クローン病
クローン病
クローン病
クローン病は、口から肛門までの消化管のどこにでも炎症が起こりうる、原因のはっきりしない慢性の病気です。10代後半から20代で発症することが多く、腹痛、下痢、体重減少といった症状が数か月にわたって続きます。若い方に起こるため「食あたり」「ストレス」「過敏性腸症候群」として様子を見られ、診断まで時間がかかることが少なくありません。近年は治療の選択肢が大きく広がり、炎症を抑えた状態を長く保てるようになりました。当院では、診断の入り口となる大腸内視鏡と、診断後の食事や日常の管理を担当し、専門施設と役割を分けながら継続的に関わっています。
とくに、体重減少、発熱、血便、夜間にも症状が出るといった点が重なる場合は、早めの検査をおすすめします。血液検査と便の検査で、方向性をつけられることが多くあります。
若い方の腹痛や下痢は、ありふれた症状です。そのため、器質的な病気があっても機能的な問題として扱われ、経過を見るうちに月日が過ぎてしまうことがあります。炎症が長く続くと腸が硬く細くなり、後から元に戻すことが難しくなります。
「ストレスのせい」で片づけてはいけない症状があります
体重が減っている、熱がある、血便が出る、夜中に腹痛や下痢で目が覚める、貧血を指摘された。これらは機能的な腸の問題では説明のつきにくい症状です。一つでも当てはまる場合は、腸そのものに炎症がないかを確かめる必要があります。
過敏性腸症候群は、こうした所見がないことを確認したうえで初めて診断される病気です。順序が逆になっていないかを、一度立ち止まって考える価値があります。
肛門の症状が、最初のサインになることがあります
クローン病では、腹部の症状より先に痔瘻や肛門周囲膿瘍が現れることがあります。若い方が痔瘻を繰り返している場合、単なる痔として処置を重ねるのではなく、背景にこの病気がないかを考える必要があります。
肛門の症状は相談しにくく、受診が遅れやすい部分でもあります。繰り返している、治りにくい、複数の場所にできるといった場合は、腸の検査も含めてご相談ください。
炎症の起こる場所によって症状が異なります。同じ病名でも経過は人によって大きく違い、治療の選び方もそれに応じて変わります。
まず腸に炎症があるかどうかを確かめ、あればその範囲と程度を評価します。似た病気との区別も、この段階で重要になります。
| 問診と診察 | 症状がいつから、どのように続いているか、体重の変化、発熱、血便、夜間の症状の有無をうかがいます。肛門の症状、口内炎、関節や皮膚、目の症状も確認します。喫煙の有無や、痛み止めの使用状況も重要な情報になります。 |
|---|---|
| 血液検査 | 炎症の程度(CRPなど)、貧血の有無、栄養状態を示すアルブミン、鉄やビタミンの状態を調べます。腸に炎症が続いている方では、これらの値に変化が現れることが多く、経過を追ううえでも指標になります。 |
| 便の検査 | 感染性腸炎との区別のために便培養を行います。あわせて、便中カルプロテクチンという検査で腸の炎症の程度を評価できます。内視鏡の前に、器質的な炎症があるかどうかの見当をつけるのに役立ちます。 |
| 大腸内視鏡検査 | 診断の中心となる検査です。大腸全体に加え、小腸の終わりの部分(回腸末端)まで観察し、縦に走る潰瘍や敷石のような粘膜の変化を確認します。複数個所から組織を採取し、顕微鏡で調べます。ご希望に応じて鎮静剤を用います。 |
| 似た病気との 区別 |
腸結核、腸型ベーチェット病、痛み止めによる腸の潰瘍、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、悪性リンパ腫などとの区別が必要です。これらは治療がまったく異なるため、内視鏡所見と組織の検査、血液検査を組み合わせて慎重に判断します。 |
| 小腸の評価と 専門施設との連携 |
小腸の広い範囲を調べるには、カプセル内視鏡やバルーン内視鏡、造影を用いた画像検査が必要です。これらは専門施設で行います。診断が確定した場合や、その可能性が高い場合には、治療方針の決定も含めて速やかにご紹介します。 |
治療は、炎症を鎮める段階と、その状態を長く保つ段階に分かれます。近年は症状が消えることだけでなく、内視鏡で見た粘膜が治ることを目標に置くようになり、長期的な経過が改善してきました。
| 栄養療法 | 成分栄養剤などを用いて腸を休ませ、栄養状態を改善する治療です。日本では以前から重視されてきました。薬による治療と組み合わせることも、単独で行うこともあります。継続には工夫が必要なため、当院では管理栄養士が具体的な取り入れ方を一緒に考えます。 |
|---|---|
| 薬による 寛解導入 |
炎症の程度に応じて、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、抗菌薬などを用います。ステロイドはよく効きますが、長く続ける薬ではなく、症状が落ち着いたら次の段階に移ります。減量の途中で再燃する場合には、別の治療を検討します。 |
| 維持治療 | 落ち着いた状態を保つために、免疫調節薬や生物学的製剤を用います。抗TNF-α抗体をはじめ、作用の仕組みが異なる複数の選択肢があり、内服薬という形の薬も使えるようになりました。導入と選択は専門施設で行われます。 |
| 狭窄・瘻孔への 対応 |
腸が細くなって通過が悪い場合には、内視鏡で広げる処置や手術が検討されます。瘻孔や膿瘍では、薬による治療と外科的な処置を組み合わせます。手術は最後の手段ではなく、生活の質を保つために適切な時期に行うという考え方が主流です。 |
| 禁煙 | クローン病では、喫煙が病気を悪化させ、手術や再燃の危険を高めることがはっきりしています。禁煙は治療の一部です。当院では禁煙の相談にも応じており、薬を使った治療と同じ重みで取り組んでいただくようお話ししています。 |
| 日常の管理 | 定期的な血液検査と便の検査で炎症の程度を確認し、栄養状態や貧血、骨の健康、感染への注意を継続して見ていきます。生物学的製剤や免疫調節薬を使用している方では、感染症への備えやワクチンについても相談が必要です。 |
医療費の助成を受けられます
クローン病は指定難病に定められており、重症度が一定以上と判断される場合、または医療費が一定以上続いている場合(軽症高額該当)には、申請により医療費の自己負担に上限が設けられます。申請には難病指定医が作成する臨床調査個人票が必要です。若いうちに発症し、長く治療を続ける病気ですので、診断がついた段階で制度の内容を確認しておくことをおすすめします。手続きについては診察の際にご説明します。
COLONOSCOPY
診断の入り口を、確実に押さえます
消化器内視鏡専門医が大腸内視鏡を担当し、小腸の終わりの部分まで観察して組織を採取します。若い方の長引く腹痛や下痢を機能的な問題と決めつけず、炎症の有無を確かめることを重視しています。鎮静剤を用いた検査にも対応しています。
NUTRITION
食事の悩みに、管理栄養士4人体制で向き合います
この病気で最も日常的に困るのが食事です。何を食べてよいか、外食や飲み会はどうするか、栄養剤をどう続けるか。当院には管理栄養士が4人在籍し、一般論ではなく生活に沿った形で組み立てます。学生の方、仕事の忙しい方それぞれの事情に合わせて相談できます。
SHARED CARE
専門施設と役割を分け、日常の診療を担います
治療方針の決定や生物学的製剤の導入、手術は専門施設の役割です。一方、定期的な血液検査や便の検査、栄養と貧血の管理、感染への備え、体調が崩れたときの初期対応は、通いやすい場所で行えるほうが現実的です。その部分を当院が担当します。
LIFE STAGE
学業や仕事、これからの生活を含めて相談できます
若いうちに発症し、長く付き合う病気です。学校や職場への伝え方、就職、結婚や妊娠、禁煙といった話題は、病気の話と切り離せません。診察の中で、こうした相談にも時間を取ります。抱え込まずにお話しいただければと考えています。
診察でご相談ください
症状の経過、体重の変化、発熱や血便の有無、肛門の症状、口内炎や関節・皮膚の症状をうかがいます。お薬手帳、健診結果、これまでの検査記録、他院の紹介状をお持ちいただくと判断がしやすくなります。体重の推移が分かる記録があると役立ちます。
血液・便の検査で、炎症の有無を確かめます
炎症の程度、貧血、栄養状態を調べ、便の検査で感染性腸炎を除外し、腸の炎症の程度を評価します。この段階で、内視鏡に進むべきかどうかの判断がおおむねつきます。結果の一部は当日ご説明できます。
大腸内視鏡で診断を進めます
予約のうえ、大腸全体と小腸の終わりの部分を観察し、複数個所から組織を採ります。結果が出るまでには1〜2週間ほどかかります。クローン病が疑われる場合は、小腸の評価と治療方針の決定のため、専門施設へご紹介します。
診断後は、日常の診療を分担します
専門施設で治療方針が決まった後は、定期的な検査、栄養と食事の相談、貧血や感染への対応、体調が崩れたときの初期対応を当院で担当できます。難病の医療費助成についても、手続きを含めてご案内します。
次の症状があるときは、次回の予約を待たずにご相談ください
おなかの激しい痛みが続く、意識がもうろうとする、冷や汗を伴って血圧が下がるといった場合は、ためらわず救急要請をしてください。免疫を抑える治療を受けている方では、感染症が急速に進むことがあります。発熱時の対応については、あらかじめ具体的な目安をお伝えしますので、迷ったときはご連絡ください。
どちらも腸に慢性の炎症が起こる病気ですが、潰瘍性大腸炎は大腸に限られ、炎症が直腸から連続して広がります。クローン病は口から肛門までどこにでも起こり、飛び飛びに、腸の壁の深いところまで炎症が及びます。肛門の病変や狭窄、瘻孔が生じやすい点も違いです。治療の選び方も一部異なります。
現在のところ、完全に治す治療法はありません。ただし、炎症を抑えた状態を長く保つことは十分に可能になっており、多くの方が学業や仕事を続けておられます。目標は「治す」ことではなく、「症状のない状態を保ち、腸のダメージを防ぐ」ことです。そのために、落ち着いている時期にも治療を続けます。
一律の禁止事項があるわけではありません。一般に脂肪の多いもの、香辛料、アルコール、食物繊維の多いものは症状を強めることがあり、狭窄がある方では繊維の多い食品に注意が必要です。ただし過度に制限すると栄養が不足します。時期と状態によって適切な食べ方が変わりますので、管理栄養士と一緒に決めていきましょう。
必須ではなく、病状や治療方針によって位置づけが変わります。薬による治療が中心になっている方も多くおられます。ただし、腸を休ませて栄養状態を整える効果は確かなもので、うまく取り入れられれば助けになります。味や続けにくさが問題になることが多いので、飲み方の工夫も含めてご相談ください。
狭窄で食べ物が通りにくい、瘻孔や膿瘍があるといった場合には手術が検討されます。治療が進んだ現在でも、一定の割合の方が経験されます。ただし手術は「治療の失敗」ではなく、生活の質を保つために適切な時期に行う選択肢という考え方が主流です。手術後も、再発を防ぐために薬による治療を続けます。
できます。大切なのは、炎症が落ち着いた状態で妊娠を迎えることです。活動期に妊娠すると、母体にも赤ちゃんにも影響が出やすくなります。使用できる薬、続けるべき薬もありますので、自己判断で中止せず、計画の段階から主治医とご相談ください。当院でも、専門施設と連携しながらご相談に応じます。
影響します。クローン病では、喫煙が再燃や手術の危険を高めることがはっきり示されています。薬を飲みながら喫煙を続けることは、治療の効果を打ち消してしまいかねません。禁煙は治療の一部だとお考えください。難しさは承知していますので、方法も含めて一緒に取り組みましょう。
通えます。治療方針は専門施設で決めていただき、定期的な血液検査や便の検査、栄養と食事の相談、貧血や感染への対応、体調が崩れたときの初期対応を当院で担当する形が可能です。通院の負担を減らしながら、必要なときには速やかに専門施設へ戻れるよう連携します。
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