SLE
SLE
SYSTEMIC LUPUS ERYTHEMATOSUS
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデスは、本来は細菌やウイルスに向かうはずの免疫が自分自身の組織を攻撃してしまう病気です。皮膚、関節、腎臓、血液、神経など、全身のどこにでも症状が出るため、「疲れやすいだけ」「更年期のせい」と考えられたまま診断まで時間がかかることが少なくありません。当院では、原因のはっきりしない発熱や関節痛、健診での異常値をきっかけに必要な検査を行い、専門医療機関と役割を分けながら診療にあたっています。
当てはまるものがあれば、症状が軽いうちにお話をうかがわせてください。SLEかどうかを確かめる手順は決まっており、検査を進めるべきかどうかは診察の場で整理できます。
国内では、全身性エリテマトーデスで医療費助成を受けている方が約6万6千人おられます(令和5年度・特定医療費受給者証所持者数)。指定難病のなかでも患者数の多い病気です。男女比はおよそ1対9で女性に多く、20代から40代での発症が目立ちますが、年齢を問わず起こり得ます。
一つひとつの症状は、ありふれたものです
だるさ、微熱、関節の痛み、抜け毛。どれも単独では珍しくない症状で、それぞれ別の科で相談すると、別々の説明がついてしまうことがあります。SLEは、こうした症状が同じ時期に、重なって、長く続くところに特徴があります。
診断は、症状の組み合わせと血液・尿の検査所見を合わせて判断します。皮膚だけ、関節だけを見ていては見つかりにくいため、全身を一度に見渡して整理することが必要です。
抗核抗体が陽性というだけでは、診断にはなりません
抗核抗体(ANA)は、SLEのほぼ全例で陽性になる一方、健康な方でも一定の割合で陽性になります。とくに低い抗体価では、症状のない方にもしばしば見られます。つまり「陽性=病気」ではありません。
大切なのは、症状があるかどうか、そして抗DNA抗体や抗Sm抗体といった特異性の高い自己抗体、補体の低下、尿や血球の異常が伴っているかどうかです。陽性と言われて不安を抱えたままにせず、一度整理にお越しください。何もなければ「今は心配ない」とお伝えできます。
SLEは全身の病気ですが、現れ方は人によって大きく異なります。皮膚と関節だけの方もいれば、腎臓や神経に及ぶ方もおられます。どの臓器に炎症があるかによって、必要な検査も治療の強さも変わります。
症状の経過をうかがったうえで、必要な検査を選びます。まず感染症や甲状腺の病気など、似た症状を起こす他の原因を確かめ、そのうえで自己抗体と臓器の状態を調べるという順序で進めます。
| 抗核抗体 (ANA) |
SLEを考えるときの出発点になる検査です。SLEではほぼ全例で陽性になるため、陰性であればSLEの可能性はかなり低くなります。一方で陽性というだけでは診断にならず、抗体価と染色パターン、症状とあわせて判断します。 |
|---|---|
| 自己抗体・補体 | 抗DNA抗体、抗Sm抗体はSLEに特異性の高い検査です。抗SS-A/SS-B抗体、抗RNP抗体は他の膠原病との区別や、妊娠時の注意点を知るうえで重要になります。補体(C3・C4・CH50)の低下は、病気の勢いを示す手がかりになります。 |
| 尿検査・腎機能 | ループス腎炎を見逃さないための、最も基本的で欠かせない検査です。尿蛋白、尿潜血、尿沈渣を確認し、必要に応じて尿蛋白/クレアチニン比で蛋白の量を評価します。自覚症状がない時期にこそ意味があります。 |
| 血算・生化学 | 白血球やリンパ球、血小板の減少、貧血の有無を確認します。肝機能、腎機能、炎症の指標もあわせて調べ、他の病気との区別と、治療中の副作用の確認に用います。 |
| 抗リン脂質抗体 | ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体などを調べます。陽性の場合は血栓や妊娠合併症の危険が高まるため、生活上の注意や妊娠を考える際の方針が変わります。 |
| 専門施設との連携 | SLEが強く疑われる場合、腎生検が必要な場合、腎臓・神経・心肺に及ぶ活動性の高い病態が疑われる場合は、膠原病・リウマチの専門医療機関へ速やかにご紹介します。診断と治療方針の決定は専門施設で行うことを基本としています。 |
治療は、炎症を鎮めて症状を落ち着かせる段階と、その状態を保ちながら薬の量を減らしていく段階に分けて考えます。どの臓器にどの程度の炎症があるかによって選ぶ薬が変わるため、診断を正確につけることが出発点になります。
| ヒドロキシクロロキン | SLEの治療の土台となる薬で、特別な事情がない限り多くの方に長く続けていただきます。皮膚や関節の症状を和らげるだけでなく、再燃を減らし、臓器障害の蓄積を抑えることが知られています。網膜への影響を確認するため、開始前と定期的な眼科受診が必要です。 |
|---|---|
| ステロイド | 炎症が強いときに、短期間で鎮めるために使います。効果は高い一方、長く続けると骨粗鬆症、糖尿病、感染症、動脈硬化といった副作用が問題になります。減量の見通しを立てながら使い、できるだけ少ない量で維持することを目指します。 |
| 免疫抑制薬 | ステロイドを減らすと再燃してしまう場合や、腎臓など重要な臓器に炎症が及ぶ場合に用います。ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、タクロリムスなどがあり、定期的な血液検査で血球や肝腎機能を確認しながら継続します。 |
| 生物学的製剤など | 従来の薬で炎症が十分に抑えられない場合の選択肢です。導入は専門施設で行い、状態が安定した後の継続や経過観察を当院で分担できる場合があります。 |
| 紫外線対策・生活 | 紫外線は皮膚症状だけでなく全身の再燃の引き金になります。日焼け止め、帽子、衣類での遮光を一年を通じて続けてください。喫煙は薬の効きを弱め、動脈硬化の危険も高めるため、禁煙は治療の一部と考えます。 |
| 感染症の予防 | 免疫を抑える治療中は、感染症が最も注意すべき合併症になります。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン、体調不良時の早めの受診が重要です。治療内容によっては生ワクチンを避ける必要があり、接種の可否は個別に判断します。 |
医療費の助成を受けられる場合があります
全身性エリテマトーデスは指定難病に定められており、重症度の基準を満たす場合、または一定以上の医療費が続いている場合(軽症高額該当)には、申請により医療費の自己負担に上限が設けられます。申請には難病指定医が作成する臨床調査個人票が必要です。制度の内容や手続きの進め方については、診察の際にご説明します。
SCREENING
「原因がわからない不調」を、内科として一度に整理します
だるさ、微熱、関節痛、健診の異常値。それぞれ別の科で相談すると、全体像が見えにくくなることがあります。当院では、まず甲状腺、貧血、感染症、薬の影響といった頻度の高い原因を確かめたうえで、必要なら自己抗体と尿の検査に進みます。膠原病かどうかを判断する材料を、一度の受診でそろえることを目指しています。
CO-MANAGEMENT
専門施設と役割を分け、通いやすさを保ちます
診断の確定、腎生検、治療方針の決定や強い治療の導入は、膠原病・リウマチの専門医療機関が担います。一方、状態が安定している時期の処方、月々の血液検査と尿検査、副作用や感染症への対応などは、通院しやすい当院で分担できる場合があります。どこで何を診るのかをはっきりさせておくことを大切にしています。
COMORBIDITY
長く付き合ううえでの合併症にも、内科として目を配ります
SLEの治療が長くなると、骨粗鬆症、脂質異常症、高血圧、糖尿病、動脈硬化といった問題が重なってきます。これらは病気そのものと同じくらい、その後の生活を左右します。当院は一般内科として、こうした併存疾患の管理、予防接種、健診結果の解釈まで含めて継続的に対応します。
NUTRITION
食事の悩みには、管理栄養士が個別に対応します
ステロイドを使っている時期は、体重の増加、血糖や血圧の上昇、骨の弱まりが気になります。当院には管理栄養士が在籍し、減塩、たんぱく質やカルシウムの取り方、間食との付き合い方など、生活に沿った形で相談に応じます。腎臓に炎症がある方では、その時期に合わせた食べ方をご提案します。
KAMPO
標準的な治療を土台に、残る症状への対応も相談できます
炎症が落ち着いた後も、疲れやすさ、冷え、手指のこわばり、気分の落ち込みが残ることがあります。当院は漢方専門医としての診療も行っており、標準的な治療を続けたうえで、残る症状に漢方薬を併用する選択肢をご提案できます。標準治療に置き換えるものではなく、あくまで補う位置づけとして検討します。
診察でご相談ください
症状がいつから、どのような形で続いているか、皮疹や脱毛、日光との関係、これまでに受けた検査や治療についてうかがいます。過去の血液検査や健診の結果、お薬手帳をお持ちいただくと判断がしやすくなります。他院で診断を受けている方は、紹介状があればご持参ください。
血液と尿の検査で、全身の状態を確かめます
血球の減少や炎症の程度、腎臓の状態を確認し、あわせて抗核抗体などの自己抗体を調べます。甲状腺の病気や感染症など、似た症状を起こす他の原因もこの段階で確かめます。結果が出るまでには数日から1週間ほどかかります。
結果をご説明し、方針を決めます
検査の意味を一つずつご説明します。SLEが疑われる場合は、確定診断と治療方針の決定のため、膠原病・リウマチの専門医療機関へご紹介します。SLEらしくない場合も、症状の原因として何を考え、次に何を確かめるかをお伝えします。
安定した後の通院を分担します
専門施設で治療方針が決まり、状態が落ち着いた後は、日常の処方と定期的な血液・尿検査を当院で担当できる場合があります。再燃の兆しを早くつかむこと、副作用と感染症に備えること、そして治療を長く続けられる形に整えることが、この時期の目的です。
次の症状があるときは、次回の予約を待たずにご相談ください
けいれん、意識がもうろうとする、片側の手足が動かない、突然の激しい胸痛や呼吸困難といった場合は、ためらわず救急要請をしてください。それ以外の症状であれば、まずは外来でご相談いただければ、必要な対応を判断します。
それだけでは判断できません。抗核抗体は健康な方でも一定の割合で陽性になり、とくに低い抗体価では珍しくありません。大切なのは、症状があるかどうか、抗DNA抗体などの特異性の高い自己抗体や補体の低下、尿や血球の異常を伴っているかどうかです。診察と追加の検査で整理できますので、不安を抱えたままにせずご相談ください。
現在の医療では、薬で完全に治しきることは難しいと考えられています。ただし治療によって症状のない状態を長く保つことは十分に可能で、多くの方が仕事や学業、妊娠・出産を含めた生活を続けておられます。目標は「治す」ことよりも、「炎症のない状態をいかに長く保ち、臓器の傷みを積み重ねないか」に置かれます。
あります。とくにヒドロキシクロロキンは、症状のない時期に続けることで再燃を減らし、臓器の障害が積み重なるのを抑えることが知られています。自己判断での中断は再燃の引き金になります。減量や中止を考える場合は、検査所見をふまえて相談のうえで判断しますので、まずはご相談ください。
可能です。ただし、病気の勢いが落ち着いている時期に、計画的に進めることが前提になります。薬のなかには妊娠前に変更が必要なものがあり、一方で妊娠中も続けたほうがよい薬もあります。また、抗SS-A抗体や抗リン脂質抗体を持つ方では、妊娠中に特別な注意が必要です。妊娠を考え始めた段階で、早めに主治医とご相談ください。
大切です。紫外線は皮膚の発疹だけでなく、全身の症状の再燃を引き起こすことがあります。曇りの日や冬でも紫外線は届きますので、一年を通じて日焼け止めを使い、帽子や衣類でも遮光してください。屋内でも窓際の光には注意が必要です。
原因はまだ完全にはわかっていませんが、遺伝的な素因を背景に、紫外線、感染、女性ホルモン、一部の薬などが関わって発症すると考えられています。ストレスや疲労が症状を強める要因になることはありますが、それだけで起こる病気ではありません。「気の持ちよう」で片づけず、体に起きている炎症そのものを評価することが必要です。
標準的な治療を続けたうえで、残る症状に漢方薬を併用することは選択肢になります。ただし自己判断での使用はおすすめできません。とくに免疫を高めるとうたう健康食品には、症状を悪化させる可能性が指摘されているものがあります。市販薬を含め、使っているものがあれば診察の際にお知らせください。ご希望があれば、適否を診察のうえで判断します。
状態が安定している方であれば、日常の処方と定期的な血液・尿検査を当院で担当し、必要な時期に専門施設へつなぐという形をとれます。合併症の管理や予防接種、体調を崩したときの初期対応もお引き受けします。まずは現在の治療内容がわかる資料をお持ちのうえ、ご相談ください。
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