大腸憩室症
大腸憩室症
大腸憩室症
大腸憩室は、腸の壁の弱い部分が外側へ袋状に膨らんだくぼみです。加齢とともに増え、高齢の方では珍しいものではありません。その大半は生涯なんの症状も起こさず、治療も必要としません。一方で、一部の方では炎症(憩室炎)や出血(憩室出血)が起こり、こちらは急を要することがあります。当院では、健診や大腸内視鏡で憩室を指摘された方には「何を心配し、何は心配しなくてよいか」をお伝えし、腹痛や血便で来られた方には、急ぐ状態かどうかの見極めから対応しています。
憩室そのものは病気というより体の変化に近いものですが、腹痛や血便を伴うときは話が別です。どちらの状況かを分けて考えるところから始めます。
大腸憩室は加齢とともに増え、日本でも高齢の方では多くに見られます。食生活の変化を背景に、以前は少なかった左側(S状結腸など)の憩室も増えてきました。ただし、憩室を持つ方の大半は、生涯にわたって症状を経験しません。
見つかっただけなら、治療は必要ありません
健診や大腸内視鏡で憩室を指摘されると、不安になって当院にお越しになる方が多くおられます。しかし症状のない憩室は、それ自体を治す必要も、消す方法もありません。手術で取る対象でもありません。
意味があるのは、憩室があると分かったことを、その後の判断に生かすことです。腹痛や血便が起きたときに何を疑うか、痛み止めや血液をさらさらにする薬をどう扱うか、便通をどう整えるか。これらを知っておくことが、実際の備えになります。
血便を「憩室のせい」と決めてしまわないことも大切です
憩室出血は、痛みを伴わない鮮やかな血便が突然出るのが特徴で、多くは自然に止まります。ただし、憩室があるという理由だけで出血の原因を決めてしまうと、大腸がんや潰瘍性大腸炎などの見落としにつながります。
出血が落ち着いた時期に大腸内視鏡で確かめておくのは、このためです。憩室からの出血であったことを確認すると同時に、他の原因が隠れていないかを一度で調べられます。
憩室に関わる状態は、大きく「無症状」「炎症」「出血」に分かれます。それぞれ対応の急ぎ方も、その後にすべきことも異なります。
腹痛や血便で来られた場合は、まず急を要する状態かどうかを判断します。症状のない方については、必要以上の検査を重ねないことも大切だと考えています。
| 診察・問診 | 痛みの場所と続き方、発熱の有無、血便の色と量、痛みを伴うかどうかをうかがいます。おなかを押したときの痛み方から、腹膜炎を疑う所見がないかを確認します。飲んでいるお薬、とくに痛み止めと血液をさらさらにする薬は必ず確認します。 |
|---|---|
| 血液検査 | 白血球やCRPで炎症の程度を、ヘモグロビンで出血による貧血の程度を確認します。腎機能や電解質も併せて調べ、外来で経過を見てよいか、入院が必要かを判断する材料にします。 |
| 腹部超音波検査 | 被ばくなく、その場で腸管壁の肥厚や腹水の有無を確認できます。痛みのある部位に当てながら評価できるため、虫垂炎など他の原因との区別にも役立ちます。 |
| CT検査 | 憩室炎の広がりや、膿瘍・穿孔といった合併症の有無を確かめるのに適した検査です。出血が続いている場合には、造影CTで出血源を探すこともあります。当院ではCTのできる連携施設へその日のうちにご紹介します。 |
| 大腸内視鏡検査 | 炎症の急性期には腸に負担がかかるため行いません。症状が治まってから数週間ほど間をおいて実施し、憩室の分布を確認するとともに、大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患が隠れていないかを調べます。出血後の確認にも同じ考え方をとります。 |
| 専門施設との連携 | 出血が持続する、貧血が進む、血圧が下がっている、強い腹痛と発熱が続く、膿瘍や穿孔が疑われるといった場合は、外来での対応に適しません。内視鏡的な止血処置や入院、外科的治療が必要と判断した時点で速やかにご紹介します。 |
症状がなければ治療はしません。炎症や出血が起きたときは、その程度に応じて対応を変えます。そして落ち着いた後は、次に起こしにくくするための調整に移ります。
| 無症状の憩室症 | 治療は必要ありません。憩室を消したり減らしたりする薬もありません。便通を整えること、体重と喫煙を含めた生活の要因に目を配ることが、現実的にできる備えのすべてです。定期的な大腸内視鏡は、憩室のためというより大腸がん検診として考えます。 |
|---|---|
| 軽い憩室炎 | 食事を控えめにして腸を休ませ、水分を確保します。炎症の程度や背景に応じて抗菌薬を用います。数日で痛みと発熱が引いていくことを確認しながら、食事を段階的に戻します。悪化したときにすぐ連絡いただく目安を、あらかじめお伝えします。 |
| 重い憩室炎 | 膿瘍、穿孔、腹膜炎を伴う場合は入院治療となり、膿を抜く処置や手術が必要になることもあります。繰り返す方や狭窄が残った方では、落ち着いている時期に手術を検討することがあります。判断は外科と相談しながら進めます。 |
| 憩室出血 | 絶食と点滴で経過を見ると、多くは自然に止まります。出血が続く場合や量が多い場合は、大腸内視鏡でクリップなどを用いて止める処置、あるいは血管内治療が必要になり、入院可能な施設で対応します。貧血が強ければ輸血を行います。 |
| お薬の整理 | 抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)や痛み止め(NSAIDs)は、出血の起こりやすさに関わります。ただし、抗血栓薬は自己判断で中止すると脳梗塞や心筋梗塞の危険が高まります。中止の可否と再開の時期は、処方元の医師と相談しながら個別に判断します。 |
| 再発を防ぐ 生活の調整 |
便秘を避けて強くいきまないこと、食物繊維と水分を十分にとること、体重の管理、禁煙、痛み止めの使いすぎを避けること。いずれも派手な対策ではありませんが、繰り返しを減らすうえで最も確かな部分です。当院では管理栄養士が具体的な食事に落とし込んでご提案します。 |
ナッツや種のある食べ物を、避ける必要はありません
かつては、ナッツ、ごま、いちごやきゅうりの種などが憩室に詰まって炎症を起こすと考えられ、避けるよう指導されていました。しかしその後の研究で、これらを食べる方で憩室炎が増えるという関係は示されておらず、現在では制限する必要はないと考えられています。むしろ食物繊維をしっかりとることのほうが、予防の面では理にかなっています。長年避けてこられた方は、診察の際にご相談ください。
DIAGNOSIS
「憩室のせい」で片づけず、他の原因も一緒に考えます
右下腹部の痛みは虫垂炎と、左下腹部の痛みは大腸がんや虚血性腸炎と、症状だけでは区別がつきません。当院では診察と血液検査、腹部超音波を組み合わせて評価し、CTが必要と判断した場合はその日のうちに連携施設へ手配します。憩室があることを知っていても、原因を決めつけないことを大切にしています。
COLONOSCOPY
落ち着いた時期の大腸内視鏡まで、続けて担当します
炎症や出血の急性期に内視鏡を行うことはしませんが、治まった後の確認は欠かせません。消化器内視鏡専門医が担当し、憩室の分布を把握するとともに、大腸がんやポリープの有無を同時に確かめます。鎮静剤を用いた検査にも対応しており、検査がつらかった経験のある方もご相談ください。
NUTRITION
食物繊維は「増やす時期」と「控える時期」を分けてお伝えします
炎症を起こしている最中は腸を休ませ、回復したら逆に食物繊維をしっかりとる。この切り替えが分かりにくく、自己流で迷われる方が多い部分です。当院には管理栄養士が4人在籍し、いつ何をどれだけ、という水準まで具体的にご説明します。長年の便秘への対応も一緒に組み立てます。
MEDICATION
お薬の全体像を見て、出血しにくい形に整えます
抗血栓薬や痛み止めは、憩室出血の起こりやすさに関わる一方、必要があって使われているものです。当院は一般内科として、血圧や血糖、脂質の管理を含めた全体を把握したうえで、処方元の医師とも連携しながら、続けるもの・見直せるものを整理します。市販の痛み止めについてもご相談ください。
診察でご相談ください
痛みの場所と続き方、熱の有無、血便の色と量、痛みを伴うかどうかをうかがいます。お薬手帳、健診結果、過去の大腸内視鏡やCTの記録をお持ちいただくと判断がしやすくなります。症状がなく、検査で憩室を指摘されただけの方も、そのままお越しいただいて構いません。
急を要する状態かどうかを確かめます
おなかの診察、血液検査、腹部超音波検査で、炎症や出血、貧血の程度を確認します。外来で経過を見てよい場合は、食事のとり方と、悪化したときにすぐ連絡いただく目安をお伝えします。入院や画像検査が必要と判断した場合は、その場で連携先を手配します。
落ち着いてから、大腸内視鏡で確かめます
炎症や出血が治まった時期を見て、予約のうえ大腸内視鏡を行います。憩室の場所と数を把握しておくと、次に症状が出たときの判断が早くなります。あわせて、大腸がんをはじめとする他の病気が隠れていないかを調べます。
繰り返さないための調整をします
便通の整え方、食物繊維と水分のとり方、体重や喫煙、痛み止めの使い方、抗血栓薬の扱いを整理します。症状のない方についても、次に何が起きたら受診すべきかを共有しておきます。備えができていること自体が、不安を減らします。
次の症状があるときは、経過を見ずにご相談ください
おなか全体の激しい痛みが続く、冷や汗を伴って血圧が下がる、意識がもうろうとするといった場合は、ためらわず救急要請をしてください。血液をさらさらにする薬を飲んでいる方で血便が出たときも、量が少なくても早めにご連絡ください。それ以外の症状であれば、まずは外来でご相談いただければ、必要な対応を判断します。
症状がなければ治療は必要ありません。憩室を消す薬や、予防のために取り除く手術というものもありません。憩室があること自体は、加齢に伴う体の変化に近いものとお考えください。大切なのは、腹痛や血便が出たときに早めに受診すること、そして便通を整えておくことです。
避ける必要はありません。以前は種が憩室に詰まると考えられていましたが、その後の研究で、これらを食べる方で憩室炎や出血が増えるという関係は確認されていません。むしろ食物繊維を十分にとることのほうが予防につながります。長年制限してこられた方は、戻し方をご相談ください。
一度できた憩室が自然に消えることはありません。年齢とともに数が増えていくことはあり、以前の検査より増えていると指摘されることもあります。ただし数が多いこと自体が、すぐに危険を意味するわけではありません。便秘でいきむ機会を減らしておくことが、増やさない方向に働くと考えられています。
一度起こした方では再発することがあります。多くは薬と食事の調整で回復し、手術に至るのは一部です。膿瘍や穿孔を伴った場合、狭窄が残った場合、短い間隔で何度も繰り返す場合には、落ち着いている時期の手術を検討することがあります。その判断は外科と相談しながら進めます。
受診をおすすめします。憩室出血は自然に止まることが多い一方、再び出血することも珍しくありません。また、憩室があるからといって出血の原因が憩室とは限らず、大腸がんや炎症性の病気が背景にあることもあります。落ち着いた時期に大腸内視鏡で一度確かめておくことをおすすめします。
自己判断での中止は避けてください。これらの薬は脳梗塞や心筋梗塞を防ぐために使われており、急にやめるとその危険が高まります。出血が起きた場合は、出血の程度と、薬をやめた場合の危険を天秤にかけて判断します。処方元の医師と連携して決めますので、まずはご相談ください。
日本では右側の憩室が多いため、右下腹部が痛む憩室炎は虫垂炎とよく似た症状になり、症状だけでの区別は困難です。診察、血液検査、超音波やCTなどの画像で判断します。どちらであっても、痛みが続き発熱を伴う場合は早めの受診が必要という点は変わりません。
時期によって逆になります。憩室炎で炎症を起こしている最中は腸を休ませるため控えめにし、回復した後は再発予防のためにしっかりとります。この切り替えが分かりにくく、炎症が治った後も控え続けて便秘が悪化してしまう方がおられます。当院では管理栄養士が、時期ごとの具体的な食べ方をご説明します。
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