好酸球性食道炎
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎は、アレルギーに関わる白血球(好酸球)が食道の粘膜に集まり、慢性の炎症を起こす病気です。食べ物がつかえる、飲み込みにくい、胃薬を飲んでも胸やけが取れない。こうした症状が少しずつ進むため、「もともと食べるのが遅いだけ」「体質だから」と受け止められたまま、診断まで数年かかることが少なくありません。診断には胃カメラと、その際に行う食道の生検が欠かせません。当院では消化器内視鏡とアレルギー診療の両方を院内で行い、検査から治療、食事の相談までを一続きで担当しています。
当てはまるものがあれば、一度お話をうかがわせてください。好酸球性食道炎かどうかを確かめる手順は決まっており、検査に進むべきかどうかは診察の場で整理できます。
好酸球性食道炎は、1990年代以降に概念が確立した比較的新しい病気で、国内でも報告が増え続けています。30代から50代の男性にやや多く、喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などを併せ持つ方に見られやすいことが知られています。指定難病(好酸球性消化管疾患・指定難病98)にも定められています。
体のほうが食べ方を変えて、症状を隠してしまいます
細かく切る、人より長く噛む、一口ごとに水を飲む、肉やパンを最初から選ばない、食事に時間がかかるので早めに切り上げる。こうした工夫は、多くの場合無意識のうちに身についています。だからご本人は「特に困っていない」と感じ、受診が遅れます。
診察では「何が飲み込みにくいですか」だけでなく、「どのように食べていますか」をうかがいます。食べ方の変化そのものが、食道で起きていることを教えてくれるからです。
胃薬が効かない胸やけは、食道を一度見る理由になります
症状は逆流性食道炎とよく似ていますが、原因は胃酸ではなくアレルギーによる炎症です。酸を抑える薬で改善しない、あるいは内視鏡で逆流の所見が乏しいのに症状が続く場合には、好酸球性食道炎を考える必要があります。
ただし、好酸球性食道炎でも酸分泌抑制薬が効くことがあります。「薬が効いた=逆流性食道炎」とは限らないため、つかえ感や食べ物のつまりを伴う場合は、症状が落ち着いていても一度食道の状態を確かめておくことをおすすめします。
症状の出方は人によって異なり、つかえ感が中心の方もいれば、胸やけだけが続く方もおられます。共通しているのは、少しずつ、長い時間をかけて進むことです。
症状の経過をうかがったうえで検査を選びます。この病気は問診と血液検査だけでは診断できず、内視鏡で食道を観察し、粘膜を採って顕微鏡で調べることが必要です。
| 上部消化管 内視鏡検査 |
診断の中心となる検査です。縦走溝、輪状のしわ、白斑、粘膜のむくみ、狭くなった部分がないかを観察します。ご希望に応じて鎮静剤を用い、眠っている間に検査を受けていただけます。予約制で、院内で実施します。 |
|---|---|
| 食道生検 | 確定診断に欠かせない検査です。内視鏡検査の際に、食道の上のほうと下のほうから複数個所の粘膜を採取します。顕微鏡で高倍率1視野あたり15個以上の好酸球が見られることが診断の目安です。炎症はまだらに分布するため、見た目に異常が乏しくても複数個所から採ります。 |
| 血液・アレルギー検査 | 血液中の好酸球数、総IgE、特異的IgEなどを調べます。これらは診断を決める検査ではありませんが、合併するアレルギー疾患を把握し、治療全体を組み立てるうえで役立ちます。喘息が疑われる場合は、院内で呼気中一酸化窒素(FeNO)検査も行えます。 |
| 似た病気との 区別 |
逆流性食道炎、カンジダ食道炎、薬剤による食道炎、食道アカラシア、食道の腫瘍などを内視鏡で確かめます。胃や腸にも好酸球の炎症が及ぶ好酸球性胃腸炎を疑う症状があれば、あわせて検討します。 |
| 専門施設との連携 | 食道が強く狭くなっており拡張術が必要な場合、通常の治療で炎症が抑えられない場合、小児の方などは、高次医療機関へご紹介します。診断や日常の管理は当院で担当し、必要な場面だけ専門施設にお願いする形も可能です。 |
治療は、炎症を鎮めて症状を取る段階と、その状態を保つ段階に分けて考えます。薬で抑える方法と、原因となる食物を除く方法があり、生活のしやすさや続けやすさを含めて選んでいきます。
| 酸分泌抑制薬 (PPI・P-CAB) |
まず試すことの多い治療です。胃酸を抑える薬ですが、好酸球性食道炎の炎症そのものを和らげる働きも報告されており、一定の割合の方で症状と組織所見の両方が改善します。8週間ほど続けて効果を判断し、内視鏡で確認することもあります。 |
|---|---|
| ステロイドの 局所治療 |
吸入用のステロイドを吸い込まずに飲み込み、食道の粘膜に直接作用させる方法です。全身への影響が少ない一方、国内では好酸球性食道炎に対する保険適用が確立しておらず、実施の可否や方法は個別の判断となります。口や食道のカンジダを防ぐため、服用後のうがいと一定時間の絶飲食が必要です。 |
| 食事療法 (除去食) |
牛乳や小麦など、原因となりやすい食物を一定期間除き、症状と内視鏡所見の変化を見ながら一つずつ戻して原因を絞り込みます。うまくいけば薬に頼らずに炎症を抑えられますが、時間と手間がかかり、自己流では栄養が偏り判定も乱れます。当院では管理栄養士が具体的な献立まで一緒に組み立てます。 |
| 内視鏡的拡張術 | 炎症が長く続いた結果、食道が線維化して細くなった場合に検討します。つかえ感は改善しますが炎症そのものは治らないため、薬物療法や食事療法と組み合わせて行います。専門施設へご紹介します。 |
| 維持治療の 考え方 |
治療をやめると多くの方で炎症が戻ります。症状がない時期にも治療を続ける目的は、食道が硬く細くなるのを防ぐことにあります。どこまで続けるかは、症状、内視鏡所見、生活への負担を見ながら相談して決めます。 |
| 新しい治療 | 2型炎症を抑える生物学的製剤が海外で用いられており、国内でも位置づけが変わりつつあります。使用できる薬や適応は時期によって変わりますので、最新の状況は診察の際にご説明します。 |
医療費の助成を受けられる場合があります
好酸球性食道炎は「好酸球性消化管疾患」として指定難病(98)に定められており、重症度が中等症以上と判断される場合、または一定以上の医療費が続いている場合(軽症高額該当)には、申請により医療費の自己負担に上限が設けられます。申請には難病指定医が作成する臨床調査個人票が必要です。制度の内容や手続きについては、診察の際にご説明します。
ENDOSCOPY
「つかえる」という訴えを、食道の所見まで確かめます
好酸球性食道炎は、生検をしなければ診断できません。当院は消化器内視鏡専門医が検査を担当し、つかえ感や治りにくい胸やけがある方には、内視鏡の見た目が正常に近くても複数個所から生検を行う方針をとっています。鎮静剤を用いた検査にも対応しています。
ALLERGY
消化器とアレルギーを、同じ医師が一続きで診ます
この病気は、消化器の病気であると同時にアレルギーの病気です。当院はアレルギー専門医としての診療も行っており、食道の治療と並行して、喘息や鼻炎、食物アレルギーの評価と管理を同じ場で進められます。呼気中一酸化窒素(FeNO)検査も院内で実施できます。
NUTRITION
除去食は、管理栄養士と一緒に組み立てます
除去食は、始めることよりも続けること、そして正しく判定することが難しい治療です。当院には管理栄養士が4人在籍し、代替食品の選び方、外食や中食との付き合い方、栄養が偏らないための工夫まで、生活に沿った形でご提案します。食物を戻していく時期の記録も一緒に確認します。
KAMPO
残るつかえ感や不安への対応も相談できます
炎症が落ち着いた後も、喉のつかえ感や食事への不安が残ることがあります。当院は漢方専門医としての診療も行っており、標準的な治療を続けたうえで、残る症状に漢方薬を併用する選択肢をご提案できます。標準治療に置き換えるものではなく、補う位置づけとして検討します。
診察でご相談ください
いつから、どのようなものが飲み込みにくいか、水で流し込む習慣があるか、詰まって困った経験があるか、アレルギーの既往、これまでに飲んだ胃薬とその効果をうかがいます。過去の内視鏡検査の結果やお薬手帳をお持ちいただくと判断がしやすくなります。
胃カメラと食道生検を行います
予約のうえ、内視鏡で食道の粘膜を観察し、複数個所から組織を採取します。ご希望に応じて鎮静剤を使用します。生検の結果が出るまでには1〜2週間ほどかかります。検査そのものは、通常の胃カメラと大きく変わりません。
結果をご説明し、治療を選びます
好酸球の数と内視鏡所見、症状を合わせて診断します。診断がついた場合は、薬から始めるか食事療法から始めるかを、生活の状況とご希望を踏まえて相談します。好酸球性食道炎でなかった場合も、症状の原因として何を考えるかをお伝えします。
効果を確かめ、続けられる形に整えます
8週間前後を目安に、症状の変化を確認します。必要に応じて内視鏡と生検で炎症が治まったかを確かめ、そのうえで維持の方法を決めます。狭くなった部分がある場合や治療で炎症が抑えられない場合は、専門施設と連携します。
次の症状があるときは、次回の予約を待たずにご相談ください
唾液も飲み込めない、胸の激しい痛みが続く、呼吸が苦しいといった場合は、ためらわず救急要請または救急外来の受診をしてください。魚の骨や薬のシートなどを飲み込んだ疑いがあるときも同様です。それ以外の症状であれば、まずは外来でご相談いただければ、必要な対応を判断します。
あります。好酸球性食道炎は、内視鏡の見た目がほぼ正常に見える場合があり、生検をしなければ分からないことがあります。つかえ感や食べ物のつまりを繰り返している、酸を抑える薬が効かないといった状況であれば、生検を前提にもう一度検査を検討する価値があります。以前の検査の記録をお持ちのうえ、ご相談ください。
症状は似ていますが、原因が異なります。逆流性食道炎は胃酸の逆流による炎症で、好酸球性食道炎はアレルギーの炎症です。好酸球性食道炎では固形物のつかえ感が目立ち、若い方や男性、アレルギー疾患をお持ちの方に多く見られます。ただし両者は症状だけでは区別できないため、内視鏡と生検で確かめます。
炎症が長く続くと、食道の壁が硬く厚くなり、内腔が細くなっていきます(線維化・狭窄)。そうなると食べ物が詰まりやすくなり、内視鏡での拡張が必要になることがあります。命に関わる病気ではありませんが、進んでからでは元に戻しにくいため、症状のある段階で炎症を抑えておく意味があります。
残念ながら、血液の特異的IgE検査で原因食物を特定できることは多くありません。この病気の反応は、じんましんのようにすぐ出るタイプとは仕組みが異なるためです。原因を知るには、疑わしい食物を一定期間除いて症状と内視鏡所見の改善を確かめ、一つずつ戻していく方法をとります。管理栄養士とともに計画を立てます。
多くの場合、治療をやめると炎症が戻ります。症状がなくても炎症が続いていることがあり、その間に食道が少しずつ細くなっていきます。一方で、一生同じ治療を続けなければならないわけではなく、内視鏡所見や生活への負担を見ながら、量や方法を調整していきます。自己判断での中止は避け、まずはご相談ください。
いいえ。除去食は治療の選択肢の一つで、薬で炎症を抑える方法を選ぶこともできます。また除去食を行う場合も、最終的に除くのは原因となっていた食物だけです。仕事や家庭の状況によって続けやすい方法は変わりますので、どちらを選ぶかは相談のうえで決めていきます。
好酸球性消化管疾患として指定難病に定められており、重症度が中等症以上と判断される場合、または医療費が一定以上続く場合(軽症高額該当)には、申請により自己負担に上限が設けられます。診断がついた段階で、対象になりそうかどうかも含めてご説明します。手続きの窓口はお住まいの自治体です。
ご希望に応じて鎮静剤を使用し、うとうとした状態で検査を受けていただけます。検査後はお休みいただく時間が必要で、当日のお車の運転は控えていただきます。過去に苦しい思いをされた方も少なくありませんので、どのような点が不安か、診察の際に遠慮なくお聞かせください。
TOP