の受け皿になります。 |
| 食事・生活の調整 | 管理栄養士による栄養指導を行い、食事の量・回数・タイミング、塩分や刺激物のとり方を、続けられる形に落とし込みます。胃の症状は食習慣の影響を受けやすく、薬の効きを左右する部分です。 |
| 除菌後・萎縮性胃炎の経過観察 | 萎縮や腸上皮化生の程度に応じて、内視鏡検査の間隔をご提案します。かかりつけ医として、次にいつ検査を受けるべきかを一緒に管理していきます。 |
すべてを一度に変える必要はありません。症状が出る場面や、これまでの食習慣に照らして、効果の大きいものから絞り込んでいきます。
ENDOSCOPY
消化器内視鏡専門医が、粘膜の状態を評価します
当院では消化器内視鏡専門医・消化器病専門医が内視鏡検査を担当します。「胃炎があります」で終わらせず、萎縮の広がり、腸上皮化生の有無、ピロリ菌感染の状態を評価し、次の検査をいつ受けるべきかまで含めてお伝えします。除菌後の平坦な胃がんを見逃さないことを意識した観察を行います。
KAMPO
漢方専門医として、検査で説明のつかない症状にも向き合います
除菌が済み、内視鏡でも大きな異常がないのに、胃もたれや食欲不振が残る方は少なくありません。当院は漢方専門医としての診療も行っており、体質や症状の出方を診たうえで漢方薬を組み合わせます。標準的な西洋医学の治療を土台にしながら、その先の選択肢を持てることが強みです。
NUTRITION
管理栄養士とともに、食事の中身まで踏み込みます
当院には管理栄養士が在籍し、栄養指導を行える体制を整えています。「刺激物を控えましょう」で終わらせず、実際の食事内容や生活リズムをうかがったうえで、無理なく続けられる形に整えます。食欲が落ちている方には、必要な栄養が不足しないための工夫もあわせてご提案します。
症状とこれまでの経過をうかがう
いつから、どんな場面で症状が出るか。これまでの検査歴、ピロリ菌の指摘や除菌の有無、ご家族の胃がんの既往をうかがいます。健診結果や以前の内視鏡の結果、現在お使いのお薬が分かるものをお持ちいただくと診療が進めやすくなります。
内視鏡検査で胃粘膜を確認する
日程を調整して内視鏡検査を行い、炎症と萎縮の状態、ピロリ菌感染の有無を評価します。必要に応じて生検を行います。検査の受け方についてはご希望をうかがったうえで決めますので、不安な点は遠慮なくお伝えください。
結果を整理し、方針を決める
ピロリ菌がいれば除菌治療を、萎縮が進んでいれば経過観察の間隔を、症状が主体であれば症状に対する治療を——それぞれの目的を分けてご説明し、優先順位を一緒に決めます。
治療と経過観察を続ける
除菌を行った場合は、内服後に判定検査で成否を確認します。その後は、症状の変化を見ながら薬を調整し、次の内視鏡検査の時期までかかりつけ医として継続して診ていきます。
次の症状があるときは、市販薬で様子を見ずにご相談ください
これらは、慢性胃炎以外の病気が背景にあるときに現れやすい症状です。胃がんは早い段階では症状が出にくく、症状が出てからでは進行していることもあります。気になる症状がある場合は、時間をおかずにご相談ください。
症状がなくても、一度確認しておく意味があります。慢性胃炎の背景にピロリ菌感染があれば除菌の対象になりますし、萎縮の程度が分かれば、その後どのくらいの間隔で胃カメラを受けるべきかの目安が立ちます。症状の有無と胃粘膜の状態は一致しないため、「症状がないから大丈夫」とは言い切れないのが実際のところです。
内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と診断された場合、除菌治療は保険診療で行えます。逆に言えば、内視鏡を受けずに抗体検査だけで除菌を行うことは保険では認められていません。当院では内視鏡で胃の状態を確認したうえで、除菌の要否をご説明します。
その逆で、除菌後こそ定期的な確認が必要です。除菌によって胃がんの発生率は下がりますが、ゼロにはなりません。とくに萎縮や腸上皮化生が進んでから除菌した方では、その後の年数が経ってから胃がんが見つかることがあります。萎縮の程度に応じて、おおむね1〜2年ごとを目安に間隔をご提案します。
よくあるご相談です。除菌は将来の胃がんや潰瘍のリスクを下げる治療であり、いま出ている症状を必ず取り去るものではありません。症状が残る場合は、胃の動きの問題や知覚過敏(機能性ディスペプシア)、逆流症状などを別途評価し、消化管運動機能改善薬や漢方薬、食事の調整で対応します。また、除菌後に一時的に胸やけ(逆流症状)が出ることもあり、その場合の対処もご説明します。
萎縮性胃炎は胃がんのリスクを高める状態ですが、必ずがんになるという意味ではありません。大切なのは、萎縮の広がりに応じた間隔で内視鏡検査を続けることです。定期的に見ていれば、早期の段階で見つけられる可能性が高くなります。過度に不安を抱えるのではなく、次にいつ検査を受けるかを決めておくことが、いちばん現実的な備えになります。
必要があって続けている場合と、なんとなく続いている場合とを、一度分けて考える必要があります。酸を抑える薬は症状によく効きますが、長期に続ける場合は必要性を定期的に見直すことが望ましいと考えられています。当院では、いまも必要な薬なのか、減らせる薬なのかを、症状と検査所見を照らし合わせて整理します。
ご家族に胃がんの方がいる場合、ご自身の胃がんリスクは高くなることが知られています。またピロリ菌は家庭内で感染が広がることがあるため、ご家族に感染が確認された場合は、ほかのご家族も調べておく意味があります。内視鏡検査とピロリ菌検査で現状を確認したうえで、必要な対応をご提案します。
併用は可能です。実際の診療では、必要な西洋薬を土台にしながら、残る症状に漢方薬を組み合わせる形をとることが多くあります。当院では漢方専門医として、体質や症状の出方を診たうえで処方を選び、経過に応じて調整していきます。症状が落ち着いてくれば、西洋薬のほうを減らせる場合もあります。
慢性胃炎と重なりやすい症状・病態については、それぞれ別のページで詳しくご説明しています。
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