ピロリ感染症
ピロリ感染症
ピロリ菌感染症
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜にすみつく細菌です。感染していても痛みや不快感が出ないことが多く、その間に胃の炎症が静かに進み、萎縮性胃炎、胃潰瘍、そして胃がんの原因になります。日本人の胃がんの多くは、この菌の感染を背景に起こると考えられています。除菌治療は1週間の内服で完了し、成功すれば将来の胃がんの危険を下げられます。当院では、内視鏡による診断から除菌治療、除菌できたかどうかの判定、その後の定期的な検査までを一続きで担当しています。
健診の結果や過去の検査記録をお持ちいただければ、いま何が分かっていて、次に何をすればよいかを整理してお伝えします。除菌を受けるまでの道筋は決まっており、迷う必要はありません。
ピロリ菌の感染は、多くが幼少期に起こります。上下水道の整備が進んだ現在では新たな感染はまれになり、若い世代の感染率は大きく下がりました。一方、高齢の方ではいまも感染している方が少なくありません。感染しても自覚症状はほとんどなく、健診をきっかけに分かることが大半です。
抗体が陽性でも、すぐに除菌が始まるわけではありません
健診の血液検査で陽性と分かった方が、そのまま薬を出してもらえると思って来られることがよくあります。しかし保険で除菌治療を受けるには、内視鏡検査で胃炎があることを確認しておく必要があります。これは制度上の決まりであると同時に、医学的にも意味のある順序です。
内視鏡を受けることで、すでに潰瘍やがんができていないか、胃の萎縮がどこまで進んでいるかが分かります。除菌後に何年間どのような間隔で検査を続けるべきかも、このときの所見で決まります。抗体検査だけでは、これらは何一つ分かりません。
除菌は、症状を取る治療ではありません
除菌の目的は、いまの不調を和らげることよりも、将来の胃がんの危険を下げることにあります。ですから、症状がまったくない方にこそ意味があります。
同時に、除菌をすれば胃がんにならなくなるわけでもありません。すでに萎縮が進んだ胃では、除菌から何年も経ってからがんが見つかることがあります。除菌は「危険を下げる」治療であって、「検査を終わりにできる」治療ではないことを、はじめにお伝えしています。
胃の粘膜に長く炎症が続くことで、さまざまな病気につながります。感染している方全員がこれらを発症するわけではありませんが、いずれも感染が背景にあることが分かっています。
感染しているかどうかを調べる方法は複数あり、状況によって使い分けます。内視鏡を使う方法と使わない方法があり、それぞれ得意なことが異なります。
| 上部消化管 内視鏡検査 |
保険で除菌治療を受けるために必要な検査です。胃炎の有無と萎縮の程度を確認し、潰瘍やがんがすでにできていないかを調べます。除菌後にどの間隔で検査を続けるべきかも、この所見をもとに決めます。ご希望に応じて鎮静剤を用い、眠っている間に受けていただけます。 |
|---|---|
| 迅速ウレアーゼ試験・ 組織検査 |
内視鏡の際に胃の粘膜を少量採取して調べる方法です。その場で判定できるものと、顕微鏡で確認するものがあります。内視鏡検査と同時に行えるため、一度の検査で診断まで進められます。 |
| 尿素呼気試験 | 薬を飲んで、その前後の呼気を採取する検査です。体への負担がなく精度も高いため、除菌できたかどうかの判定に最も多く用いられます。検査前は絶食が必要で、胃薬を飲んでいる場合は一定期間休薬していただきます。 |
| 便中抗原検査 | 便を採取して調べる方法です。負担が少なく、呼気試験が受けにくい方や小児にも用いられます。感染の診断にも除菌判定にも使えます。 |
| 血液・尿の 抗体検査 |
健診で用いられることの多い検査です。感染の有無をおおまかに知るには適していますが、除菌に成功した後も抗体はしばらく陽性のまま残るため、除菌できたかどうかの判定には使えません。健診で陽性だった方は、この点を含めてご説明します。 |
| 検査前の お薬の調整 |
胃酸を抑える薬(PPI・P-CAB)や抗菌薬を飲んでいると、感染していても陰性と出てしまうことがあります。正しく判定するため、検査の前に一定期間これらを中止していただきます。中止できない事情がある場合は、別の方法を選びます。 |
治療は1週間の内服で終わります。胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬を、朝夕の2回、決められた期間きちんと飲み切ることが成功の条件です。
| 一次除菌 | 胃酸を抑える薬に、アモキシシリンとクラリスロマイシンという2種類の抗菌薬を組み合わせ、7日間内服します。近年は胃酸を強く抑える薬を用いることで成功率が高くなっています。飲み終えたら、判定までいったん治療は終了です。 |
|---|---|
| 二次除菌 | 一次除菌で菌が残っていた場合に行います。抗菌薬の一方をメトロニダゾールに変更し、同じく7日間内服します。一次と二次を合わせると、大半の方で除菌に成功します。一次が不成功でも、あきらめる必要はありません。 |
| 三次除菌 | 二次除菌でも菌が残った場合の選択肢です。保険が適用されないため自費診療となり、薬の組み合わせも施設によって異なります。ご希望や胃の状態を踏まえて、実施するかどうかを相談します。 |
| 服用中の注意 | 最も多い副作用は軟便や下痢で、多くは軽く済みます。味覚が変わる、口内炎、軽い発疹が出ることもあります。薬は途中でやめず、飲み切ってください。中断すると成功率が下がり、菌が薬に抵抗性を持つことがあります。二次除菌の期間中は、飲酒を控えていただきます。 |
| 除菌判定 | 薬を飲み終えてから4週間以上、できれば2か月ほど間をあけて、尿素呼気試験や便中抗原検査で確かめます。早すぎると菌が残っていても陰性と出てしまいます。この判定を受けて、はじめて治療が完了します。 |
| 除菌後の経過 | 除菌に成功すると胃酸の分泌が戻り、一時的に胸やけが出たり、食欲が増して体重が増えたりすることがあります。多くは時間とともに落ち着きますが、症状が強い場合は対応します。そして、年1回程度の内視鏡を続けていただきます。 |
ご家族の検査を考える機会でもあります
ピロリ菌の感染は、多くが幼少期に家庭内で起こると考えられています。ご自身が陽性と分かった場合、同世代のご兄弟や配偶者、親御さんも感染している可能性があります。とくに、ご家族に胃がんの方がいる場合は、検査を受けておく意味が大きくなります。お子さんについては、除菌の適応や時期の考え方が成人とは異なるため、小児科と相談しながら判断します。ご家族の分もあわせてご相談ください。
ONE STOP
内視鏡から除菌、判定まで、同じ場所で完結します
検査は消化器内視鏡専門医が担当し、感染診断、除菌治療、除菌判定、その後の定期検査までを一続きで行えます。検査だけ別の施設で受け、治療は別の医院で、という形にならないため、途中で経過が分からなくなることがありません。鎮静剤を用いた検査にも対応しています。
ELIGIBILITY
健診で陽性だった方の道筋を、はじめに整理します
「抗体陽性」という結果を手に来られる方が最も多く、そこから何をすればよいのかが分かりにくいところです。当院では、内視鏡が必要な理由、保険で受けられる範囲、費用と日数の見通しを最初にご説明します。何回の受診でどこまで進むかが分かっていれば、予定も立てやすくなります。
FOLLOW-UP
判定と、その後の検査まで見届けます
除菌薬を飲んで安心してしまい、判定を受けないまま何年も過ぎている方が少なくありません。除菌できたかどうかは、判定をして初めて分かります。当院では判定の時期を診察の場で決め、その後の年1回の内視鏡についても、次回の目安をお伝えして記録に残します。
AFTERCARE
除菌後に出てくる変化にも対応します
除菌の後に胸やけが出る、食欲が増して体重が増える、といった変化は珍しくありません。当院は一般内科として、逆流症状への対応から体重や血糖、脂質の管理まで続けて担当できます。管理栄養士が4人在籍しており、食事の面からのご相談にも応じられます。
診察でご相談ください
健診結果、お薬手帳、過去の内視鏡やバリウム検査の記録をお持ちいただくと話が早く進みます。以前に除菌をしたことがあるか、その時期と判定を受けたかどうかも確認します。胃酸を抑える薬を飲んでいる方は、検査の前に調整が必要になる場合があります。
内視鏡検査で胃の状態と感染を確かめます
予約のうえ内視鏡を行い、胃炎の有無と萎縮の程度、潰瘍やがんがないかを確認します。あわせて感染の有無を調べます。ご希望に応じて鎮静剤を使用します。この検査が、除菌治療に進むための出発点になります。
1週間、薬を飲み切ります
朝夕2回、7日間の内服です。飲み方と起こりうる副作用、途中でやめてはいけない理由、飲酒についての注意をご説明します。副作用が心配な方には、対応の目安をあらかじめお伝えしますので、自己判断で中止せずご連絡ください。
判定を受け、その後の検査につなげます
薬を飲み終えて十分に期間をあけてから、除菌できたかどうかを判定します。成功していれば治療は完了です。菌が残っていた場合は二次除菌へ進みます。そして除菌後も、胃の萎縮の程度に応じて定期的な内視鏡を続けていきます。
除菌薬の服用中に次の症状が出たときは、ご連絡ください
息苦しさ、声のかすれ、意識が遠のくといった症状は、薬に対する強いアレルギー反応の可能性があり、救急要請が必要です。それ以外の症状であれば、自己判断で飲み続けたり中止したりせず、まずご連絡ください。服用と関係なく、黒い便や吐血、みぞおちの強い痛みがあるときも、早めにご相談ください。
先に内視鏡検査が必要です。保険で除菌治療を受けるには、内視鏡で胃炎があることを確認しておく決まりになっています。医学的にも、すでに潰瘍やがんができていないか、萎縮がどこまで進んでいるかを知っておく意味があります。検査の予約から治療開始までの流れは、初回の診察でご説明します。
あります。むしろ症状のない方にこそ意味のある治療です。ピロリ菌による炎症は自覚のないまま進み、その間に胃の粘膜が萎縮していきます。除菌は、いまの不調を取るためではなく、将来の胃がんの危険を下げるために行います。若いうち、萎縮が進む前に行うほど効果が大きいと考えられています。
危険は下がりますが、ゼロにはなりません。すでに萎縮が進んだ胃では、除菌から何年も経ってからがんが見つかることがあります。また除菌後は粘膜の見え方が変わり、病変が分かりにくくなることも知られています。除菌を終えた方こそ、年1回程度の内視鏡を続けていただく意味があります。
朝夕2回、7日間の内服です。最も多い副作用は軟便や下痢で、多くは軽く、飲み終えると落ち着きます。味覚の変化や軽い発疹が出ることもあります。発疹が広がる、高熱が出る、血便が出るといった場合は服用を中止してご連絡ください。判断に迷うときも、自己判断せずご相談ください。
気づいた時点で早めに服用し、次の分との間隔を空けてください。1〜2回の飲み忘れであれば、そのまま最後まで飲み切っていただくのが基本です。何度も飲み忘れた場合や、途中で中断してしまった場合は、成功率が下がるためご連絡ください。飲み方を含めて相談のうえ判断します。
控えていただきます。とくに二次除菌で使うメトロニダゾールは、アルコールと一緒になると顔のほてり、吐き気、動悸などを起こすことがあります。一次除菌の期間中も、副作用の判断がつきにくくなるため飲酒はお控えください。1週間のことですので、この期間だけご協力をお願いしています。
どちらも珍しくない変化です。除菌によって胃の炎症が治まると胃酸の分泌が戻り、一時的に胸やけを感じることがあります。また食欲が回復して体重が増える方もおられます。多くは時間とともに落ち着きますが、症状が続く場合は薬で対応できますし、体重については管理栄養士と一緒に整えることもできます。
感染は幼少期に家庭内で起こることが多いため、ご兄弟や配偶者、親御さんが感染している可能性はあります。ご家族に胃がんの方がおられる場合は、とくに検査をおすすめします。お子さんについては、除菌の適応や時期の考え方が成人と異なりますので、小児科と相談しながら判断します。まずは大人の方からご相談ください。
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