好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は、以前はチャーグ・ストラウス症候群と呼ばれていた病気で、全身の細い血管に炎症が起こる血管炎の一つです。特徴は、そのほとんどが気管支喘息から始まることにあります。何年も喘息の治療を続けてきた方に、血液中の好酸球の増加と、手足のしびれや力の入りにくさが加わったとき、この病気を考えます。指定難病に定められており、治療によって多くの方が改善しますが、神経の障害は後遺症を残すことがあるため、早く気づくことが何より重要です。当院はアレルギー診療と膠原病診療の両方を行っており、喘息を診る中でこの病気の兆しを捉え、速やかに専門施設へつなぐ役割を担っています。
これらが同時期に重なっている場合は、早めの評価をおすすめします。血液検査で確認できることも多く、診察と採血で方向性をつけられます。
この病気の大半は、まず気管支喘息やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎として始まります。年単位で経過した後に血管炎の症状が現れるため、新しく出た症状も「いつもの喘息の一部」として説明されてしまいがちです。
喘息、好酸球の増加、しびれ。この三つが重なったときです
喘息をお持ちの方に、血液中の好酸球が明らかに増え、さらに手足のしびれや力の入りにくさが加わったとき、この病気を強く疑います。しびれは左右対称ではなく、片方の足首だけが上がらない、特定の指だけ動かしにくいといった、まだらな出方をするのが特徴です。
「喘息が悪いから体調も悪いのだろう」「年齢のせいでしびれが出た」と別々に受け止められると、診断が遅れます。喘息を長く診てきた医師が、この組み合わせに気づけるかどうかが分かれ目になります。
抗体が陰性でも、この病気は否定できません
血管炎の診断ではMPO-ANCAという自己抗体を調べますが、この病気では陽性になるのは半数程度にとどまります。陰性だからといって否定はできず、実際に「ANCAが陰性だったので違うと言われた」という経過をたどる方がおられます。
診断は、喘息の経過、好酸球の数、臓器の症状、必要に応じて組織の検査を組み合わせて総合的に行います。抗体は手がかりの一つに過ぎません。この点を踏まえて評価することが大切です。
典型的には三つの段階を経て進みます。ただし全員がこの順序をたどるわけではなく、途中の段階で長くとどまる方もおられます。
この病気を疑うかどうかは、外来でできる検査で相当程度判断できます。確定診断と重症度の評価には専門施設での検査が必要ですが、その前段階を当院が担います。
| 問診と診察 | 喘息をいつから、どのような経過で治療してきたか、副鼻腔炎の有無、しびれや脱力がいつどこから出たかをうかがいます。しびれの分布が左右非対称でまだらかどうかは、重要な手がかりです。皮膚の所見、むくみ、血圧、脈拍もあわせて確認します。 |
|---|---|
| 血液検査 | 好酸球の数と割合、炎症の程度(CRPなど)、IgE、MPO-ANCAを調べます。あわせて腎機能、肝機能、心臓に関わる項目も確認します。好酸球が明らかに増加していることは、この病気を考える大きな根拠になります。 |
| 呼吸機能・ FeNO検査 |
喘息の状態を客観的に評価します。呼気中一酸化窒素(FeNO)は院内で測定でき、気道の好酸球性炎症の程度を反映します。喘息の悪化と血管炎の始まりを区別するうえでも、経過を追った数値が役立ちます。 |
| 画像検査 | 胸部エックス線で肺の陰影を確認します。より詳しい評価が必要な場合や、副鼻腔の状態を確かめる場合には、CTのできる連携施設へご紹介します。 |
| 心臓の評価 | 心電図で不整脈や心筋の変化がないかを確認します。心臓の症状は自覚が乏しいまま進むことがあるため、疑わしい場合は心エコーなどの詳しい検査ができる施設へ速やかにおつなぎします。 |
| 専門施設との 連携 |
確定診断には、神経の伝導検査や皮膚・神経・筋の生検、詳細な臓器評価が必要になります。この病気を疑った時点で、膠原病・リウマチ内科や神経内科のある高次医療機関へご紹介します。紹介にあたっては、これまでの喘息の経過と検査結果を整理してお渡しします。 |
治療は専門施設で開始されるのが一般的です。以下は、どのような治療が行われるかの概要と、その後に当院が担える部分についての説明です。
| ステロイド | 治療の中心です。臓器の障害の程度に応じた量から始め、症状と検査値を見ながら時間をかけて減らしていきます。多くの方で症状は速やかに改善しますが、減量の途中で再燃することがあるため、自己判断での中止や減量は避ける必要があります。 |
|---|---|
| 免疫抑制薬 | 心臓、腎臓、神経、消化管など重要な臓器が侵されている場合には、ステロイドに免疫抑制薬を併用します。寛解に導く段階と、その状態を保つ段階とで薬の選び方が変わります。使用中は感染への注意が必要です。 |
| 生物学的製剤 | 好酸球の増加に関わる経路を抑える薬(メポリズマブ)が、この病気に対して使用できます。ステロイドを減らしていく助けとなり、再燃を抑える効果が期待されます。適応や導入の判断は専門施設で行われます。 |
| 免疫グロブリン 大量療法 |
神経の障害が強く、標準的な治療では十分に改善しない場合に検討される治療です。しびれや脱力に対して用いられます。入院での治療となるため、専門施設で実施されます。 |
| 再燃への備え | 治療によって落ち着いた後も、ステロイドを減らす過程や中止後に再燃することがあります。喘息症状の悪化、好酸球の再上昇、しびれの再出現は、その兆しである可能性があります。定期的な血液検査で早めに捉えることが大切です。 |
| 治療に伴う 問題への対応 |
ステロイドを長く使用すると、骨がもろくなる、血糖が上がる、感染しやすくなる、胃腸の負担が増えるといった影響が出ます。これらの予防と管理は、日常の診療の中で継続して行う部分です。当院で分担できます。 |
医療費の助成を受けられます
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は指定難病に定められており、重症度が一定以上と判断される場合、または医療費が一定以上続いている場合(軽症高額該当)には、申請により医療費の自己負担に上限が設けられます。申請には難病指定医が作成する臨床調査個人票が必要です。制度の内容や手続きの窓口については、診察の際にご説明します。長く治療を続ける病気ですので、早い段階で確認しておくことをおすすめします。
ASTHMA
喘息を診る中で、変化に気づきます
この病気は、喘息の患者さんの中から現れます。当院はアレルギー専門医としての診療を行っており、FeNO検査や血液中の好酸球数を継続して確認しています。喘息が急に悪化した、ステロイドを減らすと決まって悪くなる、といった経過は、この病気を考える手がかりになります。
TWO FIELDS
アレルギーと膠原病、両方の視点で診ます
この病気はアレルギーの病気であると同時に、全身の血管炎という膠原病の領域にまたがります。当院は両方の診療を行っており、喘息としての評価と、血管炎としての評価を切り離さずに考えられます。抗体が陰性でも否定しない、という判断もこの視点から生まれます。
REFERRAL
疑った時点で、速やかにおつなぎします
神経の障害は、治療が遅れるほど後遺症を残しやすくなります。当院の役割は、確定診断そのものより、疑うべき状況を見逃さず、適切な施設へ早く橋渡しすることだと考えています。紹介の際には、喘息の経過と検査結果を整理した形でお渡しします。
SHARED CARE
診断後の日常の診療を、分担できます
治療が落ち着いた後は、専門施設への通院間隔が空いていきます。その間の血液検査、喘息の管理、ステロイドによる骨や血糖への影響、感染の予防といった部分を当院で担当できます。通いやすい場所で日常の管理を続けられることは、長く付き合う病気では大きな意味を持ちます。
診察でご相談ください
喘息の経過、いま出ている症状、しびれや脱力がいつどこから始まったかをうかがいます。お薬手帳、健診結果、これまでの血液検査の記録、他院の紹介状をお持ちいただくと判断がしやすくなります。過去の好酸球の値が分かると、変化を捉えやすくなります。
血液検査と呼吸の評価を行います
好酸球数、炎症の程度、MPO-ANCA、臓器の状態を調べます。あわせて呼吸機能やFeNOで喘息の状態を評価し、胸部エックス線や心電図で肺と心臓を確認します。結果の一部は当日、抗体などは後日のご説明となります。
疑いがあれば、専門施設へご紹介します
この病気が疑われる場合は、確定診断と治療のため、膠原病・リウマチ内科や神経内科のある医療機関へおつなぎします。神経や心臓の症状がある場合は、時間をかけずに手配します。該当しなかった場合も、症状の原因として何を考えるかをお伝えします。
診断後は、日常の診療を分担します
治療方針は専門施設で決まりますが、その後の血液検査、喘息の管理、ステロイドの影響への対応、再燃の兆しの確認は当院で担当できます。専門施設と役割を分けながら、通いやすい形で長く続けられる診療を目指します。
次の症状があるときは、次回の予約を待たずにご相談ください
胸の痛みが続く、息苦しさで横になれない、意識がもうろうとするといった場合は、ためらわず救急要請をしてください。心臓や消化管の症状は、進行が速いことがあります。また、治療中の方で自己判断によりステロイドを減らしたり中止したりすることは避けてください。副作用が気になる場合も、まずご相談ください。
初期の段階では区別がつきません。違いが現れるのは、血液中の好酸球が著しく増え、喘息では説明のつかない症状、とくに手足のしびれや脱力、紫斑、原因不明の発熱などが加わったときです。長年喘息で治療している方に新しい症状が出た場合は、別の病気が始まっていないかを一度考える必要があります。
そうとは限りません。この病気でANCAが陽性になるのは半数程度で、陰性の方も少なくありません。診断は、喘息の経過、好酸球の数、どの臓器に症状が出ているか、必要に応じて組織の検査を組み合わせて行います。抗体の結果だけで判断されることのないよう、経過全体を見て評価します。
かつて一部の喘息治療薬との関連が指摘されましたが、現在では、薬そのものが原因というより、ステロイドを減らしたことで隠れていた病気が現れたと考えられています。喘息の治療を受けたことを後悔される必要はありません。むしろ、治療を続ける中で経過が記録されていることが、早期発見につながります。
治療によって症状が落ち着き、日常生活を送れる状態まで改善する方が多くおられます。ただし薬を減らす過程や中止後に再燃することがあるため、少量の薬を続けながら経過を見ていくことが一般的です。どこまで減らせるかは、臓器の状態や再燃の有無によって異なります。
早く治療を始められた場合ほど回復が期待できます。一方で、神経の障害が長く続いた後では、しびれや筋力の低下が後遺症として残ることがあります。この病気で早期発見が重視されるのは、この点にあります。リハビリテーションを含めた対応が必要になる場合もあります。
指定難病に定められており、重症度が一定以上と判断される場合、または医療費が一定以上続く場合には、申請により自己負担に上限が設けられます。申請には難病指定医が作成する書類が必要です。診断がついた段階で、対象になりそうかどうかを含めてご説明します。手続きの窓口はお住まいの自治体です。
感染する病気ではありませんので、人にうつることはありません。遺伝する病気でもなく、ご家族が同じ病気になる可能性が特別に高いわけではありません。ご家族に喘息やアレルギーの方がいることはありますが、それがこの病気の発症を意味するものではありません。
通えます。治療方針は専門施設で決まりますが、落ち着いた後の血液検査、喘息の管理、ステロイドの影響への対応、再燃の兆しの確認といった日常の診療は当院で分担できます。専門施設への通院と併せて、通いやすい場所での管理を続けていただく形が現実的です。
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