不眠症
不眠症
INSOMNIA
不眠症・眠れないというお悩み
眠れない夜が続くと、日中の集中力や気分、体調にまで影響が及びます。不眠は「気の持ちよう」ではなく、原因を確かめて対処すべき医学的な問題です。背景には、生活リズムや心配ごとだけでなく、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、甲状腺の病気、痛みやかゆみ、飲んでいる薬の影響が隠れていることもあります。当院では、まず眠れない理由を整理したうえで、睡眠習慣の調整を土台に、必要な方には薬を「始め方」と「やめ方」まで含めてご提案しています。
当てはまるものがあれば、慢性化する前にお話をうかがわせてください。不眠は続くほど「眠れないこと自体への不安」が加わり、抜け出しにくくなります。早い時期であれば、薬に頼らない方法だけで整うことも少なくありません。
不眠症とは、眠る環境が整っているにもかかわらず寝つけない・途中で目が覚めるといった症状があり、そのために日中の心身の調子に支障が出ている状態を指します。目安として、週に3回以上の症状が3か月以上続く場合を慢性の不眠症として扱います。日本の成人では、およそ5人に1人が何らかの不眠症状を抱えているとされ、決して珍しいものではありません。
大切なのは睡眠時間の長さではなく、日中の状態です
必要な睡眠時間には大きな個人差があり、年齢とともに短くなっていきます。6時間でも日中を問題なく過ごせているなら、それはその方に合った睡眠です。逆に8時間眠っていても、強い眠気や倦怠感が続くのであれば、睡眠の質や別の病気を考える必要があります。
「8時間眠らなければならない」という思い込みが、かえって不眠を強めることがあります。診察では、時間の数字よりも、日中をどう過ごせているかを中心にうかがいます。
眠れないことへの不安が、不眠を続けさせます
きっかけは一時的なもの——仕事の緊張、体調不良、生活の変化——であることがほとんどです。ところが眠れない夜が重なると、「今夜も眠れないのではないか」という不安が生まれ、寝床に入ること自体が緊張を呼ぶようになります。眠ろうと努力するほど目が冴えるのは、この仕組みによるものです。
そして「早めに布団に入る」「眠れないので長く横になる」といった対処が、寝床で過ごす時間を延ばし、かえって眠りを浅くします。きっかけが去った後も不眠だけが残っている場合、この悪循環を断つことが治療の中心になります。
ひとくちに不眠といっても、現れ方はいくつかに分かれます。複数が重なることも多く、タイプによって考えるべき原因も対応も変わります。
不眠は、それ自体が病気であると同時に、別の病気のサインでもあります。原因を確かめないまま睡眠薬だけを続けると、本来治せるはずの病気が見過ごされてしまいます。
| 睡眠時無呼吸症候群 | 睡眠中に呼吸が止まり、そのたびに脳が目覚めるため、眠りが細かく分断されます。ご本人は「眠れている」と感じていることも多く、いびき、日中の強い眠気、朝の頭痛、夜間の頻尿が手がかりになります。当院では自宅でできる簡易検査を行っています。 |
|---|---|
| むずむず脚症候群 | 夕方から夜にかけて脚の奥に不快感が生じ、動かさずにいられなくなります。じっとしているときに強まり、動かすと軽くなるのが特徴です。鉄の不足や腎機能の低下が背景にあることが多く、血液検査で確かめられます。 |
| うつ病・不安症 | 不眠は、うつ病でもっとも早く現れる症状の一つです。とくに早朝覚醒と、朝方に気分が重い状態が重なるときは注意が必要です。反対に、不眠が続くこと自体がうつ病の発症リスクを高めることも知られています。 |
| 甲状腺などの内分泌の病気 | 甲状腺機能亢進症では、動悸、発汗、体重減少とともに寝つきの悪さが現れます。更年期のほてりや発汗も、中途覚醒の原因になります。いずれも血液検査で確認できます。 |
| 痛み・かゆみ・頻尿 | 関節や腰の痛み、湿疹によるかゆみ、前立腺肥大や過活動膀胱による夜間の排尿。これらは睡眠を直接妨げます。眠りだけを扱うのではなく、原因となっている症状の治療を優先します。 |
| 薬・カフェイン・アルコール | ステロイド、一部の降圧薬や気管支拡張薬、抗うつ薬などが不眠の原因になることがあります。カフェインの影響は4時間以上続き、アルコールは寝つきをよくする一方で睡眠の後半を浅くし、中途覚醒を増やします。 |
| 夜間の咳・逆流性食道炎 | 横になると悪化する咳、胸やけ、喉の違和感で目が覚める場合があります。喘息の症状は夜間から明け方に強く出やすく、逆流性食道炎は就寝前の食事や飲酒と関係します。どちらも治療によって眠りが改善します。 |
不眠に特別な検査が必要とは限りません。まず、眠れない状況を丁寧にうかがうことが出発点です。そのうえで、背景となる病気が疑われる場合に検査を選んでいきます。
| 問診 | 就寝と起床の時刻、寝つくまでの時間、目が覚める回数と時刻、日中の眠気、休日との違い、カフェインや飲酒の習慣、服用中の薬をうかがいます。いつから、何をきっかけに始まったのかが、対応を決める大きな手がかりになります。 |
|---|---|
| 睡眠日誌 | 1〜2週間、寝床に入った時刻と起きた時刻を簡単に記録していただきます。実際に書き出してみると、感覚と実際の睡眠時間が違っていたり、休日のリズムのずれが見えてきたりします。治療の効果を確かめる指標としても使います。 |
| 血液検査 | 甲状腺機能、貧血、鉄(フェリチン)、腎機能、肝機能、血糖などを確認します。むずむず脚症候群が疑われる場合の鉄の評価、原因のはっきりしない倦怠感を伴う場合の全身の評価として行います。 |
| 睡眠時無呼吸の検査 | いびき、無呼吸の指摘、日中の強い眠気がある場合には、ご自宅で一晩お使いいただく機器で酸素飽和度と呼吸の状態を記録します。結果に応じて、精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)やCPAP治療の導入をご提案します。 |
| 気分・不安の評価 | 気分の落ち込み、興味の低下、食欲の変化を伴う場合には、うつ病や不安症の可能性を確かめます。不眠だけを治療しても改善しない場合、背景に気分の問題があることは珍しくありません。 |
| 専門施設との連携 | ナルコレプシーなどの過眠症、睡眠中の異常行動(レム睡眠行動障害)、精密検査が必要な睡眠時無呼吸症候群、治療の難しい精神疾患を伴う場合には、睡眠専門医療機関や精神科へご紹介します。 |
不眠症の治療は、睡眠習慣の見直しと考え方の調整(認知行動療法の要素)が土台になります。薬はそれを補うものであり、最初から長く続けることを前提には使いません。始めるときには、どのくらいの期間で見直し、どう減らしていくかまでを一緒に決めておきます。
| 起床時刻を一定にする | 眠りを整える出発点は、就寝時刻ではなく起床時刻です。眠れなかった翌朝も、休日も、起きる時刻をできるだけ動かさないようにします。起きたら朝の光を浴びることで、体内時計が整い、その日の夜の眠気が生まれやすくなります。 |
|---|---|
| 寝床で過ごす時間を短くする | 眠れないまま長く横になっていると、寝床が「眠れない場所」として記憶されてしまいます。眠くなってから寝床に入る、20分ほど眠れなければ一度離れる、寝床では読書やスマートフォンを使わない。逆説的ですが、床上時間を削ることが眠りを深くします。 |
| 生活の中で整える | カフェインは夕方以降を控え、寝酒は睡眠を浅くするため眠るための飲酒はやめます。昼寝は15時までに20〜30分以内。日中の運動と、就寝1〜2時間前の入浴が寝つきを助けます。夜のスマートフォンの光は、体内時計を遅らせます。 |
| オレキシン受容体拮抗薬 | 覚醒を保つ物質のはたらきを弱め、自然に近い形で眠りを促します(スボレキサント、レンボレキサントなど)。依存性が生じにくく、中止したときの反動も少ないため、現在は最初に検討される薬の一つです。翌朝の眠気や、まれに悪夢が出ることがあります。 |
| メラトニン受容体作動薬 | 体内時計にはたらきかけて、眠るタイミングを整えます(ラメルテオン)。効果は穏やかで、効き目を実感するまでに数日から数週間かかりますが、高齢の方やリズムのずれが目立つ方に適しています。 |
| ベンゾジアゼピン系睡眠薬 | 効果は確実ですが、長期に使うと耐性と依存が生じ、中止時に強い不眠が跳ね返る(反跳性不眠)ことがあります。高齢の方では、ふらつきによる転倒や日中の認知機能への影響が問題になります。使う場合は少量・短期を原則とします。 |
| 減薬・休薬の進め方 | すでに長く服用されている方でも、やめられないわけではありません。睡眠習慣を整えたうえで、数週間から数か月かけて少しずつ減らす、隔日に切り替える、依存の起こりにくい薬に置き換えるといった方法があります。自己判断での急な中止は反動を招くため、必ずご相談ください。 |
睡眠薬を使うことに不安のある方へ
「一度飲み始めたらやめられなくなるのではないか」という心配から、つらい状態を我慢して過ごしておられる方がいます。一方で、眠れない状態が長く続くこと自体が、高血圧や糖尿病、うつ病のリスクを高めることもわかっています。
現在よく用いられる薬は、以前のものとは性質が異なり、依存の心配は大きく減っています。大切なのは、漫然と続けないこと、そして始める時点で見直しの時期を決めておくことです。当院では、なぜその薬を選ぶのか、いつまで使うのか、どう減らしていくのかをご説明したうえで処方します。
SCREENING
睡眠薬を出す前に、眠れない理由を確かめます
不眠の背景には、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、甲状腺の病気、貧血、痛みやかゆみ、薬の影響が隠れていることがあります。これらは睡眠薬では改善せず、種類によっては悪化することさえあります。当院ではまず内科として全身を確認し、原因のある不眠を見落とさないことを最優先にしています。
BEHAVIOR
薬に頼らない方法を、具体的な形でお伝えします
不眠症の治療で国際的に最初に勧められるのは、薬ではなく認知行動療法です。とはいえ「生活習慣を整えましょう」という一般論では変わりません。睡眠日誌をもとに、起床時刻の固定、床上時間の調整、寝床から離れるタイミングなど、その方の生活に落とし込める形でご提案し、経過を一緒に確認していきます。
TAPERING
長年の睡眠薬を、無理のない速度で減らします
「他院で何年も同じ薬をもらっているが、減らす話が出たことがない」というご相談を多くいただきます。減薬は、睡眠習慣を整えることと並行して進めれば十分に可能です。減らす速度はご本人の不安に合わせて調整し、途中でつらくなれば一度戻すことも含めて、無理のない計画を立てます。
SLEEP APNEA
睡眠時無呼吸症候群の検査から治療まで対応します
中途覚醒や熟眠感のなさの背後に、睡眠時無呼吸症候群が見つかることは少なくありません。当院ではご自宅でできる簡易検査を行い、必要に応じて精密検査を手配し、CPAP治療の導入と継続管理まで一貫して対応しています。他院で導入された方の転院にも対応しています。
KAMPO
漢方薬という選択肢もご相談いただけます
睡眠薬を避けたい方、少量から始めたい方、不眠に加えて疲れやすさ・いらだち・動悸を伴う方には、漢方薬が選択肢になります。酸棗仁湯、加味帰脾湯、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯などを、体質と症状に合わせて用います。当院は漢方専門医として、西洋薬との使い分けや併用の可否も含めてご提案します。
診察でご相談ください
いつから、どのような形で眠れないのか、日中にどのような支障が出ているのかをうかがいます。お薬手帳をお持ちください。現在または以前に睡眠薬を使われている方は、薬の名前と量、飲み始めた時期がわかると、その後の計画が立てやすくなります。
背景にある原因を確かめます
必要に応じて血液検査を行い、甲状腺、貧血、鉄、腎機能などを確認します。いびきや日中の強い眠気がある方には、ご自宅でできる睡眠時無呼吸の簡易検査をご案内します。あわせて1〜2週間の睡眠日誌をお願いすることがあります。
眠りを整える方法をご提案します
記録をもとに、起床時刻、寝床で過ごす時間、光の浴び方、カフェインや飲酒の扱いを具体的に組み立てます。多くの方はこの段階で変化が出てきます。原因となる病気が見つかった場合は、その治療を優先します。
必要な場合に、期間を決めて薬を使います
つらさが強い場合や、生活習慣の調整だけでは足りない場合には薬を併用します。その際も、どの薬をなぜ選ぶのか、いつ見直すのか、どう減らしていくのかを最初にお伝えします。安定した後は、減薬を含めて定期的に方針を見直していきます。
次のような場合は、様子を見ずにご相談ください
とくに、気持ちが追い詰められていると感じるときは、どうか一人で抱えないでください。不眠とうつは深く関わっており、どちらも治療によって改善します。診察の時間を長めにとってお話をうかがうこともできますので、その旨をお伝えのうえご予約ください。
決まった正解はありません。必要な睡眠時間には個人差があり、また年齢とともに短くなっていきます。判断の基準は時間の長さではなく、日中を支障なく過ごせているかどうかです。6時間で問題なく過ごせているなら、それがその方に合った睡眠です。「8時間眠らなければ」という思い込みが、かえって寝床にいる時間を延ばし、眠りを浅くしていることもあります。
薬の種類によります。従来のベンゾジアゼピン系の薬は、長く使うと依存や中止時の反動が問題になりますが、現在よく用いられるオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬は、その心配が大きく減っています。大切なのは、漫然と続けないこと、そして始める時点で見直しの時期を決めておくことです。当院では処方の際に、いつまで使い、どう減らすかまでご説明します。
おすすめできません。アルコールは寝つきをよくする一方で、体内で分解される過程で睡眠の後半を浅くし、中途覚醒と早朝覚醒を増やします。利尿作用によって夜間の排尿も増えます。さらに、続けるうちに同じ量では効かなくなり、量が増えていくことが問題です。眠るための飲酒は、睡眠薬よりも依存のリスクが高いと考えてください。
市販の睡眠改善薬の多くは、抗ヒスタミン薬の眠気を利用したものです。一時的な不眠には使えますが、続けると効きが落ち、口の渇きやふらつき、高齢の方では日中のぼんやり感が出ることがあります。慢性の不眠には適していません。サプリメントについては、効果が確かめられているものは限られます。数週間以上続く不眠であれば、原因を確かめる段階に進むことをおすすめします。
あまりよくありません。眠れないまま長く寝床にいると、寝床が「眠れない場所」として身体に記憶され、横になること自体が緊張を生むようになります。20分ほど眠れないと感じたら一度寝床を離れ、明るすぎない場所で静かに過ごし、眠気が来てから戻ってください。最初は大変に感じますが、続けるうちに寝床と眠りの結びつきが取り戻されていきます。
短時間であれば問題ありません。15時までに、20〜30分以内が目安です。それより遅い時間や長い昼寝は、夜の眠気を弱めてしまいます。夕方にうとうとしてしまう方は、その時間帯に軽く体を動かす、入浴を済ませるなど、眠気を持ち越さない工夫をご提案します。なお、短い昼寝でも眠気が取れないほど強い日中の眠気は、睡眠時無呼吸症候群を考えるサインです。
参考程度にお考えください。腕の動きや脈拍から推定するもので、医療機関で行う検査とは精度が異なります。とくに深い睡眠の割合などは、実際とずれることが知られています。数値を気にするほど眠れなくなる方も多く、その場合はいったん記録を見ないことをおすすめします。ただし、いびきや無呼吸を検知する機能で異常が続けて出る場合は、一度ご相談ください。
加齢による自然な変化であることが多いです。年齢とともに必要な睡眠時間は短くなり、眠りも浅く、体内時計が前にずれていきます。日中を問題なく過ごせているなら、治療の必要はありません。ただし、気分の落ち込みや食欲の低下を伴う場合はうつ病を、日中の強い眠気を伴う場合は睡眠時無呼吸症候群を考えます。この違いは診察で整理できます。
可能です。ただし急にやめると強い不眠が跳ね返るため、計画的に進めます。まず睡眠習慣を整え、そのうえで数週間から数か月かけて少しずつ減量する、隔日投与に切り替える、依存の起こりにくい薬に置き換えるといった方法をとります。途中でつらくなれば一度戻すこともできます。減らすこと自体を目的にせず、生活が保てる形を一緒に探していきます。
合う方には選択肢になります。眠りに直接作用するというより、不眠の背景にある疲れ、いらだち、動悸、気分の落ち込みを整えることで、結果として眠りやすくなるという使い方です。酸棗仁湯、加味帰脾湯、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯などを、体質と症状に合わせて選びます。効果の現れ方は穏やかで、数週間かけて判断します。当院は漢方専門医として、西洋薬との使い分けや併用についてもご相談に応じます。
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