食欲不振
食欲不振
食欲不振
食べたいと思えない、少し食べるとおなかが張る、以前より食が細くなった。食欲不振は、体からの分かりやすいサインである一方、原因の幅が非常に広い症状です。胃や腸の病気だけでなく、甲状腺やホルモン、貧血、お薬の影響、加齢に伴う体力の低下、こころの負担まで関わります。そして検査をしても異常が見つからないことも多く、「気のせい」「年のせい」と言われて終わってしまいがちです。当院では、まず調べるべきものを確実に調べたうえで、それでも残る食欲不振に対して、漢方専門医として漢方薬を用いた治療を行っています。食欲不振は、漢方が最も力を発揮する領域の一つです。
食欲不振は、我慢して過ごされることの多い症状です。体重が減ってきている場合は、原因を確かめることを先送りにしないでください。
食欲不振は症状であって、病名ではありません。背後に治療すべき病気が隠れていることもあれば、検査では何も出てこないこともあります。どちらであるかを確かめてから次に進むことが、遠回りに見えて最も確実です。
確かめておくべき原因があります
胃がんや膵臓の病気、肝臓の障害、甲状腺の機能低下、貧血、腎臓や心臓の状態、そして飲んでいるお薬そのもの。これらはいずれも食欲不振として現れることがあり、血液検査や内視鏡で確かめられます。
とくに、体重が減っている、黒い便が出た、飲み込みにくい、といった症状を伴う場合は、経過を見るのではなく検査に進むべき状況です。当院は消化器を専門とする内科として、この部分をおろそかにしません。
「異常なし」は、終わりではなく出発点です
検査で異常が見つからないと、「では様子を見ましょう」で話が終わってしまうことがあります。しかし、食べられないという事実は変わりません。検査で異常がないことと、体が正常に働いていることは別です。
漢方医学は、まさにこの領域を扱ってきました。胃腸を動かす力が落ちている、体力そのものが不足している、気持ちの緊張が胃に及んでいる、水分が胃に停滞している。西洋医学の検査には映らないこうした状態を、漢方は言葉にし、処方に結びつけます。当院の院長は漢方専門医として、この部分を診療の柱の一つに据えています。
食欲不振の原因は一つとは限らず、いくつかが重なっていることがよくあります。とくに高齢の方では、複数の要因が同時に働いていることがほとんどです。
やみくもに検査を重ねるのではなく、症状と経過から必要なものを選びます。多くは、診察と血液検査、必要に応じた内視鏡で方向性がつきます。
| 問診と診察 | いつから、どのように食べられないのか、体重の変化、便通、睡眠、こころの状態をうかがいます。食べたいのに食べられないのか、そもそも食べたいと思えないのかは、原因を考えるうえで重要な違いです。お薬の内容も必ず確認します。 |
|---|---|
| 漢方の診察 | 脈をみる、舌をみる、おなかを触れる(脈診・舌診・腹診)という漢方独自の診察を行います。冷えの有無、胃に水が停滞していないか、体力がどの程度かといった状態を把握し、処方を選ぶ根拠にします。時間はかかりませんが、処方の精度を大きく左右します。 |
| 血液検査 | 貧血、肝臓や腎臓の機能、甲状腺ホルモン、血糖、炎症の程度、栄養状態を示すアルブミン、電解質などを調べます。亜鉛が不足すると味を感じにくくなり、食欲低下につながるため、必要に応じて確認します。 |
| 上部消化管 内視鏡検査 |
胃がんや潰瘍、逆流性食道炎などがないかを確認します。体重が減っている方、黒い便が出た方、これまで内視鏡を受けたことのない方には、早い段階でおすすめします。ご希望に応じて鎮静剤を用い、眠っている間に受けていただけます。 |
| 腹部超音波検査 | 肝臓、胆のう、膵臓、腎臓の状態を、被ばくなく確認できます。膵臓の病気は症状が乏しいまま進むことがあるため、原因のはっきりしない食欲不振と体重減少では、確かめておく意味があります。 |
| 口の中と 飲み込みの確認 |
高齢の方では、義歯が合っていない、口の中が乾く、飲み込みにくいといったことが食欲不振の背景にある場合があります。必要に応じて歯科や耳鼻科と連携します。原因が口にあるとき、胃薬をいくら出しても改善しません。 |
食欲不振は、漢方が古くから最も得意としてきた領域です。同じ「食欲がない」でも、体力の状態、冷えの有無、胃の動き、気持ちの緊張によって、選ぶ処方はまったく異なります。ここに漢方の力があります。
| 証を見極める | 漢方では、症状の名前ではなく、その方の体の状態(証)に合わせて処方を決めます。同じ食欲不振でも、体力が落ちている方と、気の巡りが滞っている方とでは別の薬を使います。逆に言えば、合っていない漢方薬を飲んでも効きません。この見極めが、漢方専門医の役割です。 |
|---|---|
| 胃腸の働きを 助ける処方 |
胃がもたれる、少しで満腹になる、疲れやすいといった状態には、六君子湯がよく用いられます。胃の動きを整え、食欲に関わるホルモンにも働くことが研究で示されている処方です。胃に水分が停滞し、げっぷや胸やけを伴う場合には、茯苓飲などを選びます。 |
| 体力を 補う処方 |
だるさが強い、病気やお手術の後で体力が落ちている、夏に食べられなくなるといった場合には、補中益気湯を用います。貧血や顔色の悪さを伴い、体力の消耗が強い場合には、十全大補湯や人参養栄湯といった、気と血の両方を補う処方を選びます。 |
| 気の巡りを 整える処方 |
のどのつかえ感がある、緊張すると食べられない、気分が晴れないといった状態には、半夏厚朴湯や香蘇散を用います。ストレスが胃に及んでいるタイプの食欲不振に適しており、西洋薬では対応しにくい部分を補えます。 |
| 西洋薬との 併用 |
漢方は西洋薬の代わりではなく、組み合わせて使うものだと考えています。胃酸を抑える薬や胃の動きを助ける薬が必要な場合には併用します。逆に、不要になった薬を減らしていく過程でも漢方が役立ちます。飲み合わせを確認したうえで処方します。 |
| 食事と生活の 調整 |
食べられない時期に「しっかり食べなさい」と言われることほど、つらいことはありません。当院には管理栄養士が4人在籍し、少量で栄養がとれる工夫、食べやすい形、回数の分け方を具体的にご提案します。薬と食事の両方から支えます。 |
漢方薬は保険で処方できます
医療機関で処方する漢方薬(医療用漢方製剤)は、健康保険の適用があります。市販の漢方薬より種類が多く、その方の状態に合わせて細かく選べます。効き方は処方と体質によって異なり、食欲に関わるものでは数日から2週間ほどで変化を感じる方が多い一方、体力を補う処方では1〜2か月かけて整えていくこともあります。効果を判定する時期をあらかじめお伝えし、合わないと感じた場合は処方を変更しますので、飲み続けて我慢する必要はありません。
KAMPO
漢方専門医が、状態に合わせて処方を選びます
院長は漢方専門医として診療を行い、大学病院の漢方診療科と関わりながら、漢方薬の作用の研究にも携わってきました。食欲不振は、漢方が最も得意とする領域の一つです。決まった一つの薬を出すのではなく、脈や舌、おなかの所見から状態を見極め、その方に合う処方を選びます。効かなければ処方を変えるところまで含めて、責任を持って担当します。
EXAMINATION
調べるべきものは、確実に調べます
漢方を用いる前提として、見逃してはいけない病気を除外しておく必要があります。当院は消化器を専門とする内科であり、内視鏡や腹部超音波、血液検査を院内で行えます。漢方だけに頼らず、西洋医学の診断を土台に置くことを、診療の原則としています。
MEDICATION
飲んでいる薬全体を、見直します
食欲不振の原因が、飲んでいる薬にあることは少なくありません。とくに複数の医療機関から処方を受けている方では、全体を見る役割が必要です。当院では一般内科として、お薬手帳をもとに、減らせるもの、変更できるものを整理します。漢方を足す前に、引くことを考えます。
NUTRITION
管理栄養士4人体制で、食べ方を一緒に考えます
食べられないときに必要なのは、精神論ではなく具体的な方法です。少量で栄養のとれるもの、口当たりのよいもの、回数を分ける工夫を、生活に合わせてご提案します。ご高齢の方については、ご家族への説明も含めて対応します。
診察でご相談ください
食欲がどのように落ちてきたか、体重の変化、便通、睡眠、こころの状態をうかがい、脈・舌・おなかの漢方的な診察を行います。お薬手帳、健診結果、体重の記録、過去の内視鏡の結果をお持ちいただくと判断がしやすくなります。他院で処方された漢方薬がある場合も、その内容をお持ちください。
必要な検査で、原因を確かめます
血液検査で全身の状態を調べ、必要に応じて内視鏡や腹部超音波を行います。飲んでいる薬に原因が疑われる場合は、その調整から始めます。検査で治療すべき病気が見つかった場合は、そちらの治療を優先します。
漢方薬を選び、飲み始めます
状態に合わせて処方を決め、飲み方と、効果を判定する時期をお伝えします。西洋薬が必要な場合は併用します。味や飲みにくさが心配な方には、飲み方の工夫もあわせてご説明します。
経過を見ながら、調整します
効き方を確認し、合っていなければ処方を変更します。食欲が戻ってきたら、薬を減らしていくことも検討します。長く続ける場合には、定期的な血液検査で副作用の有無も確認します。合わないまま飲み続けることのないよう、遠慮なくお伝えください。
次の症状があるときは、様子を見ずにご相談ください
水分がとれない状態が続くと脱水が進み、とくにご高齢の方では急速に体調が悪化します。ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍いといった場合は、ためらわず救急要請をしてください。また、食欲不振に強い気分の落ち込みや不眠を伴う場合には、こころの面からの対応が必要なことがあります。その場合も、まずはご相談いただければ適切な形をご提案します。
あります。検査で異常がないことと、胃腸が正常に働いていることは別です。胃の動きの低下や知覚の過敏、自律神経のバランスが関わっていることが多く、この領域は漢方が得意とするところです。「異常なし」で終わってしまった方こそ、一度ご相談ください。
処方によります。食欲や胃のもたれに用いる処方では、数日から2週間ほどで変化を感じる方が多くおられます。一方、体力そのものを補う処方は、1〜2か月かけて整えていくこともあります。当院では、いつ頃効果を判定するかをあらかじめお伝えし、その時点で合っていなければ処方を変更します。
症状だけでなく、体力の程度、冷えの有無、胃に水分が停滞していないか、気持ちの緊張があるかなどを、脈・舌・おなかの診察とあわせて判断します。漢方では、同じ食欲不振でも人によって処方が異なります。合っていない薬を飲んでも効きませんので、この見極めに時間をかけます。
あります。多くの処方に含まれる甘草という生薬では、むくみ、血圧の上昇、体のだるさや脱力(低カリウム血症)が起こることがあります。まれに肝臓の障害や、間質性肺炎が生じることもあります。長く続ける場合は定期的に血液検査で確認します。むくみや息切れ、から咳が出たときはご連絡ください。
多くの場合、併用できます。ただし、複数の漢方薬を重ねると甘草の量が過剰になることがあり、また一部の西洋薬とは注意が必要な組み合わせもあります。お薬手帳を拝見したうえで判断します。他院で漢方薬を処方されている場合は、必ずお知らせください。
はい、医療機関で処方する漢方薬は健康保険の適用があります。市販のものより種類が多く、含まれる生薬の量も定められているため、状態に合わせて細かく選べます。費用についても、診察の際にご説明できます。
あります。白湯に溶かして飲む、少量の水で団子状にして飲み込む、オブラートを使う、服用ゼリーを利用するなど、いくつか方法があります。処方によっては錠剤が用意されているものもあります。飲めなければ効果はありませんので、飲み方の相談も遠慮なくお申し出ください。
年齢だけで片づけないほうがよい症状です。義歯の不具合、飲み込みにくさ、便秘、脱水、薬の影響、甲状腺の機能低下、気分の落ち込みなど、対応できる原因が隠れていることがよくあります。ご本人が受診をためらう場合も、ご家族だけでまずご相談いただいて構いません。体力の低下が進む前に、原因を確かめておくことをおすすめします。
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