口唇ヘルペス
口唇ヘルペス
HERPES LABIALIS
口唇ヘルペス
唇のふちがピリピリしてきた。この感覚が出ると、翌日には水ぶくれができて、数日は人前に出るのが憂うつになる。口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが神経の中に潜んだまま残り、疲れたときや風邪をひいたとき、強い日差しを浴びたときに再び動き出して起こります。多くの方が幼い頃に感染しており、そのウイルスが生涯にわたって体内にとどまります。この病気で大切なのは、水ぶくれができてから薬を探すのではなく、ピリピリした違和感の段階で薬を飲むことです。現在は、あらかじめ薬を手元に置いておき、その瞬間に自分で飲み始める治療法が保険で認められています。当院では、今回の治療と、次の再発への備えの両方をご相談いただけます。
口唇ヘルペスは、放っておいても1〜2週間で治ることが多い病気です。それでも受診をおすすめするのは、早く薬を飲めば治るまでの期間を短くできること、そして次の再発に備えておけることの二つに意味があるためです。
水ぶくれができてから薬を始めても、効果は限られます。この病気の治療は、その手前の段階をとらえられるかどうかで結果が変わります。
前駆症状という合図
再発をくり返している方の多くは、水ぶくれが出る数時間から1日ほど前に、決まった場所がピリピリする、むずむずする、突っ張る、といった感覚を自覚します。これを前駆症状といい、ウイルスが増え始めた合図です。
抗ウイルス薬はウイルスが増えるのを抑える薬なので、この時点で飲むと効果がもっとも高くなります。水ぶくれができて数日たった段階では、すでにウイルスの増殖のピークは過ぎており、飲んでも治りが大きく変わらないことがあります。「そろそろ出そうだ」という感覚は、ご自身にしか分かりません。その感覚を治療に生かす方法があります。
あらかじめ薬を持っておく、という選択
再発をくり返す方に向けて、薬をあらかじめ処方しておき、前駆症状が出たその場でご自身の判断で飲み始めるという治療法があります。PIT(患者判断による治療)と呼ばれ、保険で認められています。1回、または1日だけ飲んで終わる薬を使うため、飲み続ける必要もありません。
受診してから薬を受け取るまでの時間が、この病気では大きな差になります。仕事の都合ですぐに受診できない方、出張や旅行が多い方、大切な予定を控えている方にとって、手元に薬があることの意味は小さくありません。年に数回以上再発している方で、前駆症状をご自身で分かる方であれば、選択肢としてご検討いただけます。
典型的な経過をたどるのであれば、見た目で診断がつきます。一方、初めての場合や広がっている場合は、別の対応が必要になります。
診断の多くは、症状の経過と見た目から判断できます。検査は、判断に迷う場合と、再発の背景を確かめる必要がある場合に行います。
| 問診と視診 | いつ違和感が始まり、いつ発疹が出たかを確認します。前駆症状の有無と、出る場所が毎回同じかどうかは、診断とその後の治療方針の両方に関わります。過去の再発の回数、きっかけになった出来事、これまで使った薬もうかがいます。 |
|---|---|
| 迅速検査 | 見た目だけでは判断が難しい場合には、水ぶくれの部分から検体を取り、その場でウイルスの抗原を調べる検査を行うことがあります。単純ヘルペスか帯状疱疹かを区別できるため、初めての方や、いつもと様子が違う方で役に立ちます。 |
| 血液の抗体検査 について |
ヘルペスの抗体検査は、すでに感染しているかどうかを見るものです。再発しているかどうかの判断には使えません。多くの成人はすでに抗体を持っているためです。妊娠中の方や、初感染かどうかの確認が必要な特別な場合に限って行います。 |
| 背景にある 状態の確認 |
再発が明らかに増えている、治りが悪い、範囲が広いといった場合には、免疫の働きが落ちる要因がないかを確認します。糖尿病、貧血、栄養状態、服用中の薬、睡眠の状況などを含め、一般内科として全体を見直します。 |
| 皮膚の状態の 評価 |
アトピー性皮膚炎や湿疹があると、ヘルペスが広がりやすくなります。皮膚のバリアが保たれているかを確認し、必要であれば湿疹そのものの治療を整えます。当院はアレルギー診療を行っており、この部分もあわせて担当できます。 |
| 合併症の確認 | 目のまわりの症状、目の痛みや充血、指先の水ぶくれと痛み、強い頭痛や発熱の有無を確認します。これらは通常の口唇ヘルペスとは別の対応が必要になるため、初診時に必ず確かめます。 |
抗ウイルス薬を、できるだけ早い段階で使うことが治療の中心です。今回の症状を短くすることと、次の再発に備えることを分けて考えます。
| 飲み薬 | アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、アメナメビルなどを用います。塗り薬より効果がはっきりしており、前駆症状から水ぶくれが出て間もない時期に始めると、治るまでの期間を短縮できます。腎機能や他に飲んでいる薬を確認したうえで選びます。 |
|---|---|
| あらかじめ処方しておく方法 (PIT療法) |
再発をくり返す方には、アメナメビルやファムシクロビルを事前にお渡しし、前駆症状が出た時点でご自身の判断で飲んでいただきます。アメナメビルは食後に1回飲むだけ、ファムシクロビルは1日で2回飲みきる形です。受診を待つ時間をなくせることが、この方法の最大の利点です。 |
| 塗り薬 | アシクロビルやビダラビンの軟膏を用います。飲み薬ほどの効果は期待できませんが、飲み薬が使いにくい場合や、補助として併用する場合に用います。指で塗った後は必ず手を洗ってください。目に触れると角膜に炎症を起こすことがあります。 |
| 症状への 対応 |
痛みが強い場合には鎮痛薬を使います。かさぶたを無理にはがさず、乾燥させすぎないようにします。かき壊すと細菌の感染が加わり、治りが遅れます。口の中に広く潰瘍ができて食事がとりにくい場合には、水分と栄養の確保を優先して対応します。 |
| 市販薬の 位置づけ |
再発の口唇ヘルペスに使える市販の塗り薬があります。ただし以前に医師の診断を受けたことがある方の、再発時のみが対象です。初めての方、範囲が広い方、アトピー性皮膚炎のある方、免疫を抑える治療中の方、妊娠中の方、お子さんは対象外です。判断に迷う段階での自己治療は避けてください。 |
| 漢方薬の併用 | 疲労が重なると必ず再発するという方には、体力を補う補中益気湯などを用いることがあります。急性期の赤みやほてり、水ぶくれに対して用いる処方もあります。抗ウイルス薬に置き換わるものではなく、再発しやすい状態そのものに働きかける補助的な位置づけとしてご提案します。 |
再発を減らすために、できること
きっかけとして多いのは、疲労、睡眠不足、発熱を伴う風邪、強い紫外線、月経、強いストレス、歯科治療や口周りの外傷です。紫外線は見落とされやすい要因で、屋外での活動や冬のスキー、海水浴の後に再発する方は、UVカット効果のあるリップクリームを習慣にすると回数が減ることがあります。
なお、口唇ヘルペスに対して抗ウイルス薬を毎日飲み続けて再発を抑える方法は、日本では保険で認められていません。そのため、現実的な対策は、きっかけを減らすことと、出たときにすぐ飲める薬を手元に置いておくことの組み合わせになります。年に何度も再発する方には、この二本立てをおすすめしています。
口唇ヘルペスは、水ぶくれやびらんに触れることでうつります。ほとんどの方にとって重い病気ではありませんが、避けたい相手がはっきりしています。
| とくに注意 したい相手 |
生後間もない赤ちゃん、アトピー性皮膚炎のあるお子さん、免疫を抑える治療を受けている方です。新生児では全身に広がって重くなることがあり、アトピーのある方では皮膚の広い範囲に広がることがあります。症状が出ている間は、頬ずりやキスを避けてください。 |
|---|---|
| 日常での 具体的な対策 |
水ぶくれやかさぶたを触らない、触れたら手を洗う。タオル、食器、コップ、リップクリームを共有しない。かさぶたになるまではキスを避ける。これだけで、家庭内でうつることはほとんどなくなります。仕事や登校を休む必要は、通常はありません。 |
| ご自身の 別の場所へ |
触った指で目をこすると、角膜に炎症が起きることがあります。コンタクトレンズを使っている方は、装着前の手洗いを徹底してください。指先に水ぶくれと強い痛みが出るヘルペス性ひょう疽、皮膚をこすり合わせる競技で広がるものもあります。 |
| 妊娠中の方 | 妊娠中に口唇ヘルペスが再発すること自体は、通常、赤ちゃんへの影響を心配する状況ではありません。ただし薬の選択には配慮が必要ですので、自己判断で市販薬を使わず、産科の主治医とあわせてご相談ください。出産後、赤ちゃんに触れる際の注意点もお伝えします。 |
TIMING
次の再発に、間に合う形をつくります
この病気は、薬が手元に届くまでの時間が結果を左右します。再発をくり返している方には、前駆症状が出たその場で飲める薬をあらかじめお渡しし、飲み方と判断の目安をお伝えします。次に唇がピリピリしたとき、受診の予定を探すところから始めなくて済むようにしておくことが目的です。
ALLERGY
アトピー性皮膚炎のある方に、注意して対応します
皮膚のバリアが弱い方では、ヘルペスが顔や体の広い範囲に広がることがあります。当院はアレルギー専門医としてアトピー性皮膚炎の診療を行っており、湿疹そのものの状態を整えることを含めて対応できます。広がる兆しがあるときの受診の目安も、あらかじめお伝えします。
INTERNAL
再発が増えた背景を、内科として確かめます
再発の回数が明らかに増えた、治りが悪くなったという場合、その裏に体の変化があることがあります。当院は一般内科として院内で血液検査を行い、血糖や貧血、栄養状態、服用中の薬を含めて確認できます。免疫を抑える治療を受けている方の管理も、あわせて担当します。
KAMPO
くり返す体調そのものに、漢方で働きかけます
院長は漢方専門医として診療を行い、大学病院の漢方診療科と関わりながら漢方薬の作用の研究にも携わってきました。疲れがたまると必ず出るという方には、抗ウイルス薬とは別に、再発しにくい状態づくりという観点から漢方を組み合わせることがあります。
できるだけ早い段階でご相談ください
違和感が出た日、発疹が出た日、これまでの再発の回数、使った薬をうかがいます。お薬手帳をお持ちください。以前に処方された薬の名前が分かると、選択の手がかりになります。市販薬を使った場合も、その内容をお知らせください。
診断し、今回の治療を決めます
見た目と経過から診断し、迷う場合は迅速検査を行います。症状の時期に応じて飲み薬を選び、必要なら塗り薬や鎮痛薬を加えます。範囲が広い場合や、目のまわりに及んでいる場合は、その場で対応を切り替えます。
次の再発への備えを相談します
再発をくり返している方には、前駆症状が出た時点で飲める薬をあらかじめお渡しする方法をご説明します。どの感覚が出たら飲むのか、飲んだ後に受診が必要になるのはどんな場合かを、具体的にお伝えします。
再発の回数が多い場合は、背景を確かめます
再発が明らかに増えている方では、血液検査で体の状態を確認します。生活のなかのきっかけを整理し、紫外線対策や睡眠の確保といった具体策をお話しします。必要に応じて、漢方薬による体調の立て直しもご提案します。
次の場合は、いつもの口唇ヘルペスとして様子を見ずにご相談ください
生後3か月未満の赤ちゃんに水ぶくれや発熱が出た場合は、急いで小児科を受診してください。また、強い頭痛、吐き気、けいれん、意識のもうろうとした状態を伴う場合は、まれではありますが脳の炎症を起こしている可能性があり、緊急の対応が必要です。ためらわず救急要請をしてください。
多くの場合、1〜2週間で自然に治ります。それでも受診をおすすめするのは、早く薬を飲めば治るまでの期間を短くでき、痛みや見た目の期間も短くなるためです。加えて、次の再発に備えて薬を手元に置いておく方法をご案内できます。年に何度もくり返している方ほど、一度整理しておく価値があります。
効果は前駆症状の時期より小さくなりますが、意味がないわけではありません。とくに範囲が広い場合、痛みが強い場合、いつもより経過が長い場合には飲む価値があります。この機会に診断を確定しておけば、次回から前駆症状の段階で対応できるようになります。まずはご相談ください。
できません。単純ヘルペスウイルスは神経の中に潜んでおり、現在の薬ではそこから取り除くことはできません。治療の目的は、再活性化したウイルスの増殖を抑えて症状を短くすることです。ただし、再発の回数は年齢とともに減っていくことが多く、きっかけを減らす工夫でも変わります。
口唇ヘルペスについては、抗ウイルス薬を毎日飲み続けて再発を抑える方法は、日本では保険の対象になっていません。そのため、前駆症状が出た時点ですぐ飲めるよう薬を手元に置いておく方法が、現実的な選択肢になります。あわせて、紫外線対策や睡眠の確保など、きっかけを減らす工夫をご提案します。
水ぶくれやびらんに触れることでうつります。ただし成人の多くはすでにウイルスを持っているため、実際に問題になるのは限られた相手です。生後間もない赤ちゃん、アトピー性皮膚炎のあるお子さん、免疫を抑える治療中の方には注意が必要です。タオルや食器を分け、かさぶたになるまでキスを避ければ、通常は十分です。
口内炎は口の中の粘膜にでき、白っぽい丸い潰瘍として現れます。水ぶくれの時期がなく、他人にうつることもありません。口唇ヘルペスは唇のふちや周りの皮膚に、小さな水ぶくれが集まって出るのが特徴で、その前にピリピリした感覚を伴います。判断に迷う場合は、見せていただければその場でご説明できます。
皮膚のバリアが弱い部分にウイルスが広がり、顔や体に多数の水ぶくれが出ることがあります。発熱を伴うこともあり、早い治療が必要です。日頃から湿疹の状態を落ち着かせておくことが最大の予防になります。当院はアトピー性皮膚炎の診療も行っておりますので、あわせてご相談ください。
すでに出ている場合は、できるだけ早く飲み薬を始め、触らずに保護します。この機会にご相談いただきたいのは、次回への備えです。前駆症状の段階で飲める薬を持っておけば、予定の直前に出てしまったときの対応が変わります。出張や旅行が多い方にも、この方法をおすすめしています。
多くは、疲労や睡眠不足、ストレス、紫外線といった日常的な要因の積み重ねです。ただし、明らかに増えた、治りにくくなった、範囲が広くなったという場合には、体の状態が変化している可能性もあります。当院では血液検査で血糖や貧血、栄養状態などを確認し、必要に応じて生活面や漢方も含めて対応します。
TOP