食道がん
食道がん
食道がん・食道内視鏡外来
食道がんは、早い段階ではほとんど症状が出ません。「つかえる」「しみる」といった自覚が現れたときには、すでに進行していることが少なくない一方で、粘膜にとどまる段階で見つかれば内視鏡治療で治せる可能性が高いがんでもあります。当院では消化器内視鏡専門医が、飲酒・喫煙歴や体質から一人ひとりのリスクを整理したうえで、食道の粘膜を丁寧に観察します。
上の項目のうち、上から三つは症状ではなく「リスク」です。食道がんは症状で見つけるより、リスクのある方が症状の出る前に調べておくことで見つかるがんです。
食道がんには大きく二つの組織型があり、原因も、できやすい場所も、背景となる病態も違います。それぞれに応じて、注意すべき点と検査の組み立て方が変わります。
日本の食道がんの大部分を占めるタイプです。飲酒と喫煙が主な原因で、胸の中央付近の食道に多く発生します。早期には平坦でわずかな色調の変化として現れるため、内視鏡で意識して観察しなければ見落とされうる病変です。
胃酸の逆流を背景に、食道と胃のつなぎ目付近に発生するタイプ。欧米で多いとされてきましたが、日本でも逆流性食道炎や肥満の増加に伴って注目されています。胸やけを長年抱えてきた方では、こちらの経路を意識した観察が必要です。
逆流によって食道下部の粘膜が胃に似た粘膜に置き換わった状態で、食道腺癌の背景となります。日本では範囲の短いものが大半で、その場合のがん化リスクは高くありませんが、範囲が広い場合は定期的な確認の対象になります。
がんが粘膜にとどまっている段階。ほぼ無症状ですが、この段階で見つかれば内視鏡による切除で食道を残したまま治療できる可能性があります。つまり、症状ではなく検査でしか見つけられない段階こそが、最も治療の選択肢が広い時期です。
食道にヨード液を散布すると、正常な粘膜は茶色に染まり、異常のある部分は染まらずに残ります。この不染帯が多数散らばって見える状態は、食道がんが多発しやすい体質を反映するとされ、その後の検査間隔を考えるうえでの手がかりになります。
食道と、咽頭・喉頭・口腔は、飲酒や喫煙という同じ危険因子にさらされます。そのため片方にがんが見つかった方では、もう片方にも生じやすいことが知られています。当院の内視鏡検査では、食道だけでなく咽頭の観察もあわせて行います。
お酒で赤くなる体質は、リスクを見積もる大きな手がかりです
アルコールが分解される過程で生じるアセトアルデヒドは、食道の粘膜を傷つける物質です。日本人には、この分解酵素のはたらきが生まれつき弱い体質の方が一定の割合でいらっしゃいます。少量の飲酒で顔が赤くなる、あるいは若い頃は赤くなったけれど、飲み続けるうちに赤くならなくなったという方は、飲酒と喫煙が重なったときに食道扁平上皮癌のリスクが大きく高まることが知られています。体質そのものは変えられませんが、リスクを知ったうえで飲酒量を調整し、検査を受けておくことはできます。
早期の食道がんは、症状では見つかりません
つかえ感や体重減少といった症状は、がんが食道の内腔を狭めるほど大きくなってから現れます。逆に言えば、症状のない時期に内視鏡で見つかった病変ほど、治療の負担は軽く済みます。飲酒・喫煙歴があり、これまで一度も胃カメラを受けたことがない方は、症状の有無にかかわらず一度確認しておく意味があります。
問診でうかがったリスクと症状をもとに、必要な検査を選びます。食道は早期病変が見つけにくい臓器のため、観察の仕方そのものが重要になります。
| 上部消化管内視鏡検査 (胃カメラ) |
食道がんを見つける中心となる検査です。咽頭から食道、胃、十二指腸までを観察します。食道の早期病変はわずかな色調やきめの変化として現れるため、空気量や観察の順序に注意しながら、食道を丁寧に見ていきます。 |
|---|---|
| 画像強調観察 (BLI、LCIなどの特殊光観察) |
粘膜の表面や毛細血管を強調して観察する方法です。早期の扁平上皮癌は、この観察で褐色調の領域として浮かび上がることが多く、通常の白色光だけの観察に比べて発見の手がかりが増えます。 |
| ヨード染色 (ルゴール散布) |
疑わしい所見があるとき、病変の範囲や多発の有無を確かめるために行います。染まらない部分(不染帯)として描出され、生検すべき場所の判断に役立ちます。散布時に一時的に胸のしみる感じが出ることがあり、あらかじめご説明します。 |
| 生検・病理検査 | 疑わしい部位から組織の一部を採取し、顕微鏡で確認します。がんかどうか、どの組織型かを確定するために欠かせない検査です。 |
| 胃の評価・ピロリ菌検査 | 食道の観察とあわせて、胃粘膜の萎縮の程度やピロリ菌感染の有無を確認します。食道がんと胃がんは危険因子が一部重なるため、同時に評価しておく意義があります。 |
| 血液検査・腹部超音波検査 | 貧血や栄養状態、肝臓など他の臓器の状態を確認します。長期の飲酒歴がある方では、肝臓の評価もあわせて行う意味があります。 |
| 進行度を調べる検査 | がんが見つかった場合、深さや広がり、リンパ節・他臓器への転移を調べるためにCTなどの検査が必要になります。これらは治療を担当する専門医療機関で行いますので、速やかにご紹介します。 |
食道がんの治療は、深さと広がりによって大きく変わります。当院は見つける段階と、治療後を支える段階を担い、治療そのものは連携する専門医療機関にお願いする形をとります。
| 内視鏡治療 (EMR・ESD) |
がんが粘膜にとどまる表在癌では、内視鏡で病変を切除する治療が選択できます。食道を残せるため、その後の生活への影響が小さいことが大きな利点です。適応の判断と治療は専門医療機関で行われます。 |
|---|---|
| 外科手術 | 粘膜より深く進んだ場合の標準的な治療のひとつです。食道を切除し、胃などを用いて再建します。手術前に薬物療法を組み合わせることもあります。 |
| 化学放射線療法 | 放射線と薬物療法を組み合わせる治療です。手術と並ぶ選択肢となる場合や、手術が難しい場合に選ばれます。食道の機能を残せる可能性がある点が特徴です。 |
| 薬物療法 | 進行した場合や再発した場合に、抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療が行われます。治療方針は病期と全身状態をふまえて決まります。 |
| 治療後の経過観察 | 食道がんは、治療後に食道の別の場所や咽頭・喉頭に新たながんが生じることがあります。そのため治療が終わった後も、定期的な内視鏡による確認が重要です。専門医療機関と役割を分け、通院しやすい形で当院が継続して担うことができます。 |
| 栄養・体調の支え | 治療中・治療後は、食べる量や食べ方が変わり、体重が落ちやすくなります。当院では管理栄養士による栄養指導を行える体制があり、また漢方専門医として、食欲低下や体力の落ち込みに対する漢方薬の併用もご相談いただけます。 |
すべてを一度に変える必要はありません。どの項目がご自身にとって効果が大きいかは、飲酒歴・喫煙歴・体質によって異なりますので、診察のなかで優先順位を一緒に整理します。
ENDOSCOPY
消化器内視鏡専門医が、食道を意識して観察します
当院では消化器内視鏡専門医・消化器病専門医が内視鏡検査を担当します。食道の早期病変は、胃の観察のついでに通り過ぎてしまうと見つかりません。挿入時と抜去時の両方で食道の粘膜を確認し、画像強調観察を併用しながら、咽頭まで含めて観察します。
RISK ASSESSMENT
体質と生活歴から、検査の必要性と間隔を組み立てます
「何歳から、どのくらいの間隔で受けるべきか」に一律の答えはありません。飲酒で赤くなる体質か、飲酒量と喫煙歴はどうか、頭頸部がんの既往があるか。こうした条件を整理したうえで、その方に見合った検査の間隔をご提案します。
NETWORK
見つかったときは速やかに、治療後は当院で継続して
がんが疑われた場合は、精密検査と治療を担う専門医療機関へ速やかにご紹介します。そして治療が一段落した後は、定期的な内視鏡と全身の管理を、かかりつけ医として継続して担います。紹介して終わりにはしません。
KAMPO & NUTRITION
漢方専門医と管理栄養士が、治療を支える側面から関わります
治療中の食欲低下や体力の低下、体重減少は、生活の質にも治療の完遂にも影響します。当院は漢方専門医としての診療を行い、管理栄養士による栄養指導の体制も備えています。標準治療を担当する医療機関と役割を分けながら、日常を支える部分をお引き受けします。
症状とリスクをうかがう
いつからどのような症状があるか、飲酒量と飲酒歴、赤くなる体質かどうか、喫煙歴、これまでの検査歴、ご家族のがんの既往をうかがいます。健診の結果や、以前受けた内視鏡検査の記録をお持ちいただくと、比較ができて診療が進めやすくなります。
内視鏡検査を行う
日程を調整して検査を実施します。咽頭・食道・胃・十二指腸を観察し、疑わしい所見があれば生検やヨード染色を行います。検査の受け方についてはご希望をうかがったうえで決めますので、不安な点は遠慮なくお伝えください。
結果をご説明する
画像をお見せしながら、所見の意味と次に必要なことをご説明します。生検を行った場合は病理の結果をあわせてお伝えします。異常がなかった場合も、リスクに応じて次回の検査時期の目安をお示しします。
紹介、あるいは経過観察へ
がんが疑われる場合は専門医療機関へ速やかにご紹介します。経過観察となった場合は、飲酒・喫煙の見直しを含めて生活面の調整を行いながら、決めた間隔で確認を続けます。
次の症状があるときは、様子を見ずにご相談ください
これらは食道がん以外の病気でも起こりますが、いずれも原因を確かめておくべき症状です。とくに「つかえる」という症状が続く場合は、市販薬で様子を見る対象ではありません。
飲酒歴や喫煙歴のある方には、症状がなくても一度受けていただく意味があります。食道がんは早期には症状が出ないため、症状を待って受診すると進行した状態で見つかることが多いのです。逆に、粘膜にとどまる段階で見つかれば内視鏡治療で食道を残せる可能性があります。「何もないことを確かめる」ことも検査の目的のひとつです。
一律の基準はなく、リスクの高さによって変わります。飲酒で赤くなる体質で飲酒・喫煙の習慣がある方、頭頸部がんの既往がある方、以前の検査でヨード不染帯を多数指摘された方などは、間隔を詰めて確認したほうがよい場合があります。前回の検査所見とご自身の背景をうかがったうえで、目安をお示しします。
バリウム検査は食道の形の変化をとらえる検査で、ある程度進行した病変には有用ですが、粘膜の色調の変化としてしか現れない早期の食道がんを見つけるのは苦手です。リスクのある方には、粘膜を直接観察できる内視鏡検査をおすすめしています。
体質そのものは生まれつきのもので変わりません。飲み続けるうちに赤くならなくなるのは、体が慣れて反応が目立たなくなっただけで、粘膜に負担のかかる状態は続いています。むしろ「昔は赤くなったが今は飲める」という方は、飲酒量が増えやすいぶん注意が必要です。変えられるのは体質ではなく飲む量のほうです。
バレット食道は食道腺癌の背景となりますが、日本人に多い範囲の短いタイプでは、がんが発生する頻度は高くありません。過度に心配される必要はない一方で、範囲が広い場合や逆流症状が続いている場合は、定期的に確認しておく対象になります。まずは範囲と逆流の程度を確かめることから始めます。
治療は入院設備のある専門医療機関で行っていただく必要があるため、速やかにご紹介します。当院の役割は、早い段階で見つけること、そして治療後に定期的な内視鏡や日常の体調管理を担うことです。治療の前後を通じて、窓口としてお付き合いできる形を考えています。
ご相談ください。食道の治療後は、食べられる量や食べ方が変わり、体重が落ちやすくなります。当院では管理栄養士が具体的な食事の組み立てをお手伝いし、あわせて漢方専門医として、食欲低下や体力の低下に対する漢方薬の併用も検討します。治療を担当されている医療機関の方針をうかがったうえで進めますので、お薬手帳や診療情報提供書をお持ちください。
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